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「大腸がん手術後」の「仕事復帰」はいつ?知っておきたい支援制度も解説!【医師監修】

 公開日:2025/05/29
「大腸がん手術後」の「仕事復帰」はいつ?知っておきたい支援制度も解説!【医師監修】

大腸がんの手術はほとんどの場合で入院が必要です。就職をしている方ならいつ復職できるのか不安に感じる場合もあります。 また費用面に関しても重要です。突然の入院で入院費が用意できないケースもあるでしょう。 この記事では大腸がんの手術後から仕事復帰までの目安や支援制度を解説します。大腸がんを発症した際のご参考になれば幸いです。

山本 康博

監修医師
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医

大腸がんとは

大腸がんとは盲腸から始まり直腸に至るまでの腸管部分に起きるがんです。大腸がんには良性のポリープががん化したものと、正常な粘膜だった細胞ががん細胞に変化したものの二通りがあります。早期に手術を中心とした適切な治療を行えば問題なく完治する一方で、ある程度進行するまで自覚症状がほとんど出ない特徴があります。
そのため定期的な検診による早期発見が必要です。また大腸がんは食生活の欧米化などに伴い、近年増加傾向にあります。

大腸がんの手術方法

大腸がんの外科手術方法は大きく分けて3つです。開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット支援手術があり、腫瘍の大きさや位置、患者さんの体格によって手術方法が変わります。
どの手術でも行うことは変わりませんが、手術の方法により患者さんの肉体的な負担や術後の回復の早さに違いがあります。どの手術方法を選択するかは医師との相談が必要です。ここではそれぞれの手術の具体的な手術内容や肉体的な負担を解説します。

開腹手術

開腹手術は大腸がんの手術のなかでも古くから行われてきた標準的な手術です。結腸に発生したがんを切除する手術を結腸切除術、直腸に発生したがんを切除する手術を直腸切除術と呼びます。
また直腸のなかでも肛門に近い場所にがんが発生し、直腸を切除して人工肛門にする場合を直腸切断術と呼びます。腹部の10~20cmを切開し手術を行うため、患者さんへの負担が高く術後の回復に時間がかかるのが特徴です。医療技術の発展もあり、現在は一部の高度進行がんでのみ採用される手術になります。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術は腹部に1~5ヶ所の小さな穴をあけ、そこから鉗子や腹腔鏡と呼ばれるテレビカメラを入れて手術を行う方法です。
切開の幅が小さいため体の負担が少なく、術後の回復も早いのが特徴です。腫瘍の大きさや腹腔内の癒着状態によっては適用できない場合もあります。その場合は開腹手術に切り替えるか、手術前に化学療法でがんを小さくしておくといった事前準備が必要です。また早期がんの一部に限られますが、肛門から直接大腸に内視鏡を挿入し手術をする方法もあります。

ロボット支援手術

ロボット支援手術とは多関節のロボットアームを使用した手術方法です。3次元画像情報による立体認識の向上と、手ぶれを補正し安定した手術を行える点が特徴です。
骨盤内の奥深くに位置しほかの臓器とも隣接している直腸のように、精密性の高い手術が必要な部位に有効な手術方法になります。以前は保険適用外のケースが多く高額な医療費がネックでしたが、2018年に直腸がんが保険適用内になり、2022年に結腸がんも含めた大腸がんのロボット支援手術が保険の適用内となりました。
腹腔鏡手術と同様に切開の幅が小さいため体の負担が少なく、術後の回復も早いのが特徴です。

大腸がん手術後の仕事復帰の目安

大腸がんの治療を開始した際に仕事復帰までの目安はどれ位でしょうか。手術から復職の目安は大腸がんになった部位よりも手術内容が影響します。
ここでは結腸がん・直腸がんそれぞれのケースと化学療法を行った場合の復職までの目安を解説します。

結腸がんの場合

結腸がんの手術後の仕事復帰の目安は術後から7日間程度です。ほとんどの場合において腹腔鏡手術かロボット支援手術が選択されるため、手術後の負担が大きくありません。
ただしステージが進行し広範囲にわたる切除が必要な場合には開腹手術に切り替え、その限りではありません。この場合は術後10日間程度は見ておく必要があります。

直腸がんの場合

直腸がんの手術後の仕事復帰の目安は術後から10日間程度です。人工肛門を作る場合でも期間に変わりはありません。
また早期の直腸がんの場合は内視鏡手術のみで済む場合があり、このときは開腹の必要もなく2日程度の入院で済むケースもあります。

化学療法を行う場合

化学療法を行う場合にも入院は必要です。これは薬の副作用などを確認するためであり、投薬時過敏症状や手指のしびれがないかなど2~3日程度確認して問題がなければ退院となります。
その後は通院しながら経過観察を続けていきます。

早期の復職が難しい場合に知っておきたい支援制度

大腸がんで早期の復職が難しい場合に困るのは入院費用と生活費用です。
こういった問題を解決するために国民健康保険や社会保険、年金制度においてさまざまな支援制度があります。ここでは事前に知っておくべき支援制度を解説します。

高額療養費制度

高額療養費制度とは医療機関や薬局の窓口で支払った額が一月(月の初めから終わりまで)で自己負担の上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
この額には個室を選択した際のベッド代の差額や食事代は含まれません。高額療養費制度は公的医療保険に高額医療費の支給申請書を提出すれば支給が受けられます。

高額医療費貸付制度・高額療養費資金貸付制度

高額療養費制度は申請から払い戻しが発生するまでに3~4ヶ月のタイムラグが生じます。
その間の金銭的負担を減らすために、高額療養費支給見込額の8~9割を無利子で借りることができます。対象者は国民健康保険や一般の健康保険の加入者で、保険料を完納していることが条件です。

傷病手当金

傷病手当金は社会保険に加入している被保険者が病気やけがのために会社を休み給料の支給を受けられない場合に、加入している健康保険から支給を受ける制度です。
支給金額は支給開始日の以前各種標準報酬月額を30日で割り、3分の2をかけたものになります。また支給期間は同一のけが・病気に対して支給開始から1年6ヶ月に達する日までが上限になります。支給条件は以下のとおりです。
  • 病気やけがで療養中である
  • そのため仕事につけない
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいる(最初の3日間は支給対象外)
  • 仕事を休んだ期間に給与の支払いがない

障害年金

障害年金とは障害を負ったことで国民生活の安定が損なわれることのないように、就業生活や日常生活を送るうえで困難がある人に支払われる年金です。
国民年金の場合は障害基礎年金が支払われ、厚生年金や共済年金の場合は窓外厚生年金が支払われます。受給条件は以下のとおりです。
  • 初診日に国民年金、厚生年金、共済年金などに加入していること
  • 初診日の前々月までに3分の2以上の保険料納付をしていること
  • 障害の状態が障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に障害等級表に定める1級または2級に該当していること

大腸がん手術後の仕事復帰についてよくある質問

ここまで大腸がん後の仕事復帰のケースを紹介しました。ここでは「大腸がん手術後の仕事復帰」によくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

人工肛門を作った場合は仕事復帰が遅くなりますか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

開腹手術の場合、人工肛門を作った場合でも仕事復帰のタイミングは変わりません。人工肛門を作る場合は開腹手術と同時に行うからです。腹腔鏡手術と比べた場合には3~4日ほど入院期間は長くなりますが、入院期間は2週間程度です。

手術方法によって仕事復帰までの時期に違いがありますか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

腹部に1~5ヵ所の小さな穴を空ける腹腔鏡手術やロボット支援手術と比べると、10~20cmを切開する開腹手術のほうが術後の回復に時間がかかります。そのため3~4日ほど入院期間に違いが出ますがそれでも2週間程度です。

編集部まとめ

大腸がんの手術から問題なく復職できるケースがすべてではありません。仮に合併症などを起こした場合には長期にわたる入院が必要な場合もあります。 このようなときにさまざまな支援制度を利用すれば安心して入院生活を送れます。とはいえ大腸がんにかからないことが一番重要です。 定期健診などを利用し、早期検査・早期発見に努めましょう。

大腸がんと関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

別の病気による負担から大腸がんに進行するケースもあります。不調を感じた際には放置せず、早期治療を行うことで別の病気を予防にもなります。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 体重減少
  • 鮮血便
  • 下痢・便秘の繰り返し
  • 腹部不快感
大腸がんは症状が出た時点である程度病状が進行しています。何よりも大切なのは早期発見です。定期健診などを行い、早期治療を目指しましょう。

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