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「基底細胞がん(皮膚がんの一種)」の初期症状・生存率はご存知ですか?

 公開日:2023/03/10
「基底細胞がん(皮膚がんの一種)」の初期症状・生存率はご存知ですか?

基底細胞がんは、加齢とともに発症しやすく、紫外線とも関係が深いといわれている皮膚がんの一種です。ほくろによく似ているため、放置されやすいがんでもあります。

顔や首など、普段から日差しを浴びやすい箇所に、いつの間にかほくろのようなものができていたという経験はありませんか。

今回は、基底細胞がんがどのような病気なのか、症状・見分け方・治療方法・再発・放置するリスクなどのさまざまな観点から詳しく解説いたします。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

基底細胞がんとは?

晴天

基底細胞がんはどのような病気でしょうか?

基底細胞がんは、表皮の最下層にある基底層などから発生する皮膚がんの一種です。
底細胞が何らかの原因で異常に増殖することで腫瘍を形成します。皮膚がんの中で最も発症率が高く、日本人にも多いがんでもあります。
身体の表面のどこにでも発症する可能性がありますが、特に日差しに晒されやすい顔や頭への発症がよくみられることから、紫外線が原因の一つであると考えられるでしょう。

発症しやすい年齢はありますか?

基底細胞がんは特に高齢者で多くみられます。40歳以上から発症しやすくなり、加齢とともに発症数も増加していくのです。
しかし、若年層でも長時間日光や紫外線に晒されることで発症する可能性があります。
まれに生まれつき皮膚が弱かったり遺伝的な要因であったりと、体質的に基底細胞がんの発症リスクが高い方もいらっしゃるため、若年層だから発症しないとはいい切れません。
誰にでも発症する可能性はあるのです。

症状を教えてください。

基底細胞がんは初期の段階だと痛みやかゆみなどの症状はありませんが、ほくろのような黒いシミができたり形状が変化したりするなど、見た目の変化があらわれます。
進行すると中央が崩れて潰瘍になり、出血を起こすこともあるのです。
基底細胞がんは進行してからでないと症状があらわれないため、早期発見に向けて、皮膚の異常を見つけた場合には皮膚科で受診することをおすすめします。

似た病気との見分け方はありますか?

基底細胞がんの形状や大きさはさまざまですが、主に線がはっきりした小さな黒っぽい斑点であることが特徴です。
その見た目からほくろと勘違いされやすいため、ご自身で判断することは難しいといえるでしょう。
また、基底細胞がんよりも悪性度の高い悪性黒色腫(メラノーマ)ともよく似ているため、自己判断は危険なこともあるのです。
皮膚科の専門医であれば視診で見当がつきますが、患部をより詳しく確認する機材などもあるため、ほくろかどうか疑わしい場合には早めに皮膚科などで相談するようにしましょう。

基底細胞がんの治療と手術

皮膚科での手術痕

受診を検討するべき初期症状を教えてください。

先述したとおり、基底細胞がんでは、初期症状として見た目の変化があらわれます。
紫斑紅斑皮膚の赤みであったり、盛り上がった黒い小さな斑点が何もなかった箇所にあらわれたりする場合には注意が必要です。
また既存の斑点の大きさ・形・数が変化したり、長時間日光にあたった箇所へ斑点ができたりする場合にも、基底細胞がんの疑いがあるといえるでしょう。
顔・首・手足などよく見える箇所に発生することが多いため、これらの部位に異常がないか定期的に観察することが基底細胞がんの早期発見に繋がります。

診断方法を教えてください。

基本的に基底細胞がんが疑われる場合には、ダーモスコピー検査を行います。
ダーモスコピー検査とは、ダーモスコープという特殊なライトがついた拡大鏡を使って病変をより詳しく観察する検査のことです。所要時間は10分程度と短いうえに、精度が非常に高いため、ダーモスコピー検査だけで確定診断を行うことも少なくありません。
ダーモスコピー検査での判断が難しい場合には、病変箇所の一部を採取し顕微鏡で観察する生体検査により診断を行います。
がんがかなり進行していると判断できる場合には、血液検査・MRI検査・エコー検査などでがんの広がっている範囲を調べることもありますが、基底細胞がんは他の臓器への転移が少ないことからほとんどの場合では全身検査は行われません。

どのような治療を行いますか?

基底細胞がんの治療は、切除可能な箇所であれば手術で取り除くことが一般的です。取り残しがないように病変箇所から3~5mmほど大きく切り取り、小さな腫瘍の場合ではそのまま縫合できます。
しかし、切り取り範囲が大きい場合は植皮や局所皮弁などの再建手術を行うことがあります。基底細胞がんは顔に発生しやすいため、見た目を損なわないよう配慮することも大切なのです。
手術後には瘢痕が再生するまでテーピングで保護したり、植皮した場合には色素沈着を防ぐために遮光したりします。また、手術が困難な箇所への発生・病変範囲が広い・年齢・合併症などの理由で手術が困難だと判断した場合には、放射線治療などを行うこともあります。
治療方法は患者さんの状態・症状・進行具合などによって異なるため、治療を行う際には医師としっかり相談するようにしましょう。

手術費用について教えてください。

手術費用に関しては、病変の範囲・進行具合・再建手術の有無などによってさまざまです。
そのため、治療方法を決定する際に費用についても詳しく説明してもらうことをおすすめします。
分からないことは医師などに確認して、しっかり納得したうえで治療に臨むようにしましょう。

基底細胞がんの再発とリスク

首を触る女性

基底細胞がんは再発しますか?

基底細胞がんは、手術でがん細胞を完全に取り除ければ根治も望めます。
しかし術後2年以内におよそ半数で同じ箇所での再発がみられ、5年以内にはおよそ80%もの方に再発がみられるため、再発しやすいがんだといえるでしょう。
そのため、日常生活では紫外線対策を行ったりスキンケアを怠らないようにしたりなど、再発リスクを減らすよう心がける必要があります。また、病院などで定期的に検診を受けることで、早期発見・早期治療に繋がります。
  術後は再発を意識して積極的に対策をとるようにしましょう。

生存率を教えてください。

リンパの流れや血流のない表皮で発症することが特徴の基底細胞がんは、転移する可能性が非常に低いがんのため、早期に治療を行えれば治療効果も良好です。
5年生存率は初期の場合では90%以上、進行して範囲が広がった場合でもおよそ66%と、予後も良好だといえるでしょう。
ただし、転移がみられるほど進行している場合の5年生存率はおよそ17%と格段に下がってしまうため、早期発見早期治療は非常に重要です。

基底細胞がんを放置するリスクを教えてください。

基底細胞がんを放置し皮下組織にまで進行すると、筋肉や骨を侵し細胞を破壊してしまいます。
また、血流やリンパの流れる箇所にまで侵食すると遠隔部位に転移してしまう可能性もあるのです。
先述したとおり、がんが他の箇所へ転移した場合の生存率は低くなります。
治療効果の高い早期に発見できるよう、気になる斑点などがある場合には早めに医療機関で受診しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

基底細胞がんは日本人に多く長期間紫外線を浴びることで発症のリスクが上がります。
早期に治療を行えば完治も難しくありませんが、ほくろによく似ていることから進行するまで見落とされやすい傾向があるのです。
顔や頭など、普段から紫外線を浴びやすい箇所にほくろのようなものがあらわれたら、よく観察し早めに皮膚科などで相談するようにしましょう。
また、普段から紫外線対策を行うことで発症リスクを抑えられます。日焼け止めクリームや日傘などを使い、日ごろから予防に努めるようにしましょう。

編集部まとめ

日焼け止めを塗る女性
基底細胞がんは転移の可能性が低く予後が良いとはいえ、再発の可能性も高いため、注意が必要ながんです。

長期間紫外線に晒されることが原因の一つのため、日焼け対策を徹底して、予防に努めるようにしましょう。予防は早く始めるに越したことはありません。

また、見た目から自己判断することが難しいため、気になる症状がある場合には早めに医療機関へ相談することが大切なポイントです。

日差しを浴びる時間が長い方やご年配の方は、普段から肌の様子に注意して、早期発見・早期治療を目指しましょう。

この記事の監修医師