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「腎臓がんが再発率」はご存知ですか?再発したときの治療法も解説!

 公開日:2025/01/05
「腎臓がんが再発率」はご存知ですか?再発したときの治療法も解説!

腎臓がんと聞くと、身近な病気ではないように感じるかもしれません。実際にはめずらしい病気ではなく、自覚症状がないため、早期発見が必要な病気です。

腎臓がん(腎細胞がん)の発生率は、人口100,000人あたり2.5人で男女比2〜3:1で男性が多いとされています。

この記事では腎臓がんの治療法や再発、よくある質問などを解説します。

腎臓がんの再発を心配されている方、または再発を予防したいと考えている方の参考になれば幸いです。

永井 恒志

監修永井 恒志

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医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学
院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器
病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の
理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。

腎臓がんとは?

腎臓がんとは、腎臓の細胞ががん化する悪性腫瘍です。腎臓は血液をろ過し、老廃物を尿として身体の外に出す臓器ですが、細胞の一部が異常な増殖をしてがんになります。腎臓がんは腎がんとも呼ばれ、大部分が腎細胞がんです。腎細胞がんは、腎臓の実質(腎実質)と呼ばれる部分の細胞から発生します。
ほかに、腎盂(じんう)と呼ばれる腎臓の尿をためる部分のがんは腎盂がんと呼ばれ、腎細胞がんとは別です。腎臓がんのほとんどは腎細胞がんなので、一般的に腎臓がんといえば腎細胞がんを指します。

腎臓がんが再発したときの治療法

腎臓がんが再発した場合の治療法には、大きく分けて4つあります。外科手術による摘出・サイトカイン療法・免疫治療薬療法・分子標的薬療法です。これらの治療法を解説します。

外科手術による摘出

腎臓がんの再発に対し、外科手術は再発した腫瘍が局所にとどまっており、転移が限られている場合に有効な治療法です。主な手術方法は、腎臓全体を摘出する腎摘除術と腎臓の一部のみを摘出する腎部分切除術です。
近年の画像診断技術の進歩により、がんの進行によりますが、腎臓の機能を温存できる腎部分切除術が選択されるケースが増えています。手術はがんの大きさや位置、患者さんの健康状態などによって、開腹手術か腹腔鏡手術か適切に判断されます。手術後の予後はさまざまな要因に影響を受けます。

サイトカイン療法

サイトカイン療法は、免疫細胞や炎症反応の働きを活性化させるサイトカインをタンパク質で用いた治療法です。インターフェロン製剤やインターロイキンが代表的なサイトカイン療法で用いる薬剤です。2008年に分子標的薬が登場するまでは、腎細胞がんの主要な薬物療法でしたが、現在では分子標的薬が中心とされています。
サイトカイン療法では、発熱・食欲不振・関節痛などの副作用が起こることがあり、副作用は症状に応じた対症療法が行われます。

免疫治療薬療法

免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫治療薬療法は、がん細胞が免疫細胞からの攻撃を逃れるのを防ぎ、免疫システムを活性化させることでがんを攻撃する治療法です。腎細胞がんの治療に効果があると証明されている方法は、免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法とサイトカイン療法のみです。
手術や分子標的薬療法と併用される場合もあります。代表的な薬剤としては下記のとおりです。

  • ニボルマブ(オプジーボ)
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)

免疫治療薬療法は、ほかの治療法に比べて副作用が少ないといわれていますが、免疫関連の副作用(肺炎や腸炎など)が起こる可能性があります。

分子標的薬療法

分子標的薬療法は、がん細胞の増殖に必要な特定の分子を標的とする薬剤を用いる治療法です。がん細胞の増殖をおさえ、増大を遅らせたりする効果があります。しかし、分子標的薬療法は外科手術が困難な方や、転移が認められた方が対象です。代表的な薬剤は下記のとおりです。

  • チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)
  • ソラフェニブ(ネクサバール)
  • スニチニブ(スーテント)
  • カボザンチニブ(カボメティクス)

分子標的薬は、高血圧、手足症候群、疲労感、消化器症状などさまざまな副作用が起こります。薬剤の種類や投与量によって副作用は異なるので、治療前に医師から副作用に関する十分な説明を受けるようにしましょう。

腎臓がんの再発

腎臓がんは、治療後に再発する可能性のある病気です。ここでは、再発率や時期、部位、再発リスクを高める要因についてわかりやすく解説します。

腎臓がんの再発率

腎臓がん手術後の再発率は、一般的に20〜30%程度と報告されています。数値はあくまでも統計的なものであり、個々の患者さんの再発リスクはがんの病期や大きさ、遺伝などさまざまな要素によって変わります。
近年では、より精密な再発リスク評価のための研究が進められており、高リスクパターンが特定されました。しかし、再発リスクは患者さんそれぞれの状況で異なりますので、再発を少しでも低くするためにも定期的な受診が大切といえるでしょう。

腎臓がんの再発しやすい時期

腎臓がんの再発は手術後数年以内に多く見られます。手術後5年以内が再発しやすい時期が多いといわれていますが、10年以上経過してから再発するケースもあります。再発しやすい時期を明確に予想することは困難ですが、手術後数年は特に注意深く経過観察を行う必要があるでしょう。再発の有無に関わらず、定期的な検査を継続することで、早期発見・早期治療につながり、予後の改善につながる可能性が高まります。

腎臓がんが再発しやすい部位

腎臓がんはさまざまな臓器に転移する可能性がありますが、多い部位はです。ほかに、骨、肝臓、副腎、脳などに転移もあります。転移しやすい理由は、腎臓を通った血流によって容易にがん細胞が到達しやすいためです。
転移部位によって症状も異なり、肺への転移では胸の痛み、咳、血痰といった症状が現れやすいです。骨への転移では、骨の痛みや骨折などが現れる可能性があります。転移が全身に広がると、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状も現れます。

再発リスクを高める要因

腎臓がんがんの再発リスクを高める要因は喫煙、肥満、高血圧、人工透析などが挙げられます。喫煙や肥満、高血圧などは腎臓がんだけでなく、ほかの疾患のリスクも高めやすい要因といえるでしょう。また、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)といった、遺伝的な要因も再発リスクに影響を与えるといわれています。
すべてが再発を引き起こすとは限りませんが、リスクを高める可能性があることを理解しておくことが重要です。

腎臓がんの再発パターン

腎臓がんの再発は、大きく分けて原発巣での再発と転移の2つのパターンがあります。ここからは、それぞれの再発パターンを詳しく解説します。

原発巣での再発

手術や薬物療法により見かけ上なくなったがんが、原発巣である腎臓、あるいは腎臓の近くに再びがんが発生するパターンです。腎臓がんの再発率は手術後20〜30%程度と報告されており、再発のリスクはがんの病期、患者さんの年齢や健康状態などによって大きく影響を受けます。
原発巣での再発は、手術による再摘出が治療の選択肢となる場合があり、再発したがんの大きさや広がり、患者さんの全身状態などを考慮して決定されます。

転移

原発巣にて再発するパターンのほかに、がん細胞が血管を介しほかの臓器に転移して再発するパターンもあり、それを血行性転移といいます。頻度の高い転移部位は肺であり、次に骨、肝臓、脳などが挙げられます。リンパ節への転移も起こりますが、腎臓がんでは血行性転移の方が一般的です。
転移の有無は、治療後の経過に大きな影響を与えます。転移が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

腎臓がんについてよくある質問

ここまで腎臓がんの治療法や再発、再発パターンなどを紹介しました。ここでは「腎臓がん」についてよくある質問に、MedicalDOC監修医がお答えします。

腎臓がんは再発しやすいですか?

永井 恒志永井 恒志 医師

腎臓がんが再発しやすいかは不明ですが、手術で腫瘍を完全に摘出できた場合でも、再発する可能性があります。再発率は、がんの病期や大きさ、組織の型、患者さんの状況などの要因によって異なりますが、一般的には20〜30%程度とされています。

腎臓がんに免疫療法は効果的ですか?

永井 恒志永井 恒志 医師

免疫療法は、腎臓がんに対し効果的な治療の選択肢とされています。免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬剤は、がん細胞が免疫細胞からの攻撃を逃れるのを防ぎ、免疫システムを活性化させることでがん細胞を攻撃します。免疫療法は手術や分子標的薬療法の効果が不十分な場合や再発や転移した場合などです。副作用も起こる可能性があるので、適切な管理が必要です。

編集部まとめ

今回は腎臓がんの再発について解説しました。

早期発見は予後を大きく左右するため、定期的な受診や検査が大切です。

ご自身またはご家族で気になる症状や異変がある方は、一人で悩まずなるべく早く医療機関に相談しましょう。

腎臓がんと関連する病気

「腎臓がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)
  • 慢性腎臓病(CKD)

関連する病気は腎臓がんの発症リスクを高めるとされています。適切な対策を行うことで、腎臓がんの発症リスクの軽減が期待できます。

腎臓がんと関連する症状

「腎臓がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背中や腰の痛み
  • 腹部のしこり

三大症状として知られています。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修