「肺がん」を発症するとどんな「痛み」を感じる?痛みを感じる部位も医師が解説!
肺がんを発症するとどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医がどこに痛みを感じるか・初期症状・末期症状・原因・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
後藤 秀人(後藤内科医院)
日本内科学会 総合内科専門医、日本呼吸器学会 専門医・指導医、日本アレルギー学会 専門医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、インフェクションコントロールドクター(ICD)などの資格を有する。
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
気管支や肺胞にある細胞の一部ががん化したものが肺がんです。肺がんは50歳以降で罹患数が急激に増加します。日本におけるがんの死亡数で最も多いがんが、肺がんです。このため、肺がんを早期で発見し、治療することが非常に大切です。しかし、肺がんの症状は、初期でははっきりしないことが多く、検診などで発見されることも多いです。進行すると、特徴的な所見はありませんが咳や喀痰、血痰、発熱、胸痛、呼吸困難などの症状がみられることがあります。今回は、痛みに焦点をあて、肺がんを発症すると起こりうる痛みについて解説いたします。
肺がんを発症するとどんな痛みを感じる?
肺がんを発症すると、さまざまな場所の痛みを感じる可能性があります。
持続性の痛み
肺がんを発症した時の痛みは、胸膜まで浸潤した時や、胸水が溜まり胸膜を浸潤したときの神経の痛み、骨への転移をしたときの痛みが多いです。原因が制御されていない間は、痛みは改善せず持続します。
何もしなくても起こる痛み
がんが浸潤したり、骨に転移をしたときの痛みは、動かしたり押したりしなくとも痛みが続くことが多いです。何もしなくとも痛みが持続しているような場合には注意が必要です。早めに内科もしくは整形外科を受診して相談しましょう。
肺がんを発症すると、どこにどんな痛みを感じる?
胸の痛み
肺がんが胸膜まで浸潤すると、痛みが出現します。この痛みの場所は肺がんができた部位により異なります。また、胸部の肋骨に転移をすると、この部位が痛むこともあります。
持続する胸の痛みが出た場合には内科・呼吸器内科で相談をしましょう。
背中や肩の痛み
肺がんが肺の上部にあり、首や肩の近くの胸膜まで達すると、首や肩の痛みで発見されることもあります。また、鎖骨や脊椎骨に骨転移する場合には、肩や背中の部分の痛みとして感じます。胸の痛み以外にも周囲の痛みとして自覚することもあるため、長引く痛みがある場合には整形外科で一度相談をしてみましょう。
骨の痛み
肺がんの転移が骨に起こると、この骨転移した部分の痛みとして症状がみられます。血行性に全身の骨に起こりうるため、打撲の覚えがないのに同じ場所の痛みが続く場合には注意が必要です。
肺がんの前兆となる初期症状
肺がんの初期では症状がない場合も多いです。肺がんが見つかる場合に、よくある症状を中心に解説をいたします。
咳、痰
肺がんで最も多い症状は咳と痰です。しかし、咳や痰は感冒など他の病気でもよく見られるため、区別がつきにくいです。しかし、一般的な感冒では2週間程度で改善することが多いですが、肺がんの場合にはこれ以上長引くことが多いです。長引く場合には、内科もしくは呼吸器内科を受診しましょう。
血痰
血が混じった痰を血痰といいます。肺がんでは、血痰がみられることもあります。しかし、血痰も肺結核などの感染症や気管支拡張症、気管支炎などの病気でもみられます。咳でのどの奥が傷つき出血する事でも起こります。血痰の症状が持続する場合には注意が必要です。呼吸器内科を受診しましょう。
胸の痛み
肺がんが胸膜まで浸潤した時や、胸水が溜まり胸膜を刺激すると胸の痛みがみられることがあります。この痛みの部位は、肺がんができた場所により変わります。持続する胸の痛みがある場合には一度内科を受診しましょう。
肺がんの末期症状
肺がんの末期症状といっても、特徴的なものはありません。肺がんが進行し、転移をするとこれに伴う症状がみられます。 下記の症状は、肺がんの転移や浸潤が進行したときに起こっている症状の可能性がありますが、他の病気でおこることもあり症状のみでは区別がつきません。気になる症状があれば、医療機関を受診しましょう。
頭痛、麻痺
肺がんが脳に転移した場合には頭痛やふらつき、麻痺などの症状がみられることがあります。がんが脳のどこに転移したかにより症状が異なります。ふらつき、手足の力が入りにくい、言葉が出にくい、見えづらい、けいれんなどの症状が起こる場合には医師に相談しましょう。転移した腫瘍が大きくなると頭痛や嘔吐、意識障害をきたすこともありより注意が必要です。
骨の痛み
肺がんが骨に転移すると、転移した部分の痛みが出現します。肋骨や鎖骨、脊椎骨などに転移した場合には肩や背中、胸に痛みをきたします。全身の骨に転移する可能性があり、この部分で痛みが出ます。また、転移した部分がもろくなり骨折をきたすとさらに痛みが強くなることもあります。
声のかすれ
声がかすれることを嗄声と呼びます。声帯を動かす反回神経に肺がんが浸潤する、あるいはリンパ節転移が神経を圧迫すると嗄声が起こることがあります。肺がんだけではなく、声帯ポリープや喉頭がんなどでもみられるため、嗄声に気がついたときには耳鼻科もしくは内科・呼吸器内科で相談してみましょう。
肺がんを発症する原因
喫煙
肺がんの最大の危険因子は、喫煙です。たばこを吸わない人と比較して、喫煙者は
男性で4.5倍、女性で4.2倍肺がんになりやすいとの報告があります。また、吸い始めてからの年数が長いほど、また1日に吸う本数が多いほど肺がんにかかりやすいとの結果も出ています。肺がんを予防するために、1日でも早い禁煙が大切です。また、受動喫煙も肺がんの原因となります。あなたの大切な人のためにも禁煙をすることをお勧めします。
環境因子(アスベストなど)
アスベストなどの有害物質に長期間さらされることも肺がんの発生率を高めることが報告されています。アスベストは曝露されてから肺がんを発症するまでに15~40年と潜伏期間があるため、以前にアスベストを扱ったことがある方では注意が必要です。症状があれば、呼吸器内科で相談をしてみましょう。毎年肺がん検診を受けることも大切です。
また、PM2.5などの大気汚染も肺がんのリスクになることが分かっています。PM2.5への曝露が多い地域に長く住んでいた方は気をつけましょう。
肺疾患
肺結核の既往がある方や慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎を持つ方では、肺がんが発生しやすいと言われています。これらの疾患では、肺がんと似た症状が出やすいため、症状のみではなかなか区別がつきにくいです。定期的な通院での経過観察が重要です。
肺がんの検査法
胸部X線検査、CT検査
まず、胸部X線検査で肺に肺がんを疑うような影が無いかを調べます。ここで、疑わしい影がある場合、胸部CT検査でさらにその陰の性状を観察します。CTでは体の断面を画像にすることができるため、胸部X線ではわかりづらい部分や、小さい影についても詳しく調べることができます。また、周囲の組織への浸潤の程度や、リンパ節の腫れがあるかなど、肺がんの広がりについても詳しく調べることができます。CT検査では造影剤を使用することで、がんの性状や転移などの情報をより詳しく調べることができます。
喀痰細胞診
痰の中にがん細胞が含まれていないかを調べる検査です。痰を検査に出すだけであるため、体への侵襲が少なく、簡単に行うことができますが、がんを特定できないことも少なくありません。このため、他の検査と組み合わせて行うことが必要となります
気管支鏡検査
まずスプレーでのどの麻酔をします。その後、鼻や口から細い内視鏡を挿入して気管支を観察する検査です。X線透視や超音波検査と併用しながら、がんが疑われる病変の組織を採取したり、腫瘍部分をブラシでこすり取って細胞を採取したりして病理検査を行います。外来でも検査をすることもありますが、検査の内容により入院することもあります。
肺がんの治療法
肺がんは組織型(小細胞がん、非小細胞がん)やがんの進行の程度を示すステージ分類により治療法を選択します。
外科治療
非小細胞がんでは、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期の一部ですべてのがんを取り切れる場合にがんの根治を目的に手術を行います。小細胞がんでは、進行が速いため、早期の発見は難しいですが、Ⅰ期、ⅡA期でがんを取りきることが可能な場合に手術を行います。どちらの組織型も、多くは治療成績のさらなる向上を目指し、薬物療法を追加して行います。
手術法は病変の場所や大きさにより異なります。開胸手術を行う場合と、胸腔鏡手術を選択される場合があります。患者さんごとに方針を検討しますので、主治医に確認をしましょう。
薬物治療
薬物療法は、薬によるがんの治癒、進行の抑制、症状の緩和を目的としています。組織型によりどのステージで薬物治療の適応となるかが異なります。
薬物治療には、「細胞障害性抗がん薬」と「免疫チェックポイント阻害薬」「分子標的治療薬」があります。どの薬物を選択するか、どのタイミングで治療を行うか、また手術や放射線治療と併用をするかなどは、組織型、遺伝子変異のパターンや進行度により異なるため主治医に詳しく聞いてみましょう。
放射線治療
放射線治療は、がんのある部分に放射線をあてることにより、がん細胞を攻撃する治療法です。がんの治癒や進行の抑制、がんによる症状の緩和や延命などを目的として行います。
緩和ケア
緩和ケアとは、がんに伴う心と体の不安や辛さを和らげるためのケアです。社会的な悩み、辛さを解決し、治療に集中できる環境を整えたり、がんそのものによる痛みや治療による副作用を緩和することを目的としています。患者さんやそのご家族をさまざまな職種からなるチームで支えます。何か悩みがある場合には、主治医や看護師に相談してみましょう。
「肺がんの痛み」についてよくある質問
ここまで肺がんの痛みなどを紹介しました。ここでは「肺がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんの手遅れとなる症状について教えてください。
後藤 秀人 医師
肺がんの手遅れとなっていることが考えられる症状は、特徴があるわけではありません。しかし、脳転移が疑われる頭痛やふらつき、麻痺の症状が現れた場合や、骨転移による骨の痛みが起こった場合には進行した肺がんの可能性もあり注意が必要です。しかしこれらの症状は他の病気でも起こります。自己判断せずに主治医に相談をしましょう。
編集部まとめ 骨や胸の痛みが肺がんの可能性もあり、内科や整形外科で相談をしよう!
肺がんは初期では症状がなく、わかりづらい病気です。咳・痰や胸部の痛みが症状としては多くみられますが、このほかの肩や背中の痛みや声のかすれなど他の症状で見つかることもあります。気になる症状が持続する場合には一度内科や整形外科で相談をしてみましょう。
「肺がん」と関連する病気
「肺がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
- 肺結核
- 閉塞性肺疾患
- 間質性肺炎
消化器科の病気
咳や声のかすれなどが肺がんの症状としても考えられますが、この症状は他の病気でも起こります。症状が持続する場合には内科や耳鼻科で相談してみましょう。
「肺がん」と関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 咳・痰
- 血痰
- 声のかすれ
- 胸の痛み
- 呼吸の苦しさ
- 骨の痛み
これらの症状は肺がんでも起こりますが、そのほかの病気でも起こります。症状のみでは病気の区別がつきません。症状が持続する場合や強い症状が起こる場合には早めに内科や耳鼻科、整形外科など症状が起こっている部分の専門の病院へまず受診してみましょう。