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「口内炎」と「舌がん」の違いとは?見分け方や受診の目安を解説【医師監修】

 公開日:2025/05/29
「口内炎」と「舌がん」の違いとは?見分け方や受診の目安を解説【医師監修】

口内炎がなかなか治らなかったりいつもと異なる場所にできたりすると、舌がんではないかと心配になる方もいるのではないでしょうか。 舌がんは老若男女問わず多くの方に起こりうる口内炎と異なり、放っておくと進行する病気のひとつで早期発見が大切です。 本記事では口内炎と舌がんのそれぞれの特徴を踏まえ、症状や原因の違いなどを説明していきます。

永井 恒志

監修医師
永井 恒志(医師)

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医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。

舌がんとは?

舌がんは舌にできる悪性腫瘍で、基本的に舌先2/3の範囲で両脇や裏側に発生します。舌先や真んなかに腫瘍ができる場合もありますが、症例としては少数にとどまります。
舌がんは、口腔がんのなかでも罹患者数が6割程度と発生頻度が高い疾患です。男性に発生する場合が多く、飲酒や喫煙などの生活習慣との関連が指摘されています。口腔がんのなかでも早期発見が可能な疾患であり、初期に発見できた場合の5年生存率は90%以上で早期の場合は治療成績がよいのも特徴です。

舌がんの主な原因

明確な舌がんの原因は明らかになっていませんが、前述したように飲酒・喫煙などの生活習慣や口腔内の衛生状況などとの関連性が指摘されています。ほかにも義歯や歯の詰め物などによる物理的な刺激、白板症や紅板症をはじめとする口腔内の粘膜病変が悪性化するケースもあります。
さらに飲酒や喫煙は口腔がんへの罹患リスクが、1.5倍以上も上昇するため注意が必要です。舌がんを防ぐには飲酒量を減らしたり休肝日を作ったり、禁煙するなど生活習慣の改善が必要となります。

舌がんの代表的な症状

舌がんの代表的な症状は、以下のとおりです。
  • 舌の痛みや出血
  • 舌の側面や裏側に潰瘍やしこりができる
  • 舌の粘膜が白や赤に変色している
  • 舌の側面に入れ歯や義歯が擦れて痛みや違和感がある
  • 口内炎が2週間以上続いている
初期の場合は上記の症状を自覚しない方もいるため、症状の出方はさまざまです。しかし進行すると、舌が固くなり動かすのが難しくなるケースや舌の変形に気付くなどの違和感を覚え、医療機関を受診する方もいます。
いずれの症状においても初期の舌がんの場合、自身で口内炎と舌がんを明確に区別することは難しいため、不安な場合は医療機関を受診することをおすすめします。

口内炎とは?

口内炎は、炎症性の口腔粘膜疾患です。口腔粘膜に傷がついた際に細菌感染したり、免疫力の低下により口腔内の常在菌が異常に繁殖したりするのが原因となります。主な口内炎の種類は、以下のとおりです。
  • 外傷性口内炎
  • カンジダ性口内炎
  • ヘルペス性歯肉口内炎
  • アフタ性口内炎
  • ニコチン性口内炎
上記のうち外傷性口内炎やニコチン性口内炎は、物理的な刺激やニコチンによる刺激が原因となります。アフタ性口内炎は誤って舌を噛んだり、ストレスや免疫が低下したりした際に見られます。
ほかにもカンジダ菌やヘルペスウイルスへの感染によって起こる口内炎もありますが、主な原因はウイルス感染や口腔内の衛生状態の悪化です。

口内炎と舌がんの違い

口内炎と舌がんは違いがはっきりしていないため、初期の舌がんは口内炎と勘違いする方も少なくありません。ほとんどの口内炎は市販の薬を塗布したり、ビタミンを摂取したりすると自然と数週間後には治癒します。しかし舌がんは口内炎でないため、口内炎の薬を使用しても改善しないのが特徴です。
そのため口内炎が数週間経っても改善しなかったり時間が経つにつれて症状に変化が出てきたりした場合は躊躇わず医療機関を受診するのが大切です。

口内炎と舌がんの原因の違い

口内炎の主な原因となるものは、以下のとおりです。
  • 外傷(誤って噛んでしまったなどの場合)
  • 栄養バランスの乱れやストレス
  • 免疫の低下
  • 喫煙
  • 口腔内の衛生状態の低下
  • 血液疾患
  • 免疫疾患 など
舌がんは口内炎と共通して、喫煙や口腔内の衛生状態との関連性も指摘されています。ほかにも白板症といった粘膜病変をはじめ、義歯や歯の詰め物による長期的な刺激などが挙げられています。

口内炎と舌がんのできる場所の違い

口内炎は場所を問わず、口腔内のさまざまな場所に発生するのが特徴です。一方舌がんは舌の裏側や両側面を中心に、舌先3分の2程度の場所に発生します。
病変が舌の先端や、表面に発生するケースは少ないです。そのため病変部と歯が擦れる際に出血したり、鏡を見た際に舌の変化に気付いたりして受診する方も少なくありません。

口内炎と舌がんの症状の違い

口内炎は発症から症状を自覚するまでの期間が短いのに対して、舌がんは発症してもしばらくの間は無症状であるケースがあります。口内炎の場合は主な症状が患部の痛みや違和感、腫脹や発赤です。しかし舌がんは痛みや違和感のほかに硬結感や食べづらさ、喋りづらさを感じる場合があります。
また口内炎と異なり、舌がんの場合は進行すると頸部の圧迫感や倦怠感、体重減少などの全身症状が出現します。

口内炎と舌がんの見分け方

舌がんは早期発見が望ましいですが、初期の場合は自覚症状に乏しく発見が難しいものもあります。口内炎と比較しても見た目や症状に共通した部分があるため、患者さん自身で区別をつけるのは難しい病気です。
しかし舌がんには特徴的な症状や変化があるため、当てはまる場合や不安な場合は医療機関を受診してみるとよいでしょう。

舌の口内炎にしこりがある

しこりがある場合は、単なる口内炎でなく舌がんや良性腫瘍が考えられます。口内炎は舌に潰瘍ができたり腫れたりする場合がありますが、基本的にしこりは発生しません。
しこりは皮下組織にできる瘤のようなものであり、腫脹は炎症などが原因で皮膚自体が盛り上がる状態を指します。しこりがあった場合は舌がんであると断定はできないため、しこりがある場合は手術で切除したりCTなどの検査をしたりして悪性かどうかの判定が必要です。

舌の口内炎に痛みがない

舌にできた口内炎は基本的に歯や上顎、食べ物などと接触すると痛みを感じます。しかし舌がんの場合は舌の表面にびらんができたり、白く変色したりしているにも関わらず痛みを感じないケースが少なくないです。舌の表面に白くざらざらとした粘膜になった場合や、しこりがあるにも関わらず痛みがない場合は舌がんの可能性も否定できません。

舌の口内炎が2週間経っても改善しない

舌の口内炎は専用の軟膏を塗布するなど適切な治療をすれば、基本的に1〜2週間程度で治癒します。しかし舌がんの場合は舌の皮下組織などに発生する悪性腫瘍であるため、口内炎の薬を使用しても改善せず進行するのが特徴です。しかし2週間経っても、口内炎が改善しない場合でもがんであるとは限りません。
口内炎は血液疾患や免疫疾患なども関係しているため、心配な場合は医療機関への受診をおすすめします。

舌の粘膜に白斑や紅斑がある

舌の粘膜に白斑や紅斑がある場合は、舌がんのほかにも白板症や紅板症が考えられます。白板症や紅板症は舌の側面から裏面にかけて発生し、摩擦や刺激で強い痛みを伴います。どちらもがんではないものの、高頻度で悪性化するため定期的な経過観察や外科的切除が必要です。
特に紅板症の場合は、約50%の割合で悪性化するともいわれています。しこりや潰瘍などを伴う白板症や紅板症の場合は、舌がんの可能性を念頭に入れた病理学的検査が必要です。

受診の目安と診療科

舌がんは頭頸部がんに分類され、耳鼻咽喉科や歯科口腔外科が専門領域です。耳鼻咽喉科や歯科口腔外科では舌がんの治療として、主に外科的手術や化学療法を行います。舌は食事や栄養はもちろん、コミュニケーションや呼吸などに関わる器官のひとつです。
そのため治療の内容によって、歯科口腔外科や耳鼻咽喉科はもちろん腫瘍内科や放射線科、形成外科やリハビリテーション科など多部門の診療科が関わっていきます。

口内炎と舌がんについてよくある質問

ここまで舌がんと口内炎の違いやそれぞれの特徴について紹介しました。ここでは「口内炎と舌がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

口内炎ががん化することはありますか?

永井 恒志永井 恒志 医師

口内炎の一種とされている白板症や紅板症は、約5割の確率でがん化します。病変部の状態によっては病理検査の実施、がん化するリスクが高いと考えられる場合は外科的切除が必要です。そして手術後においても、必要であれば舌がんの発生がないか定期的な経過観察を行います。

口内炎と舌がんを自分で見分ける方法はありますか?

永井 恒志永井 恒志 医師

口内炎と舌がんを自分で見分けるのは難しく、口内炎ではなく実は舌がんだったというケースもあります。しかし舌がんと口内炎の違いはいくつかあるため、自分でチェックし気になる症状や心配なケースがあれば医療機関を受診し検査をしてもらうのがよいでしょう。

編集部まとめ

本記事では口内炎と舌がんの違いについて、それぞれの疾患の特徴を踏まえながら説明してきました。 口内炎と舌がんは症状や原因などにおいて類似点が複数存在するため、見分けるのが難しい疾患です。 舌がんを早期に治療できた場合の5年生存率は良好であるため、早いうちに発見し治療するのが大切な疾患でもあります。 口内炎なのか舌がんなのか見分けがつかず心配な方、口内炎がなかなか治らず心配な方は医療機関を受診しましょう。

舌がんと関連する病気

「舌がん」と関連する病気は5個程あります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

上記の疾患は、舌がんと同様の部位に病変部があるケースもあります。舌がんの前がん病変と指摘される場合もありますので、医療機関への受診をおすすめします。

舌がんと関連する症状

「舌がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 舌の一部の白色化
  • 舌の潰瘍や凹凸
  • 舌の腫れ
  • 舌のしこり
  • 頸部のリンパ節腫脹
上記に示した症状は、口内炎や舌がん以外の病気にも関連するケースがあります。当てはまる症状や心配な症状があれば、医療機関を受診してみましょう。

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