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「急性心不全の症状」はご存知ですか?前兆となる初期症状も医師が解説!

 公開日:2024/08/13
「急性心不全の症状」はご存知ですか?前兆となる初期症状も医師が解説!

急性心不全の症状とは?Medical DOC監修医が急性心不全の症状・初期症状・慢性心不全との違いや予防法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。 また、医師業務以外の副業も積極的に行っており、ビザスクなどを通して企業の医療アドバイザー業も副業として行っており、年間70社以上の会社にアドバイザーとして助言を行うなどしている。 ライティングも行っており、m3.comや、Ubie病気のQ&A(https://ubie.app/byoki_qa/doctors/yn8ueqd6kjn)などにて定期的に執筆活動を行っている。

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「急性心不全」とは?

心臓は血液を送り出すポンプの働きをしており、体の血液を循環させる中心的な働きをしています。
心臓のこのような血液を送り出すポンプの作用が低下し、うまく血液が送り出せなくなってしまった状態を、心不全と呼びます。
そして心不全が急に出現した場合には、急性心不全と呼ばれます。

「急性心不全」と「慢性心不全」の違いとは?

心不全は、血液を送り出すポンプの働きをしている、心臓の働きが低下してしまった状態です。心不全の状態が、突然生じてしまった状態が「急性心不全」と呼ばれます。
心筋梗塞などの冠動脈疾患や、不整脈、心臓弁膜症、心筋症などの病気が原因となることが多いですが、中には重度の敗血症や、全身性の疾患によって引き起こされることもあります。
一方、慢性心不全というのは心不全の状態が日常的に生じている状態であり、安定していればほとんど症状がないこともありますが、日常生活に支障をきたすような症状を常に伴う状態のこともあります。治療によって安定した状態となっていても、感染症などを契機として悪化する、「慢性心不全の急性増悪」を生じると急性心不全と同様の状態となってしまいます。

急性心不全の代表的な症状

心不全はいろいろな病気が原因で引き起こされることがあるため、その症状もさまざまなものがあります。ここでは、代表的な心不全の症状について解説します。

息切れ、呼吸の苦しさ(呼吸困難感)

心不全症状を引き起こした場合に生じやすい代表的な症状の一つです。
心不全症状での典型的な呼吸苦症状は、横になった際に心負荷で肺にたまった胸水が肺全体に広がるため呼吸の苦しさが悪化し、体を起こすと楽になる起坐呼吸という症状があります。
それ以外にも、動いたときに息切れが出現し易くなることもあるため、それまでできていた動作で息が切れるようになってきた際には、心不全の可能性も疑う必要があるため、早めに病院を受診する必要があります。起坐呼吸は心不全が急に進行した場合などによく生じるため、自覚する場合には救急外来の受診など、速やかな受診が必要です。
動くのが大変な呼吸困難が生じる際には緊急性が高い可能性もあるため、救急要請を検討しましょう。

胸痛

心筋梗塞や狭心症だけでなく、心不全や心臓弁膜症などの疾患でも、冠動脈の血流が低下してしまうと胸痛を生じます。典型的な心臓の血流障害の症状としては、胸の中心~左側の締め付けられる様な、押しつぶされるような強い胸痛であり、冷や汗を伴うような強い症状のことも多く、左肩~顎や奥歯まで苦しくなる放散痛を伴うこともあります。
数分で改善しないような強い胸痛の場合は、速やかな救急要請が必要となる、緊急性が高い状態となっている可能性が高いです。
もし短時間で落ち着いたとしても、それまでなかった症状が出現している際には早期の循環器科受診が必要です。

動悸

不整脈が出現した際や、心不全で呼吸が苦しくなる時に出現することが多いです。
ただ、動悸と一言で表現しても、さまざまな症状を動悸と表現することがあります。そのため、動悸の場合には脈が速い状態なのか、脈の乱れがあるのか、脈が速くも乱れてもいないが鼓動だけ強く感じるのか、ということが伝えられると、より早い段階で診断・治療に結び付けることができます。
動悸以外に胸痛や強い呼吸苦症状を伴う場合には緊急性が高い可能性があるため、救急要請も検討が必要です。
短時間で改善する、症状はあるが軽い場合には早めに循環器科を受診することを検討しましょう。
強い動悸やめまい・ふらつき・失神などの症状がある際には、無理に動かず、横になって楽な姿勢を取り、速やかに救急要請をする必要があります。

めまい、ふらつき、失神

心不全によって体の血液の循環に障害が生じたり、脈がゆっくりとなる不整脈や心臓弁膜症などで出現することがあります。
症状を自覚したら、まずは転倒・失神などをしないように座り込むか横になりましょう。
そして可能であれば自分で脈をチェックし、脈の速さの異常や乱れがないかを確認してください。
脈がゆっくりになり過ぎる不整脈が原因の場合には、ペースメーカー埋め込み術などが必要となることがあります。
失神まで起こす場合は、緊急での処置を必要とする状態の可能性もあるため、できる限り速やかな受診が必要です。
心臓病が原因の失神は、徐々に気が遠くなるというよりは、突然ブツンと意識がなくなる、気が付いたら倒れていたというタイプの症状が多いため、このような症状では特に注意が必要です。

急性心不全の前兆となる初期症状

発症すると入院が必要となり、重症化する危険もある急性心不全ですが、初期の段階で症状が出現していることもあるため、下記のような症状がある際には注意が必要であり、速やかな受診が必要です。

これまでできていた動作での息切れ、胸の苦しさ

急性心不全の症状として強い息切れや呼吸困難などの症状がありますが、初期の段階としては、それまでできていた動作での息切れや胸の苦しさを自覚することがあります。
例えば、坂道や階段、仕事での肉体労働などで、以前よりも息切れが目立つ、胸が苦しくなる、一休みしないと続けられなくなる、といった症状で出現することがあります。

動悸

心不全を発症すると強い動悸を自覚したり、危険な不整脈が多発・持続する状態となることもありますが、前兆として時々脈が飛ぶ、短時間のドキドキするような頻脈・動悸を自覚するといった、比較的軽い動悸症状が先行することがあります。

慢性心不全の代表的な症状

慢性心不全でも、主な症状は急性心不全と同様ですが、症状は日常的にみられていることが多く、適切な治療を受けていれば、症状を伴いながらも日常生活が維持できる状態のことが多いです。ただ、慢性心不全の重症度が高くなると安静時にも息切れや呼吸困難などの症状が強くなってしまい、日常生活に支障が出ることもあります。
以下のような症状がありますが、これらの症状を自覚するような際には、重症化してしまうリスクもあるため、速やかに循環器科を受診する必要があります。

息切れ、呼吸の苦しさ(呼吸困難感)

・どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点、緊急性
急性心不全と同様、心不全症状を引き起こした場合に生じる代表的な症状の一つです。
慢性心不全では特に、動いたときに息切れが出現し易くなることが多いです。
それまでできていた動作で息が切れるようになってきた際には、心不全の可能性も疑う必要があるため、早めに病院を受診する必要があります。
進行すると、就寝時など横に寝ると苦しくなる、呼吸困難となる起坐呼吸が生じることもあります。

胸痛

慢性的に心臓の機能が低下するため、心臓に栄養を送る冠動脈の血流が低下し、胸痛を生じることがあります。典型的な痛み方としては、胸の中心~左側の締め付けられる様な症状であり、冷や汗を伴ったり、左肩~顎や奥歯まで苦しくなる放散痛を伴うこともあります。

動悸

慢性的に不整脈が生じる・持続することで、日常的に動悸を自覚しやすくなることがあります。発作的に脈が乱れる、飛ぶような自覚を生じたり、頻脈を感じることもあります。
中にはそれが慢性化し、日常的に持続してしまうこともあります。

めまい、ふらつき

心不全によって体の血液の循環に障害が生じ、脳の血流が低下することで出現することがあります。
発作的に出現する場合もあれば、進行すると日常的に出現するようになることもあります。

慢性心不全の前兆となる初期症状

基本的には初期の段階で出現する症状も、慢性心不全の代表的な症状と同様の症状が出現することが多いですが、より軽度な症状であることが多いです。
年のせい、と思って様子を見てしまう方も多いため、注意が必要です。

軽い動作、これまでやれていた動作での息切れや胸痛

普段の生活では何の症状がなくても、軽い動作で息切れや胸痛が出現する症状が、先行して生じていることがあります。
今まで何の支障もなく行えていた動作や運動などで息切れや胸痛が出現するようになった、というときには心不全の可能性も常に考え、早期に受診が必要です。

動悸

時々脈が飛ぶ、短時間のドキドキするような頻脈・動悸を自覚するといった、比較的軽い動悸症状がみられることがあります。
そのような際には短時間の不整脈が出現している可能性もあるため、症状出現時に自分で手首の脈を確認し、①動悸時の1分間の脈の回数、②脈のリズムがおかしくないか、の2点を確認し、早期の受診を検討するようにしましょう。

急性心不全になりやすい人の特徴

急性心不全は、生活習慣病や心臓疾患が原因で生じることが多いため、高血圧や脂質異常症、糖尿病で治療をしている方、心臓の病気がある方は注意が必要です。
また、喫煙や過度の飲酒、高度の肥満や運動不足などによって生活習慣病を引き起こし、心不全を起こしやすく、高齢の方ほど起こしやすくなります。

生活習慣病がある方

高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病によって、動脈硬化の進行や心臓の負担が増えることで心疾患を引き起こし、心不全を発症しやすくなります。
特に治療期間が長い、未治療の状態などは高リスクとなるため、しっかりと通院・治療をすることが必要です。

心臓の病気がある

急性心不全の原因として、心筋梗塞や不整脈、弁膜症などさまざまな心臓の病気があります。
これまでなかった胸痛や動悸、息切れなどの症状が出現する場合には心不全の危険もあるため、早期に病院を受診することが重要です。
症状が強い場合、改善しない場合には緊急性が高くなるため、救急要請が必要となることもあります。
元々心臓病を指摘されている、病歴がある人は、通院・治療をしっかり継続し、定期的に検査を受けて心臓の状態を評価することが大切です。

高齢者

基本的には高齢になるほど動脈硬化が進行しやすく、さまざまな病気を持っていることも多いため、高齢であること自体が心不全の大きなリスク因子です。

生活習慣がみだれている人

生活習慣病や心疾患は、不適切な生活習慣によって引き起こされることが多いです。
塩分やカロリーの取りすぎ、喫煙、過度の飲酒、肥満、運動不足、不規則な生活リズム、過度のストレスなどは急性心不全の原因となるさまざまな病気を引き起こすため、注意が必要です。

すぐに病院へ行くべき「急性心不全の症状」

ここまでは急性心不全の前兆を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

突然出現する息切れや呼吸困難、胸痛、動悸などの症状が出現した場合は、速やかに循環器科や救急外来へ

急性心不全は命にかかわるような危険な病気が原因となっていることも多い、恐ろしい状態です。突然発症する呼吸困難や胸痛、動悸などが出現した際には、大至急循環器科や救急外来の受診が必要です。症状が強い場合には、1分1秒を争う状態の可能性もあるため救急要請を速やかに行うことが大切です。

受診・予防の目安となる「急性心不全の症状」のセルフチェック法

・突然出現した呼吸困難・息切れなどの症状がある場合
・突然出現した胸痛がある場合
・突然出現した動悸がある場合

急性心不全を予防する方法

心不全は生活習慣病や心疾患が原因となることが多く、発症を予防するためには血圧や脂質、血糖が高くならないようにすることが非常に重要となります。

生活習慣に気をつける

多くの心疾患は動脈硬化が原因となるため、最も基本的な点は生活習慣に気をつけることです。気をつけるポイントとしては、以下のような点があります。
・塩分をとり過ぎない:1日の塩分量は6g以下を意識する
・カロリーをとり過ぎない:通常成人では、年齢や活動量に応じて1800-2600kcal程度のカロリー摂取が推奨されます。さらに、野菜や果物の積極的な摂取、脂分が多い食品をとり過ぎないことが推奨されます。
・太り過ぎない:BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満を心がける
・運動習慣:軽く汗ばむ位の有酸素運動を1日60分(歩行なら1日8000歩以上)行う
・節酒:エタノールとして1日、男性20-30ml(日本酒1合、ビール中瓶2本、焼酎0.5合、ワイン2杯、ウイスキーダブル1杯に相当)、女性は約半分の10-20ml以下の制限が推奨されます。
・禁煙:喫煙は高血圧、心臓・脳血管疾患、肺疾患、悪性腫瘍など、さまざまな疾患リスクとなることが証明されています。

健康診断、定期的な検査を受ける

心不全の原因となる疾患の多くは、高血圧などの生活習慣病や、心臓の異常であるため、定期的に健康診断を受けて、身体診察、心電図やレントゲン、採血検査などを受けることで早期の診断、早期治療に繋げることが可能です。
より早い段階で診断・治療を行うことで、危険な状態になるまで病気を放置することがなくなり、心臓発作の予防になります。

治療している病気をしっかりコントロールする

心不全の原因となるような病気は、生活習慣病や慢性的な心臓病が多く、適切な治療を受けることで病気の進行や心臓に過度の負荷がかかることを防止することができます。
高血圧や脂質異常、糖尿病などの生活習慣病や慢性的な心臓病は、治療が不十分であったり、治療を中断してしまうと動脈硬化を進行させ、心臓の負担を増やし、心不全の原因となるような心疾患を引き起こしてしまいます。内服をしっかり継続すること、医師による定期的な病状評価をうけること(診察や検査)、治療が不十分であれば治療強化を検討することが非常に重要です。

「急性心不全の症状」についてよくある質問

ここまで急性心不全の症状などを紹介しました。ここでは「急性心不全の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

若い人の急性心不全の初期症状について教えてください。

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

若年者でも高齢者でも、基本的に初期症状は変わりません。初期の段階としては、それまでできていた動作での息切れや胸の苦しさを自覚することがありますので、坂道や階段、仕事での肉体労働などで、以前よりも息切れが目立つ、胸が苦しくなる、一休みしないと続けられなくなる、といった症状で出現することがあります。
このような症状を自覚する際には、若い方であっても早期に受診をしていただくのが大切です。

急性心不全は何歳以上に多い疾患ですか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

基本的には、生活習慣病などが原因で動脈硬化が進行して引き起こされる心疾患などが原因となることが多いため、60歳以上の高齢者に多い病気です。ただし、近年では食生活の欧米化に伴い若年者でも動脈硬化疾患を発症することが増えていることや、若い方でも生じるような不整脈や先天性疾患(生まれつきの異常)などが原因で生じることもあるため、若い方でも発症することはあります。

編集部まとめ

急性心不全は発症すると命にかかわることもある危険な状態です。
疑われるような症状が出現した際には、できるだけ速やかに病院を受診することが何より大切です。
普段ない症状が急に出現したときには、すぐに循環器科や救急外来の受診を検討し、症状が強い場合には救急要請をするようにしましょう。

「急性心不全の症状」と関連する病気

「急性心不全の症状」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

心不全は生活習慣病や心疾患が原因となることが多く、高齢の方ほど起こしやすいという特徴もあります。

「急性心不全の症状」と関連する症状

「急性心不全の症状」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 息切れ、呼吸が苦しい
  • 胸痛
  • 浮腫、体重増加

上記のような疑わしい症状が出現した際には、速やかに病院を受診することが重要です。

この記事の監修医師