「子宮頸がん」の「検査結果の見方」はご存じですか?種類別に医師が解説!

子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部にできるがんのことです。主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって起こります。
子宮頸がんは20歳代後半から増え始め、30歳から50歳の方に多くみられます。特に、20〜30歳代の女性ではかかりやすいがんでもあります。
子宮頸がんは、異形成(子宮頸部上皮内病変)と呼ばれる前がん状態を経てがん化することが知られています。そのため、早期発見が重要です。
今回の記事では、子宮頸がんの検診の種類や結果の見方を解説します。

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
目次 -INDEX-
子宮頸がん検査の種類

子宮頸がんを調べるための検査について紹介します。
細胞診
子宮頸がん検診の中心となるものです。
20歳以上の女性の方には、子宮頸がん検診として2年に1回定期的に受診することがすすめられています。
細胞診では、子宮頸部(子宮の入り口)を、医師が専用のブラシもしくはやわらかいヘラで軽くこすり、細胞を採取します。そして、専門の検査技師が顕微鏡で細胞の異常の有無を調べます。
自分で検体をとる自己採取法もありますが、十分な細胞が採れないことが多いため、現状ではすすめられていません。
HPV検査
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉によって感染するウイルスで、子宮頸がんや肛門がん、尖圭コンジローマなどの原因となることが知られています。
性交渉の経験がある女性では、約半数以上が一生の内に1回は感染するといわれています。
特に、HPV16型、18型はハイリスクといわれており、子宮頸がんの発症の危険性を高めることが知られています。
子宮頸がんの検査におけるHPV検査では、細胞診と同様に子宮頸部(子宮の入り口)を医師が専用のブラシやヘラでこすって細胞を採取します。この細胞を検査に提出し、HPVに感染しているかどうかを調べます。HPV検査が陽性の際には、同じ検体を用いてすぐにトリアージ検査(細胞診)が行われます。なお、HPV検査単独法は、自治体の方針によって実施されることがあります。住んでいる地域の検診制度を確認しましょう。
コルポスコープ
子宮頸部の細胞診検査で、前がん病変(異形成)やがんの疑いが強いとされた場合には、コルポスコピーという拡大鏡を用いて子宮頸部をみながら、がんの疑いがある部位の組織を採取(生検)します。
組織診
組織診は、実際にコルポスコピーで観察しながら切り取ってきた組織を顕微鏡で詳しく調べます。
子宮頸部の腫瘍が、表面に止まるがん(異形成、または上皮内腫瘍)なのか、もしくは周囲にも浸潤する子宮頸がんかどうかを診断します。
子宮頸がん検査|細胞診の結果の見方

ベセスダシステムとClass判定、ABC判定で検査結果が報告されます。
例えば、ベセスダシステムでは以下のような結果となります。
| ベセスダ表記 | 考えられる病変 |
|---|---|
| 陰性(NILM) | 微生物、またはその他の非腫瘍性の所見 |
| 扁平上皮系異常 | |
| ASC-US(意義不明な扁平上皮細胞) | がんではなく、軽度の組織の異変(扁平上皮内病変)が疑われる状態が判断がつかない状態 |
| ASC-H(HSILを除外できない異型扁平上皮細胞) | 高度の扁平上皮内病変が疑われる状態 |
| LSIL(軽度扁平上皮内病変) | HPVに感染している、 軽度異形成 |
| HSIL(高度扁平上皮内病変) | 中等度異形成(CIN2)、 高度異形成(CIN3)、 上皮内がん(CIN3)を含む病変がある |
| SCC(扁平上皮がん) | 扁平上皮がん |
| 腺系異常およびその他の悪性腫瘍 | |
| AGC(異型腺細胞) | 腺異型または腺がん疑い |
| AIS(上皮内腺がん) | 上皮内腺がん |
| Adenocarcinoma(腺がん) | 腺がん |
| Other malig.(その他の悪性腫瘍) | その他の悪性腫瘍 |
また、Class判定では、IからVまで分類され、I、IIは陰性、III、IIIa、IIIbを偽陽性、IV、Vは陽性のことを指しています。
以下では、子宮頸部細胞診においての扁平上皮系の異常と、腺細胞系の異常について説明します。
扁平上皮細胞
子宮頸部は、扁平上皮細胞と円柱上皮細胞(腺細胞)の2種類の細胞で覆われています。
どちらかががんになると、子宮頸がん、もしくはその前がん状態となります。
扁平上皮細胞由来のがん(扁平上皮がん)は、子宮頸がん全体の8割程度を占めています。
また、浸潤性子宮頸がんでは、HPV16型が頻度に認められたという報告があります。
扁平上皮系の病変は、ASC-US、ASC-H、LSIL、HSIL、SCCがあり、この順にがんの疑いが強まっていきます。
ASCは扁平上皮内の病変を疑わせるものの、その基準を完全には満たさない細胞の変化を示しています。
腺細胞
腺細胞由来のがん(腺がん)は、子宮頸がん全体の約2割を占めています。
浸潤性子宮頸がんのなかでは、HPV18型が頻度に認められたとされています。
腺細胞系の病変は、AGC、AIS、Adenocarcinomaがあり、この順にがんの疑いが強まります。
子宮頸がん検査|HPV検査の結果の見方

HPV検査は陰性か陽性のいずれかの結果が得られます。
それぞれの場合の対応を解説します。
陰性の場合
精密検査は不要です。子宮頸がんになる可能性については、今後5年間は低いと考えられます。次回のがん検診は5年後に受けましょう。
陽性の場合
HPV検査で用いた検体の残りでトリアージ精検という細胞診が施行されます。
この2つの検査結果を揃えて、本人に最終的に結果が伝えられます。
トリアージ精検が陰性の場合は要追跡精検、陽性の場合は要確定精検となります。
後者の場合には、放置せずに速やかに指定された専門医療機関を受診し、コルポスコープ検査および組織診(確定精検)を受けてください。
子宮頸がん検査|組織診の結果の見方

診断結果は、異常の程度に応じて、以下のように分けられます。
- 軽度異形成(CIN1)
- 中等度異形成(CIN2)
- 高度異形成/上皮内がん(CIN3)
- 上皮内腺がん(AIS)
- 浸潤性子宮頸がん(ICC)
- ICC扁平上皮がん(ICC-SCC)
- ICC腺がん(ICC-ADC)
診断結果を受け取ったら、医師と相談しながら今後の対応を決めることが重要です。
子宮頸がん検査で異常がみられたときの対処法

子宮頸がん検査で異常がみられた場合には、産婦人科で精密検査を受けるようにしましょう。
細胞診を再度行ったり、組織診を行ってがんがあるかどうかをしっかりと調べることが大切です。
なお、LSILの場合には、ただちに治療せずに経過観察することが多いとされています。多くの症例では、自然に病変が自然退縮、つまり治療を行わずとも消失するためです。一方で、HSIL病変が持続してみられる場合には、手術療法の適応となります。
いずれにしても、もしがん検診などで異常を指摘された場合には、きちんと医療機関で再検査・精密検査を受けるようにしましょう。そして、再検査・精密検査の結果に応じて治療もしくは経過観察を受けるようにしましょう。経過観察になった場合には、しっかりとその後も受診を続けることが大切です。
まとめ

今回の記事では、子宮頸がんの検査結果の見方を解説しました。
子宮頸がんは早期発見することがとても重要です。特に、がん検診の対象年齢の方はぜひがん検診を定期的に受けるようにしてください。定期的な検診を受けることで、子宮頸がんの早期発見・予防が可能になります。少しでも不安を感じたら、まずは医療機関に相談しましょう。
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- 尖圭コンジローマ
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- 半身のむくみ
参考文献




