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「肺がん」を発症すると「爪の形」はどのように変化する?医師が徹底解説!

 更新日:2025/03/03
「肺がん」を発症すると「爪の形」はどのように変化する?医師が徹底解説!

肺がんを発症すると爪の形はどのように変化する?Medical DOC監修医が肺がんの初期症状・原因・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

羽田 裕司

監修医師
羽田 裕司(医師)

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(名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 呼吸器外科 部長/教授(診療担当))

名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。

「肺がん」とは?

肺がんとは、肺の細胞から発生する悪性腫瘍、つまりがんのことです。
肺がんは早期の段階では症状がない場合も多いですが、咳や痰、血痰、胸の痛みといった症状が知られています。また、肺がんの方では爪の形が変形するといった、胸以外の症状が現れる場合もあります。

肺がんを発症すると爪の形はどのように変化する?

肺がんになると、爪の形に変化が現れることがあります。これは「ばち状指」といい、指先がぷっくりと丸く膨らんで、爪が指先を包むように丸く反り返るように変化することです。血液の酸素が不足したときに起こる変化で、肺がんをはじめとする呼吸器や心臓の病気と関係があるといわれています。
ばち状指は肺がん患者の約5〜15%に見られるとされており、肺がん患者の全てに起こるわけではありません。
ここでは、ばち状指になると爪の形にどのような変化がみられるのか解説します。

指の先が太くなる

ばち状指では、指の先端が丸く膨らみ、爪が大きくなることが特徴です。指の先端がぷっくりとした見た目になり、通常の爪とは異なった形になります。

爪が反り返る

爪の根元からカーブが強くなり、ドーム状に盛り上がるようになります。そのため、爪を横から見ると、逆さまにしたスプーンのような外観になります。

シャムロスサイン(Schamroth’s sign)という兆候がみられる

ばち状指の特徴的なサインとして、「シャムロスサイン」があります。これは、両手の爪同士を向かい合わせたときに、通常見られるダイヤモンド型の隙間がなくなる現象のことです。ばち状指が進行すると、指と爪が密着し、隙間が完全になくなってしまいます。

爪の形が変化したら肺がんのステージ分類はいくつ?

肺がんは、他のがんと同様に、がんの大きさやリンパ節や他の臓器への転移の程度によってステージIからIVまで分類されています。
一方、ばち状指は、慢性的な低酸素血症によって起こるのではないかと考えられています。
そのため、ばち状指が見られる際には、肺がんのステージがIIIやIVに進行している可能性があります。
ばち状指があるからといって、必ず進行肺がんというわけではありません。ただし、進行がんで低酸素状態が持続するとばち状指が出現しやすくなるため、肺がんの進行の一つの指標になると言えるでしょう。
しかし、ばち状指は慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)や特発性肺線維症などの肺疾患や、チアノーゼ性先天性心疾患、感染性心内膜炎などの心血管疾患でも生じることがあります。

肺がんの前兆となる初期症状

肺がんは早期の段階では症状が現れないことも多いです。しかし、以下のような初期症状が肺がんのサインとなっている場合もあるので、注意しましょう。

咳は、肺がんの症状として、頻繁にみられるものです。特に、喫煙している、あるいは喫煙歴のある方で咳が続く場合には注意が必要です。
2週間以上咳が長引くような場合には、呼吸器内科や内科を受診するようにしましょう。

血痰

喀血は肺がんと診断された患者の約15~30%にみられたとする報告もあります。血痰の最も一般的な原因は気管支炎ですが、喀血がみられた際には早急に呼吸器内科や内科を受診するようにしましょう。

胸の痛み

肺がんを呈する患者の約20〜40%に胸痛がみられるとされています。胸の痛みは、高齢患者よりも若年患者に多い症状です。痛みは通常、肺がんがあるのと同じ側の胸部に現れます。縦隔、胸膜、または胸壁への浸潤により、鈍くうずくような持続的な痛みが生じることがありますが、痛みがあっても必ずしも切除が不可能になるわけではありません。持続する胸の痛みがある場合には、早めに内科を受診しましょう。

肺がんを発症する原因

ここでは、肺がんを発症する原因として考えられているものを紹介しましょう。

喫煙

喫煙は、肺がんの原因としてもっとも影響が大きいものです。
喫煙者は非喫煙者と比べ、男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんになりやすいとされています。
タバコを吸い始めた時期が早く、吸う量が多いほど肺がんになるリスクが高まります。
受動喫煙によっても肺がんのリスクは高まります。

アスベストなどの有害物質

アスベスト(石綿)は、過去にビルなどの建設工事などに保温断熱のために使用されていた繊維状ケイ酸塩鉱物です。現在では使用は禁止されています。
吸い込むことで、肺がんや肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫という肺を包む膜のがんなどを引き起こす可能性があります。肺がんの場合、アスベストを吸い込んでから15〜40年ほど経ってから病気になると言われています。そのため、以前にアスベストを吸っていた方や現在建築に携わっている方は、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。

肺がん以外の呼吸器疾患の既往

肺結核や肺気腫、慢性気管支炎、喘息などの呼吸器疾患の既往が肺がんリスクとなることが報告されています。しかし、詳しいメカニズムなどは現時点では不明な点もあります。
そのため、こうした呼吸器の病気があるからといって肺がんに必ずなるわけではありません。何らかの呼吸器疾患をお持ちの方は、呼吸器内科などでしっかりと治療を受けることが大切です。

肺がんの検査法

肺がんの検査方法には、以下のようなものがあります。

胸部X線検査

肺がんの初期診断で最も一般的な検査です。体への負担が少なく、短時間で行うことができ、多くの情報を得られます。
胸のX線写真を撮り、異常がないかを確認します。通常は外来で行うことができ、所用時間は5分ほどです。健診センターや内科、呼吸器内科などで行います。

胸部CT検査

肺がんが疑われるような病変がある際、胸部CT検査が行われます。
肺がんの大きさや形、リンパ節や他の臓器への転移の有無などを検査できます。造影剤を用いて、さらに詳細に肺がんの大きさや転移の状況を調べることもあります。
通常は呼吸器内科や呼吸器外科などの外来での検査が可能です。

病理検査

画像検査で肺がんが疑われる場合、肺がんの種類や遺伝子変異などを詳細に調べるため、細胞や組織を採取する病理検査を行います。
病理検査の多くは気管支鏡検査という、細いカメラ(気管支鏡)を鼻や口から挿入する検査で行われます。病変部位から組織を摘んで取ったり(経気管支肺生検)、ブラシでこすり取ったり(擦過細胞診)するものがあります。また、肺の中に生理食塩水を入れて洗った液を回収し検査する(気管支肺胞洗浄)検査もあります。
気管支鏡検査の場合、入院で行うことが一般的ですが、場合によっては外来でも行うことがあります。呼吸器内科で行います。

肺がんの治療法

肺がんの治療は、がんの進行度や種類、患者さんの体力や既往歴などによって選択されます。一般的には、①手術、②薬物治療、③放射線治療のいずれか、または組み合わせて治療を行います。

手術

非小細胞肺がんの早期では、手術が治療の中心となります。がんを完全に取り除くための切除範囲は、病状に応じて異なります。片側の肺をすべて摘出する場合(肺全摘)から、病変のある部分のみを切除する楔形(けつじょう)切除までさまざまです。
手術は主に呼吸器外科や胸部外科で実施され、多くの場合、入院期間は1〜2週間ほどです。

薬物治療

薬物療法は、がんが広がった場合にも効果を発揮し、全身に作用する治療法です。小細胞肺がんでは標準治療とされ、非小細胞肺がんでも進行度が高く手術が困難な場合に選択されます。
薬物治療では、細胞傷害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが用いられます。それぞれ、患者さんのステージや病状に応じて使われます。
初めて細胞傷害性抗がん薬を使用する場合は、入院して初期治療を行い、その後外来での継続治療となることが一般的です。一方で、経口薬(飲み薬)による治療では入院の必要がないこともありますが、定期的な外来診察で副作用の有無や治療効果を確認する必要があります。
薬物療法は主に呼吸器内科や腫瘍内科で行われます。

放射線治療

放射線治療は、がんのある部位に高エネルギーの放射線を照射してがん細胞を破壊する治療法です。
手術が難しい場合には、薬物療法と組み合わせた化学放射線療法が実施されることがあります。単独で放射線治療を行うケースもあり、特にがんの局所制御を目的とする場合に選択されます。
脳や骨、肝臓などへ転移した場合には、症状(痛み・頭痛・ふらつきなど)を和らげる目的で放射線治療が行われることがあります。
放射線治療は放射線治療科で行われ、通常は外来通院が可能です。ただし、化学療法と同時に実施する場合や、全身状態が悪い場合には入院が必要になることもあります。

「肺がんの爪の形」についてよくある質問

ここまで肺がんの爪の形などを紹介しました。ここでは「肺がんの爪の形」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

爪の状態で呼吸器系疾患を患っているかわかるのでしょうか?

羽田 裕司羽田 裕司 医師

ばち状指があるからといって、必ず肺がんとは限りません。
例えば、肺膿瘍、気管支拡張症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、石綿肺などでもばち状指になることがあります。呼吸器系疾患以外にも、心臓や肝臓の病気などでばち状指が起こることもあります。

編集部まとめ

今回の記事では、肺がんによる爪の変化として、ばち状指というものについて解説しました。ばち状指は肺がん以外の疾患でもさまざまな病気で起こりえます。
爪の変化に気づいた際には、何らかの病気が隠れていることもあります。気になる症状がある場合には、医療機関の受診をおすすめします。

「肺がん」と関連する病気

「肺がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器科の病気

肺がんと関連する病気には、これらのようなものがあります。咳や痰などの症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。

「肺がん」と関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 血が混じる咳
  • 胸、背中、肩の痛み
  • 突然起こる息切れ
  • 声枯れまたは喘鳴
  • 飲み込みにくくなる、または飲み込むときに痛みがある
  • ばち状指(指先が丸く平たく変形すること)
  • 原因不明の体重減少
  • 疲労感や脱力感
  • 食欲不振

肺がんと関連する症状には、上記のようなものがあります。呼吸器の症状以外にも、体の他に症状が現れることがあります。気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師

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