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筋ジストロフィーってどんな病気?病気のタイプや症状、原因について解説!

 更新日:2023/03/27
筋ジストロフィー

筋ジストロフィーとはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

筋ジストロフィーとは

筋ジストロフィーとは、遺伝子の異常によりタンパク質がうまく作れず、さまざまな異常をきたしてしまう疾患です。

筋肉が障害されやすく、手足や体幹の筋力低下による運動機能の低下が目立ちますが、内臓の筋肉も障害されるためさまざまな症状が出現します。

どんな症状が現れるの?

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
原因遺伝子によってさまざまなタイプがあり、タイプごとに発症年齢や症状が異なります。代表的なものとして、
・デュシェンヌ型筋ジストロフィー
・ベッカー型筋ジストロフィー
・福山型先天性筋ジストロフィー
・顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
・肢帯型筋ジストロフィー
・筋強直性ジストロフィー
などがあります。


デュシェンヌ型筋ジストロフィー
主に、男児に発症する疾患です。

ハイハイや立ち上がりの時期が他の子より遅い、膝や太ももに手をつきながら自分の体をよじ登るように立ち上がる(Gowers徴候)、転びやすい、などの症状で2~3歳ごろに気付かれます。

歩行を獲得することもありますが、成長とともに体を支えられなくなり、12歳までには車椅子生活となります。知能障害や心筋障害を生じることもあります。

ベッカー型筋ジストロフィー
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの類縁疾患で、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと比べると症状が軽い疾患です。

多くの場合、運動発達の遅れがあり、16歳以降に車椅子が必要となりますが、運動時の筋肉痛が唯一の症状という軽症例も存在します。

福山型先天性筋ジストロフィー
日本人に多い疾患です。

生後6か月ごろから首が座らない、自発的な運動が少ない、手足に力が入っておらず他動的に動かしても抵抗しない、表情が変わらないなどの症状で気付かれます。

運動機能だけでなく知能の発達障害もあり、二語文(水が欲しい、おなかが減った、など)を話すようになる人は多くありません。また、けいれんを起こしやすいという特徴があります。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
顔面や肩から腕にかけての筋肉が主に障害を受けて、ゆっくりと進行性に筋力が低下する疾患です。

多くの場合、20歳までに症状が現れますが、発症時期は幼児期から壮年期までさまざまです。

症状が進行すると、筋力低下は全身にみられるようになり、最終的に車椅子生活となります。

肢帯型筋ジストロフィー
上記のような代表的な筋ジストロフィー以外の筋ジストロフィーを指す疾患群で、原因が不明なものを含んでいます。

発症年齢は、幼児期から壮年期までさまざまですが、体幹や体幹に近い筋肉の筋力低下がみられ、全身の筋力低下が進行します。

筋強直性ジストロフィー
四肢や体幹の筋肉や内臓の筋肉だけでなく、目や心臓、内分泌臓器などの他臓器を障害する疾患です。

力を入れる、筋肉をたたくなどの他動的な力を受けると、筋肉の持続的な収縮が起きてしまうミオトニア(筋強直)という症状がみられます。

ミオトニア、筋委縮(筋肉が細くなる)、筋力低下が代表的な症状で、その他に、糖尿病や白内障、知能低下、不整脈などが起こることがあります。

症状の程度は、生後間もなくして筋力低下のため呼吸不全で死亡してしまうものから、日常生活に支障のないものまでさまざまです。

遠位筋に筋力低下をきたす1型と、近位筋に筋力低下をきたす2型があります。

初期症状の特徴

初期症状は筋力低下です。

幼児期や幼少期:自発的な動きが乏しい、首のすわりや立ち上がりが遅いなど、運動発育の遅さがみられます。

青年期以降:力が弱くなった、疲れやすいなどの症状がみられます。

幼児期~小児期に発症する場合が多く、小児科で診断されます。

青年期以降の発症の場合には、脳神経内科を受診してください。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
筋ジストロフィーは遺伝性疾患であることから、親族の中にすでに発症した人がいる場合が多いため、発症前から発症リスクがあることは予想されます。
しかし、家族歴がわからない場合や孤発例(突然の遺伝子異常)もあるため、注意が必要です。

重症患者の症状と寿命

筋ジストロフィーのタイプによって、症状経過はさまざまです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー
幼児期に発症し、12歳までには車椅子生活となり、14歳を過ぎると3人に1人に心筋障害が出現します。

以前は10代後半でほとんどが亡くなっていましたが、最近では人工呼吸器の導入により30歳を超えて生存する人もいます。

ベッカー型筋ジストロフィー
16歳以降に車椅子が必要となる例が多いのですが、運動時の筋肉痛が唯一の症状という軽症例も存在します。

呼吸筋の筋力低下や心筋障害による心不全が問題になることがあります。

福山型先天性筋ジストロフィー
生後6か月ごろから首が座らない、自発的な運動が乏しいなどの運動発達の障害がみつかります。

6歳ごろまでは運動機能を獲得しますが、その後は徐々に運動機能を喪失し、四肢が拘縮・変形して食事も食べられなくなり、成人を迎える例はほとんどありません。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
10歳代頃から腕が上がりにくいなどの症状が出現し、徐々に全身に筋力低下が広がり呼吸補助を必要とする場合もありますが、致死的になることは多くありません。

肢帯型筋ジストロフィー
他の筋ジストロフィーと比較すると進行がゆっくりである場合が多くみられます。

筋強直性ジストロフィー
幼児期から発症する先天型では呼吸不全により早期に死亡します。
その他のタイプについては、成人以降に身体の自由が利かなくなることはありますが、生命予後にはかかわりません。

筋ジストロフィーの原因は?

筋ジストロフィーの原因は遺伝子の異常であり、疾患タイプごとに原因遺伝子が異なります。

遺伝子の異常により特定のタンパク質の合成障害(正常なタンパク質が作られず機能に異常がある、あるいは、機能が低下したタンパク質が作られる)が起きることで、筋肉を中心にさまざまな障害が出現します。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーやベッカー型筋ジストロフィーは、X染色体上に原因遺伝子があるため、多くは男性に発症し、女性は保因者となり症状は出にくくなります。

その他は、常染色体上に原因遺伝子があり、男女ともに発症します。

筋ジストロフィーの検査法は?

筋ジストロフィーは、臨床経過と家族歴、血液検査、遺伝子検査をもとに診断されます。

診断が困難な例や、肢帯型筋ジストロフィーなどの原因遺伝子がはっきりしていないものでは、外科的に筋肉を採取する筋生検が必要になる場合があります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
遺伝子検査は血液で行うことができますが、患者当人だけでなく、血族にも影響のある検査であるため、遺伝カウンセリングなどが必要となる場合があります。

筋ジストロフィーの治療方法

筋ジストロフィーの根本的な治療方法はなく、リハビリテーションや人工呼吸器などによる呼吸補助、不整脈に対するペースメーカー留置などそれぞれの症状に合わせた治療を行います。

一部の疾患では、副腎皮質ステロイドを使用する場合があります。

症状の進行に伴って飲み込みが悪くなったり、呼吸が弱くなったりします。誤嚥などに注意して生活しつつ、気になることは医療機関にすぐに相談するようにしてください。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
近年ではレトロウイルスベクターを用いた遺伝子挿入などの新しい治療が開発されつつありますが、まだ一般化はしていません。

筋ジストロフィーの前兆は?予防方法はあるの?

疾患の初期症状は筋力低下になります。

成人例であれば、筋肉の疲れやすさやつりやすさで自覚する場合もあります。

安静にしても筋力低下が改善せずに病状が進行する場合には、脳神経内科へ受診してください。

遺伝子疾患であり、予防法はありません。

筋ジストロフィーは遺伝するの?

筋ジストロフィーは遺伝性疾患です。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーやベッカー型筋ジストロフィーはX染色体に原因遺伝子があり、男児の50%で発症、女児の50%で保因者となります。

その他の筋ジストロフィーは常染色体に原因遺伝子があり、50%で発症します。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)との違い

ALSと筋ジストロフィーはどちらも筋力低下が初発症状となりますが、発症年齢や障害されるものが異なります。

ALSは神経の障害、筋ジストロフィーは筋の障害です。

筋ジストロフィーでは血液検査で筋肉の破壊などで上昇するCK(クレアチンキナーゼ)が高値となる一方で、ALSでは上昇しません。

また、神経伝導検査や針筋電図を行うことで神経疾患か筋疾患かを鑑別できます。

パーキンソン病との違い

パーキンソン病は、動作緩慢を主とする疾患で、安静時振戦、無動/寡動、固縮、姿勢反射障害などが代表的な症状です。

動きの硬さはありますが、筋強直性ジストロフィーでみられるミオトニアと異なり、安静時であっても他動させると抵抗を感じます。

筋力低下はなく、症状が大きく異なるため、症状から鑑別可能です。

まとめ

筋ジストロフィーは、遺伝子の異常によりタンパク質の合成障害が起きて、筋症状を中心としてさまざまな障害をきたす疾患です。

遺伝子の異常による疾患であるため、遺伝性があり、多くは幼少期から症状が出現します。

発症後は時間とともに筋力低下が進行し、歩行などの運動機能だけでなく、嚥下や呼吸などの生命維持に必要な筋肉も障害され、心筋や消化管などの内臓にも障害が起こります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
現在はまだ根本治療はありませんが、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子挿入など、新たな治療方法なども研究されており、今後の新たな治療法の開発に期待したいと思います。

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