「膵臓がん」を発症すると「腰にどんな痛み」を感じる?痛みを感じる原因も医師が解説!
公開日:2025/08/20

膵臓がんを発症すると腰にどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医が膵臓がんを発症すると腰のどこに痛みを感じるか・ステージ分類・初期症状・原因などを解説します。気になる痛みがある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
岡本 彩那(淀川キリスト教病院)
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兵庫医科大学医学部医学科卒業後、沖縄県浦添総合病院にて2年間研修 / 兵庫医科大学救命センターで3年半三次救命に従事、近大病院消化器内科にて勤務 /その後、現在は淀川キリスト教病院消化器内科に勤務 / 専門は消化器内科胆膵分野
目次 -INDEX-
「膵臓がん」とは?
膵臓がんとはどのような病気でしょうか。 膵臓とはお腹の中、胃や十二指腸の裏にある臓器で、いろいろなホルモンと出したり、血糖を下げたり、消化液を作る働きを担います。その膵臓に発生するがんを膵臓がんと言います。膵臓がんは膵臓がある位置により早期発見しづらく、また進行が早いため見つかった時点で進行がんとなっていることも多い病気です。ここでは膵臓がんについて解説していきます。膵臓がんを発症すると、腰にどんな痛みを感じる?
膵臓がんができた場合、痛みを感じることがあります。お腹、とくに上の方が痛むことも多いですが、膵臓はお腹の中でも背中側に位置しているため、背中や腰に痛みを感じることがあります。鈍い痛み(鈍痛)
膵臓がんになった場合は膵臓がんが回りの組織、臓器や神経などを圧迫することで、腫瘍自体により痛みが出ることがあります。この場合は重く、鈍いような痛み、鈍痛と感じます。がんそのものによる痛みの場合は姿勢や動きなどで大きくは変わらず、常に続く痛みとして表れることが多いでしょう。上腹部~背中、腰にかけての痛み
膵臓はお腹の上の方、胃や十二指腸の裏あたりに位置します。そのため膵臓がんによる痛みが出る場合は、上腹部や背中、腰に痛みが出ることがあります。また、がんが神経を圧迫した場合は肩などに痛みが出ることもあります(放散痛)。骨への転移による痛み(姿勢・動作など)
膵臓がんが背骨に転移し、痛みが出ている場合は姿勢や動作により痛みが悪化することがあります。ひどいときは起き上がるなどの動作でも強い痛みが出てしまうため、動けなくなってしまいます。また、脊髄などの神経を圧迫することもあり、時には下肢にしびれなどの症状が出ることもあります。 通常は医療用麻薬などによる鎮痛などを行いますが、症状がひどい場合は症状を抑えるための放射線治療を行うこともあります。膵臓がんを発症すると、腰の左側に痛みを感じる原因
膵尾部がんによる痛み
膵臓はお腹の上の方で胃や腸の裏、つまり背中側に位置しています。腸に近いところから頭部、体部、尾部と分けられますが、膵尾部は身体の左側に位置します。そのため膵尾部がんができてしまい、それによる痛みの場合は左のお腹や背中、腰に痛みが出ることがあります。膵臓がんを発症すると、腰の右側に痛みを感じる原因
膵頭部がんによる痛み
膵臓がんが膵頭部側に出来た場合、がんの位置は身体の右側になります。膵臓がんが進行し、がんによる痛みが出てきた場合、膵頭部がんであれば身体の右側に痛みが出ることがあります。またその他、膵臓の周囲には大きな血管や神経が走っています。がんがこの神経に及んでしまうとそれによる痛みが出ることがありますが、この痛みが右の腰の痛みとして感じられることもあります。膵頭部がんによる胆管閉塞に伴う痛み
膵頭部(十二指腸、膵管の出口に近い方)には肝臓からの消化液を腸に流す「胆管」という管が通っています。膵臓がんがこの膵頭部にできた場合、この胆管を詰めることがあります。 その場合は肝臓からの消化液(胆汁)が流れなくなって痛みが出たり、胆汁がよどんだところに感染を起こしたり(胆管炎)することがあります。その場合、お腹の痛みや時には右の背中〜腰に痛みが出ることがあります。膵臓がんを発症し、腰に痛みを感じる場合のステージ分類
StageⅡ以上で腰に痛みを感じるかも
膵臓がんは早期癌の場合、症状がほぼないということが多く、たまたま何かの検査を行って見つかったということがほとんどです。早期癌から進行癌となったとしても、StageⅠの場合では膵臓内にがんがとどまっており転移もないため無症状のことがほとんどです。 膵臓の外にがんが広がった場合は痛みや黄疸などの症状を起こすことがありますが、この時点でStageⅡになっています。ただし、StageⅡでも自覚症状がないということも多く、さらに進行して初めて痛みなどの症状が出てきて、がんに気づく、ということも決して稀ではありません。膵臓がんの前兆となる初期症状
膵臓がんは早期、もしくは進行がんでも比較的Stageが早いものについては自覚症状がないことが多いがんです。全く症状がなく、気づいたときには末期(StageⅣ)だったということも多いでしょう。ただし、膵癌に特徴的とは言い難いですが、自覚症状が出ることもあります。ここでは膵がんの症状について解説していきます。高血糖、糖尿病の増悪
膵臓は身体の中で唯一血糖を下げる臓器です。そのため、膵臓が何らかの原因で弱ってしまうと血糖が上がり、糖尿病になることがあります。今まで何もなかったにもかかわらず、突然糖尿病になったり、糖尿病が急激に悪化した場合は膵臓がんが原因となっている可能性があります。 糖尿病の場合無症状であることもありますが、喉が渇く、飲水が増える、目がかすむ、頻尿などの症状が出ることがあります。通常内科、糖尿病内科を受診することになりますが、突然発症、急激な増悪で膵臓の病気が疑われた場合は、消化器内科への紹介、という形になるでしょう。黄疸、灰白色便(白っぽい便)
膵頭部(腸に近い部分)には胆管(肝臓の消化液(胆汁)を流す管)が走っています。ここに膵臓がんが出来た場合、この胆管を詰めてしまう事があります。 そうなると肝臓からの消化液が腸に流れなくなり、胆管に溜まります。胆管が溜まった胆汁により太くなったり、肝臓に負担がかかる事で肝機能障害がでたり、胆汁を外に出せなくなる事で黄疸が出てくる事もあります。また、胆汁が流れなくなる事で便の色が茶色くなくなり、白っぽくなる(灰白色便)事もあります。 このような症状が出た場合、膵臓がんや、そうで無くとも胆管になんらかの異常が出ている場合があります。特に黄疸はゆっくりと進行するため、毎日見ていると気づかない事があります。たまに会う人などに体、特に目が黄色いと言われれば、黄疸が出ている可能性があります。早めに内科、消化器内科を受診しましょう。下痢
膵臓は脂肪を分解する消化液を分泌する働きを担います。そのため、膵臓がんなどにより膵臓の機能が落ちてしまった場合は脂肪の分解が不十分となり、下痢、特に脂っぽい、脂が浮くような下痢となることがあります。 また、膵臓の機能が落ちることが原因でこのような下痢となるため、膵臓がんのリスクとなる慢性膵炎でも同様の症状を起こすことがあります。この場合でも膵臓がん発症のリスクともなりますし、症状がでているのであれば治療が必要となります。 これらの症状が続く場合は一度内科、消化器内科を受診するようにしましょう。体重減少
がんになった場合、体重がじょじょに落ちてくることがあります。これは悪液質とものによります。膵臓がんの場合でも体重が徐々に落ちてくることがありますが、悪液質以外にも食事がとれなくなったなどが一因となることもあります。ただし、膵臓がんで体重減少を認めた場合、がんはある程度進行していることが多いでしょう。 ダイエットなど何もしていないにもかかわらず体重が減ってきた、特に半年で5kg以上体重が落ちたなどがあれば一度内科を受診しましょう。膵臓がんの主な原因
膵臓がんは様々な要因が重なって起こります。そのため、特定の原因がある=膵臓がんになる、というわけではありません。 ここでは膵臓がんになってしまう可能性のある病気やリスクとなり得るものを解説します。喫煙
喫煙はさまざまながんと関連があり、喫煙することでがんを発症するリスクとなります。膵臓がんの場合も喫煙との関わりが報告されており、喫煙者の膵臓がん発症リスクは喫煙していないヒトに比べて1.6〜1.8倍となる、との報告もあります。慢性膵炎
膵臓がんのリスクとして慢性膵炎も挙げられます。慢性膵炎とは、膵臓に長期的に炎症が繰り返し起こって発症する病気です。この場合、膵臓の組織がゆっくりと壊され、膵臓に石や石灰化を認め、膵臓の機能も徐々に落ちてきます。そのため、腹痛や消化不良による下痢、血糖の上昇などさまざまな症状を引き起こす事もあります。また、慢性膵炎はそうでない人に比べて膵臓がんになりやすいといわれ、報告によっては膵臓がんの発症リスクが10倍以上ともいわれます。 原因としては自己免疫(自分の免疫が自分の臓器などを攻撃してしまう)や原因不明の特発性などもありますが、大半はお酒です。アルコールを大量に飲み続ける事で慢性膵炎になってしまう事があるのです。 慢性膵炎になった場合は元の膵臓に戻すことはできません。禁酒をしてこれ以上悪くならないようにすること、症状があれば治療を行いますが、無くとも膵臓がんができていないか定期的に検査を受ける事が重要なのです。膵嚢胞、膵嚢胞性病変
膵臓の中に嚢胞(水溜まりの袋)がある人は通常に比べて膵臓がんになりやすいと報告されており、要注意です。ただし、その嚢胞の中には、膵臓がんになる可能性のある良性腫瘍だった、という事もあります。代表的なものは膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と言うものです。これは粘液を中に作る良性腫瘍ですが、時間経過とともに大きくなり、中にポリープのようなものを作る事があります。これががんの卵となるのです。また、そのようなものを作っていない場合でも、腫瘍と別の場所に膵臓がんを作ってしまう可能性が高くなる、と言う報告もあります。そのため、この病気となった場合、定期的に検査を受け、がんができていないか監視する事が重要なのです。遺伝
膵臓がんは遺伝的な要素でもなりやすい場合があると言われています。血縁の中に膵臓がんの人がいると膵臓がんになりやすい、とされます。特に親、兄弟などの近親者に二人以上の膵臓がん患者がいる場合は「家族性膵がん」と言われます。 また、膵臓がんになりやすい遺伝子(BRCAなど)も報告されています。「膵臓がんの腰痛」についてよくある質問
ここまで膵臓がんの腰痛などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの腰痛」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膵臓がんの他に腰が痛くなるがんはありますか?
岡本 彩那 医師
あります。膵臓もですが、背中や腰に近い場所にがんができた場合は腰痛が出る事があります。腎臓がんや、時には大腸がんでも出る可能性はあります。また、別の場所のがんであっても、背骨に転移してしまった場合は転移による腰痛が出てくる事があります。
編集部まとめ
膵臓がんは初期では無症状のことが多く、症状が出た時には進行している、と言うことがほとんどです。特に腰の痛みが出ている場合はほぼ進行がん、場合によっては末期であったとしてもおかしくありません。 膵臓がんのリスクを少しでも減らし、定期的に検診などを受ける事、もし膵臓がんを疑うような症状がある場合には早めに病院を受診する事が重要です。「膵臓がん」と関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は6個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。糖代謝系の病気
「膵臓がん」と関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 背部痛
- 上腹部痛
- 下痢、脂肪便
- 黄疸
- 肝機能障害
- 腰痛
- 高血糖




