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「胃がん」を発症すると「皮膚にいぼ」ができるの?医師が徹底解説!

 公開日:2025/09/01
「胃がん」を発症すると「皮膚にいぼ」ができるの?医師が徹底解説!
胃がんを発症すると皮膚にいぼができるの?Medical DOC監修医が胃がんを発症すると皮膚にいぼができる原因・初期症状・なりやすい人の特徴・予防法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「胃がん」とは?

胃は体のみぞおちの辺りにある袋状の臓器です。この胃の粘膜にがんが発生したものが胃がんです。2021年のデータでは、胃がんは男性で4位、女性で4位、全体で3位の罹患数となっています。また、2023年の統計ではがんによる死亡者数の中で胃がんは全体で4位です。胃がんは日本人の中で比較的多いがんと言えます。 胃がんは早期で治療をした場合、生存率は良好ですが、進行すると治療が難しくなります。なるべく早期に発見し、治療をすることが重要です。 胃がんを早めに発見するために症状や徴候について解説いたします。

胃がんを発症すると皮膚にいぼができるの?

胃がんに限らず内臓の悪性腫瘍(がん)と関連して特有の皮膚症状がみられることがあります。このような皮膚の症状は、「悪性腫瘍のデルマドローム」として知られています。いろいろな皮膚の所見がみられ、中には皮膚にいぼのようなものができることもあります。

胃がんの前兆症状として皮膚にいぼができることはあるの?

胃がんと関連する皮膚病変として、SisterMaryJoseph結節や、悪性表皮腫、レーザー・トレラー徴候、皮膚筋炎などが挙げられます。この中でいぼ状(皮膚の突出した病変)の所見がみられるものとして、SisterMaryJoseph結節、レーザー・トレラー徴候が考えられます。 SisterMaryJoseph結節は臍のくぼみにみられる転移性の皮膚病変です。臍は皮下脂肪と筋層がないため、腹膜転移から直接がんが浸潤しやすいと考えらえています。一般的には、このような皮膚転移がみられると予後は不良です。 レーザー・トレラー徴候は、脂漏性角化症が急速に拡大する状態です。脂漏性角化症自体は、中年以降でよくみられる良性の皮膚病変です。褐色から黒褐色の隆起したかゆみを伴ういぼ状の病変で、加齢現象の一つとして考えられています。この病変が数週間から数か月の間に急速に大きく、数が増える現象がレーザー・トレラー徴候です。この病変はがんの治療後に消退するという報告もあります。多くはがんの発見前後1年以内にみられると言われています。

胃がんを発症すると皮膚にいぼができる原因

胃がんに関連して皮膚のいぼができる原因については、まだ分かっていないことも多いです。現在の段階で考えられる原因について解説します。

がんが直接的に皮膚に影響するもの

SisterMaryJoseph結節は、がんの皮膚への転移です。このように内臓のがんが皮膚に転移することは非常に珍しいですが、胃がんでみられることもあります。

がんから放出されるサイトカイン

内臓にがんができると、がんからサイトカインや成長因子を放出します。このサイトカインや成長因子が表皮角化細胞を刺激し、増殖することでレーザー・トレラー徴候がみられるようになると考えられています。

胃がんの前兆となる初期症状

胃がんは初期では症状が何もないことが多いです。しかし徐々に進行すると以下のような症状がみられることがあります。

みぞおちの痛み

胃はみぞおちの辺りに位置しているため、胃がんが発生し、進行すると痛みが出ることもあります。しかし、症状がないこともあるため、気をつけなければなりません。また、みぞおちの痛みがあっても、すべてが胃がんであるわけではなく、胃炎や胃潰瘍など他の病気でも同じような症状がみられます。

胃の不快感・吐き気

胃がんができると、胃の動きが悪くなることで不快感や吐き気が出ることがあります。胸やけなどの症状がみられることも少なくありません。しかし、他の消化器系の病気でもみられる症状のため、区別はつきません。不快感や吐き気が持続する場合には、消化器内科を受診しましょう。

食欲不振

胃がんにより痛みや、不快感、吐き気が持続すると次第に食欲が低下することも多いです。食欲が低下し、体重が減少することもあります。食欲が低下している場合、胃がんをはじめとする消化器系の病気の可能性があります。続く場合には消化器内科で相談をしましょう。

黒い便

胃がんの表面から、出血してたまった血液が胃酸により酸化され黒くなることがあります。これは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍でもみられます。便が黒く、生ぐさい、海苔の佃煮のような性状となった場合、早めに消化器内科を受診しましょう。

貧血

胃がんからの出血がじわじわと持続している場合には、なかなか出血に気が付かないこともあります。たまたま行った血液検査で貧血に気が付くこともあれば、貧血が進行してだるさやめまいなどの症状がみられることも考えられます。貧血の進行は、消化器系の病気による可能性があります。若い女性では生理による出血で貧血がみられますが、閉経後の女性や男性での貧血は注意が必要です。貧血がみられた場合には、内科で相談をしてみましょう。

胃がんになりやすい人の特徴

ピロリ菌に感染している人

これまでの研究から、ピロリ菌の感染者では胃がんのリスクが5倍となると報告されています。ピロリ菌の感染は、胃がんの重大なリスクと言えます。 ピロリ菌を除菌すると、有意に胃がんの発生リスクや再発のリスクは低下することが分かっています。ピロリ菌の感染が分かった場合、消化器内科で相談をしてみましょう。

大酒家

飲酒は胃がんのリスクとなります。男性で1日当たり日本酒1合(エタノール換算23g/日)以上飲酒をする人では、胃がんのリスクが上昇することが分かりました。このリスクは量が増加すると、リスクも上昇することが分かっています。女性では、この傾向がみられませんでしたが、女性では飲酒量が多くないことから有意な差がみられなかったと考えられており、女性も同様に適量での飲酒がすすめられます。

喫煙者

喫煙者では、非喫煙者と比較して胃がんのリスクが上昇することが分かっています。非喫煙者と比較して、喫煙者では1.6倍胃がんになるリスクが増加すると報告されています。

塩蔵食品の摂取が多い人

塩魚や干物、たらこなどの魚卵といった塩蔵食品は、塩分が多いというだけではなく、塩蔵の過程で生成されるニトロソ化合物が胃がんのリスクをあげると考えられています。このように、塩蔵食品の摂取量が多い人では、胃がんのリスクとなるため注意が必要です。

胃がんを予防する可能性の高い食べ物・食生活

上記の様に胃がんのリスクとなる習慣がいろいろと判明しています。このため、胃がんを予防するための生活習慣としては、このようなリスクとなるような習慣をなるべく防ぐことと考えられます。 ・禁煙すること ・1日1合(エタノール換算で23g/日)以下の適量でのアルコール摂取 ・塩蔵食品はなるべく控える ・野菜・果物はなるべく食べ、バランスの良い食事を ・適度な運動習慣を これらのことを実践してなるべく胃がんを予防できる生活習慣を身につけましょう。

胃がんの予防法

ピロリ菌除菌

ピロリ菌の感染は、胃がんの重大な危険因子です。また、ピロリ菌を除菌した場合には、このリスクが低下することが分かっています。ピロリ菌を除菌した群では、除菌しなかった群と比較してリスクが0.34と有意に低下することが報告されています。しかし、除菌が成功しても、胃がんを完全に防ぐことはできないため、定期的な検診も重要です。

乳酸菌OLL2716株(LG21)を含むヨーグルト・緑茶 など

乳酸菌OLL2716株(通称LG21)を含むヨーグルトを摂取することで、ピロリ菌の数を減らしたり、胃の炎症を抑えてくれる働きがあると報告されています。ピロリ菌の感染は胃がんの重大なリスクの一つです。このため、このヨーグルトを摂取することが予防につながるのではないかと期待されていますが、効果は限定的です。 また、緑茶も非喫煙者では緑茶の胃がんの予防効果が期待できるという結果でしたが、現在のところ効果は、はっきりとしていません。 まずは、上記に挙げたような予防に効果的な生活習慣を試すことが勧められます。

胃がん検診

胃がんを予防するというわけではありませんが、早期に発見することが大変重要と言えます。特にピロリ菌に感染している人や、除菌後の人などでは定期的に胃がん検診で胃がんが発生していないかを調べる様にしましょう。

「胃がんの前兆といぼ」についてよくある質問

ここまで胃がんの前兆といぼについて紹介しました。ここでは「胃がんの前兆といぼ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんによるいぼはどんな特徴がありますか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

へそのくぼみに結節ができる、SisterMaryJoseph結節や、褐色~黒褐色のいぼが全身に急激に増えるレーザー・トレラー徴候などが考えられます。これらの病変は胃がんのみでみられるわけではありません。気になる症状が現れた場合には、まず皮膚科で相談をしましょう。

老人性イボを発症した場合、胃がんを疑った方がいいですか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

老人性いぼは「脂漏性角化症」と言われています。この「脂漏性角化症」自体は中年以降の方でよくみられる良性の病気です。しかし、数週間から数か月で急激に大きくなったり、数が増えたりする場合には注意が必要です。悪性疾患に伴う所見かもしれません。また、この症状は胃がんに限ってみられるわけではありません。 まずは、脂漏性角化症が急に増えたりと気になる場合には皮膚科で相談をしてみましょう。

編集部まとめ 老人性いぼが急に増える場合、がんの合併の可能性も。

胃がんは日本において、決して少ない病気ではありません。治療成績が向上し、早期で発見、治療ができれば、予後は比較的良好です。このため、早期に発見するための症状や、皮膚所見について解説いたしました。どの症状も、胃がんのみでみられるわけではありません。しかし、異常に気がついたときには早めに相談をすることが重要です。 特に皮膚の所見として、通常の老人でよくみられる脂漏性角化症が急速に増大、増加するレーザー・トレラー徴候についてもお話ししました。頻繁にみられる所見ではありませんが、気になるところがあれば、早めに医療機関を受診して相談をしましょう。

「胃がん」と関連する病気

「胃がん」と関連する病気は5個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

皮膚の症状も、胃腸の症状に関しても、胃がんの特異的な症状はありません。気になる症状が続く時には早めに消化器内科を受診すると良いでしょう。

「胃がん」と関連する症状

「胃がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

胃がんは初期では症状がないことが多いです。進行すると上記の様な症状がみられることもあります。症状が長く続く時には消化器内科で相談をしましょう。

この記事の監修医師