どれくらい「胃もたれが続くと胃がん」を疑うべき?医師が徹底解説!

どれくらい胃もたれが続くと胃がんを疑うべき?Medical DOC監修医が胃もたれを発症する原因・続く原因・初期症状・なりやすい人の特徴・予防法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんとは、胃の粘膜内の細胞ががん化して増殖する病気です。日本では特に多いがんの一つで、男女ともに罹患率4位に位置します。粘膜にできたがんは、最初はできた粘膜の部分に留まります。しかし、徐々に大きくなるとより外側へ広がり、深くなると血液やリンパの流れに乗り他の臓器に転移するケースもあるのです。
胃がんは進行度によって以下のように分類されます。
・早期胃がん:胃がんが粘膜または粘膜下層に留まる
・進行胃がん :胃がんが粘膜の外側にある筋層より深い部分に達する
早期胃がんの基本的な治療は「内視鏡治療」です。内視鏡つまり胃カメラを用いて、ナイフの様なものでがんを切除します。体への負担が少ないのが特徴です。また進行胃がんの基本的な治療法は「手術」です。できたがんや転移の可能性がある周りの組織を、手術で取り除きます。
しかし、手術で取り切れない、手術後の再発などの場合は化学療法(抗がん剤治療)も選択肢です。
どれくらい胃もたれが続くと胃がんを疑うべき?
「どれくらい胃もたれが続くと、胃がんの可能性がある」という明確な基準はありません。しかし、食べすぎや飲みすぎ、胃腸炎などによる胃もたれは一過性のものです。
そのため、1~2週間経っても胃もたれが続く場合は、胃がんを含む何かしらの病気を疑って受診する方がよいでしょう
胃もたれを発症する原因
胃もたれは、様々な原因によって起こります。ここからは、胃もたれを起こす原因と、どのような対処が必要かを解説します。
食べすぎ・飲みすぎ
食べすぎや飲みすぎによって、胃もたれが起こるケースがあります。具体的には、焼肉や揚げ物などの脂分の多い食事は消化に時間がかかり、胃の粘膜に負担をかけて胃もたれを引き起こします。その他辛いものを食べた場合やお酒を飲み過ぎた場合も同様です。ただし食べたものが消化されれば解消するため、1~2日で解消するケースがほとんどです。しかし、強い吐き気や1週間以上胃もたれが続く場合は消化器内科を受診するとよいでしょう。
感染性胃腸炎
胃もたれと共に下痢や腹痛、発熱などが見られる場合は、「感染性胃腸炎」の可能性があります。感染性胃腸炎は子どもがかかると下痢や嘔吐などの強い症状が出やすいのですが、大人は軽く済むこともあり、胃もたれが出る程度の場合もあります。
症状が続く期間はかかったウイルスの種類によって異なり、1~8日程度です。症状が強く、食事や水分が摂れない状況が続く場合は内科や消化器内科を受診しましょう。
妊娠
妊娠によりホルモンや代謝に変化が生じると、「つわり」による胃もたれや吐き気があらわれるケースがあります。
また、妊娠後期になると、大きくなった子宮に胃が圧迫されて胃もたれが起こるケースもあります。
妊娠が判明し、食事や水分が摂れない場合は、早めに産婦人科へ相談しましょう。
胃もたれが続く発症する原因
胃もたれは一過性のものもありますが、以下のように症状が続く場合は大きな病気が隠れている可能性もあります。当てはまる症状がないか、チェックしてみてください。
慢性胃炎や胃潰瘍
慢性胃炎や胃潰瘍によって胃の粘膜が傷つくと、胃もたれが続くことがあります。
胃炎や胃潰瘍の代表的な症状は、胃の粘膜が傷ついたことによる「胃もたれ」「胃の痛み」「吐き気」などです。胃潰瘍がひどくなると潰瘍の部分から出血し、黒い便が出たり血を吐いたりする可能性もあります。
考えられる原因を、いくつか紹介します。
・ヘリコバクター・ピロリ菌の感染
・痛み止めの乱用(長期もしくは多量に服用)
・ストレスや喫煙、アルコールなどの生活習慣
強い腹痛や、便に血が混じる、吐血するなどの症状が出た際は、出来るだけ早く受診し、処置を受ける必要があります。消化器内科を受診しましょう。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、明らかな原因(器質的疾患)が見当たらないにもかかわらず、胃もたれや胸やけなどの症状が続く病気です
現在考えられている原因は、ストレスや遺伝、生活習慣の乱れなどです。
機能性ディスペプシアは命にかかわることはないと言われている病気ですが、胃もたれの原因は他の重大な病気である可能性も考えられます。胃もたれが続く場合は、早めに消化器内科を受診するとよいでしょう。
胃がん
胃がんとは、胃の粘膜にできるがんのことです。
胃がんの原因を、いくつか紹介します。
・ヘリコバクター・ピロリ感染
・塩分
・アルコール
・喫煙
胃がんの症状は、以下のとおりです。
・胃もたれ
・食欲低下
・体重減少
・吐き気・嘔吐
・黒色便
ただし、胃がんは症状があらわれにくいため、かなり進行するまで無症状のケースもあります。胃炎や胃潰瘍との区別は患者さん本人では難しいため、当てはまる症状があったらすぐに消化器内科を受診しましょう。
胃がんの初期症状
胃がんになると、胃の痛み・不快感、胃もたれ・胸やけ、食欲不振・体重減少、黒色便などがあらわれるケースがあります。症状が出た際の対処法を、順番に説明します。
胃の痛み・不快感
胃がんで胃の粘膜がダメージを受けると、胃の痛み、不快感の出るケースがあります。まず消化の良い食べ物で様子を見て、症状が何日も続くようなら、消化器内科を受診しましょう。
胃もたれ・胸やけ
胃がんでは、痛みはなく、胃もたれや胸やけが出るケースもあります。食べすぎ・飲みすぎなどの思い当たる症状が無いのに続く場合は、消化器内科を受診しましょう。
食欲不振・体重減少
「なんだか食欲がなくて食べられない」「食欲の無い状態が続き、体重が減った」という場合は、胃の粘膜に何らかの異常が生じている可能性があります。消化器内科を受診しましょう。
黒色便
胃がんによって胃の粘膜から出血すると、血液が胃酸により酸化され黒い便が出る場合があります。
鉄剤を服用していると便が黒くなるケースはありますが、特に薬を飲んでいないのに黒い便が出る場合は、胃潰瘍もしくは胃がんの可能性を疑います。速やかに消化器内科を受診しましょう。
胃がんになりやすい人の特徴
胃がんになりやすい人には、いくつかの特徴があります。多く当てはまる人は、ぜひ胃がん検診をおすすめします。
ピロリ菌に感染している
「ピロリ菌」という細菌に感染している人は、胃がんになりやすいことが分かっています。具体的には、ピロリ菌に感染している人は通常の人よりも胃がんに5倍なりやすいという研究報告もあります。
ピロリ菌はもともと土壌にいる細菌で、以下の方法で感染すると考えられています。
・汚染された井戸水を飲んだ
・感染している人と食べ物を口移ししたり食器を共有したりした
5歳頃までに感染するケースが多く、一度感染するとピロリ菌は除菌されるまで胃の粘膜に生息し続けます。
ピロリ菌は胃の粘膜を攻撃し続け、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんのリスクになるといわれています。
胃がんになりやすい食生活を送っている
胃がんは、以下のような食生活によってリスクが高まるといわれています。
・塩分が多い
・野菜や果物の摂取量が少ない
脂肪が少ないため、「日本型食生活は健康にいい」と言われがちですが、塩分が多いため胃がんに関してはリスクとなります。以下のような食べ物は塩分が多いため、食べすぎは控えましょう。
・漬物
・塩辛
・味噌汁
・塩蔵魚卵
また、お酒を多く飲む人も、胃がんのリスクは高まります。
喫煙習慣がある
たばこの煙には、DNAを傷つけてがんになる可能性を高める物質が多く含まれています。そのため、たばこを吸う人は、たばこを吸わない人に比べて2倍胃がんになりやすいという報告があります。
また、たばこを吸う本数が多い、長く吸っている人ほどリスクは高いです。
家族に胃がんになった人がいる
家族に胃がんになった人がいる人は、胃がんになりやすいといわれています。具体的には、家族に胃がんになった人がいる(「家族歴」といいます)人はいない人よりも、リスクが1.44倍高いという報告があります。
胃がんを予防する可能性の高い食べ物・食生活
ここからは、胃がんを予防する可能性の高い食べ物をご紹介します。ただし、胃がんの発症にはさまざまな要因が関わるため、必ず予防できる訳ではないことは覚えておきましょう。
野菜や果物
野菜や果物には抗酸化作用があり、ピロリ菌によるダメージを抑えて胃がんを予防する可能性があります。緑黄色野菜を含む野菜全般、果物全般を意識して摂るように心がけましょう。
塩分の少ない食事
塩分は、胃がんのリスクを上げることが分かっています。塩分摂取量を減らすために、以下の内容を心がけるとよいでしょう。
・醤油や味噌は減塩タイプを選ぶ
・だしのうまみやレモン、酢などの酸味を利用する
最初は物足りなく感じるかもしれませんが、健康のために少しずつでも塩分の少ない食品を選ぶように心がけてみてください。
胃がんの予防法
これから紹介する方法を行うことで、胃がんのリスクを下げられます。できるものから取り入れてみましょう。
ピロリ菌を除菌する
まず行いたいのは、胃がんの最大のリスクといわれるピロリ菌の除菌です。健康診断や人間ドッグなどでピロリ菌を指摘されたら、内科・消化器科を受診しましょう。
除菌の際は、胃薬1種類と抗生剤2種類の飲み薬を組み合わせたセットを1週間服用します。
生活習慣をととのえる
胃がんの原因となる「塩分の多い食事」「喫煙」「過剰な飲酒」「野菜や果物の不足」などをやめることで、胃がんになるリスクを軽減できます。
定期的な検診を受ける
胃がんは初期症状があらわれにくく、定期的ながん検診が発見に効果的です。胃がんは加齢とともにリスクが上がるため、50歳以上の男女は胃がん検診をうけるのが望ましいとされています。
具体的な方法は、胃バリウム検査(胃X線検査)や胃内視鏡検査(胃カメラ)などです。
細かな検診内容は自治体によって異なるため、市町村からの通知を確認してみてください。
ただし40歳以上から胃がんのリスクは上がるので、症状がある場合や心配な方は早めに受けることも検討してください。
「胃もたれが続く胃がん」についてよくある質問
ここまで胃もたれが続く胃がんなどを紹介しました。ここでは「胃もたれが続く胃がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃もたれが続くと胃がんの他にどんな病気を疑いますか?
浅野 智子 医師
胃もたれが続く場合、胃がん以外に以下の病気を疑います。
・機能性ディスペプシア:胃の機能異常による慢性的な胃もたれ
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍:ピロリ菌による感染や痛み止めの乱用による粘膜の損傷
・ 慢性胃炎:ピロリ菌感染や長期的な炎症。
診察・検査をしないと胃もたれの原因は分からないため、気になる症状がある場合は早めにご受診ください。
編集部まとめ 胃もたれが胃がんの兆候かも?長く続く時には消化器内科へ
胃もたれが続く場合胃潰瘍や胃炎と思われがちですが、胃がんの症状である可能性もあります。胃もたれで胃がんに気づいた場合、症状がかなり進行しているケースも珍しくありません。
胃もたれが続く、食欲が落ちて体重も減ったなどの場合はすぐに消化器内科を受診しましょう。また、定期的にがん検診をうけることもぜひ検討してみてください。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃や胃に近い十二指腸の病気が考えられます。胃がんと症状が近いため、早めの受診をおすすめします。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
とくに症状が一時的でなく、継続して続く場合は大きな病気が隠れている可能性も考えられます。胃がんは早めの処置が大切なため、気になる症状がある場合はなるべく早い受診をおすすめします。




