【闘病】「乳がん」2回に「食道がん」1回経験 両胸を再建手術し前向きに生きる
闘病者の松島さん(仮称)は2度の乳がんに加え、食道がんも経験しました。現在は乳房再建術も行いながら、発症前の生活習慣を見直し、規則正しい生活を送っています。そこで、松島さんに乳がんと食道がんの早期発見に大切なこと、病気が判明したときに大切なことなどを聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年3月取材。
体験者プロフィール:
松島さん(仮称)
50代女性。2017年3月、市の検診で精密検査を指摘され、病院で精査したところ乳がんのステージ1ルミナルAタイプと診断された。その後、手術やホルモン療法を続けていたところ、術後7年目の2023年7月に2度目の乳がんと診断された。同年10月には早期の食道がんで内視鏡的粘膜下層剥離術も経験。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
予想だにしなかった2度の乳がんと食道がんの体験
編集部
松島さんは2度の乳がんと食道がんを経験されたそうですが、それぞれの病気について、簡単に教えていただけますか?
松島さん
まず乳がんは乳房内にある乳腺の組織にできるがんです。患者のほとんどは女性で、乳房のしこりで気づく方が多いとされています。ほかにも乳房にくぼみができたり、乳頭や乳輪がただれたり、左右で乳房の形が違ったり、乳頭から分泌物が出たりする症状もあります。食道がんは咽頭と胃の間をつなぐ食道にできるがんです。主に食道の粘膜表面からでき、約半数は食道の中央部付近から発生するといわれています。食道がんも初期は自覚症状がほとんどなく、進行すると飲食時の胸の違和感やつかえ、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどを生じます。
編集部
松島さんの病気が判明した経緯も教えていただけますか?
松島さん
最初は左乳がんでした。2017年3月に市の検診で総合病院を受診したところ、触診でしこりが見つかり、さらにマンモグラフィとエコー検査を行うと約7mmの乳がんと判明しました。紹介状を持って大学病院を受診し、改めて生検やCTなども行った結果、浸潤性乳がんで確定診断は術後になることを説明されました。術中検査でセンチネルリンパ節生検を行い、転移がないとわかり、乳がんのステージ1ルミナルAタイプとの確定診断になりました。
編集部
2回目の乳がんはいつ頃発覚したのでしょうか
松島さん
2度目は乳がんの手術から6年が経過し、2023年7月、ホルモン療法のフェマーラを内服中に発覚しました。乳がん後に毎年行うマンモグラフィ、エコー検査を行ったところ、今度は右乳房に影が見つかり、針生検を受けました。結果は非浸潤性乳がんでした。左乳がんの再発や転移ではなく、原発がんと説明されました。
編集部
食道がんはいつ見つかったのでしょうか?
松島さん
食道がんは2023年10月に胃カメラを行ったところ、怪しい箇所を4箇所生検しました。その中の1箇所ががんの可能性が高いとのことで、乳がんも診てもらっている大学病院へ紹介状を書いてもらい、消化器内科を受診しました。大学病院で内視鏡検査をしたところ、早期の食道がんと考えられるとのことで、すぐに切除してもらい、確定診断がつきました。食道がんについては今後の治療はなく、経過観察をしています。
3度のがんを体験も、知識を得ることでしっかりと向き合えた
編集部
病気が判明したときの心境も教えていただけますか?
松島さん
最初の乳がんのときは頭が真っ白になりました。家族にも話さないまま一人で結果を聞きに行ったので、病院を出た後もしばらくの間どこへ歩いていたのか記憶も曖昧です。運転中は「家族に余計な心配をかけたくない。入院日、手術日、ステージ、今後の方針まですべて決まってから話をしよう」と考えていました。
編集部
治療についてはどのような説明があったのでしょうか?
松島さん
最初の乳がんでは乳房部分切除の予定でした。しかし、「万が一取り残しがあったら」「毎日放射線治療に通えるだろうか」などの不安があり、左乳房全摘術に変更してもらいました。結果的に病巣以外にも広がっていたため、医師からは「全切除にして大正解でした」とのことでした。また、その後に形成外科で二次再建(シリコン乳房インプラント)も行っています。
編集部
術後の治療はどのような内容だったのでしょうか?
松島さん
生理食塩水を注入し、右乳房の皮膚を拡張している直近(取材時)の写真
編集部
食道がんではどのような治療を行ったのでしょうか?
松島さん
食道がんの術後、四日間の絶食後に最初に食べた流動食
編集部
そのほかに治療のことで印象に残った出来事などはありますか?
松島さん
2回目の乳がん(右側)のときは、命にかかわることはないと説明されたのですが、両側とも乳がんになったため、遺伝子検査をしていただきました。私の場合、もし遺伝性乳がんが陽性なら卵巣がんのリスクも高いとのことで、予防的に卵巣を取る手術も考えた方が良いかもしれないとの説明でした。思い返すと乳がんの告知と同じく、遺伝子検査の結果を聞くのがとても緊張しました。特に子ども達にも関わることだったため、本当に不安でした。結果は陰性だったため、ホッとして涙が止まりませんでした。遺伝性乳がんの検査に関しては、陽性の場合は予防や早期発見などのメリットもあるが、子どもの将来に対する不安が生じることにもなるので検査を受ける際にはよく考える必要があると感じました。
編集部
病気の発症後、日常生活ではどのような変化がありましたか?
松島さん
最初の乳がんのときは「がん=死」のイメージが強かったので、身の回りの整理など家族のためにできることを考えて行動していました。ですが、色々な知識を身につけ、「今の時点でそんなに焦る必要ないかな」と思い、冷静さを取り戻しました。
病気をきっかけに生活習慣の改善を進めている
編集部
松島さんの心の支えになったものは何でしょうか?
松島さん
病人扱いせずに接してくれる周囲の人の存在です。「3度もがんになったのに放射線治療も抗がん剤治療も経験していないのはすごいことだ」と先生や色々な方々に言ってもらえて、気持ちがとても前向きになっています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられるなら、どんな助言をしたいですか?
松島さん
10年くらい前に、近所のクリニックから「このまま飲酒を続けていたら、10年後に元気に過ごしている未来は見えない」とまで言われていました。「先生の言うことに耳を傾けて節酒しなさい」と言いたいです。
編集部
現在、体調面で気を付けていることはありますか?
松島さん
発症前は毎日二日酔い状態でしたから、現在は禁酒をし、体調に合わせながらジムに通っています。今は関節痛を緩和するストレッチなどを意識し、毎日を過ごしています。
編集部
がんを普段意識していない人、あまり知らない方へメッセージをお願いします。
松島さん
乳がんに関しては、マンモグラフィやエコー検査をしないと早期発見は難しいです。「がんと言われるのが怖いから検診に行けない」と言っている友人が何人かいますが、「早期発見しないともっと怖い想いをするのでは?」と思います。手術では部分切除にするのか、全切除にするのか、再建するかしないかなど、本当によく考えて決めたほうが良いと思います。そして、まずは命を優先して考えることが1番です。また、食道がんに関しては、ぜひとも定期的な胃カメラ検査をおすすめします。私の経験上、どんな病気に対しても知識はとても重要です。知識をしっかり身に付けることで先生の説明の意味が理解でき、質問もできるようになるので安心感が持てました。
編集部
最後に何か伝えたいメッセージはありますか?
松島さん
医療従事者の方は大変なお仕事だと思います。いつも丁寧な説明、治療をしてくれて感謝しかありません。私はまだこの病気と向き合って行かなくてはならない日々が続きます。だからこそ毎日を楽しく過ごそうと思っています。読者の方々には、「みんないつ何が起きるのかわからない」ということを伝えたいです。そうならないためにもできる限りの予防や回避行動を取りながら、笑って過ごしましょう。
編集部
なるほど。大事な心がけです。
松島さん
余談ですが、2回目の乳がんを発見した際、念のためにPET検査も受けました。結果は転移などの光る部分もなく安心していました。しかし、その2ヶ月後の胃カメラで食道がんが発覚し、「PET検査で光ってませんでしたよね?」と質問したところ、医師によると「早期過ぎると光りません。そもそも食道はPET検査では診断できない」とのことでした。読者の方々も検査の内容を正しく理解したり、過信しすぎたりしないことが大切だと思います。
編集部まとめ
検診でしっかり全身を検査し、早期発見につなげることが予後にも大きく影響します。乳がんはセルフケアでも発見しやすく、食道がんは定期的な人間ドックや胃カメラで早期発見できる可能性の高いがんです。毎年の定期健診や人間ドックを大切にし、わずかな異変も見逃さないようにしましょう。後日談ですが、プロフィール写真は手術後の松島さんで、「両側乳房切除と再建を経験してますが、温泉も楽しめている」のだそうです。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。