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「びまん型胃がん」の症状や原因・胃がんとの違いはご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2025/09/09
「びまん型胃がん」の症状や原因・胃がんとの違いはご存知ですか?医師が解説!
びまん型胃がんとは?メディカルドック監修医がびまん型胃がんと胃がんとの違い・症状・原因・なりやすい人の特徴・検査法・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「びまん型胃がん」とは?

びまん性胃がんとは、「スキルス胃がん」とも呼ばれている胃がんです。胃の壁にしみこむように広がっていくタイプのがんであり、進行が早く悪性度が高いと言われています。内視鏡で発見しづらい場合もあり、症状も出づらいことから気がついたときにはすでに進行して転移や腹膜播種をきたしていることも多いです。 2021年の統計では、胃がんの罹患数は男性で4位、女性で4位と日本人で比較的多いがんと言えます。この胃がんの中でびまん性胃がんの頻度は10~15%程度と言われています。前述したように、びまん性胃がんは発見された時には進行していることが多く、決して予後の良いがんとは言えません。しかし、早期で発見できれば生存率も高いと言われています。 びまん性胃がん(スキルス胃がん)について詳しい知識を得ることで、早期発見・治療につながる可能性があります。

「びまん型胃がん」と「胃がん」の違いとは?

胃がんは、胃の内側の粘膜から発生するがんです。胃の粘膜に潰瘍や腫瘍を形成しやすいため、内視鏡検査で見つかりやすいです。また、組織型は、分化型腺がんが多いと言われ、進行は比較的ゆっくりであることが多いです。早期に発見され治療されれば予後は比較的良好です。胃がんはピロリ菌の感染がリスクとなるため、除菌を行うことが勧められます。通常胃がんは50歳代以降で増加する傾向で、中高年で多いがんです。 一方びまん性胃がんは、胃の壁を硬く厚くしながら、周囲に浸潤(広がっていく)という特徴があります。胃がんと比較して、内視鏡検査で発見しづらいがんです。組織型は低分化腺がんや印環細胞がんが多いと言われています。一般的に未分化型の方が進行が早いです。すべてのびまん性胃がんが未分化型の組織型であるわけではありませんが、びまん性胃がんは進行が早い事が多く、発見されるときには周囲に広がっていたり、転移をしていたりする場合が少なくありません。このため、予後は不良です。胃がんと異なり、ピロリ菌の関与は弱い または明確ではないとされています。びまん性胃がんは、比較的若年層で発症することが多く、若年でも胃の調子が悪い場合は注意が必要です。

びまん型胃がんの主な症状

びまん性胃がんは、初期では症状があまりないことが多いです。進行すると下記のような症状がみられます。しかし、いずれもびまん性胃がんのみで起こる症状ではありません。

胃痛

胃がんや胃炎、胃潰瘍と同様にみぞおち辺りの痛み、胃痛がみられます。急性胃炎などで胃痛がみられる場合には、消化の良いものを食べて様子を見ると1週間程度で回復することが多いですが、数週間にわたり胃痛などの胃の不調がみられる場合には消化器内科を受診しましょう。

嘔気・食欲低下

胃痛の他にも、おなかの不快感や食欲低下、胸やけ、吐き気などがみられる場合があります。びまん性胃がんでは胃の壁にがんが広がるため動きが悪くなったり、胃の伸縮性が失われることでこれらの症状が出やすいと考えられます。しかし、これらの症状は、びまん性胃がん以外でも起こる症状であるため、注意が必要です。

体重減少

胃の動きが悪くなったり、がんが広がって腹膜播種をきたし腹水が貯留することでお腹が張ると、食事がとれなくなるため体重が減少します。また、がんが進行することでがんがエネルギーを消費し、食事を摂っていても体重が減少することもあります。体重減少が続く場合には何か大きな病気が隠れている可能性が高いです。早めに消化器内科を受診しましょう。

びまん型胃がんの主な原因

びまん性胃がんの原因については、未だにはっきりと解明されていません。しかし、現在までの報告で考えられる原因について解説いたします。

遺伝子の変異

びまん性胃がんが発症する原因の一つとして、遺伝子変異が関与していると報告されています。この中の一つで、家族性にびまん性胃がんが多く発症する遺伝性びまん性胃がんと呼ばれる病気は、CDH1(E-カドヘリン)遺伝子の変異が原因となり、常染色体優性の遺伝形式で遺伝することが分かっています。 遺伝性びまん性胃がんは、30歳代後半~40歳代前半の比較的若年で胃がんを発症し、80歳までの胃がんになる可能性は男女ともに80%程度と推定されています。この家族性のCDH1変異は欧米に多く、日本では少ないとされています。しかし、2020年に日本人におけるCDH1遺伝子の病的バリアントがある遺伝性びまん性胃がんの家系の症例報告がされており 、今後の解明が待たれます。①びまん性胃がんと診断され、一度の近親者または、二度の近親者で50歳以前にびまん性胃がんと診断された人が2人以上いる。②一度の近親者(両親、兄弟、子供)または二度の近親者(祖父母、叔父、叔母、おい、めい、孫)において、びまん性胃がんと診断された人が3人以上いる。このうちいずれかの場合、遺伝性びまん性胃がんと診断されます。

飲酒

胃がん全体での危険因子としてアルコールの多飲が挙げられます。男性において、1日1合以上の飲酒(エタノール摂取量で23g/日以上)の場合、1合未満の人と比較して有意に胃がんの発症率が上がるとされています。びまん性胃がんに限っての報告ではありませんが、適量の飲酒でとどめましょう。

喫煙

喫煙は胃がん全体での危険因子です。喫煙者は非喫煙者と比較して胃がんのリスクが男性で1.8倍、女性で1.2倍上昇したと報告されています。これは、胃がん全体での報告ですが、びまん性胃がんであっても同様に気をつけましょう。

塩蔵食品

日本人では塩分の摂取量が多いです。塩蔵食品と言われる漬物、魚の干物、たらこなどの魚卵の摂取量が多いと、胃がんのリスクとなると報告されています。胃がん全体での危険因子ではありますが、びまん性胃がんにおいても塩蔵食品については控えめにしましょう。

びまん型胃がんになりやすい人の特徴

家族歴

びまん性胃がんは、遺伝子変異の関与が考えられています。家族の中にびまん性胃がんと診断された方がいる場合、気を付けて胃がん検診などを若いうちから早めに受診することが重要です。また、胃がんの方が多く遺伝の関与が強く考えられる場合には、消化器内科で相談をしてみましょう。

大酒家

アルコール多飲はびまん性胃がんに限らず、胃がんの危険因子となります。一日平均日本酒1合未満(女性では半量)での適量でのアルコール摂取を心がけましょう。

喫煙者

喫煙は、胃がんのリスクとなっています。びまん性胃がんでもリスクであるかは、はっきりしていません。しかし、胃がんに限らず、さまざまながんの危険因子であり禁煙が勧められます。

びまん型胃がんの検査法

上部消化管内視鏡検査

口や鼻から内視鏡を入れ、胃の内部を直接観察する検査です。胃の粘膜を直接観察し、胃がんなどの病変の場所や形状を確認します。また、病変の一部を採取し(生検し)、病理検査を行うことで胃がんの診断をすることができます。しかし、びまん性胃がんにおいては、胃粘膜の下でがんの病変が進行するためわかりづらいことも多いです。

バリウム検査

まず初めに発泡剤を飲み、その後にバリウムを飲んでレントゲン撮影を行います。体位を変えながら、バリウムを胃の粘膜に広げ撮影します。バリウム検査では、内視鏡検査と同様に胃の病変を見つけることが可能です。また、びまん性胃がんでは胃の拡張が悪くなることが多く、バリウム検査で胃の拡張の悪さからびまん性胃がんが発見される場合もあります。

画像検査(CT、MRI、PET)

胃の周囲へのがんの進展や遠隔転移を調べるために、有効な検査です。CT検査ではX線を用い、MRIでは磁気を用いて体の断面を撮影して画像にします。造影剤を使用することにより、より詳細が分かることも多いです。 また、PET検査では放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射し、がん細胞がこのブドウ糖を取り込むことを利用してブドウ糖の分布を調べる検査です。CT、MRIではっきりしなかった転移などの病変を詳しく調べることができます。

びまん型胃がんの治療法

胃がん同様に、びまん性胃がんの初期であれば外科的治療を行います。しかし、びまん性胃がんは進行がんでで発見されることが多いため、薬物療法を行う場合が多いです。

外科的手術

転移がなく、病変の範囲が手術で取りきれる場合には、手術により病変を取りきります。びまん性胃がんでは初期で発見されることが少ないですが、手術で取りきれる場合の予後は良好です。手術では、がんと胃の一部または、胃すべてを取り除きます。 また、家族歴や遺伝子検査などから遺伝性びまん性胃がんであると診断された場合には、将来的に胃がんの発症のリスクが高いため、予防的に胃全摘術を選択することもあります。

薬物療法

遠隔転移があったり、手術で胃がんの病変を取りきることが難しい場合には、薬物療法が選択されます。薬物療法のみでがんを完全に取り除くことは難しいです。しかし、薬物療法を行うことでがんの進行を抑えたり、症状を緩和させる効果がある事が分かっています。薬物療法がおこなえるかどうかは、患者さんの状態や、がんの状況などにより決定されます。ご自身の治療については、主治医に確認をしてみましょう。

緩和ケア・支持療法

緩和ケアとは、がんに伴う体の痛みや不安などの精神的なつらさを和らげるための治療です。支持療法は、がんそのものによるつらい症状や治療に伴ってみられるつらい副作用を軽減するための治療を指します。がんの治療をする際には、さまざまな体のつらさや不安が起こることがあります。このつらさを一人で抱え込まずに、周囲の人や医療スタッフに相談をしてみましょう。

「びまん型胃がん」についてよくある質問

ここまでびまん型胃がんを紹介しました。ここでは「びまん型胃がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

びまん性胃がん(スキルス胃がん)と遺伝性びまん性胃がんの違いについて教えてください。

和田 蔵人和田 蔵人 医師

びまん性胃がん(スキルス胃がん)の中で、CDH1遺伝子の変異があり、常染色体優性遺伝され高率にびまん性胃がんを発症するものが遺伝性びまん性胃がんです。日本では少ないと考えられていますが、常染色体優性遺伝であるため、親がこの遺伝子を持つ場合、半数で発症するため注意が必要です。遺伝性びまん性胃がんでは、家族歴が非常に重要で、一度近親者(両親、兄弟、子供)または、二度近親者(祖父母、叔父・叔母、おい、めい、孫)にびまん性胃がんと診断された方が多くいる場合に疑われます。強く疑われる場合には遺伝学的検査を行いますが、まずは心配であれば消化器内科で相談をしましょう。

編集部まとめ びまん性胃がんは早期発見が大切。消化器内科で相談を

びまん性胃がんは、なかなか早期で診断されにくい病気です。家族歴などあり心配であれば、若いうちから検診を行ったり、消化器内科で相談をしてみることが大切です。早期での発見では予後は良いと言われていますが、なかなか早期での発見に至らないことが問題となっています。症状などから気になる事があれば消化器内科で相談しましょう。

「びまん型胃がん」と関連する病気

「びまん型胃がん」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

びまん性胃がんは初期では症状が乏しく、分かりづらいがんです。また、症状が出ても、症状だけでは上記の様な病気との区別がつきづらいです。気になる症状があれば消化器内科を受診しましょう。

「びまん型胃がん」と関連する症状

「びまん型胃がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

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  • みぞおちの痛み
  • 嘔気
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • おなかの張り
これらの症状は消化器疾患でよく起こる症状です。すぐに落ち着けばよいですが、続く場合には、何か病気が隠れている可能性が高いです。早めに消化器内科を受診しましょう。

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