「ピロリ菌と胃がん」の関係はご存知ですか?胃がんを発症する確率も解説!【医師監修】
更新日:2025/09/05


監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
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眼科(角膜外来)
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目次 -INDEX-
ピロリ菌とは
ピロリ菌は胃の中にすみつく細菌で、日本人では中高年層を中心に多くの方が感染しています。感染してもすぐに症状は出ませんが、長期間にわたり胃の炎症や潰瘍、胃がんの原因となることがあるため、注意が必要です。
ピロリ菌の概要
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、らせん状の細菌で胃の粘膜に生息します。ウレアーゼという酵素で胃酸を中和し、強い酸性の環境でも生き延びることができます。感染が長く続くと、慢性胃炎から萎縮性胃炎、腸上皮化生を経て、胃がんへ進行する可能性があります。ピロリ菌の感染経路
主な感染経路は経口感染で、幼少期の家庭内感染が中心です。食器の共有や井戸水の使用などが要因とされ、衛生環境が整っていない時代に多くの方が感染したと考えられています。ピロリ菌の感染者数
日本では、ピロリ菌に感染している方が少なくとも3,000万人以上いるといわれており、特に50歳以上の世代で感染率が高くなっています。一方で、衛生環境の改善により感染者の割合は年々減少しており、若い世代では低い水準にとどまっています。今後も感染者はさらに減少していくと考えられています。ピロリ菌と胃がんの関係
ピロリ菌は、胃がんの発症に深く関わる細菌です。感染すると胃の粘膜に慢性的な炎症が起こり、時間とともに細胞の異常が蓄積され、がんの発生につながると考えられています。世界の胃がんの約8割がピロリ菌感染に関連していると報告されています。日本ではこの関係がさらに強く、胃がん患者さんの約9割がピロリ菌に感染していることが示されています。
ピロリ菌の感染者が胃がんになる確率
ピロリ菌に感染していると、感染していない方に比べて胃がんを発症する確率が高くなることが、明らかになっています。
ピロリ菌に感染している方が85歳までに胃がんになる確率は、男性で17.0%、女性で7.7%とされています。これに対し、感染していない方では男性1.0%、女性0.5%にとどまります。また、別の研究では、感染している方は、していない方に比べて胃がんの発症リスクが約5倍高いという報告もあります。
ピロリ菌の検査方法と治療法
ピロリ菌に感染しているかどうかは、いくつかの検査によって確認することができます。感染が判明した場合には、除菌治療を行うことで胃の病気を防ぐことが可能です。ここでは検査方法と治療の流れについて解説します。
ピロリ菌感染を調べる検査方法
ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。 内視鏡を使う検査では、胃の粘膜を採取して調べる迅速ウレアーゼ試験や組織染色検査などがあり、同時に胃の状態を確認できるという利点があります。 一方、内視鏡を使わない方法には、呼気中の成分を調べる尿素呼気試験、便中の抗原を検出する便中抗原検査、血液による抗体検査などがあります。なかでも尿素呼気試験は精度が高く、除菌後の判定にも広く用いられています。ピロリ菌の除菌方法
感染が確認された場合には、飲み薬による除菌治療が行われます。標準的な治療では、胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)に加えて、2種類の抗菌薬であるアモキシシリンとクラリスロマイシンを併用します。これら3種類を1日2回、7日間服用するのが一般的です。ピロリ菌に感染することで生じやすい胃がん以外の病気
ピロリ菌は胃がんだけでなく、ほかの病気にも関係しています。
代表的なのは慢性胃炎で、感染によって胃の粘膜に炎症が続き、胃もたれや不快感の原因になります。炎症が長引くと、萎縮性胃炎や腸上皮化生といった変化を引き起こすこともあります。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍もピロリ菌が関与しており、菌が粘膜を傷つけ、胃酸の影響で潰瘍ができやすくなります。除菌することで再発リスクを減らすことができます。
さらに、胃の粘膜にできるMALTリンパ腫もピロリ菌が原因とされ、早期なら除菌だけで改善することもあります。
このほか、機能性ディスペプシアや、まれに鉄欠乏性貧血、特発性血小板減少性紫斑病との関連も指摘されています。
このように、ピロリ菌はさまざまな病気に関わるため、感染しているかどうかを調べることが重要です。
ピロリ菌と胃がんについてよくある質問
ここまでピロリ菌と胃がんについて紹介しました。ここでは「ピロリ菌と胃がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ピロリ菌の検査や除菌治療は健康保険の対象になりますか?
はい、条件を満たせば健康保険が使えます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎が内視鏡で確認された場合などが対象です。症状がない場合や希望で検査を受けるときは、自費になることがあります。検査や治療を受ける前に、医師に確認するとよいでしょう。
ピロリ菌以外の胃がんの原因を教えてください。
胃がんの発症には、ピロリ菌以外にもいくつかの要因が関係します。例えば、喫煙、塩分の多い食事、過度の飲酒、加齢、遺伝的な体質などです。
すでにピロリ菌を除菌することによって胃がんのリスクを減らせますか?
ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを下げることができます。特に、胃の粘膜に大きな変化が起こる前に除菌できれば、予防効果が高いとされています。早期胃がんに対して内視鏡治療を受けた患者さんに除菌治療を行ったところ、新たに別の場所に胃がんができる確率が約3分の1に減少するといわれております。ただし、除菌しても胃がんがまったく起きないわけではないため、治療後も定期的な内視鏡検査での経過観察が重要です。
まとめ
ピロリ菌は胃の中にすむ細菌で、感染すると慢性胃炎や潰瘍、胃がんの原因になることがあります。
感染している方は、していない方に比べて胃がんを発症する確率が高いことがわかっており、将来的に胃がんになる方の割合も多くなります。
検査によって感染の有無を確認することができ、感染していれば薬による除菌治療が行われます。治療後は再検査で効果を確認し、必要に応じて経過をみていきます。
ピロリ菌は胃がん以外の病気にも関係しているため、気になる症状がある方や不安がある方は、検査を受けてみるとよいでしょう。
関連する病気
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃MALTリンパ腫
- 機能性ディスペプシア
- 鉄欠乏性貧血
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
関連する症状
- 胃もたれ
- 胃の不快感
- みぞおちの痛み
- 食欲不振
- 吐き気
- 黒っぽい便




