「メラノーマ」を発症すると「爪の形や色」はどのように変化する?医師が徹底解説!
更新日:2025/07/18

メラノーマを発症すると爪の形はどのように変化する?Medical DOC監修医がメラノーマの初期症状・原因・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
藤井 弘子(医師)
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関西医科大学医学部卒業。京都大学大学院医学研究科博士課程卒業(医学博士)。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。京都大学医学部附属病院皮膚科助教を経て、関連病院診療科長を経験。
目次 -INDEX-
「メラノーマ」とは?
メラノーマとは、メラノサイトという皮膚にあるメラニン色素を作る細胞ががん化した腫瘍です。皮膚がんの一つです。悪性黒色腫とも呼ばれています。 メラノーマは、起こる部位や形などによって、以下の4つのタイプに分類されています。 ・末端黒子型 手のひらや足の裏、手足の爪の下などにでき、日本人のメラノーマでは最も多く、約40%を占めます。 ・表在拡大型 胸や腹、背中など、時々日焼けをする部分にできやすいメラノーマです。白色人種や日本人でも肌の色が白い人に多いタイプです。 ・結節型 発生しやすい部位はなく、結節状になったがん細胞の塊が徐々に増大するタイプです。 ・悪性黒子型 高齢者の顔面に多いタイプです。持続的に日焼けをしやすい部分である顔面に多く発生します。 この他にも、粘膜メラノーマや眼球の中の壁に発生するメラノーマもあります。メラノーマを発症すると爪の形はどのように変化する?
爪下のメラノーマは、爪母(そうぼ)という爪の根本で爪を作っている部分で発生します。 このタイプのメラノーマが発生すると、爪の形は以下のように変化します。爪に黒や茶色の縦線が入る
爪の中央や端に沿って、黒や茶色の細い縦線が現れることがあります。この線は時間とともに太くなったり、濃くなったりするのが特徴です。また、通常の色素沈着とは異なり、線が均一でないことや境界が不明瞭なこともあります。爪の変色が広がり、不規則な形状になる
初めは細い線だったものが、徐々に爪全体へと広がることがあります。色も黒や茶色だけでなく、紫がかったり、灰色っぽくなったりすることもあります。また、色の境界がぼやけてくるのも、メラノーマの特徴の一つです。正常な爪と比べて色むらがある場合は注意が必要です。爪の周囲の皮膚にも色素沈着がみられる
メラノーマが進行すると、爪の下だけでなく、周囲の皮膚にも黒っぽい色素が沈着してくることがあります。これは「ハッチンソン徴候」と呼ばれ、メラノーマの進行サインの一つとされています。この症状が見られる場合は、早急に皮膚科を受診しましょう。爪の形が変化したらメラノーマのステージ分類はいくつ?
メラノーマは進行度に応じてステージが分類されます。爪のメラノーマの場合、初期段階では局所にとどまっていますが、進行するとリンパ節や他の臓器に転移することがあります。T因子(原発巣)、N因子(リンパ節転移)、M因子(他の臓器の転移)によって、メラノーマの進行度分類が行われます。T因子は腫瘍の厚みと、潰瘍の有無で行います。 爪のメラノーマが局所にとどまり、リンパ節転移や他の臓器への転移がなければI〜II期、リンパ節転移があるとIII期、他の臓器への遠隔転移があるとIV期となります。メラノーマの前兆となる初期症状
メラノーマを疑う症状としては、以下のようなものがあります。こういった症状がみられたら、皮膚科を受診するようにしましょう。爪の色が黒や茶色に変化
爪に黒や茶色の縦線が現れるのが特徴的ですが、初期段階では線が細く、薄い色で目立たないこともあります。時間とともに色が濃くなり、線が太くなってくる場合は要注意です。また、爪の根元(キューティクル部分)に向かって色が広がるように変化していくケースもあります。こうした色の変化が見られる場合は、爪のメラノーマを疑い、早めに皮膚科で診察を受けることが大切です。爪の成長が遅くなる、もしくは変形する
健康な爪は一定の速度で伸び続けますが、メラノーマが発生すると爪の成長が止まったように見えたり、不均一な成長を示したりすることがあります。爪が一部だけ厚くなったり、薄くなったりする場合や、成長が途中で止まったように見える場合も注意が必要です。爪の形そのものが歪んでくるケースもあるため、通常と異なる成長パターンに気づいたら早めに診察を受けましょう。爪の下に出血が見られる
爪の下に出血が生じることがあります。小さな出血が点状に現れることもありますが、時間が経っても消えず、むしろ広がるようであれば要注意です。通常の打撲や外傷による爪下血腫(爪の下の内出血)は時間とともに消えていきますが、メラノーマの場合は出血が持続し、爪の色が変化し続けることがあります。また、出血とともに爪が剥がれやすくなるケースもあります。メラノーマを発症する原因
ここでは、爪下メラノーマを含めたメラノーマの原因として考えられている要因について解説します。日光への暴露
ほとんどのメラノーマは、日光に長時間晒されることが発症リスクを高めます。しかし、爪下メラノーマの場合には、これは該当しないのではと言われています。遺伝的要因
家族にメラノーマの既往がある場合、遺伝的に発症しやすい可能性があります。家族歴がある人は定期的なチェックを行うことが推奨されます。免疫低下
免疫機能が低下すると、がん細胞が増殖しやすくなります。例えば、免疫抑制剤を使用している人や、HIV感染者、慢性疾患を抱えている人は、メラノーマのリスクが高まる可能性があります。免疫系が正常に働くことでがん細胞の抑制ができるため、健康的な生活習慣を維持することも予防の一つと考えられます。メラノーマの検査法
メラノーマの検査方法について解説します。メラノーマは早期発見が重要な病気ですが、特に爪のメラノーマは他の爪の病気や色素沈着と見分けがつきにくいため、慎重な診断が必要です。爪に異常が見られた場合、皮膚科や形成外科を受診し、以下のような検査を行います。ダーモスコピー検査(拡大鏡検査)
専用の拡大鏡を使い、爪の色の変化や模様、境界の不明瞭さなどを詳しく観察します。メラノーマは、通常のホクロや色素沈着とは異なり、線が不規則で濃淡のムラがあるのが特徴です。特に「ハッチンソン徴候」(爪の根元や周囲の皮膚にまで色素が広がる症状)が見られた場合は、高い確率でメラノーマが疑われます。皮膚生検(病理検査)
より詳しい診断が必要な場合、爪の一部を採取して顕微鏡で細胞の異常を調べます。生検は 必要に応じて爪とその下の組織を部分的に切除します。通常、この検査でメラノーマの確定診断が行われます。採取した組織は特殊な染色を施し、細胞レベルで悪性の有無を確認します。画像診断(MRI・CT・PET)
メラノーマが進行し、リンパ節や他の臓器に転移していないかを確認するために行われます。CTや超音波(エコー)検査はリンパ節転移を調べるのに、CTやPET-CTは全身の転移を調べるのに、MRIは脳転移を調べるのに有効であり、進行したメラノーマの場合に追加されることがあります。メラノーマの治療法
メラノーマの治療は、ステージや患者の体力、持病などに応じて決定されます。手術(外科的切除)
メラノーマの第一選択となる治療法です。腫瘍の大きさや広がりに応じて、爪の一部または全体を切除することがあります。場合によっては、指の一部を切除する必要があることもあります。手術後は、必要に応じて形成外科的な処置を行い、指の機能や見た目を改善することもあります。 手術の種類にもよりますが、通常は入院が必要となります。3泊から14泊、あるいはそれ以上の入院期間となります。免疫療法(チェックポイント阻害薬)
進行したメラノーマに対して用いられる新しい治療法です。免疫チェックポイント阻害薬(PD-1阻害薬やCTLA-4阻害薬)を使用することで、体の免疫細胞を活性化し、がん細胞を攻撃する力を強めます。これにより、手術が難しい場合でもがんの進行を抑えられる可能性があります。間質性肺炎や腸炎、皮膚障害、重症筋無力症など免疫活性化により全身様々な場所に副作用が出る可能性があることに注意が必要です。 皮膚科や腫瘍内科などで治療が行われます。放射線治療
手術が難しい場合や、手術後の再発リスクを抑えるために用いられます。放射線を照射することで、がん細胞の増殖を抑えます。特に、高齢者や全身状態が手術に耐えられない患者に適応されることがあります。また、メラノーマが他の臓器に転移し、痛みなどの症状が出ている際には症状を緩和するために放射線治療が行われることもあります。上述の免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法と併用されることもあります。 放射線治療は放射線治療科が行います。治療自体は通院で可能です。「メラノーマの爪」についてよくある質問
ここまでメラノーマの爪などを紹介しました。ここでは「メラノーマの爪」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
爪のメラノーマは放置しても問題ないのでしょうか?
藤井 弘子 医師
いいえ、放置すると進行し、転移する可能性が高いため、早期に受診が必要です。
爪のメラノーマの生存率はどれくらいでしょうか?
藤井 弘子 医師
早期に発見すれば5年生存率は90%以上ですが、進行すると50%以下に低下し、遠隔転移があるIV期では5年生存率が約15〜20%となります。
編集部まとめ
メラノーマは早期発見・早期治療が重要な病気です。特に爪の変色や変形が見られた場合、自己判断せずに皮膚科を受診することが大切です。進行すると転移のリスクが高まり、生存率が低下するため、定期的なチェックを心がけましょう。 気になる症状がある場合は、早めに皮膚科専門医に相談してください。「メラノーマ」と関連する病気
「メラノーマ」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 メラノーマと同様に、皮膚に発生する悪性腫瘍には上記のようなものがあります。皮膚の色や黒子の変化などに気づいた際には、皮膚科を受診しましょう。「メラノーマ」と関連する症状
「メラノーマ」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 皮膚に褐色から黒色のシミ(色素斑)ができる
- 皮膚に腫瘤(できもの)ができる
- 皮膚に凹みができる
- 爪に黒い線ができ、爪の外にも広がる




