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「大腸がん」を発症し「ストーマ(人工肛門)」をつけた場合の余命はご存知ですか?

 更新日:2025/07/03
「大腸がん」を発症し「ストーマ(人工肛門)」をつけた場合の余命はご存知ですか?

大腸がんを発症しストーマをつけた場合の余命とは?Medical DOC監修医が大腸がんのステージ別の生存率・ストーマをつけた後に日常生活で注意するべきことなどを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

「大腸がん」とは?

大腸がんは、早期発見・早期治療が重要ですが、がんができる場所や進行具合により手術でストーマ(人工肛門)が必要になることがあります。ストーマを造設すると、生活に大きな変化が生じるため、余命や今後の生活について不安を感じる方も多いでしょう。この記事では、大腸がんとストーマについて、ステージ別の生存率やストーマ造設後の注意点などを詳しく解説します。

「ストーマ(人工肛門)」とは?

ストーマとは、手術によって腹部に作られた消化管の排泄口のことです。ストーマは造設期間、開口部数、臓器による分類などで種類が分かれます。期間別では、ストーマが永久的である「永久的ストーマ」と、のちに閉鎖をする「一時的ストーマ」があります。部位別では大腸(結腸)に造設する「大腸ストーマ」と小腸(回腸)に造設する「回腸ストーマ」に分類されます。また、開口部の数別では開口部が1つの「単孔式ストーマ」と2つ開口部がある「双孔式ストーマ」に分けられます。それぞれのストマは造設の目的がそれぞれ異なります。

大腸がんを発症し、ストーマをつけた場合の余命

大腸がんの手術でストーマを造設する場合は根治手術が行えるかどうかで、それぞれで予後が大きく異なります。根治手術が行える場合は2つのパターンでストーマを造設することがあります。
1つ目は大腸がんの切除後に、吻合にリスクがある、全身状態が悪いなどの理由で大腸同士をつながずに、口側の大腸をストーマにする場合です。この場合は永久的単孔式大腸ストーマ、もしくは後に閉鎖ができる一時的、単孔式大腸ストーマを造設することになります。この場合肛門側は盲端(どこにもつながらず、行きどまり)になります。
2つ目は大腸がんのうちで肛門に近い直腸がんで吻合部のリスクが高いために、腸管安静を目的に一時的、双孔式回腸ストーマを造設することがあります。回腸ストーマから排便がされるため、大腸には便が流れない状態を作ることができます。一時的であるため、後にストーマ閉鎖手術を予定します。
根治手術が行えない場合は、腸閉塞を予防するために永久的、双孔式回腸ストーマを造設することがあります。ストーマの肛門側に便が流れないようにして、大腸がんによる腸閉塞を起こさないことが目的です。主にステージⅣ大腸がんの緩和治療が目的の手術です。
このようにストーマ自体が余命に影響するのではなく、がんのステージが余命に影響します。生存率は後述する通りです。

大腸がんのストーマはステージいくつでつける?

前述の通り、ストーマを造設する場合に根治手術が行えるかどうかが重要です。根治手術が行える大腸がんのステージはステージⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの一部です。根治手術が行えない場合はステージⅣで転移巣の手術が難しい場合です。根治手術を目的とした手術で、一時的、回腸ストーマや一時的大腸ストーマの場合は後にストーマを閉鎖する手術を行います。永久的ストーマであれば、基本的に閉鎖することはできません。

大腸がんのステージ別の余命・生存率

がん情報サービスのがん統計2015年の5年生存率を用いて解説します。

大腸がん・ステージ0の余命・生存率

ステージ0は、がんが粘膜内にとどまっている状態で早期大腸がんとされます。この段階で発見されれば、内視鏡手術で完全に切除できる可能性が高く、5年生存率は集計されていませんが、ステージⅠ以上の非常に高い生存率が予想できます。

大腸がん・ステージ1の余命・生存率

ステージⅠは、がんが固有筋層までにとどまるものです。早期大腸がんと進行がんのどちらかの状態です。深達度はT1a(癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1000μm未満)とT1b(癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1000μm以上)、T2に分けられます。T1b以深になると転移する可能性が出てくるため、内視鏡治療ではなく手術の適応となります。この段階でも、手術で完全に切除できる可能性が高く、5年生存率は92.3%です。ステージ0との違いは、がんの浸潤の深さです。

大腸がん・ステージ2の余命・生存率

ステージⅡは、がんが固有筋層を越えて浸潤している進行大腸がんの状態です。この段階では、リンパ節転移のリスクが高まるため、基本的に手術でがんを切除します。5年生存率は86.1%です。ステージ1との違いは、がんの浸潤の深さです。

大腸がん・ステージ3の余命・生存率

ステージⅢは、深達度にかかわらずリンパ節転移がある状態です。この段階では、手術に加えて、抗がん剤治療や放射線治療が必要になることがあります。5年生存率は76.0%です。ステージ2との違いは、リンパ節転移の有無です。

大腸がん・ステージ4の余命・生存率

ステージ4は、遠隔転移がある状態です。転移巣が手術可能な場合は根治を目指した手術を行うこともありますが、転移巣の切除が難しい場合、根治は難しく、治療はがんの進行を抑える抗がん剤治療や、症状を緩和することを目的とした放射線療法、緩和医療を選択します。5年生存率は18.4%です。ステージ3との違いは、遠隔転移の有無です。

ストーマをつけた後に日常生活で注意するべきこと

ストーマを造設すると、日常生活にいくつかの注意点があります。

ストーマ装具の適切な管理

はじめのなれないうちはストーマの装着方法がわからないこともあるとあります。まずは手術後の入院期間で装具の交換や適切に装着を練習し、便の漏れや皮膚トラブルが起こらないように、繰り返すことが重要です。

食事の工夫

食事をする際は咀嚼を十分に行い、消化の良いものを中心に、バランスの取れた食事を心がけます。特に回腸ストーマの場合は水分の多い排液が増えるため、ストーマ部の皮膚トラブルや便の漏れには注意が必要です。

日常生活の工夫

ストーマは自分の意思で排便リズムをコントロールすることができません。排便リズムに合わせて生活リズムを調整したり、外出時には予備の装具を携帯したりすることが大切です。

定期的な診察

定期的に診察を受け、ストーマや周辺の皮膚の状態や合併症の有無を確認します。稀にストーマ周辺にポリープができることがあるので、その際は主治医にご相談ください。

精神的なケア

ストーマがあることで精神的な負担を感じることがあります。必要に応じて、医療スタッフや家族のサポートを受けましょう。

「大腸がんストーマの余命」についてよくある質問

ここまで大腸がんストーマの余命などを紹介しました。ここでは「大腸がんストーマの余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんでストーマをつける確率について教えてください。

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

大腸がんの進行度やがんができる場所によってストーマが必要になる確率は異なります。特に進行直腸がんでは一時的ストーマが必要になるケースが増えます。またステージⅣの末期大腸がんでも緩和治療目的の永久的ストーマ造設を行うケースが多くあります。

編集部まとめ ストーマについて正しく理解しよう!

大腸がんとストーマについて、ステージ別の生存率やストーマ造設後の注意点などを解説しました。ストーマを造設すると、生活に大きな変化が生じますが、適切な管理とケアを行うことで、以前と変わらない生活を送ることができます。

「大腸がん」と関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

大腸がんは早期発見・早期治療が重要であるため、定期的な検診を受けましょう。大腸がん検診で便潜血が陽性になった方は積極的に大腸カメラを受けましょう。

「大腸がん」と関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

症状からでは、他の病気と区別がつきづらいです。気になる症状がある場合はお近くの消化器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師