「膵臓がん」を発症するとどんな「下痢」を催す?初期症状も医師が徹底解説!
膵臓がんを発症するとどんな下痢を催す?Medical DOC監修医がどこに痛みを感じるか・初期症状・原因・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
「膵臓がん」とは?
膵臓は胃の後ろにある長さ約20cmの臓器で、消化酵素とホルモンを分泌する重要な役割を担っています。膵臓がんは、この膵臓にできる悪性腫瘍です。早期発見が難しく、進行すると黄疸や腹痛、背中の痛みなどを引き起こします。
膵臓がんを発症するとどんな下痢を催す?
膵臓がんによる下痢は、他の原因による下痢とは異なる特徴があります。
脂肪便
膵臓がんになると、膵管が閉塞することで膵液の分泌が不足し脂肪の消化吸収がうまくいかなくなることがあります。そのため、便に脂肪が混ざり、白っぽく、光沢があり、水に浮くような便(脂肪便)が見られることがあります。
頻回な水様下痢
膵臓がんが進行すると、消化吸収機能が低下し、下痢を繰り返しやすいです。特に食後に下痢が起こりやすい傾向があります。
腹痛を伴う下痢
膵臓がんによる下痢は、腹痛を伴うことがあります。これは、腫瘍が周囲の臓器を圧迫したり、炎症を起こしたりすることが原因と考えられます。
膵臓がんを発症すると、どこにどんな痛みを感じる?
ここでは、膵臓がんが発症するとどこで痛みが起こりやすいかを解説いたします。
みぞおちの痛み
膵臓は胃の後ろにあるため、膵臓がんが大きくなるとみぞおちに痛みを感じることがあります。初期の段階では鈍い痛みですが、進行すると持続的な激痛になることもあります。
右上腹部の痛み
膵頭部にがんができると、胆管を圧迫し、胆汁の流れが悪くなりやすいです。胆汁の流れが滞ると胆管炎を起こす可能性があります。胆管炎の症状として右上腹部に痛みを感じることがあります。
右上腹部の痛みや発熱、黄疸などの症状がある場合はすぐに消化器科を受診しましょう。
背中の痛み
膵臓がんは、背中に近い場所に位置しているため、腫瘍が大きくなると背中に痛みを感じることがあります。特に、肩甲骨の間や左右どちらかの背中に痛みを感じることが多いです。背中の痛み、特に食後や夜間に強くなる痛みがある場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
膵臓がんの前兆となる初期症状
黄疸
膵頭部にがんができると、胆管が圧迫され、胆汁の流れが悪くなります。その結果、ビリルビンという黄色い色素が血液中に増加し、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が起こります。黄疸が起こった場合はすぐに消化器科や総合病院を受診しましょう。
食欲不振・体重減少
膵臓がんが進行すると、消化吸収機能が低下し、食欲不振や体重減少が起こることがあります。食欲不振や体重減少の原因が思い当たらない場合は、早めに内科を受診しましょう。
倦怠感
膵臓がんになると、体力低下や貧血の進行などにより倦怠感を覚えやすくなります。倦怠感の症状がある場合は内科を受診しましょう。
膵臓がんの主な原因
ここでは膵臓がんの危険因子について解説いたします。
喫煙
喫煙は膵臓がんの最も大きなリスク要因の一つです。日本人を対象とした研究で喫煙者は非喫煙者に比べて、膵臓がんになるリスクが1.7~1.8倍程度高くなるといわれています。[1] 喫煙量に相関してリスクは増加する傾向があります。
飲酒
1日アルコール摂取量が24-50g以上の大酒家では1.1~1.3倍膵臓がんのリスクが高くなるとされています。お酒は適量にとどめましょう。
肥満
body mass index(BMI):≧30kg/㎥で膵臓がんのリスクが1.3~1.4倍と報告されています。BMIと相関してリスクが上がる傾向があるので、肥満のある方は減量を心がけましょう。
糖尿病
糖尿病の人は、膵臓がんになるリスクが1.7~1.9倍高くなるといわれています。特に糖尿病発症1年未満ではリスクが高いため、健康診断などで血糖値の指摘を初めて受けたら糖尿病内科を受診しましょう。
慢性膵炎
慢性膵炎は、膵臓に慢性的に炎症が続く病気です。慢性膵炎の人は、膵臓がんになるリスクが13.3~16.2倍高くなると言われています。膵臓がんにならないためにも飲酒を減らして慢性膵炎を予防しましょう。
遺伝
膵臓がんの約5~10%は、遺伝が関係しているといわれています。家族に膵臓がんになった人がいる場合は、リスクが高くなる可能性があります。家族性に膵臓がんの家系の場合はさらに高いリスクがありますので、濃厚な膵臓がんの家族歴のある方は遺伝子パネル検査なども検討されますので、消化器科の医師にご相談ください。
膵臓がんの検査法
血液検査
人間ドックや臨床症状や他の検査で膵臓がんが疑われた場合に血液検査で膵臓がんに関連する腫瘍マーカー(CA19-9など)を測定します。ただし、腫瘍マーカーは他の病気でも上昇することがあるため、確定診断の補助的な役割を担います。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は痛みや放射線被曝のない低侵襲な検査で、膵臓がんの診断の一助になる検査です。健康診断でも行われることもあります。検査科で行う検査で入院は必要ありません。
腹部造影CT検査
膵臓がんの診断と病期診断、手術法の決定に重要な役割を果たすのが腹部造影CT検査です。点滴で造影剤を投与しながら行う検査です。放射線科で検査を行います。通常は、入院は不要な検査です。
腹部造影MRI検査
膵管と胆管を観察するためにMRCP(Magnetic Resonance Cholangiopancreatography)検査を行います。MRCP検査は膵臓がんの診断の一助になります。点滴で造影剤を投与しながら行う検査です。放射線科で検査を行います。通常は、入院は不要な検査です。
内視鏡検査
内視鏡検査では、細い管を口や鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸を観察します。必要に応じて、胆管や膵管に造影剤を注入し、X線撮影を行うERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)検査を行います。ERCPは通常数日の入院が必要です。
超音波内視鏡検査
内視鏡と超音波を組み合わせた超音波内視鏡検査で細い針を腫瘍に刺して、組織検査をすることで膵臓がんの確定診断に至ります。通常、数日の入院で行います。
膵臓がんの治療法
膵臓がんの治療法は、がんの進行度や患者の状態によって異なります。主な治療法には、手術療法、放射線療法、化学療法などがあります。
手術療法
がんが膵臓に限局している場合は、手術でがんを切除します。手術のみもしくは、手術と化学療法の組み合わせた治療(術前・術後補助化学療法)を行う場合もあります。消化器外科で手術を行います。2-3週間の入院が必要です。
化学療法
化学療法は、抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃する治療法です。手術の前後の補助化学療法と、手術ができない場合、再発・転移した場合の全身化学療法に分けられます。消化器外科や腫瘍内科で加療を行います。全身化学療法の初回は入院で行うこともありますが、外来で加療することが多い治療です。
放射線療法
膵臓がんの放射線治療には、化学療法と組み合わせた放射線療法と症状緩和を目的とした放射線治療の2つがあります。放射線治療は放射線科にて入院・外来で加療することが多い治療です。
「膵臓がんの下痢」についてよくある質問
ここまで膵臓がんの下痢などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの下痢」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膵臓が悪くなると、便にどんな特徴が現れますか?
齋藤 雄佑 医師
前述の通り、膵臓が悪くなると、消化吸収機能が低下し、便に様々な変化が現れることがあります。特徴的なものは脂肪便で便に脂肪が混ざり、白っぽく、光沢があり、水に浮くような便になります。また消化不良により下痢になることがあります。これらの症状は、膵臓がん以外にもさまざまな原因で起こる可能性があります。気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。
編集部まとめ 膵臓がんの症状を疑ったら、早めに消化器内科を受診しよう!
この記事では、膵臓がんの下痢の特徴やその他の初期症状、原因、検査法、治療法などについて解説しました。膵臓がんは早期発見が難しいがんですが、下痢などの症状に気づくことで早期発見・治療につながる可能性があります。気になる症状がある場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
「膵臓がん」と関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内分泌科の病気
膵臓がんと似たような症状がみられる病気、膵臓がんを合併しやすい病気を挙げました。これらの病気がある方では、膵臓がんの発症に気をつけましょう。膵臓がんは初期では症状が出にくい病気です。このため、気になる症状がある場合には主治医と相談したり、消化器内科を受診して相談すると良いでしょう。
「膵臓がん」と関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 黄疸
- 体重減少
- 食欲不振
- 貧血
- 倦怠感
- 心窩部痛
- 下痢
膵臓がんでは初期では症状が分かりづらいです。しかし、初期で早めに病気を見つけるためにも気になる症状がある場合には消化器内科を受診して相談してみることが大切です。