「小細胞肺がん」と「肺がん」の違いとは?発症しやすい人の特徴も医師が徹底解説!
公開日:2025/05/22

小細胞肺がんとは?Medical DOC監修医が小細胞肺がんの症状・原因・なりやすい人の特徴・検査法・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
羽田 裕司(医師)
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(名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 呼吸器外科 部長/教授(診療担当))
名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。
名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。
目次 -INDEX-
「小細胞肺がん」とは?
小細胞肺がんは、肺がんの種類の一つです。肺門部と呼ばれる気管支の入り口にも、肺野(はいや)と呼ばれる肺の外側にも、いずれにも発生します。増殖が早く、転移しやすいという特徴があります。また、肺がんの中でも喫煙との関連が強いといわれています。「小細胞肺がん」と「肺がん」の違いとは?
肺がんは、肺を作っている肺胞の細胞や、気管支の細胞にできるがんのことです。 肺がんの主な種類は、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞肺がんがあります。つまり肺がんの中の一つの種類が小細胞肺がんということになります。 小細胞肺がんと、その他の肺がんでは、治療法が大きく変わってきます。そのため、肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がんというように大きく分けられます。小細胞肺がんの主な症状
小細胞肺がんの主な症状には以下のものが挙げられます。咳
小細胞肺がんは、肺の中枢である肺門部にできる傾向があります。そのため、咳は主な症状となります。風邪ではないにも関わらず2週間以上の乾いた咳が出る場合には、呼吸器内科を受診するようにしましょう。胸痛
胸痛は、肺がんができた側に起こります。肺がんが胸膜や胸壁などといった肺を包んでいる組織にも浸潤することで生じます。胸の痛みは、肺がんの浸潤以外にも、がんが原因となって生じている肺炎(閉塞性肺炎)などによっても起こります。鈍く、うずくような持続的な痛みが治らない場合には、呼吸器内科あるいは一般内科を受診するようにしましょう。血痰
痰の中に血が混じる、血痰も肺がんでよくみられる症状です。がんによる血管の破壊や炎症が原因となることが多いです。血痰は気管支炎などの病気でも起こることがありますが、たびたびみられるようであれば早めに医療機関を受診しましょう。小細胞肺がんの主な原因
小細胞肺がんの主な原因として考えられているものについて説明します。喫煙
喫煙は、小細胞肺がんの最も重要な危険因子です。喫煙を開始する年齢が若いほど、喫煙頻度が高いほど、喫煙年数が長いほど肺がんのリスクが高まります。 タバコを現在吸っている方は、なるべく早く禁煙することをおすすめします。 喫煙と、以下に述べる危険因子が組み合わさると、小細胞肺がんのリスクが高まります。高齢である
小細胞肺がんは、高齢の喫煙者に起こりやすいことが知られています。年齢は自分自身ではコントロールできないものですが、前述の喫煙については自分で止めることも可能です。 咳が長引くなどの症状がある場合には、早めに呼吸器内科など医療機関を受診しましょう。アスベストなどの有害物質にさらされたことがある
職場で、アスベストやヒ素、ベリリウム、ニッケル、すす、タールなどの有害物質にさらされることも危険因子となります。放射線への被曝歴がある
乳房や胸部への放射線治療歴があることや、CTスキャン検査など画像検査はリスク因子の一つとなる可能性があります。 しかし、一定量の放射線を受けても必ず影響が現れるという訳ではありません。過剰に放射線検査を怖がる必要はないと考えられます。肺がんの家族歴がある
ご家族に肺がんの方がいる場合、小細胞肺がんのみならずがんのリスクが高まる可能性があります。定期的に肺がん検診を受けるようにしましょう。小細胞肺がんになりやすい人の特徴
小細胞肺がんの発症リスクが高まりやすい要因について述べていきます。タバコを吸っている
喫煙は、小細胞肺がんを含む肺がんのみならず、ほぼ全てのがんのリスクを高めます。 また、受動喫煙も肺がんのリスクを高めます。なるべく禁煙するようにしましょう。アスベストを扱う職業に従事していた
石綿(アスベスト)は、肺がんの他にも肺線維症や悪性中皮腫の原因になるといわれています。アスベストを吸い込んでから、15〜40年ほど経過してから肺がんになると言われています。アスベストを扱う職業に従事していた経験があり、心配な方や咳などの症状がある方は、お近くの医療機関に相談しましょう。乳がんに対する放射線治療歴がある
乳がんの手術後に放射線治療を受けた方は、肺がんを含む二次的な悪性腫瘍の発症リスクが高まると考えられています。アメリカの研究で、乳がん治療の一環で放射線治療を受けた方は、そうでない方と比較すると肺がん、中でも小細胞肺がんや扁平上皮がんを発症することが多かったとするものがあります。小細胞肺がんの検査法
小細胞肺がんの検査方法には、以下の様なものがあります。胸部X線検査・胸部CT検査
健康診断の一環や肺がん検診、咳や痰などの症状がある場合に、まずは胸部X線検査、いわゆる胸のレントゲン検査が行われます。胸部X線検査は簡便で時間も短く済むというメリットがあります。もし、胸部X線検査で異常があった場合には、胸部CT検査でより詳細に検査を行います 。時間は胸部X線検査よりは長くなりますが、15〜30分くらいで終了することが多いです。 健康診断クリニックや呼吸器内科などで行われ、外来で検査可能です。気管支鏡検査
胸部X線検査・胸部CT検査でがんが疑われる肺の病変があった際には、細胞や組織を採取し、病理検査を行います。最も多く使用されているのは気管支鏡検査です。肺がん疑いのある病変の場所によっては、経皮的針生検、胸腔鏡検査なども行われます。 気管支鏡検査は、口や鼻から気管支鏡という内視鏡を入れていきます。喉や気道にスプレーでの局所麻酔を行います。そして、疑わしい病変から組織を取り、病理検査を行います。 呼吸器内科で行われ、外来でも可能ですが、多くは入院で行います。画像検査
小細胞肺がんであることが確定した場合には、がんがどの程度周囲に浸潤しているのかや、リンパ節や他の臓器に転移しているかどうかを調べるための画像検査を行います。胸部から骨盤部までのCT検査や、頭部MRI検査、PET-CT検査、骨シンチグラフィなどが行われます。特に、小細胞肺がんは発見された際にはすでに他の臓器に転移がみられることが多いため、全身の評価は重要です。こうした画像検査は呼吸器内科のオーダーで行われ、外来で受けることが可能です。小細胞肺がんの治療法
小細胞肺がんの治療は、薬物療法が中心となります。放射線治療も併用します。薬物療法
小細胞肺がんの薬物療法で用いられる薬剤には、細胞障害性抗がん薬と、免疫チェックポイント阻害薬があります。がんが片方の肺にとどまり、リンパ節転移も同側の鎖骨上窩リンパ節程度までの場合には「限局型」という病期になります。限局型は、放射線治療が照射できる範囲に病変がとどまっている段階です。 限局型で、かつ患者さんの体の状態によって治療に耐えられる場合には、放射線治療と薬物療法を組み合わせて行う「化学放射線治療」が行われます。限局型に対しては、シスプラチン(またはカルボプラチン)とエトポシドの併用が行われます。なお、限局型の小細胞肺がんに対しては、日本では免疫チェックポイント阻害薬は現時点では未承認です。しかし、限局型よりもがんが広がっている「進展型」の方に対しては、抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬が併用されます。 薬物療法は呼吸器内科や腫瘍内科が行います。初回の治療は入院で行う場合が多いですが、2回目以降は外来での治療に移行する場合もあります。放射線治療
放射線治療は、限局型の小細胞肺がんに対して薬物療法と同時に行われることが標準的です。 1日2回の照射を行う加速過分割照射によって、腫瘍を小さくする効果が高まります。 放射線治療は、放射線治療科が行い、それ自体は外来でも可能ですが、薬物療法に合わせて行うため、入院で行うことが多いです。 また、初回の治療でがんが小さくなり、体の状態も良好の場合には予防的全脳照射という脳への放射線治療が行われることが勧められています。手術
ごく初期の小細胞肺がんの場合には、手術が適応となることもあります。 肺がんそのものに対する手術は呼吸器外科や胸部外科が行います。入院が必要です。「小細胞肺がん」についてよくある質問
ここまで小細胞肺がんを紹介しました。ここでは「小細胞肺がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
小細胞肺がんの余命・生存率はどれくらいでしょうか?
羽田 裕司 医師
小細胞肺がんは、がんが小さく、リンパ節転移がない段階であるI、IIA期では、外科治療を含む治療によって5年生存率が40〜70%とも報告されています。[香木1] また、がん診療連携拠点病院などにおける5年実測生存率が報告されています。2014−2015年診断例の場合、I/II/III/IV期でそれぞれ38/27.4/15/1.7%となっています。[香木2] しかしながら、小細胞肺がんの余命や生存率は、患者さんそれぞれの体力や既往歴、ステージ、受けることができた治療によっても異なります。

