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「乳がんの再建(乳房再建術)」のメリット・デメリットはご存知ですか?手術費用も解説!

 公開日:2025/10/07
「乳がんの再建(乳房再建術)」のメリット・デメリットはご存知ですか?手術費用も解説!
乳がんの再建(乳房再建術)とは?メディカルドック監修医が治療費や入院期間・メリット・デメリット・術後の注意点などを解説します。
山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

「乳がん」とは?

乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍の一種で、女性がかかるがんで最も多いとされています。日本ではおよそ9人に1人が乳がんを経験するというデータがあります。乳がんの治療は手術や放射線といった局所治療と薬物による全身治療を組み合わせて実施されます。治療内容は乳がんのタイプや進行度によってさまざまです。

乳房再建術とは?

乳がんの手術は大まかに2つの方法があります。乳房の一部を取り除く部分切除術と乳房全体を切除する全摘手術です。乳房再建術とは乳房の全摘を行い、乳房を失った方に対して、乳房のふくらみを再び作る手術です。再建方法は主に二つあり、人工物(インプラント)再建と自分の背中やお腹などから組織を胸に移動させる自家組織再建が行われます。また、乳がん手術と一緒のタイミングで行う一次再建、治療が落ち着いた後に実施する二次再建があります。乳房再建を完成させるのに必要な手術回数も一度で再建を完成させる方法(一期再建)と二段階で行う方法(二期再建)があります。二期再建ではまずエキスパンダーを挿入して乳房の皮膚を引き延ばし、次の手術時にインプラントまたは自家組織を移植して最終的な再建を行います。乳房再建術は形成外科で治療を行います。

医師はどんな基準で乳房再建術を薦めるのか?

乳房再建術は乳がんを治すうえで必須の手術ではありません。患者さんの希望があり、患者さんの体調や乳がんの進行度に問題がないなどの条件が揃えば、実施できます。

患者本人の希望が第一

何よりも大切なのは患者さん本人が乳房を再建したいと希望していることです。乳房再建術によって整容面を改善し、喪失感を和らげることができます。メリットとデメリットを考え、納得した上で選ぶことが、乳房切除後の日常の快適さや精神的な安定につながります。

乳がんの治療や病状が安定している

乳房再建術を行う際は、術後放射線治療や薬物治療を考慮しなければいけません。再発リスクが高い、もしくは化学療法や放射線治療が手術後に必要となる場合は、どのタイミングで乳房再建術を行うのがよいかを慎重に判断します。乳房再建ががんの治療の妨げにならないことがとても重要なポイントです。

健康状態が再建手術に適している

特に自身の組織を用いる再建の場合、十分な体力が必要になる大きな手術となります。全身状態が手術に耐えられるかどうかを評価します。糖尿病や心臓病などの持病がある方は、合併症リスクがどの程度あるか慎重に判断してから行う必要があります。安全な乳房再建術を実現するためには全身状態に大きな問題がないことが望まれます。

乳房再建術の治療・入院期間

どの再建の方法を選ぶかによって、入院日数や治療にかかる時間が変わってきます。自家組織による再建を行う場合は、約2週間の入院が必要になります。その後は治療を特に行う必要はなく、定期的な経過観察を通院で行っていきます。人工物再建では、数日間の入院で対応できるケースがほとんどです。エキスパンダーを留置する手術を行い、約3~6カ月間、エキスパンダーへ生理食塩水を注入するために通院します。その後再度入院し、エキスパンダーを抜去し、最終的なインプラントを入れる手術を行います。

乳房再建術の費用

人工物による再建も自家組織による再建も保険が適用されます。いずれも3割負担で30~40万円程度ですが、高額療養費制度を利用できるので、実際の負担はさらに少なくなります。一部の乳頭再建や脂肪注入を行う場合は自費診療です。そのため、実施できる医療機関が限られます。

乳房再建術のメリット

乳房再建を受けることで、見た目を良くし、喪失感を和らげることができます。乳房のふくらみを再び作ることで患者さんの生活の質や精神面の改善をもたらすことが期待できます。

日常の快適さ

乳房再建術により、左右のバランスが良くなる、下着パットがいらない、洋服が快適に着られるなどのメリットがあります。乳房のふくらみを再び作ることによって、より自然な生活を送ることが可能となります。

心の支えとなる効果

乳房を全摘すると、平らな胸になり、乳房を失った喪失感に悩まれる方もいらっしゃいます。乳房を再建することで、喪失感を軽減し、前向きな気持ちになれる方もたくさんいらっしゃいます。外見の変化への不安や悲しみが和らぎ、精神的な回復にも良い影響があるでしょう。

人目を気にせず行動できる

乳房再建術を受けることで、温泉やプールが好きな方は人目を気にせず自然にふるまえるようになります。周囲の視線に対するストレスが減ることで、前向きな気持ちになれるでしょう。また、小さなお子さんいる方も、子供が不安を感じないように、いつも通りの姿で接することができるでしょう。

乳房再建術のデメリット

乳房再建術によって、手術の回数や手間が増える、身体的な負担が増える、手術による合併症リスクが増える可能性があります。

手術回数が増えることがある

再建方法によっては何回かにわけて手術を行うことがあります。エキスパンダーによって皮膚を伸ばし、次回手術でインプラントや腹部や背中の組織を使って再建を仕上げることがあります。乳房切除と一緒に行わない場合はさらに手術の回数が増えます。場合によっては乳房の形の修正のために、追加の手術を行ったほうが良いこともあります。このように、治療の回数が増えることや期間が長期にわたる可能性があります。

傷や痛みが増える可能性がある

自家組織再建では乳房以外に背中やお腹などの他の部位にも大きな傷ができます。手術範囲が広がり、術後の痛みが強くなる可能性があります。また、エキスパンダーで皮膚を引き延ばしている間にも痛みを感じる可能性があります。

手術による合併症のリスク

乳房再建術に伴う合併症が起こることが考えられます。人工物による再建の場合は、感染、皮膚の壊死(血流不全)、インプラントの露出などが起こる恐れがあります。自家組織による再建では、移動させた組織が壊死してしまうリスクもあります。これらの合併症が生じた場合、治療が長引くことや再建が中止となることもあり得るでしょう。放射線治療を受けている場合は、傷の治りが遅れることや合併症が起こる確率が増えることも懸念されます。

乳房再建術後の注意点

乳房再建術を受けて間もない時期は運動制限や肩の可動域制限があります。人工物による再建の場合は、感染にも注意が必要です。また、トラブルがないか定期的なフォローアップも行います。

運動や姿勢の制限

乳房再建術後約1か月は 挿入した人工物がずれるのを防ぐために運動の制限があります。腕をあげすぎない、重い荷物を持たない、胸が揺れないように固定するなどの注意点があります。その時期が過ぎた後は手術した側の腕のストレッチや運動を行い、肩関節が拘縮してしまうのを予防しましょう。状態が安定すれば制限なく、運動できるようになります。

傷の清潔を保つ

エキスパンダーやインプラントなどの人工物は感染のリスクが高くなります。創部の清潔を保つことが感染の予防のために大切です。皮膚の赤みや熱感の症状がある場合は、感染しているおそれあるので、早めに医療機関に相談しましょう。

乳房再建後の定期検査

乳房再建術の有無にかかわらず、乳がんの手術後は再発がないか確認するためにフォローアップを行います。インプラントを使った再建を行ったあとは、インプラントの破損や拘縮がないかを確認する目的で2年に1回程度、超音波検査を行います。非常に稀なものの、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫という悪性腫瘍になるリスクもあります。このようなトラブルがないかをチェックするために定期的なフォローが必要です。

「乳がんの再建(乳房再建術)」についてよくある質問

ここまで乳がんの再建(乳房再建術)について紹介しました。ここでは「乳がんの再建(乳房再建術)」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

乳房再建術はいつでもできるのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

乳房再建術は乳房の全摘術と同じタイミングで行うことも、がん治療が落ち着いてから後日行うこともできます。がんが進行している場合や全身状態によっては、後日がん治療や全身状態が落ち着いてからの手術が望ましい場合があります。担当医とよく相談してご自身に合った再建方法を選びましょう。

編集部まとめ

乳房全切除を行った場合の乳房再建術についてご紹介しました。乳房再建術はがん治療には必須の治療ではありませんが、日常生活の快適さや精神的な安定につながることが期待できます。乳房再建術を検討している方は、担当医に相談してみましょう。ご自身に合った方法を見つけるために、メリット・デメリットを理解したうえで、専門医としっかり話し合うことが大切です。

「乳がん」と関連する病気

「乳がん」と関連する病気は1個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

  • 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)
遺伝性乳癌卵巣がん症候群の場合は、乳がんや卵巣がんになるリスクが高くなります。この病気がある場合は、予防的な乳房切除や卵巣切除を保険適用で行うことができます。

「乳がん」と関連する症状

「乳がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください

関連する症状

  • 乳房のしこり
  • 乳頭からの血性分泌
  • 乳房の変形
  • 皮膚の赤み
  • 脇のリンパ節の腫れ
乳がんになった場合、これらの症状に気が付くことがあります。症状があれば、早めに乳腺科を受診し相談しましょう。

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