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「肺がんの自覚症状」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

 公開日:2025/03/13
「肺がんの自覚症状」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

肺がんの自覚症状とは?肺がんの初期症状・末期症状・なりやすい人の特徴・検査法・治療法について医師が徹底解説!

羽田 裕司

監修医師
羽田 裕司(医師)

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(名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 呼吸器外科 部長/教授(診療担当))

名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。

「肺がん」とは?

肺がんとは、肺胞や気管支の細胞から発生するがんです。日本でも肺がんの罹患率・死亡率は高く、2023年のデータでは日本人のがん死亡原因の第1位となっています。
この記事では、肺がんの自覚症状について詳しく解説します。

肺がんの自覚症状

肺がんは、早期の段階では症状が出ない場合も多いです。
肺がんの自覚症状は、がんが肺やその周囲に浸潤するために起こるものと、他の臓器などへの転移が原因となるものに分けられます。

咳は、肺がんの症状としてよくみられます。肺がん患者の50〜75%の方の診察時に認められたという報告もあります。特に、扁平上皮がんや小細胞がんというタイプでは太い気道を侵す傾向があるため、これらのがんの方では咳が頻繁に見られます。
現在、あるいは過去に喫煙をしていた方で、長引く咳が見られる場合には特に注意が必要です。早めに呼吸器内科を受診しましょう。

血痰

肺がんによって、痰に血が混じる(血痰)の症状が出ることがあります。
しかし、この症状は気管支炎などの他の病気の場合も多いです。
いずれにしても、血痰があった場合、胸部レントゲンなどの検査が望ましいと考えられます。呼吸器内科を受診しましょう。

胸痛

胸痛も、肺がんの症状としてよくみられるものです。肺がんの方の約20〜40%で胸痛がみられたという報告もあります。
特に、若い方で多く見られるようです。肺がんによる胸痛は、鈍く、うずくような痛みが典型的とされています。
肺がんが肺を包む胸膜や胸壁に、または左右の肺の間に存在する縦隔に浸潤することで起こります。しかし、この症状があるからといって必ずしも手術が不可能になるとは限りません。
胸痛の原因には、他にも筋肉や骨格の問題や、心臓の病気などいろいろなものがあります。
胸痛が続く場合には、一般内科あるいは呼吸器内科などを受診するようにしましょう。

肺がんの初期症状

ここまで、肺がんの典型的な症状について解説しました。
肺がんの場合、初期の段階では自覚症状がないことがほとんどです。
一方、以下のような症状は肺がん初期のサインである可能性もあります。

息切れ

息切れは肺がんの初期に見られることがある症状の一つです。軽い運動や階段の上り下りといった日常の動作で息苦しさを感じることが特徴で、進行すると安静にしていても呼吸が辛くなることがあります。初期の段階では、疲労や加齢、運動不足といった要因と混同されがちですが、症状が続く場合は注意が必要です。
息切れが続いたり、急激に悪化したりする場合は、呼吸器内科を受診することをおすすめします。特に、動作中だけでなく安静時にも息苦しさを感じる場合は、早急な受診が必要です。

発熱

肺がんの初期症状として、原因不明の微熱が続くことがあります。この発熱は風邪の症状と似ており、見逃されやすいのが特徴です。
風邪を引いたと思い、薬を服用してもなかなか熱が下がらない場合は、何らかの病気を疑う必要があります。特に抗生物質を使っても症状が改善しない場合は注意が必要です。5日以上発熱が続く場合は呼吸器内科や内科を受診するようにしましょう。

動いた時の息苦しさや動悸

肺がんの初期段階では、まれではありますが動いた時の息苦しさや動悸が現れることがあります。突然、心臓がドキドキしたり、脈が速くなるように感じたりすることがあります。肺の腫瘍が心臓や血管を圧迫することで起こることがあります。
動悸が頻繁に起こる場合や胸の痛みを伴う場合は、循環器内科や呼吸器内科を早めに受診することが望ましいです。特に胸痛を伴う場合は緊急性が高いため、速やかに救急外来を受診する必要があります。

肺がんの末期症状

肺がんの進行期や末期のステージでは、肺がんがかなり大きくなったり、他の臓器に転移したりします。そのため、以下のような症状が現れることがあります。

肩や背中の痛み

がんが骨やその周囲の神経に及ぶと、肩や背中の痛みが起こることがあります。
整形外科を受診したところ、肺がんの転移が発覚することもあります。痛みが続くようであれば、整形外科や内科を受診するようにしましょう。

頭痛、ふらつき、手足の麻痺

がんが脳に転移すると、頭痛、ふらつき、手足の麻痺が出現することがあります。一方で、こうした症状は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳血管障害の症状でもあります。
脳神経外科や神経内科をまずは受診するようにしましょう。

全身の衰弱、食欲不振

がんの進行に伴い、体がエネルギーを大量に消費するため、著しい体重減少や全身の倦怠感が現れます。また、食欲がほとんどなくなり、日常生活が困難になります。体力が低下し、寝たきりになることも少なくありません。

肺がんになりやすい人の特徴

ここでは、肺がんになりやすい人の特徴について解説します。

喫煙している

喫煙は肺がんの主要なリスク要因の一つです。喫煙者は非喫煙者と比べて、男性では4.4倍、女性では2.8倍も肺がんを発症しやすいことが分かっています。特に、喫煙を始めた年齢が低いほど、また喫煙量が多いほど、そのリスクはさらに高まります。さらに、受動喫煙(他人のたばこの煙を吸い込むこと)によっても、肺がんの発症リスクが20~30%程度上昇するとされています。ただし、喫煙経験がない人や受動喫煙の影響を受けていない人でも、肺がんを発症することがあります。

家族歴

家族歴があると、肺がんの発症リスクが高まる可能性があります。特に、喫煙などの他のリスク要因にさらされている場合、そのリスクはさらに増大します。
家族に肺がんを患った人がいる場合、家族歴がない人と比べて、肺がんを発症する確率は2倍になると言われています。さらに、一親等の親族(兄弟姉妹、両親、子供)に肺がんの患者が2人以上いる場合、発症リスクはより高まります。肺がんの家族歴がある場合、どのような量の喫煙であっても安全とは言えず、リスクを軽視することはできません。

アスベストなど有害物質への暴露歴がある

現在では使用が禁止されていますが、かつては建築資材や断熱材としてアスベストが広く利用されていました。建設業や造船業、特定の製造業、消防士などの職種に従事していた人は、業務中にアスベストに曝露していた可能性があります。
アスベストは肺がんのみならず、中皮腫というがんの原因にもなります。

肺がんの検査法

肺がんの検査法についてみていきましょう。

胸部X線検査

体への負担やかかる時間が少なく、かつ多くの情報を得られるのが胸部X線検査です。
肺がん検診の際や、何らかの症状がある方に対して最初に行われる検査です。
胸部へX線を照射して撮影します。外来で行うことができ、5分ほどで済みます。健診センターや内科、呼吸器内科などで行います。

喀痰細胞診

喀痰細胞診は、痰の中にがん細胞が含まれていないかどうかを調べる検査です。
咳や痰などの症状があり肺がんが疑われる場合や、50歳以上でヘビースモーカーの者の肺がん検診の際にも行われます。具体的には、ヘビースモーカーとは喫煙指数(1日の平均喫煙本数×喫煙年数)が600以上の方を指します。
自宅や病院などで痰を採取します。喀痰細胞診そのもののための入院は、通常不要です。

CT検査

胸部CTは、現状で最もがんの検出に優れている方法です。胸部X線検査などで異常が認められた場合、さらに詳しく調べていきます。
肺がんがある場合、その大きさや形状、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無などを調べることができます。造影剤を用いて、さらに転移の有無をチェックする場合もあります。通常、呼吸器内科や呼吸器外科の外来で行います。

肺がんの治療法

肺がんの治療法は、肺がんの進行度合いや患者の体力などによって決まります。また、肺がんのタイプには、小細胞肺がんとその他のがん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)があります。小細胞肺がんとその他のがんでは大きな違いがあります。
ここでは、一般的な肺がんの治療法について概説します。

手術

非小細胞肺がんの早期段階の治療の中心は手術です。がんを取り切るための切除範囲によって、大きいものでは片側肺全摘、最も小さいものでは楔形(けつじょう)切除があります。
手術は呼吸器外科や胸部外科で行われる場合が多いでしょう。
入院が必要ですが、通常は10日ほどで退院できます。

薬物治療

薬物治療は、全身に散らばったがん細胞にも効果を発揮します。小細胞肺がんでは、薬物治療が標準的な治療法です。非小細胞肺がんでも、がんが大きく手術が難しい場合には薬物療法が選択されます。
薬物治療では、細胞傷害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが用いられます。それぞれのステージや病状に応じて使われます。
初めて細胞傷害性抗がん薬を使う場合には入院して初期治療とし、その後外来に移行する場合もあります。飲み薬での治療の場合は、入院は不要なこともありますが、定期的に外来で副作用の有無や効果についてチェックしていく必要があります。
薬物治療は、呼吸器内科や腫瘍内科などで行います。

放射線治療

放射線治療は、がんがある部位に放射線を当てることによって、がん細胞を攻撃する治療法です。手術が難しい場合に薬物療法と組み合わせた化学放射線治療が行われます。あるいは単独で放射線治療を行う場合もあります。また、脳や骨、肝臓などに遠隔転移した部位にも放射線治療を行い、痛みや頭痛、ふらつきなどの症状を和らげることもあります。
放射線治療は放射線治療科で行われ、外来通院可能です。化学療法と同時に行う場合や、全身状態が悪い場合には入院して行う場合もあります。

「肺がんの自覚症状」についてよくある質問

ここまで肺がんの自覚症状を紹介しました。ここでは「肺がんの自覚症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がんを発症するとどこが痛みますか?

羽田 裕司羽田 裕司 医師

肺がんそのものが肺の中に留まっている状態では痛みは出ません。がんが大きくなり、肺を覆う胸膜やその外側の胸壁に浸潤すると、胸の痛みが起こることがあります。
また、肺がんが骨に転移すると、その部位が痛くなることもあります。脳転移をきたした場合には、頭痛が生じる場合もあります。

編集部まとめ

今回の記事では、肺がんの自覚症状や検査法、治療法について解説しました。
肺がんは初期段階では症状が出ないことがほとんどですが、長引く咳や熱などがある場合には、特に喫煙者の方や周りにタバコをたくさん吸う人がいる際には早めに呼吸器内科を受診しましょう。

「肺がん」と関連する病気

「肺がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器科の病気

  • 肺結核
  • 間質性肺炎
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

上記のような肺の病気は、肺がんの危険性を高めることが報告されています。また、喫煙は肺がんのリスクとなる他、COPDの原因ともなります。

「肺がん」と関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 血が混じる咳
  • 胸、背中、肩の痛み
  • 突然起こる息切れ
  • 声枯れまたは喘鳴
  • 飲み込みにくくなる、または飲み込むときに痛みがある
  • ばち状指(指先が丸く平たく変形すること)
  • 骨の痛み
  • 顔、腕、首の腫れ
  • 頭痛、めまい、手足の力が入らなくなったり、しびれたりする
  • 黄疸
  • 首や鎖骨付近のしこり
  • 原因不明の体重減少
  • 疲労感や脱力感
  • 食欲不振

肺がんそのものが大きくなったり周りの神経や臓器に浸潤したりすることで起こる症状と、肺がんが他の臓器に転移することで起こる症状があります。その他にも、がんの進行そのものにより全身の症状が現れる場合もあります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師