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「胃ポリープを調べる各検査」のメリット・デメリットはご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2025/10/17
「胃ポリープを調べる各検査」のメリット・デメリットはご存知ですか?医師が解説!

胃ポリープとは、胃の内側の粘膜から発生する隆起性病変を指し、一般的に良性とされています。しかし、種類や大きさによっては、がん化のリスクがあるものも存在します。本記事では、胃ポリープの種類、検査方法、治療法などについて具体的に解説します。

和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

胃ポリープとは

胃ポリープとは

胃ポリープとは、胃の粘膜から発生する隆起性の病変で、一般的には良性とされています。ただし、種類によってはがん化のリスクがあるものも存在します。

胃ポリープの概要

胃ポリープでは、胃粘膜を構成する上皮細胞が増殖、肉眼的に隆起を形成します。増殖するのは正常の上皮細胞であり、がん細胞ではありません。

胃ポリープの種類

胃ポリープは、山田分類という分類法で、肉眼的に以下の四種類にわけられます。

  • Ⅰ型(平滑隆起型):隆起の起始部がなめらかで、境界線が不明瞭
  • Ⅱ型(無茎型):隆起の起始部に明瞭な境界線がありますが、くびれはない
  • Ⅲ型(亜有茎型):隆起の起始部に明瞭なくびれがありますが、茎はない
  • Ⅳ型(有茎型):明らかに茎がある

また、後述する生検(組織検査)からわかる組織型によっても分類されます。組織型として発生頻度が高いのは以下の二種類です。

胃底腺ポリープ

周囲の粘膜と同じような色調のポリープで、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)感染などによる炎症の影響のない胃粘膜に発生します。
通常は良性で、基本的に経過観察で問題はなく、治療は必要ないと言われています。

過形成性ポリープ

過形成性ポリープは、主にピロリ菌感染による炎症を起こした胃粘膜に発生する、赤みの強いポリープです。過形成性ポリープと診断された場合は、ピロリ菌感染の有無を確認し、感染している場合には、除菌を行います。
除菌によりポリープが小さくなる、あるいは、消えてなくなる場合もあることがわかっています。

胃ポリープを調べる検査とは

胃ポリープを調べる検査とは

胃ポリープを調べる検査には、胃透視検査、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)があります。

胃透視検査は造影剤(液体)を飲み、胃の中に薄く広げて、胃の形状や粘膜の異常をレントゲンで観察するものです。

胃カメラは長い管の先端に付いている小型カメラを口または鼻から挿入し、胃の中を直接観察するものです。
それぞれ以下のようなメリット、デメリットが存在します。これらのメリット、デメリットから、胃透視検査は、人間ドックなど、症状がない場合に行われ、症状がある場合や胃透視検査で異常がみつかった場合に、内視鏡検査が行われます。

造影剤検査のメリット

  • 胃全体の変形をとらえやすい
  • 手軽に行うことができる(バスによる巡回検診も可能)
  • 検査にかかる費用が安い
  • 検査時間が短い

造影剤検査のデメリット

  • 小さな病変や早期の病変の検出が難しく、異常が見つかった場合は内視鏡検査が必要となる
  • まれに、造影剤の誤嚥による肺炎や、造影剤がなかなか排便されずに腸閉塞が起こることがある

胃カメラのメリット

高精度で小さな病変の検出も可能であり、必要に応じて組織検査や治療も同時に行えます。

胃カメラのデメリット

  • 造影剤検査に比べるとやや高価である
  • 侵襲的であり、患者さんによっては痛みや不快感を伴うことがある
  • まれに胃粘膜を損傷し、出血を起こしたり、穿孔を起こす場合がある

内視鏡検査(胃カメラ)の流れ

内視鏡検査には口から管を入れる経口内視鏡と鼻から管を入れる経鼻内視鏡が存在します。
いずれも検査前に、胃の中をきれいにするための消泡剤、胃の粘液を分解し除去する胃内粘液溶解除去剤を飲みます。

経口内視鏡の場合は、麻酔薬を飲んで喉に麻酔をかけ、経鼻内視鏡の場合は鼻にスプレーなどで麻酔をかけます。

検査室へ移動したら、台の上に身体の左側を下にして横になります。口、または鼻から胃カメラを入れ、検査が始まります。検査にかかる時間はおよそ5-10分です。希望があれば鎮静剤を使用し、検査中の不快感を軽減します。

生検(組織検査)とは

生検とは、内視鏡検査中に異常が疑われる場合の組織の一部を採取し、その病変が良性か悪性か、または炎症の程度などを顕微鏡で観察する検査です。

内視鏡検査でわかること・わからないこと

内視鏡検査は、食道や胃の粘膜の状態を直接観察することができ、潰瘍や炎症、ポリープ、がんなどの病変を発見するのに有効です。

しかし、機能的な異常(胃の運動機能異常や内臓の知覚過敏)やストレスの関与や粘膜の下にある病変(粘膜下腫瘍など)については、内視鏡だけでは診断が難しい場合もあります。そのため、必要に応じて超音波内視鏡検査やCT検査などを併用することがあります。

胃ポリープ検査を受けた後の治療と経過観察

胃ポリープ検査を受けた後の治療と経過観察

内視鏡検査を受け、胃ポリープが発見された場合、どのような場合に経過観察となり、どのような場合に治療が必要となるかを解説します。

胃ポリープ検査後に経過観察となる場合

ポリープのサイズが小さく、形状の不整などが認められないなど良性であると判断された場合は、定期的な内視鏡検査による経過観察が行われます。

胃ポリープ検査後に治療が必要になる場合

胃ポリープのサイズが大きく、形状が不整、出血があるなどがんの可能性を否定できない場合には、診断を付ける目的で生検を行ったり、ポリープ自体を内視鏡をもちいて切除することもあります。

また、ピロリ菌感染がある場合は、最終的にがんが発生する可能性が高いため、ピロリの除菌が必要になります。

検査を受ける際の注意点

検査を受ける際の注意点

内視鏡検査を受ける前、受けた後、いずれも複数の注意点があります。

検査前の食事・服薬制限

内視鏡検査を受ける場合、胃内に食べ物があると内視鏡での観察が難しくなるため、前日の夕食は、消化によいものを21時までに摂取し、夕食後から検査が終わるまでは絶食となります。

検査当日は、牛乳、ジュースなどは飲むことができませんが、水や白湯など透明な飲み物については、脱水を防ぐ目的で検査の前1-2時間くらい前までは飲むことが許されます。

服薬制限について、抗血栓薬(抗凝固薬、抗血小板薬)などのいわゆる血液をサラサラにする薬を服用している方は、事前に医師に相談が必要です。生検やポリープ切除を行う場合、一時的な中止を指示されることがあります。

鎮静剤を使う場合の注意点

鎮静薬を使用した場合、検査後にふらつきや眠気を感じることもいるため、自動車やバイク、自転車の運転はできません。また検査後1,2時間は飲食を控える必要があります。のどの麻酔が切れていないと、誤嚥のリスクがあるためです。

ポリープ切除後の食事や生活上の注意点

ポリープを切除した場合や生検を行った場合には、胃粘膜から出血しやすいため、当日の激しい運動や長風呂は推奨されません。さらに胃粘膜を刺激する可能性の高い、辛い食べ物やコーヒーの摂取、飲酒などを最低でも2-3日は避けた方がよいと言われています。

胃ポリープについてよくある質問

ここまで胃ポリープを紹介しました。ここでは「胃ポリープ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃ポリープ以外で胃に発生する隆起性の病変には何がありますか?

隆起を形成する病変としては胃腺腫、胃がんが挙げられます。いずれも腫瘍と呼ばれる病気です。

胃腺腫は軽度の異型を示す上皮細胞が増殖する良性の病変であり、胃がんは、強い異型を示す上皮細胞由来の悪性細胞が増殖する病変です。

胃腺腫は良性ですが、なかには、悪性化し、胃がんに進行するタイプのものもあり、内視鏡的に切除することもあります。

胃ポリープを切除する場合、どのような方法で切除されますか?

大部分の胃ポリープは内視鏡的を用いて切除されます。大きくわけて3つの方法があります。

ポリペクトミー
隆起性の病変に行われる方法です。スネアと呼ばれる金属製の輪を病変にかけて、絞扼し、高周波電流で切除します。

内視鏡的粘膜切除術(EMR) 
隆起の少ない病変に対して行われる方法です。まず、病変が存在する層よりも下側の、粘膜下層という部分に液体を注入し、病変を浮き上がらせます。浮き上がった病変にスネアを引っかけて、絞扼し、高周波電流で切除します。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
サイズの大きい病変に対して行われる方法です。病変の周囲をマーキングし、粘膜下層に液体を注入し、病変を浮き上がらせます。病変の周囲の粘膜をナイフで切開し、粘膜下層から剥離させて、病変を切除します。


まとめ

まとめ

胃ポリープは多くの場合良性であり、特に症状がないまま発見されることがほとんどです。しかし、種類や大きさによってはがん化のリスクがあるため、正確な診断と適切な経過観察・治療が重要です。

診断には内視鏡検査が有効であり、必要に応じて生検による組織診断が行われます。ピロリ菌感染が関係するポリープでは、除菌治療により改善が期待できる場合もあります。
定期的な内視鏡検査と医師との相談を通じて、ご自身の胃の状態を把握し、安心して日々を過ごしましょう。

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  • 胃腺腫
  • 胃癌

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