「子宮頸がん」を発症すると「おりもの」にどんな特徴が現れる?初期症状も医師が解説!
子宮頸がんを発症するとおりものにどんな特徴が現れる?Medical DOC監修医が子宮頸がんの初期症状・末期症状・検査・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
「子宮頸がん」とは?
子宮頸がんは、子宮の入口である子宮頸部にできるがんのことです。早期の段階では症状がみられないことが多いです。しかし、進行するとおりものの性状の変化や出血、痛みが現れることがあります。
今回の記事では、子宮頸がんになるとおりものにどのような特徴が現れるのかを詳しく解説します。さらに、子宮頸がんの他の症状についても解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
子宮頸がんを発症するとおりものにどんな特徴が現れる?
おりものは、子宮頸部や腟が分泌する液体のことです。正常な場合には、透明や白色です。一方で、以下のような場合には、子宮頸がんの兆候である可能性があり、注意が必要です。
おりものに血が混じる
月経不順や妊娠(着床出血)の場合にも、おりものに血が混じることはあります。しかしながら、月経に関係していないタイミングでおりものに血が混じる場合には、特に注意が必要です。子宮頸がんからの出血などの問題があるかもしれません。産婦人科を受診するようにしましょう。
おりものの量が多くなる
おりものの量は、排卵期には多くなることもあります。しかし、月経周期に関連していないタイミングで突然おりものの量が多くなった際には気をつけましょう。特にサラサラした水様性のおりものには注意が必要です。産婦人科の受診をお勧めします。
おりもののにおいが変わる
おりものは、正常でもにおいがする場合がありますが、大半は悪臭と感じられるものではありません。一方で、子宮頸がんが進行すると、おりものの強いにおいや不快なにおいが感じられることがあります。不快なほどのにおいの変化がみられる場合には、早めに産婦人科を受診しましょう。
子宮頸がん以外でおりものに変化が生じる原因
子宮頸がん以外でも、以下のような場合にはおりものに変化が起こる可能性があります。
腟カンジダ症
腟カンジダ症は、カンジダという真菌(かび)が腟で増殖することで起こる病気です。
カンジダは、正常でも腟にいる常在菌ですが、体力や免疫力が落ちた際には症状が出てしまうことがあります。外陰部の強いかゆみや、白く濃厚なカッテージチーズのようなおりものが生じることが症状として挙げられます。産婦人科を受診しましょう。
淋病やクラミジアなどの性感染症
淋病やクラミジアは、性行為によって感染する性感染症として代表的なものです。これらに感染すると、濁った黄色や緑色のおりものが出る場合があります。治療せずに放置すると、骨盤内炎症性疾患(PID)にまで進行し、不妊や異所性妊娠(子宮外妊娠)の原因になることもあります。産婦人科を受診しましょう。
妊娠や排卵期
病気でなくとも、妊娠中や排卵期にはおりものが増えることがあります。妊娠中には、特に腟を感染から守るためにおりものの分泌量が多くなります。
子宮頸がんの前兆となる初期症状
ここでは、子宮頸がんの疑いがある症状について解説します。
不正出血
子宮頸がんは、正常な組織よりも出血しやすいため、月経期ではない時期にも出血がみられることがあります。これを不正出血と呼びます。
排卵期に出血する中間期出血や、炎症による出血もありますが、実際に診察を受けなければ判断は難しいです。産婦人科を受診しましょう。
性行為時の出血
性行為時の出血も子宮頸がんのサインかもしれません。
特に、出血が繰り返される場合には注意が必要です。放置せずに、産婦人科を受診するようにしましょう。
悪臭をともなったり血が混じったりするおりもの
先ほど述べたように、おりものの変化も子宮頸がんの可能性を示唆します。
早めに産婦人科を受診しましょう。
水っぽいおりものが大量に出る
前述したように、子宮頸がんが進行するにつれて、おりものが水っぽくなったり(水様性)、あるいは大量になったりすることがあります。
放置せずに、産婦人科を受診しましょう。
生理が通常より重くなり、長引く
子宮頸がんの可能性を示唆する症状として、生理の際の出血が多くなったり長引いたりすることもあります。これらは、子宮筋腫などの他の病気のサインの場合もあります。しかし、こうした症状が続く際には産婦人科を受診しましょう。
子宮頸がんの末期症状
子宮頸がんが進行すると、子宮頸部でのがんが大きくなり周囲にも浸潤することがあります。また、リンパ節や他の臓器にも転移した場合は、末期状態であると言えます。
末期には、以下のような症状が現れることがあります。
多量の出血
子宮頸がんそのものが大きくなると、がんの組織からの出血量も多くなります。また、がんが浸潤したことで傷ついた組織からの出血も見られます。その結果、腟から多量の出血が起こる可能性があります。
すでに子宮頸がんの治療を受けている場合には、すぐに主治医に報告し診察を受けるようにしましょう。まだ産婦人科医の診察を受けていない場合には、早急に受診してください。
骨盤や下腹部、腰の痛み
子宮頸がんが骨盤の中で大きくなり、周囲の神経にも浸潤することで、骨盤や下腹部、腰の痛みも生じます。
尿や便に血が混じる
子宮頸がんの浸潤により、膀胱や尿管、あるいは直腸などからの出血が見られることがあります。その結果、尿や便に血が混じるといった症状が現れることもあります。
下半身のむくみ
子宮頸がんの病変が大きくなり、そけい部や骨盤内のリンパ液の流れを悪くしてしまうことがあります。また、子宮頸がんに対する手術などの治療後には、骨盤内のリンパ節を取り除くために、リンパ液の流れが悪化する場合があります。すると、特に下半身のむくみが起こりやすくなります。
対処法としては、弾性ストッキングの着用などがありますが、根本的な解決とはなりません。治療を受けている場合には、主治医に相談しましょう。
食欲不振、体重減少
がんの進行によって全身状態が悪化し、食欲低下がみられることがあります。また、がんは正常な細胞よりもたくさんのエネルギーを消費するため、体重減少もみられます。
子宮頸がんの検査法
ここでは、子宮頸がんの検査法について解説します。
以下に述べた方法の他にも、腟に指を入れて子宮や卵巣・卵管の位置や形、硬さなどを調べる内診も用いられます。
細胞診
子宮頸部の細胞を、ブラシのような器具を使ってこすりとって採取し、異常がないか調べます。産婦人科の外来で行われ、通常は入院の必要はありません。
コルポスコピー・組織診
細胞診で異常がみられた場合には、コルポスコピーといって拡大鏡を使って子宮頸部を観察する検査を行います。結果にもよりますが、必要な場合には、子宮頸部円錐切除術を行い、より詳細な組織診を行うこともあります。この検査も産婦人科の外来で行われ、通常は入院の必要はありませんが、子宮頸部円錐切除術については入院となることが多いです。
画像診断
画像診断としては、超音波検査やCT・MRI検査、PET-CT検査があります。
超音波検査は経腟と経腹の2種類あり、経腟は腟からプローブを当てて子宮や卵巣の状態を確認し、経腹は体の表面からプローブを当て、子宮や周りのリンパ節、卵巣などの状態を調べることができます。放射線被爆の問題がないことや、リアルタイムで検査ができることなどがメリットです。
また、CTでは子宮頸がんの周囲への浸潤やリンパ節・他臓器への転移の有無を調べることができます。MRIでは、子宮頸がんの周囲への広がりなどをより詳細に調べることに長けています。その他、放射性フッ素で標識したブドウ糖を注射することで、がんの全身への広がりを調べるPET-CT検査もあります。いずれも外来で行うことができます。産婦人科で行います。また必要に応じて、膀胱や消化管の精査をそれぞれ泌尿器科や消化器科で行う場合もあります。
子宮頸がんの治療法
ここでは、子宮頸がんの治療法について解説します。
外科手術
早期のがんの場合、子宮頸部円錐切除術で子宮頸部のがんの部分を含めた小範囲を切除します。この手術は診断目的で行われますが、早期の段階ではそのまま治療になります。
手術で切除した組織をさらに詳しく調べる組織診を行い、その結果に基づいて治療方針を決めていきます。
進行期の場合には、追加で治療目的での手術治療が行われることがあります。単純子宮全摘術、準広汎子宮全摘術、広汎子宮全摘術の3つが代表的です。この順に、手術の範囲が大きくなり、子宮そのもの、あるいはその周囲の組織も含めて子宮を摘出します。
手術は産婦人科医が行い、入院が必要です。
入院期間は手術の方法によっても異なります。円錐切除では1〜3日程度、腹腔鏡下手術ならば5日程度、開腹手術の場合には10日ほど要するのが一般的と考えられます。
放射線治療
放射線治療は、高エネルギーの放射線をがんに照射して治療するものです。
子宮頸がんに対する放射線治療としては、体の外からX線を当てる外部照射と、内部からγ線を照射する密封小線源療法があります。密封小線源療法では、病変部に挿入/刺入、留置した専用の器具(アプリケータ)内に、遠隔操作式後充填法(remote after loding system; RALS)でIr-192あるいはCo-60の高線量率密封小線源を送り込みます。
進行期の子宮頸がんの根治的治療として、薬物療法と放射線治療を組み合われた化学放射線治療が選択されることがあります。また、早期の場合には、放射線治療単独治療が行われることもあります。
子宮頸がんが他の臓器に転移した際に、その治療として放射線治療を行う場合もあります。
放射線治療は外来通院で可能ですが、薬物療法を同時に行う際や患者の全身状態が悪い場合には入院して行うこともあります。
薬物療法
子宮頸がんに対する薬物療法は、進行がんに対する同時化学放射線治療の場合と、遠隔転移のある場合に行われます。
白金製剤(プラチナ系)を含む細胞障害性抗がん薬や、最近では分子標的薬なども用いられます。
薬物療法は、産婦人科や腫瘍内科などで行われます。外来でも行うことができますが、患者の全身状態や通院状況によって入院で行われることもあります。
「子宮頸がんの初期症状とおりもの」についてよくある質問
ここまで子宮頸がんの初期症状とおりものなどを紹介しました。ここでは「子宮頸がんの初期症状とおりもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がんを発症するとおりものにはどんな匂いがしますか?
浅野 智子 医師
子宮頸がんを発症すると、おりもののにおいがきつくなり、不快な悪臭と感じられる場合もあります。
編集部まとめ
今回の記事では、子宮頸がんによるおりものの変化や初期症状について解説しました。
正常であっても月経周期などでおりものの量や質が変わることはあります。しかし、いつもと違うなと思うようなことがあれば、早めに産婦人科を受診しましょう。
「子宮頸がん」と関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 尖圭コンジローマ
- 子宮頸部異形成(CIN)
尖圭コンジローマは、HPV感染が原因となる点子宮頸がんと関連しています。また、CINは子宮頸がんの前癌病変です。早期発見、治療が重要です。
「子宮頸がん」と関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 不正出血
- 性行為時の出血
- おりものに血が混じる
- おりものが不快なにおいになる
- 腹痛
- 腰痛
- 骨の痛みや骨折
- 倦怠感
- 腟からの尿や便の漏れ
- 足の痛み
- 食欲不振
- 骨盤痛
- 片足の腫れ
- 体重減少
子宮頸がんは早期の段階では症状がないことも多いです。こうした症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。