「子宮頸がん検診」は「生理中」でも大丈夫?検診でよくあるトラブルの対処法を医師が解説!

子宮頸がん検診は、20歳になると2年ごとにお住まいの自治体から助成券が届きます。助成券を利用すれば、検診の負担は1,000円前後です。
しかし、検診当日に生理が来たらどうすればよいのかわからず、子宮頸がん検診を躊躇してしまう方もいるでしょう。当記事では、子宮頸がん検診の内容や検診当日に生理が来てしまったときの対処法などを解説します。ほかにも、子宮頸がん検診と生理に関するよくあるトラブルや検診時の服装も紹介しています。
生理期間の不安を解消し、正しく子宮頸がん検診を受けるきっかけとなれば幸いです。

監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは?
子宮頸がんとは、子宮の出口にあたる子宮頸部に生じるがんのことです。子宮にできるがんには、子宮頸がんと子宮体がん(子宮上部にある袋状の部分に生じるがん)があります。
子宮にできるがんでは、子宮頸がんが約7割、子宮体がんが約3割です。子宮頸がんは、20歳台より増え始め、40歳台がピークです。ピーク後は徐々に減少しますが、再度60歳台で患者さんが増加します。日本国内では、毎年10,000人程度に子宮頸がんが見つかっています。
子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染といわれており、多くは性交渉での感染です。ただ、多くの場合HPVに感染しても自然に消失するため、がんになるのは持続感染した方の一部です。
子宮頸がんは、がんになる前の状態(異形成)を経てからがんとなります。異形成の時期やごく初期段階では自覚症状に乏しいですが、進行してしまうと治療が難しいことから、早期発見が重要です。
子宮頸がん検診では、異形成の段階でも発見できるので、きちんと検診へ行くことが大切です。
子宮頸がん検診は生理中でも大丈夫?
子宮頸がんは、厚生労働省が定めた指針により、20歳になると2年ごとの検診が推奨されています。ほとんどの市町村で子宮頸がん検診の費用を公費で負担しており、かかる費用は1,000円前後です。
生理がある女性にとっては、月の1/4程度が生理期間です。生理期間を避けることがどうしても難しい場合、子宮頸がん検診は生理中でも受けられるのかを確認しましょう。
医療機関や自治体によって異なる
子宮頸がん検診は、生理中では検査精度が低下する可能性があるため、避けることが推奨されます。ただし、医療機関や自治体により、生理中でも受け付けている場合があります。
生理中に子宮頸がん検診を受けられるところでも、生理初日や経血の多い時期には受けられない場合もあるので、医療機関や自治体へ確認しましょう。
正確な検診結果が得られない可能性もある
子宮頸がん検診は、子宮の出口にあたる子宮頸部付近をブラシやヘラなどでこすり、取った細胞を検査します。生理中は、経血の影響で細胞採取の精度が下がり、正しい検診結果が出ない可能性があります。
正確な検診結果を得るためには、生理中を避けた日程で行うことが望ましいです。
子宮頸がん検診の内容
子宮頸がん検診で行われる問診や検査内容について、手順をわかりやすく解説します。
問診
まず、問診票を記入します。子宮頸がん検診の場合、特に重要なのが生理に関する情報です。
- 最終生理開始日や期間
- 生理周期
- 生理痛の有無
- 経血の量・不正性器出血の有無
- 妊娠歴
問診票をもとに、最近変わったことがないか、日常生活で困っていることがないかなどを医師が細かくヒアリングしていきます。
視診
視診では、クスコと呼ばれる専用の器具を膣内に挿入して、子宮頸部を観察します。視診でわかるのは以下のことです。
- おりもの状態
- 炎症の有無
内診
内診は、医師が手を使って診察します。片方の手を膣内に入れ、もう片方の手をお腹に当てて行います。内診でわかることは以下のとおりです。
- 子宮や卵巣の状態
- 腫れや痛みの有無
- 膣や子宮頸部の状態
細胞診またはHPV検査単独法
細胞診は、ブラシやヘラなどで子宮頸部にある細胞をこすり取り、がん細胞がないかを調べる検査です。HPV検査単独法は、子宮頸部から細胞を取るところまでは同じですが、検査内容が異なります。HPV検査単独法は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを調べる検査です。
ただし、HPV検査単独法は一部の市町村のみが導入している方法で、ほとんどは細胞診が行われます。
子宮頸がん検診でよくある生理のトラブルの対処法
子宮頸がんは、がんになる前の異形成の状態でも検診で見つけられるがんです。しかし、女性にとっては生理期間があり、検診日程が限られてしまいます。
子宮頸がん検診でのよくある生理のトラブルと対処法をまとめました。
検診当日に生理が来てしまった
生理周期が安定している方でも、2〜3日のずれはよくあることです。また、計算を間違えて検診当日に生理が来てしまうこともあるでしょう。生理中に検診が受けられるかどうかは、医療機関や自治体によって判断が分かれます。
基本的に子宮頸がん検診は生理中を避けるのが望ましいため、検診日程を変更しましょう。
生理不順で生理が突然来る可能性がある
生理が突然来るかもしれないと不安な方の対処法は、2通りあります。1つは、日程の変更です。今生理が来ているなら、生理直後だと日程を調整しやすいでしょう。
2つ目は、検診当日まで待つことです。検診当日に生理が来ていなければ、問題なく検診を受けられます。検診当日に、やむを得ず生理が来てしまったら、検診日程の変更を依頼しましょう。
検診当日までに生理が終わるかどうかわからない
生理中でも出血量が少ない場合や生理5日目以降なら検診を受けられる、としている医療機関はあります。ただし、医療機関によって異なるので、検診を実施している医療機関の指示を仰ぎましょう。
検診後に出血があったが生理かどうかわからない
子宮頸がん検診では、ブラシやヘラなどで子宮頸部の細胞をこすり取ります。通常痛みはなく、出血してもごく少量です。もし、検診後に出血が多くても生理周期を計算して生理の可能性があれば、様子を見ながら過ごしましょう。
ただし、生理とは異なる出血が3日以上続く場合や痛みを伴う場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
生理中の子宮頸がん検診についてよくある質問
ここまで子宮頸がん検診の流れや生理中に検診が受けられるかなどを紹介しました。ここでは「生理中の子宮頸がん検診」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
生理前と生理後ではどちらに検診を受けるのが望ましいですか?
山本 康博(医師)
生理中は、細胞採取の精度が下がるため推奨されません。生理期間を避ければ、生理前でも生理後でも検診を受けられます。ただし、検診直後に生理が来てしまうと、検診後に起こる可能性のある出血を隠してしまうかもしれません。可能なら、生理直前3日間も避けることが望ましいです。
子宮頸がん検診はどのような服装で受けるのが望ましいですか?
山本 康博(医師)
子宮頸がん検診は、下着を脱いで内診台へあがり、膣へ専用の器具を挿入して行います。検査の直前まで腰回りを覆える、ゆったりとしたスカートがおすすめです。また、着替えの必要があるため、脱ぎ着しやすい服装を心がけましょう。
編集部まとめ
日本国内では毎年約10,000人が子宮頸がんになっていますが、早期に治療を行えば予後良好のがんです。子宮頸がんは、異形成の状態を経てからがんになることがわかっており、初期段階では症状がほとんどありません。
進行してしまうと治療が難しくなることから早期発見が求められています。子宮頸がん検診は、がんになる前の異形成でも発見できます。したがって、気になる症状がなくても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
ただ、子宮頸がん検診は生理中だと精度が落ちるため、推奨されません。生理期間を考慮しなければならず、検診を面倒と感じる方もいらっしゃるでしょう。
医療機関によっては生理中でも条件付きで検診を受けられる場合があります。医療機関とよく相談して、正しく子宮頸がん検診を受けることが大切です。
子宮頸がんと関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
子宮に関連する病気には、子宮体がんや卵巣がんがあります。どちらも子宮頸がんとは異なる部位に発生しますが、近い場所にできるがんです。子宮体がんでは早期から不正性器出血が起こりますが、卵巣がんは自覚症状に乏しく大きな腫瘍となってから発見されることが多くなります。きちんと検診へ行き、早期発見・早期治療が大切です。
子宮頸がんと関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
初期の段階での子宮頸がんは、ほとんど症状がありません。進行してくると出血や痛みがあらわれますが、婦人科への受診は恥ずかしいからと、受診を嫌がる方もいらっしゃいます。子宮頸がんは進行してしまうと治療が難しくなることから、いつもと違う違和感や長引く症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。


