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「肝臓がんの再発率」は何%?再発後の治療についても医師が解説!

 更新日:2025/09/16
「肝臓がんの再発率」は何%?再発後の治療についても医師が解説!
肝臓がんは、肝臓に発生する悪性腫瘍であり、早期発見が難しいため進行した段階で診断されることも少なくありません。そこで、本記事では、肝臓がんの種類や再発率、再発時の予後や治療法について解説します。肝臓がんのことを深く知っておくことで、早期発見や対応を行うのに役立ちます。
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

肝臓がんの種類

肝臓がんは、発生した場所によって原発性転移性に大別されます。本章では、原発性と転移性に分けて、それぞれについて解説します。

原発性肝がん

原発性肝がんは肝臓自体から発生するがんで、主に以下の肝細胞がん胆管細胞がんの2種類があります。

肝細胞がん

肝臓の主な細胞である肝細胞から発生するがんで、原発性肝がんの多くを占めます。慢性肝炎や肝硬変など肝臓の慢性的な病変を背景に発生することが多く、日本だけでなく世界でも頻度の高い肝がんです。

胆管細胞がん

肝臓内の胆管である胆汁の通り道の細胞から発生するがんです。原発性肝がんの約1割を占めます。肝内胆管がんとも呼ばれ、肝細胞がんに比べると発生頻度は低いですが進行が速く、手術で切除できても再発しやすい傾向があります。早期発見が難しい場合も多く、進行すると治療が難しい種類です。

転移性肝がん

転移性肝がんはほかの臓器で発生したがんが肝臓に転移したものです。肝臓は全身の血液が集まる臓器のため、大腸がんや胃がん、乳がんなどさまざまながんが肝臓に転移する可能性があります。転移性肝がんの場合、肝臓以外にも病変があることが多く、原発巣の治療状況や全身状態を考慮して治療法を選択します。肝臓への転移が限られている場合は外科的切除や局所治療が検討されますが、複数臓器に及ぶ場合は抗がん剤治療など全身療法が中心になります。

肝臓がんの再発率

がんは治療を行っても再発する恐れがあります。肝臓がんはその分類によって再発率が異なるため、本章では肝細胞がんと胆管細胞がんに分けて、その再発率について解説します。

肝細胞がんの再発率

肝細胞がんは再発率の高いがんとして知られています。肝細胞がんを手術や焼灼術で治療した後、2年以内に約70%の患者さんで肝臓がんが再発するとのデータがあります。5年後までの累積再発率で見ると約80%にも達するとの報告もあります。このように肝細胞がんは再発しやすく、継続的な経過観察が必要ながんです。

胆管細胞がんの再発率

胆管細胞がんも肝細胞がんに次いで再発しやすいがんです。根治を目指して手術で切除できた場合でも、再発率は高く約50〜70%にのぼります。さらに、再発のうち約半数は術後2年以内という早期に起こることがわかっています。したがって、胆管細胞がんの場合も術後の厳重な経過観察が重要です。

肝臓がんが再発した場合の予後

肝臓がんが再発した場合の予後は、再発の時期や状態によって大きく異なります。一般に、再発までの期間が短いほど腫瘍の悪性度が高いと考えられています。実際、肝細胞がんでは再発患者さんの約70%が最初の治療から2年以内に再発する早期再発型であり、こうした早期再発はほぼ治癒が望めず予後不良とされています。

一度再発すると、その後も肝臓内に繰り返し再発してしまい、患者さんにとって大きな負担となります。しかし、一方で治療可能な再発であれば予後を改善できる可能性があります。再発が1個〜少数で肝臓内にとどまり、かつ肝機能に余裕があるような場合には、外科的切除や局所療法により長期生存が期待できます。

胆管細胞がんの場合は、肝細胞がん以上に再発後の治療選択肢が限られ、一般的に予後は厳しいとされています。再発部位が肝臓内に限局している少数例では肝切除の再施行が検討されることもありますが、現時点で明確な治療指針は確立されていません。胆管細胞がんが再発した場合の5年生存率は低く、多くの症例で再発後数年以内に亡くなることが多いのが現状です。

再発した肝臓がんの治療法

肝臓がんが再発した場合でも、状況に応じてさまざまな治療法の選択肢があります。基本的には初回治療と同様、肝機能と再発したがんの数や大きさ、部位によって適切な治療法を組み合わせます。以下に代表的な治療法について説明します。

手術

再発したがんが肝臓の一部に限局しており、なおかつ患者さんの肝機能に十分な余裕がある場合には、外科的にその部分を再び切除する肝部分切除が根本的な治療になります。手術により再発病変を完全に取り除ければ、再発前と同様に根治を目指すことも可能です。

ラジオ波焼灼術

ラジオ波焼灼術は径の小さい再発病変に対して有効な局所療法です。皮膚から細い針電極を患部の肝臓に刺し、高周波の電流を流すことで腫瘍を熱で凝固壊死させます。身体への負担が少なく、手術に比べ入院期間も短いことが利点です。初回治療後の小さな再発に対しては第一選択となります。ただし、腫瘍が大きかったり数が多かったりすると適応外となる場合があります。また、腫瘍が肝表面近くや横隔膜近くに再発した場合など、部位によっては施行が難しい場合もあります。

肝動脈塞栓治療

肝動脈塞栓治療は、再発した肝臓がんへ栄養を送っている肝動脈という血管にカテーテルを挿入し、抗がん剤と塞栓物質を流し込む治療法です。肝細胞がんは肝動脈から栄養を受ける性質が強いため、この方法で腫瘍の縮小や増殖抑制が期待できます。手術やラジオ波焼灼術が困難な場合に行われる治療です。

肝動注抗がん剤治療(TACE)

カテーテルを用いて抗がん薬を肝動脈に直接持続注入する治療法です。鎖骨下あたりの皮下にリザーバーを埋め込み、そこから肝動脈へつながるカテーテルを留置して定期的に抗がん薬を注入します。肝臓に高濃度の薬剤を届ける一方で全身への影響を抑えられるため、全身化学療法より副作用が少なめである程度繰り返し治療できる利点があります。主に進行あるいは再発肝細胞がんで、肝臓内にとどまるものの腫瘍数が多い場合や門脈腫瘍栓がある場合など、通常のTACEが適応困難な場合に検討されます。

肝臓がんの再発を早期発見するために

肝臓がんは症状が出にくいため、再発の早期発見には定期検診が欠かせません。治療後は主治医の指示のもと、以下のような検査を定期的に行います。特に、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルス、アルコール摂取、喫煙、肥満などは肝細胞がんの危険因子として知られています。そのため、それら危険因子を持つ患者さんはより慎重な経過観察を行うことが重要です。

まとめ

肝臓がんは再発率の高いがんですが、近年の医療の進歩により、再発時にも選択できる治療法が増え、適切に対処することで長期生存を実現できる場合も増えてきました。早期発見ができれば小さな再発の状態で治療を行い、影響を最小限にすることが可能です。そのためには、治療後も定期検査を続けるようにしましょう。

関連する病気

肝臓がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。

関連する病気

関連する症状

肝臓がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。

関連する症状

  • 黄疸
  • 右上腹部の痛み・不快感
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 倦怠感・疲労感
  • 悪心・嘔吐

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