「肺がんステージ3の余命」はご存知ですか?ステージ3の症状も解説!【医師監修】

肺がんは、日本人のがんによる死亡原因の上位に位置する深刻な疾患であり、発見された時点ですでに進行しているケースも少なくありません。なかでもステージ3の肺がんは、がんが肺内にとどまらず周囲のリンパ節や組織に広がった状態を指し、治療はより複雑かつ集学的な対応が求められます。本記事では、ステージ3の肺がんについて、その種類や症状、余命の目安、治療法の選択肢に加え、日常生活での注意点などを解説します。肺がんという病気を正しく理解し、自分自身または大切な方のために適切な対処ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。

監修医師:
福田 滉仁(医師)
目次 -INDEX-
肺がんの種類

肺がんは大きく分けて非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つに大別されます。それぞれが異なる性質を持ち、診断や治療の方針にも違いがあります。
非小細胞肺がん
非小細胞肺がんは、肺がん全体の約85%を占める最も一般的ながんで、さらに以下のような組織型に分類されます。
- 腺がん
- 扁平上皮がん
- 大細胞がん
非小細胞肺がんは小細胞肺がんに比べて進行がゆっくりで、早期であれば手術による根治が可能な場合があります。
小細胞肺がん
小細胞肺がんは肺がんの約15%を占め、急速に増殖、転移する性質を持つ悪性度の高いがんです。ほとんどが喫煙と強く関連しており、診断時にはすでに転移しているケースも少なくありません。このがんは通常、手術ではなく化学療法と放射線療法を併用する治療が行われます。また、小細胞肺がんは再発が多く、長期予後は非小細胞肺がんよりも一般的に不良です。
ステージ3肺がんの症状

肺がんのステージ3とは、肺内の腫瘍が大きくなり周囲組織やリンパ節に広がっている状態で、遠隔転移はない病期です。症状は肺がんの種類によらず、腫瘍やリンパ節転移そのものによる症状とより進んだ臓器への転移による症状に大別できます。ステージ3では前者の症状、つまり肺や縦隔内で腫瘍が拡大したことによる症状が現れることが多くなります。
ステージ3非小細胞肺がんの症状
非小細胞肺がんのステージ3では、慢性的な咳や痰、それに血液が混じる血痰が続くことがあります。進行に伴い息苦しさ(呼吸困難)も自覚しやすくなります。肺門部にできた腫瘍や縦隔リンパ節への転移がある場合、隣接する神経を圧迫して声のかすれ(嗄声)が出現することがあります。
また、肺尖部にできた腫瘍では肩や腕に痛みやしびれが生じることもあります。胸膜や胸壁に浸潤すると胸の痛み(胸痛)を感じる場合があり、食道を圧迫すると飲み込みづらさ(嚥下障害)につながることもあります。ステージ3では縦隔内のリンパ節が腫れて上大静脈を圧迫するケースもあり、その場合は顔や首、腕のむくみや腫れ(上大静脈症候群)として症状が現れることがあります。
ステージ3小細胞肺がんの症状
小細胞肺がんのステージ3でも、基本的な症状は非小細胞肺がんと同様に咳や痰・血痰・息苦しさ・胸痛などが見られます。小細胞肺がんは肺門部など気管支に近い場所に発生しやすいため、咳や血痰が早期から現れ、徐々に悪化する場合があります。腫瘍が気管支を塞ぐほど大きくなると、強い息切れや繰り返す気管支炎・肺炎の原因にもなります。縦隔や鎖骨上のリンパ節まで転移が広がる症例では、上大静脈圧迫による顔面や頸部のむくみが起こりうる点も非小細胞肺がんと共通です。まれに小細胞肺がんでは腫瘍からホルモン様物質が異常分泌され、内分泌異常や神経筋症状を引き起こされることも知られています。
肺がんステージ3の余命

ステージ3の肺がんはステージ1や2に比べると治療後の生存率が低下し、完治できる可能性も下がります。ここでは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんそれぞれの予後の目安を解説します。
ステージ3非小細胞肺がんの余命
非小細胞肺がんステージ3の5年生存率は、28.2%と報告されています。ステージ1(74.6%)やステージ2(47.7%)に比べると大幅に低い値ですが、治療によって長期生存が可能な方も一定数存在することを示しています。
ステージ3小細胞肺がんの余命
小細胞肺がんステージ3の予後は非小細胞肺がん以上に厳しいものがあります。5年生存率は16.3%と報告されています。この数値からも、小細胞肺がんが予後不良ながんであることがわかります。とはいえ、限局型で集中的な治療を行った場合、なかには長期生存や寛解状態が得られる患者さんもいます。予後を判断する際には肺がんの種類やステージだけでなく、患者さん自身の体力や健康状態、治療への反応といった要因も大きく影響することに注意しましょう。
ステージ3肺がんの治療法

ステージ3の肺がんでは、手術療法もしくは放射線療法に、薬物療法を組み合わせた治療が行われるのが一般的です。治療方針は肺がんの組織型(非小細胞か小細胞か)や腫瘍の広がり方、患者さんの体力などによって決定されます。
手術療法
非小細胞肺がんでは、ステージ3Aの一部など腫瘍が局所に限られ、切除可能な場合は手術が検討されます。ステージ1や2に比べ手術の適応は限られますが、リンパ節転移が限局的であれば肺葉切除などの手術によって根治を目指すこともあります。実際にはステージ3期の一部までが手術でがんを取り切れる範囲とされ、対象となる場合は術前後に薬物療法を併用して再発予防を図ります。
薬物療法
小細胞肺がんの治療の中心は薬物療法です。小細胞肺がんのステージ3は限局型と進展型に分けられます。、限局型では可能な限り薬物療法を放射線治療と併用(化学放射線療法)します。この同時化学放射線療法によって、一部の患者さんで長期生存が得られる可能性があります。一方進展型では腫瘍の範囲が広いため放射線治療を行うことができず、薬物療法のみを行います。シスプラチンまたはカルボプラチンにエトポシドを組み合わせたプラチナ併用レジメンに、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体)を併用する治療が標準的です。
放射線療法
限局型小細胞肺がんでは、薬物療法に加えて放射線治療を行います。この化学放射線療法により根治を目指しますが、食道炎や骨髄抑制など治療中の副作用は強まる傾向があり、注意深い管理が必要です。副作用の管理を慎重に行いながら、照射をスケジュール通り進めることが目標です。さらに、小細胞肺がんでは脳への転移が起こりやすいため、初回治療で腫瘍が完全寛解した後、予防的全脳照射を行います。
ステージ3の肺がんについてよくある質問
ここまでステージ3の肺がんについて紹介しました。ここでは「ステージ3の肺がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ステージ3の肺がんが完治することはありますか?
ステージ3まで進行した肺がんは治療後に再発するリスクが高く、完治が得られる可能性はステージ1や2と比較すると低くなります。しかし、非小細胞肺がんのステージ3Aで腫瘍が手術で完全に切除できた場合や、化学放射線治療を行った場合、長期にわたり再発せず過ごせる場合があります。一方、小細胞肺がんのステージ3、特に進展型では完治がとても難しく、多くの患者さんは残念ながら再発を経験します。それでも治療によって長期生存や寛解状態が得られる場合もあり、近年は新薬の登場で治療成績も向上しています。
ステージ3の肺がんと診断された場合の日常生活における注意点を教えてください。
ステージ3の治療中および治療後の生活では、規則正しい生活習慣を心がけることがまず重要です。具体的には禁煙を厳守し、飲酒は控えめに、栄養バランスのよい食事をとり、無理のない範囲で適度な運動を続けるよう意識しましょう。喫煙は予後の悪化やほかのがん発症リスクにも直結するため、たとえ治療前から喫煙習慣があった方も必ず禁煙を続けることが大切です。
感染症予防も重要なポイントです。肺機能が低下していたり、抗がん剤治療で免疫力が落ちていたりする場合、風邪や肺炎にかかると重症化しやすいので、手洗いやマスク着用、人混みを避けるなど基本的な感染対策を心がけます。以上のような生活習慣の改善と定期フォローを継続することで、治療の効果を最大限に引き出しつつ日常生活の質(QOL)を維持することが期待できます。
まとめ

肺がんステージ3は、がんが肺から周囲組織およびリンパ節へ広がった進行期であり、治療の難易度が上がる段階です。患者さんは主治医と十分に相談し、自身の肺がんのタイプや状態に合わせた適切な治療計画を立てることが重要です。そして、治療後も規則正しい生活習慣と定期フォローを続けることで、少しでも再発リスクを減らし、日々の生活の質を保つよう心がけましょう。肺がんステージ3は厳しい病期ですが、適切な治療と自己管理によって前向きに病気と向き合うことが可能です。
関連する病気
肺がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 肺炎
- 結核
- 間質性肺疾患
- サルコイドーシス
関連する症状
肺がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- 持続する咳
- 血痰
- 息切れ・呼吸困難
- 胸痛
- 体重減少
- 全身の倦怠感




