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「抗がん剤治療」を途中でやめたらどうなる?抗がん剤以外のがん治療薬も解説!

 公開日:2024/12/21
「抗がん剤治療」を途中でやめたらどうなる?抗がん剤以外のがん治療薬も解説!

抗がん剤はがん治療のひとつで、化学療法ともいわれる薬物療法です。

適切な治療方法として抗がん剤の効果が期待できる場合に使用しますが、抗がん剤治療が合わないときには、緩和ケアに切り替える場合もあります。

永井 恒志

監修永井 恒志

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医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学
院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器
病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の
理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。

抗がん剤とは?

抗がん剤とは、がん細胞が増殖する仕組みを抑制してがん細胞を攻撃する薬のことです。がん細胞の増殖を阻止する薬を細胞障害性抗がん薬といい、ホルモン療法といわれる内分泌療法や分子標的薬とはがん細胞への攻撃の仕方が異なります。
抗がん剤の効果や副作用が起きる原因を解説します。

抗がん剤の効果

抗がん剤は、全身に広がったがん細胞を攻撃する効果があります。血液中に飲み薬や点滴注射を投与することで、全身に広がったがん細胞の死滅や増殖を止めることが可能です。

抗がん剤の副作用が起きる理由

抗がん剤による副作用の原因は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすためです。
 

抗がん剤治療を途中でやめたらどうなる

抗がん剤を途中でやめた場合とやめるタイミングについて解説します。

抗がん剤治療が行われるケース

抗がん剤治療が行われるケースは、がんの種類や症状により異なります。特に、薬物治療のみで治療が可能とされる白血病や悪性リンパ腫といった血液のがんが挙げられます。また、手術とあわせて治療する際には術前薬物療法や術後薬物療法で抗がん剤治療をします。

抗がん剤は効かなくなることがある

抗がん剤はがんの種類によっては効かなくなることがあります。例として乳がんの場合、許容範囲内の副作用であっても、原則として効果がない場合に抗がん剤治療はやめるとしています。

抗がん剤をやめることはがん治療をやめること

がん治療は、薬物療法(抗がん剤を含む)・外科手術・放射線治療の3つが標準的治療法とされています。これらの治療は科学的根拠(エビデンス)から、がん患者さんの治療としてすすめられているものです。
しかし、抗がん剤をやめて対症療法を中心とした緩和ケアを受けるのであれば、がん治療をやめるということになります。その一方で、抗がん剤をやめて手術や放射線治療を受けるのであれば、それはがん治療をやめるということにはなりません。

抗がん剤をやめるタイミング

副作用で末梢神経障害などの強い反応が出て手足のしびれや歩行困難になることもあります。このような生活に支障をきたすほどの副作用があれば、患者さんのQOLを考慮して抗がん剤治療をやめることもあります。

抗がん剤以外のがん治療薬

薬物療法は、がん細胞の種類によって効果が異なります。主に細胞障害性抗がん剤(化学療法)・分子標的薬(分子標的薬療法)・ホルモン療法(内分泌療法)の3種類に分類されます。
抗がん剤以外のがん治療薬として、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬について解説します。

分子標的薬

分子標的薬とは薬の成分の化合物が小さい小分子化合物と、免疫チェックポイント阻害薬などの抗体薬と呼ばれる2種類があります。
小分子化合物の特徴は特定のタンパク質を標的としますが、非標的タンパク質にも作用するため、副作用が生じやすいです。副作用として、高血圧・下痢・肝機能障害・薬剤性肺炎のほか皮膚にも症状が現れます。これらの副作用は薬の種類によって異なるため、どのような症状が出るのかや現れる時期を断言することは難しいです。
抗体薬は免疫チェックポイント阻害薬のほかに、抗上皮成長因子受容体抗体や抗HER2抗体薬などもあります。抗体薬の副作用は薬の種類にもよりますが、治療の初回など初期段階に見られることが多いです。症状は高熱・息苦しさ・関節痛のようなインフルエンザに似た症状で、インフュージョンリアクションといわれています。
インフュージョンリアクションとは分子標的薬などの点滴注射後24時間内に起こるといわれている過敏反応です。免疫の働きによっておこるアレルギーとは違う症状で、ときには重篤な症状により命に関わることもあり注意が必要です。

免疫チェックポイント阻害薬

がん細胞は体を守る免疫細胞と結合して、免疫細胞ががん細胞を攻撃できなくしてしまいます。そのため、免疫細胞ががん細胞を異物と認識しなくなる免疫異常が起きます。免疫チェックポイントと呼ばれているがん細胞と免疫細胞の結合を阻止することで、免疫細胞はがん細胞を攻撃できるようになります。そのために使われているのが免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれている抗体薬です。

抗がん剤から緩和ケアへの切り替え

抗がん剤治療をしていて、何らかの理由で緩和ケアに切り替える場合について解説します。

抗がん剤治療から緩和ケアに切り替えるタイミング

抗がん剤治療から緩和ケアに切り替えるタイミングは、抗がん剤治療が効果を示さない場合や、がんが進行し患者さんが治療に耐えられない場合が考えられます。
抗がん剤の効果がなければ、患者さんにとっては大きな負担となります。このような場合は、抗がん剤治療から緩和ケアに切り替えるタイミングといえます。また、抗がん剤の副作用が臓器に与える影響が大きく、臓器障害が起きるようなケースでも緩和ケアに切り替えるなどの判断が必要となることもあります。
いずれの場合も、抗がん剤治療から緩和ケアに切り替えるタイミングについては、患者さんと患者さんの家族も含めて主治医とよく相談しましょう。
緩和ケアの選択肢には、外来通院・入院(一般病棟または緩和ケア病棟)・自宅療養の3種類があります。治療している病院の設備や自宅の環境を考慮して適切な緩和ケアを選択することをおすすめします。

緩和ケアの目的と役割

緩和ケアとは患者さんと患者さんの家族が、がんと診断されたときから治療と並行して生活の質(QOL)を低下させないように行うものです。
がんと診断されると、治療に向き合うためや社会復帰するために苦痛などを強いられます。がんは早期発見であれば治るものが多くありますが、治療のために精神的な苦痛・身体的な苦痛・社会的な苦痛と向きあわなければなりません。また、抗がん剤などにより起こる副作用や後遺症は個人差があり、現れる時期も病状により予測不可能です。
しかし、患者さんだけでなく患者さんの家族も含めてそれぞれの不安や苦痛を緩和することは必要なことです。緩和ケアと聞くと一般的にはがんの末期でステージIVなどで余命が短い場合や、進行していて治療の方法がなく在宅での生活も困難なときに受けるケアと考えられています。
しかし、本当の緩和ケアは治療を始めてからや病状が進行して悪化してから受けるものではありません。がんと診断されたときから精神的な苦痛を和らげたり、治療をしながら痛みや副作用の辛さを緩和したりするものです。緩和ケアは、各専門分野のスタッフがチームとなり、患者さんにとってより適切なケアを提供します。

抗がん剤についてよくある質問

ここまで抗がん剤や緩和ケアを紹介しました。ここでは抗がん剤についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

抗がん剤治療でがんは完治しますか?

永井 恒志永井 恒志 医師

抗がん剤治療により完治が期待できるがんもありますが、すべてのがんが対象ではありません。特に血液やリンパ系などのがんでは、抗がん剤治療による完治が可能な場合があります。

抗がん剤をやめることで余命は短くなりますか?

永井 恒志永井 恒志 医師

一般的には抗がん剤治療をやめれば余命は短くなります。抗がん剤は点滴治療などでがん細胞を攻撃して死滅させ、延命の効果が期待されているからです。

編集部まとめ

高齢の患者さんでは、抗がん剤をやめることで精神的・体力的な負担が軽減され、生活の質が向上する場合もあり、よい結果になる可能性もあります。 

抗がん剤と関連する病気

「抗がん剤」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

抗がん剤と関連する病気は上記のようなものがあります。特に、大腸や子宮など腹部の手術後の場合は、吐き気や嘔吐の症状が現れたら腸閉塞を起こしている可能性があります。

抗がん剤と関連する症状

「抗がん剤」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 脱毛
  • 皮膚と爪のトラブル
  • しびれ
  • 吐き気・嘔吐
  • だるさ・倦怠感

抗がん剤と関連する症状としては、上記のようなものがあります。脱毛の場合は、早めにウィッグを準備することで対処できますが、痛みや吐き気・嘔吐の場合は薬を処方してもらうと楽です。