「肝臓がん」を発症したらどんな「食べ物」を食べたらいい?【医師監修】
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、不調を感じにくいため、知らないうちに大きな負担がかかっている場合があります。
肝臓がんは症状がかなり進行してから気付くことが少なくないため、日本をはじめ世界中で深刻な問題となっている疾患のひとつです。
もしも肝臓がんを患った場合は食事を見直し、肝臓の働きを支える食べ物を積極的にとることが重要です。
この記事では、肝臓がんになった際にとるべき食べ物や、避けるべき食生活について詳しく解説します。
監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
肝臓がんとは?
肝臓がんは肝臓の細胞ががん化する病気で、大きく分けて肝臓から直接発生する原発性肝がんと、ほかの臓器から肝臓へ転移して発症する転移性肝がんがあります。
肝臓がんを患う主な原因は、B型およびC型肝炎ウイルスへの感染・過度の飲酒・肥満・糖尿病などが挙げられます。また、肝臓がんになる方は、肝炎や肝硬変などの慢性的な肝疾患を伴っていることが少なくありません。
肝機能が低下した場合、食欲不振やむくみ、倦怠感などの症状があらわれます。さらに肝臓がんが進行すると、腹部の痛みや圧迫感などの症状に悩まされることもあります。
肝臓は病状が悪化しても自覚症状が乏しいのが特徴で、健康診断などで早めに異常を発見することが重要です。
肝臓の役割
肝臓は身体を健康に保つために、重要な役割を果たしています。
普段意識することの少ない臓器ですが、肝臓がうまく働かなくなると全身に影響を及ぼすのです。ここでは、その役割について詳しく解説します。
代謝
肝臓は体内の代謝をコントロールする重要な役割を担っています。
糖質や脂質、タンパク質を必要に応じて分解・合成して全身にエネルギーを供給したり、身体をつくるのに必要な栄養分を整えたりします。肝機能の低下により代謝が悪くなった場合、脂肪が過剰に蓄積することで肥満や糖尿病のリスクが高まるのです。
さらに、筋肉や臓器に必要な栄養が不足することもあるため、全身の健康に大きな影響を及ぼします。
解毒
肝臓は、体内に入った有害物質を無毒化する働きも担っています。
アルコールや薬物、食品に含まれる添加物などを分解し、体外に排出しやすくすることで、身体の負担を軽減するのです。しかし肝臓の働きが低下すると、これらの有害物質が体内に蓄積し、黄疸や肝性脳症など深刻な症状が引き起こされることがあります。
胆汁の産生
肝臓は胆汁という消化液を産生し、消化や栄養吸収を助けます。特に脂肪を分解する酵素の働きをサポートし、身体に必要な脂溶性ビタミンの吸収を促進します。
胆汁に含まれる成分は、胆汁酸・ビリルビン・脂肪酸・コレステロールなどです。胆汁は胆嚢に蓄えられており、食物が十二指腸へと達したときにタイミングよく分泌し、消化を促進します。
血清タンパク質の産生
肝臓はアルブミンやグロブリンといった血清タンパク質を産生し、身体の機能を支えています。
血清タンパク質は、血液中の水分バランスを維持したり、出血時に血液を固めたりする働きをします。肝臓の働きが悪くなると、むくみや出血がしやすくなるほか、免疫力の低下にもつながるため感染症のリスクが高まる可能性があるのです。
肝臓がんになったらどのような食べ物がいいの?
肝臓がんを患うと、体力や肝臓の機能を支えるために適切な栄養摂取が欠かせません。ここでは、肝臓の健康を助ける食材について具体的に解説します。
カロテンを含む食べ物
カロテンは抗酸化作用があり、肝臓の細胞を守る役割を果たします。また、免疫力を高めて身体の回復を助ける働きもあります。
カロテンを豊富に含む食材は、ニンジン・カボチャ・ホウレンソウ・ピーマンなどです。これらの野菜をレシピに取り入れ、積極的に摂取することで、肝臓への負担を軽減しつつ健康維持に役立てることができるでしょう。
大豆
大豆に含まれるイソフラボンには、肝臓のウイルス感染を予防する効果があり、肝細胞の保護に役立ちます。
また、大豆タンパク質は脂質代謝を改善する働きがあるため、脂肪肝や肝硬変の進行を抑える効果が期待できます。豆腐・納豆・豆乳などの大豆製品を日常的に取り入れることで、肝臓の健康をサポートできるでしょう。
海藻
海藻に含まれる成分はデトックス効果が高く、肝臓の解毒機能を助けるとされています。
また、海藻は低カロリーでミネラルが豊富なため、肝臓への負担を軽減しながら栄養バランスを整えることが可能です。ワカメ・昆布・モズクなどを積極的にとることで、肝機能を支えることができます。
きのこ
きのこには、肝臓の代謝や解毒機能を高める働きがあるオルニチンが多く含まれています。
また、食物繊維が豊富で腸内環境を整える効果も期待できます。シイタケ・エノキ・マイタケなど、さまざまなきのこを日々の食事に取り入れることで、肝臓と身体の健康をサポートできるでしょう。
肝臓がんを患ったとき気を付けたい食事
肝臓がんを患った場合、食事の内容は病気の進行や体調に大きく影響します。症状を悪化させないために、食べてはいけないものなどを正しく把握することが重要です。
ここでは、肝臓がんを患ったときに注意するべき食事について解説します。
アルコールの過剰摂取
アルコールは肝臓で分解されますが、その過程で肝細胞を破壊したり炎症を引き起こしたりするため、肝硬変や脂肪肝を発症します。
肝臓がんを患っている場合、アルコールの過剰摂取は肝機能をさらに低下させ、治療の効果を妨げる可能性があります。病気の進行を早める原因になるため、アルコールの摂取は控えるのがよいでしょう。
塩分のとりすぎ
塩分を過剰に摂取すると体内の水分バランスが崩れ、むくみや腹水の原因となります。
特に肝臓がんを患うと、肝機能の低下により余分な水分を排出しにくくなります。また、高血圧も併発しやすくなるため、食塩の摂取量を控えめにすることが重要です。調理方法を工夫することで、健康的な食生活を心がけましょう。
肝臓がんについてよくある質問
ここまで、肝臓がんを患った場合の食事などを紹介しました。ここでは肝臓がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肝臓がんを予防できる食べ物はありますか?
山本 康博(医師)
肝臓がんの予防には、抗酸化作用や肝機能をサポートする栄養素を含む食品が効果的です。例えば、αカロテンやβカロテンを豊富に含む緑黄色野菜には、肝細胞を酸化ストレスから守る働きがあります。また、大豆製品に含まれるイソフラボンも、肝炎の進行を抑える可能性があるといわれています。ただし、特定の食品だけで予防できるわけではなく、バランスの取れた食事が基本です。
肝臓がんにならないための食習慣を教えてください。
山本 康博(医師)
肝臓がんを防ぐためには、肝臓の負担を減らす食習慣が大切です。暴飲暴食を避け、1日3食バランスよく食べることが基本です。食事においては、野菜や果物を多く摂り、特にビタミンやミネラルを含む食品を積極的に選びましょう。また、脂肪分の多い揚げ物や高カロリー食品を控え、魚や大豆製品をタンパク源として取り入れるのがおすすめです。アルコールや加工食品の摂取を制限することで、肝臓の負担を軽減できます。自身で食習慣を管理できるか不安な方は、医師や管理栄養士による食事指導や食事療法を取り入れることを検討するとよいでしょう。
編集部まとめ
肝臓がんを予防・管理するには、日々の食事や生活習慣がとても重要です。
特に肝臓は症状が出にくい臓器のため、定期的な検診で早期発見を心がけましょう。
また、適切な食事を取り入れることで治療をサポートし、生活の質を向上させることができます。
この記事で紹介した知識を活用し、肝臓を大切に守りましょう。
肝臓がんと関連する病気
「肝臓がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 肝硬変
- 慢性肝炎
- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
肝臓がんはこれらの病気と密接に関連しており、進行することでがん化するリスクが高まります。定期的な健康診断で肝臓の状態をチェックし、早期に対処することが重要です。
肝臓がんと関連する症状
「肝臓がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹部のしこり
- 食欲不振
- むくみ
- 倦怠感
- 黄疸
- 腹水
肝臓がんの症状はほかの病気と似ており、見逃されやすいことがあります。これらの症状が継続している場合は早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。