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「乳がんエコー画像」で「悪性を疑うしこりの特徴」はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2025/07/31
乳がんのエコー画像における悪性の特徴とは?Medical DOC監修医が乳腺エコー検査・症状・初期症状・原因・治療法やセルフチェック法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

「乳がん」とは?

乳がんとは乳腺から発生する悪性腫瘍です。日本では女性の9人に1人がなると報告されています。乳房のしこりをきっかけに乳がんが発見されることがあります。定期的な乳がん検診によって、症状が出る前の早い段階で発見することができます。乳がんは早期に発見し、早期に治療すれば、根治を目指すことができます。

乳がんのエコー画像における悪性の特徴

乳腺エコー検査によって乳がんを発見することができます。エコー画像で悪性を疑うしこりの特徴を紹介します。

いびつな形の腫瘤

乳がんの場合、腫瘤のかたちが多角形や不整形をしていることが多いです。がんは周囲の正常な組織に浸潤するために、いびつな形になります。

腫瘤の境界が不明瞭

乳がんはしこりの境界線が不明瞭になります。これもがんが周りの組織に浸潤していくため、輪郭があいまいになります。逆に良性腫瘍の場合は、周りの組織を押しのけて育つため、くっきりとした輪郭になります。

腫瘤の内部が不均質

腫瘤内部の白黒のコントラストが不均質であることも悪性を疑う特徴です。しこりの中で線維化、出血や壊死などが混在しているためです。

乳腺境界線の断裂

エコーでは乳腺の境界線が見えます。境界線が途切れていることも悪性を疑う特徴です。乳がんが乳腺の境界を突き破り、周囲の脂肪組織に浸潤していることを示しています。

腫瘤の周りに白い輪(ハロー)がある

腫瘤の周りに白い輪(ハロー)があることも乳がんを疑う特徴です。これは乳がんの周りの組織が硬く線維化していることを示しています。

乳腺エコー検査(乳房超音波検査) とは?

乳腺エコー検査はどのような検査なのかご紹介します。

検査内容

乳腺エコー検査は乳房に超音波をあて、しこりの有無や性状を調べる検査です。痛みや被ばくの心配もなく体への負担が少ないです。妊娠中や授乳中の女性も受けることができます。

検査の流れ

上半身の洋服を脱ぎ、ベッドに仰向けに寝た状態で検査を行います。検査する側の腕を上げ、ゼリーをつけたプローブで乳房や周囲のリンパ節を観察します。両側の検査を行い、ゼリーをふき取って検査終了です。検査時間は20分程度です。

検査費用

乳がん検診の場合は、自費診療です。施設ごとに多少の差はありますが、4000円程度です。症状や検診異常があり、医師の指示で行う場合は保険適用となります。

検査前後の注意点

食事や入浴などの制限は特にありません。衣服を脱ぐ必要があるので、着脱しやすい服がよいでしょう。

乳がんの代表的な症状

乳がんの代表的な症状についてご紹介します。

乳房のしこり

乳房にしこりを触れることをきっかけに乳がんに気が付くことがあります。乳がんによるしこりはいびつな形で、硬く、動きが悪いという特徴があります。乳房に硬いしこりを感じたときは、早めに乳腺科を受診しましょう。

乳房の変形

しこりが大きくなる、または皮膚に近い場合に乳房の盛り上がりやくぼみに気が付くことがあります。左右差や形の変化が生じた場合は、乳がんの可能性があるため、早めに乳腺科を受診しましょう。

乳房の皮膚の変化

乳がんが皮膚に露出した場合、おできのように赤いしこりができます。炎症性乳がんでは乳房の広い範囲で赤く変化し、硬く、オレンジの皮のような皮膚になります。乳房パジェット病では乳輪に赤みやただれが認められます。このような乳房の皮膚の変化に気が付いた場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。

乳がんの前兆となる初期症状

乳がんの前兆となる初期症状について紹介します。早期の乳がんでは何の症状の現れないこともあります。乳がんによる症状は乳腺の良性疾患の症状とも似ています。気になることがあれば乳腺科を受診しましょう。

胸に触ってわかる硬い部分がある

乳がんの初期症状として最も多いのが乳房のしこりを触れることです。乳房のしこりは良性の乳腺腫瘍でもよくみられます。乳がんは痛みを感じないことが多いです。乳房にしこりを触れる場合は、乳腺科の受診をおすすめします。

乳頭からの血性分泌

下着の茶色い汚れや乳頭からの赤や茶色の分泌物を自覚することがあります。乳管内乳頭腫などの良性の乳腺腫瘍でも同様の症状があります。乳がんの可能性があるため、乳腺科を受診しましょう。

脇のリンパ節の腫れ

脇のリンパ節がはれているのを自覚することがあります。乳がんはまず脇のリンパ節に転移することが多く、リンパ節が大きくなることがあります。リンパ節の腫れは、がんの転移以外でも起こることがあります。症状が続く場合は、乳腺科を受診しましょう。

乳がんの主な原因

乳がんは環境的な要因や遺伝的な要因が関係しています。

女性ホルモンが分泌される期間が長い

乳がんの発症にはエストロゲンという女性ホルモンが関係しています。エストロゲンへさらされている期間が長いほど乳がんを発症するリスクが高まります。初経が早い、閉経後遅い、または出産や授乳の経験が少ないほどリスクが高まります。乳がん検診を定期的に受けることが大切です。

生活習慣

閉経後の肥満が乳がんの発症リスクになるとわかっています。太りすぎないように適切な食習慣と運動習慣を心がけることが大切です。また、喫煙や過度のアルコール摂取も乳がんの原因となるため、気を付けましょう。

遺伝

乳がん全体の5~10%が遺伝性であるといわれています。 血のつながったご家族に乳がんの患者さんがいる場合、乳がんになるリスクが高まります。遺伝的に乳がんになりやすい可能性がある方は、特に乳がん検診を行うことが大切です。

乳がんの主な治療法

乳がんの治療は局所治療(手術・放射線)と全身治療(薬物)を組み合わせて行います。

手術療法

手術は乳腺外科に入院して行います。乳がんの手術は大きく分けて、乳房部分切除術と乳房全切除術があります。乳房部分切除術の場合は4日程度、乳房全切除術は1週間程度の入院期間です。乳房全切除術と同時に乳房再建を行う場合は2週間程度の入院が必要になることがあります。

放射線療法

放射線治療は放射線治療科に通院して行います。平日に連続して4~6週間通院します。 乳房部分切除術を受けた場合、再発リスクを減らすために温存した乳房に放射線照射を行います。乳房全切除術を受けた場合でも、リンパ節に転移があった場合、放射線治療が必要となることがあります。

薬物療法

乳がんの薬物療法は内分泌療法、化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤などがあります。乳がんのサブタイプや進行度に合わせて、どの治療を行うか決定します。薬物療法は、再発リスクを下げる、手術前にしこりを縮小させる、遠隔転移している場合には延命や症状緩和の目的で行われます。薬物療法は基本的に乳腺科に通院して行います。

乳がんのセルフチェック法

ご自身の乳房を気軽に観察する習慣(ブレストアウェアネス)があると、変化に早く気が付くことができます。セルフチェックのポイントをご紹介します。

見る

着替えや入浴の際に、乳房を気軽に観察してみましょう。乳房を見る習慣があると、左右差はないか、くぼみはないか、ただれや色の変化はないか気が付くことがあります。

触る

着替えや入浴の際に、乳房に触れてみましょう。指の腹で触れるとよいでしょう。しこりを探そうとせずに、日常的に気軽に触るようにしましょう。上体を起こした姿勢や仰向けに寝た姿勢で行ってみましょう。

つまむ

乳頭をつまみ、乳頭から液体が出てくるか見てみましょう。分泌物がある場合、色も観察しましょう。乳頭からの分泌物があると下着に汚れが付着していることがあります。赤や茶色の分泌物がある場合は悪性のこともあるため、早めに乳腺科を受診しましょう。

「乳がんのエコー画像における悪性の特徴」についてよくある質問

ここまで乳がんのエコー画像における悪性の特徴などを紹介しました。ここでは「乳がんのエコー画像における悪性の特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

エコー検査でどのように良性と悪性を見分けるのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

エコー検査で腫瘤がある場合、良性と悪性を見分けるためにいくつかポイントがあります。腫瘤の形、境界、内部の均質性、ハローの有無、縦方向への成長、乳腺境界線が途切れていないか等を見ています。これらの特徴を総合的に見て悪性の可能性について判断します。

編集部まとめ

乳がんのエコー画像の特徴について紹介しました。悪性を疑う特徴を複数のポイントで評価し、総合的に良悪性を判断します。悪性を疑う場合、組織診断などの精密検査を行います。定期的な乳がん検診で、症状が出る前に乳がんを早い段階で発見することができます。日頃の乳房のセルフチェック(ブレストアウェアネス)も大切です。

「乳がん」と関連する病気

「乳がん」と関連する病気は1個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

  • 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)
遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合は、乳がんや卵巣がんになるリスクが高いです。この場合、予防的な乳房切除を保険適用で受けることができます。

「乳がん」と関連する症状

「乳がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房のしこり
  • 乳頭からの血性分泌
  • 乳房の変形
  • 乳房の皮膚の変化
  • 脇のリンパ節の腫れ
これらは乳がんの代表的な症状です。しこりや血性乳頭分泌は良性の乳腺疾患でも自覚することがあります。症状があれば、早めに乳腺科を受診しましょう。

この記事の監修医師