「20代の大腸がん」はどんな初期症状が現れる?発症する確率や原因も医師が解説!
20代で大腸がんを発症することはある?Medical DOC監修医が、20代が大腸がんに気づいたきっかけとなる初期症状・原因・確率・なりやすい人の特徴・検査法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「大腸がん」とは?
大腸がんは、結腸と直腸に発生したがんです。腺腫という良性のポリープから発生するものと、直接粘膜から発生するもので、多くは前者と考えられています。
腺腫から起こるがんは、遺伝子変異が関与していることが多いです。発がんを促進するがん抑制遺伝子や発がんを抑制しているがん抑制遺伝子の異常によりがんは発生します。このような遺伝子の変異により、大腸がんが発生している方が約70%程度いると考えられています。一方で、生まれながらに持っている遺伝子の異常で大腸がんが発生することもあり、大腸がん全体の約5%程度と言われています。このような遺伝性大腸がんの代表的な疾患は、リンチ症候群や家族性大腸腺腫症(FAP)です。この2つの疾患は親から子へ半分の確率で遺伝子異常が受け継がれます。残りの20~30%の患者さんでは、明らかな原因は不明ですが、何かしらの遺伝的素因が関与していると考えられ、血縁者に大腸がんの家族歴が多くみられます。また、大腸がんの発生には生活習慣の影響が少なくありません。遺伝的要因に加え、生活習慣を見直して大腸がんの予防をすることが大変重要です。
20代が大腸がんに気づいたきっかけとなる初期症状
大腸がんの初期症状はあまりなく、わかりづらいです。また、20代では不調があってもがんとは思わず、なかなか病院を受診しないことが多く、診断が遅れてしまうことも少なくありません。ここでは、大腸がんに気づいたきっかけとなる初期症状について解説いたします。これらの症状に当てはまる場合には、一度、消化器内科を受診して相談してみましょう。
便通異常(便秘・下痢)
がんの初期症状としてよくみられるのは、便秘や下痢といった便通異常です。大腸の内腔にがんが突出することで狭くなり、便の通りが悪くなることで起こります。便通の異常が頻回に起こる場合、消化器内科で相談をしてみましょう。
腹痛
大腸がんが大きくなることで便が詰まりやすくなり、腹痛やおなかが張りやすくなります。また、がんが大腸の壁の深部に侵入することで痛みを感じることもあります。腹痛やおなかの張りなどの症状が頻回に起こったり、持続する場合には何かしらの消化管の病気がある可能性が高いです。消化の良いものを摂取し、早めに消化器内科を受診することをお勧めします。
血が混ざった便、血便
大腸がんの表面は出血しやすいため、便が通過する際にこすれ出血し、便に血が付着したり、混ざることがあります。出血の量が少ないと、見た目ではわからず、便潜血検査で陽性となって初めて気が付く方もいます。血便がみられた場合、消化管で何らかの病気がある可能性が高いです。早めに消化器内科を受診しましょう。
貧血
大腸がんから少量ずつの出血が持続する場合、気づかないうちに貧血が進行している場合があります。健康診断や血液検査で貧血を指摘された場合には、便潜血検査などで消化管出血が無いか調べることもあります。特に若い女性では、月経による出血のために貧血が起こりやすく、消化管出血があっても気づきにくいことも多いです。貧血を指摘されたまま放置せず、まずは内科で相談をしてみましょう。
体重減少
大腸がんが進行するとおなかが張りやすく、食欲が低下したり、大腸がんそのものの影響で体重が減少することもあります。食事や運動量に変化がないにも関わらず体重が減少している場合には、まず内科で相談をしてみましょう。
20代で大腸がんを発症する主な原因
大腸がんの好発年齢は40代以降です。しかし、若い年代でも大腸がんが発生することがあります。若い世代で大腸がんを発症する原因について解説します。
遺伝的要因
先に述べたように、生まれながらの遺伝子異常が原因で大腸がんが発生することがあります。代表的なものはリンチ症候群と家族性大腸腺腫症(FAP)です。
リンチ症候群は遺伝子の異常を修復する遺伝子の異常が原因の病気です。この異常のために、がんが起こりやすくなります。大腸がん以外にも子宮内膜がん、卵巣がん、胃がん、小腸がんなども起こりやすく注意が必要です。大腸がんは一般的な好発年齢よりも若年で発症しやすいと言われています。
家族性大腸腺腫症(FAP)は、がん抑制遺伝子の変異が原因となり起こる病気です。頻度は、大腸がんの約1%程度です。FAPは40代で約50%、60代でほぼ100%大腸がんを発生すると報告されています。このため、10代から定期的な大腸内視鏡検査の施行が推奨されており、20代で予防的に大腸すべてを手術で切除することが勧められます。20代での大腸がんの発症も起こり得るため、より早い年代から消化器内科で相談をし、定期的な検査が必要です。また、先天的な遺伝子異常でなくとも、大腸がんの家族歴がある場合は若い年代から注意が必要です。
飲酒・喫煙
男性では飲酒しない人と比較し、アルコール摂取量が日本酒に換算して1日平均1合以上2合未満の人は大腸がんの発生率が1.4倍、1日平均2合以上の人は2.1倍でした。この結果よりお酒を多く飲む人では、大腸がんにかかりやすいと考えられ、節酒が勧められます。
一方たばこは、男女ともに喫煙者では非喫煙者と比較して大腸がんの発生率が1.4倍でした。喫煙も大腸がんのリスクになると考えられます。
赤肉・加工肉
日本では元々肉類の摂取量が多くないため、通常量の肉類の摂取であれば問題ないと考えられています。しかし、諸外国では赤肉・加工肉摂取が大腸がんに対して確実なリスクがあると報告されています。日本人の食生活は変化し、以前より肉類の摂取が増えています。また、日本人の大腸がんの発生率も上昇しており、これらの食生活の変化による影響も考えられます。赤肉やハム・ソーセージなどの加工肉の過剰摂取を控え、バランスよく食べることも大切です。
肥満
日本人男性において、BMI25未満と比較し、BMI27~29.9で1.4倍、BMI30以上で1.5倍大腸がんにかかりやすいことが報告されています。また、運動量の低下も大腸がんのリスクになると言われており、過食や運動不足などからの肥満が大腸がんのリスクとなります。
食物繊維の不足
野菜・果物の摂取と大腸がんとの関係ははっきりしていませんが、今までの報告から男性の非喫煙者において、野菜と果物の摂取量が少ないグループと比較し、多いグループで大腸がんのリスクが低くなることが分かりました。今後の検討は必要であり、まだはっきりとしたことは言えませんが、野菜や果物の摂取量が少ない場合には大腸がんのリスクとなる可能性もありバランスよく食事を摂取する必要があります。
遺伝的要因に加え、食生活が乱れることで大腸がんの発生リスクが上昇すると考えられます。このような危険因子に当てはまる場合には、20代の若い世代から大腸癌に気をつけましょう。
20代で大腸がんを発症する確率はどれくらい?
大腸がん罹患率は40代以降で上昇しやすく、20代では罹患する確率は低いです。2019年の全国がん登録罹患データによると人口10万人当たりの罹患率で、20~24歳で男性1.2例 女性0.8例、25~29歳で男性2.8例 女性2.6例と報告されています。
大腸がんになりやすい人の特徴
家族歴
大腸がんの家族歴がある人では、大腸がんが発生する可能性があります。家族の中で大腸がんを持つ人がいる場合には、若い時から気を付ける必要があります。また、家族歴を持つ人では、下に挙げるような食事や生活習慣に気を付けることをお勧めします。また、定期的に大腸がん検診や大腸カメラなどを受けた方が良い場合もあり、消化器内科を受診して相談してみましょう。
肥満・生活習慣の乱れ
運動量が少なく肥満の人、赤肉・加工肉を多く摂取する人、食物繊維の摂取が少ない人、これらに当てはまる方は大腸がんに気をつけましょう。
飲酒、喫煙
さまざまながんで飲酒・喫煙の危険性は報告されていますが、大腸がんも例外ではありません。平均1合以上の飲酒、喫煙は大腸がんの危険因子となります。
大腸がんの検査法
大腸がんを発見するため、また治療の方針を決めるための検査について解説いたします。
大腸内視鏡検査
検査前日より消化の良いものを摂取し、下剤を内服、当日に多量(通常2L程度)の下剤(腸管洗浄液)を飲み、腸管をきれいにします。そして、内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体の観察をします。ポリープなど病変が見つかった場合には、病変の一部もしくは全体を採取して、病理診断を行い、がんかどうかの判定をすることが可能です。また、病変を直接観察し、病変の性状などを確認することができます。
注腸造影検査
大腸内視鏡検査と同様に下剤を使用して腸管内をきれいにします。その後、バリウムと空気を肛門から注入し、X線写真を撮影します。この検査により、がんの正確な位置や大きさ、形、腸管の狭窄の程度などを知ることが可能です。
CT・MRI検査
CTはX線を使用し、体の内部を撮影します。病変を詳しく描出するために、血管内に造影剤を注入して撮影をすることもあります。一方MRIは磁気を使用して撮影する検査です。CTと同様に造影剤を使用して撮影をする場合もあります。
これらの画像検査を行うことで、周囲の臓器への浸潤が無いか、転移が無いかを調べることができます。
大腸がんの予防法
前述の“なりやすい人の特徴”に当てはまる場合には、注意が必要です。まず、節酒・禁煙を行うこと、食事ではバランスよく食物繊維を摂取して肉類の摂取は過剰にならないようにしましょう。また、カロリー摂取が多くなり肥満とならないようにすることも大切です。運動量を増やすこともお勧めです。
また、大腸がんの定期的な検診や内視鏡検査などを行い、大腸ポリープや大腸がんを早期に発見することも大切です。特に、家族歴がある方では20代から気を付けましょう。
解説に出てきた“大腸がんに見られる初期症状”がみられた場合には、早めに消化器内科を受診して相談をすることをお勧めします。
「20代の大腸がん」についてよくある質問
ここまで20代の大腸がんを紹介しました。ここでは「20代の大腸がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
20代で大腸がんができる原因について教えてください。
和田 蔵人 医師
20代で大腸がんができることは少ないですが、家族歴がある方、特にリンチ症候群やFAPなどの遺伝子異常がある場合には20代でも大腸がんが発生することがあります。また、日本人の食事や生活習慣の変化から近年大腸がんの発生率も増えています。肉類の過剰摂取や肥満、多量の飲酒、喫煙などの習慣がある方では大腸がんになるリスクが上昇するため、若いうちから気を付ける必要があります。
編集部まとめ 大腸がんの予防は食事・生活習慣を見直すことから
近年、日本人の大腸がんの罹患率は増えています。この原因として、日本人の食事や生活習慣の変化が考えられます。肥満や運動不足、肉類の過剰摂取、喫煙、多量飲酒は大腸がんのリスクを高めます。日ごろからバランスの良い食事や適度な運動、適切な体重管理をし、節酒、禁煙をすることが勧められます。若いうちから、食事や生活習慣が乱れると大腸がんのリスクは高くなると考えられます。まず、ご自身の食事・生活習慣を見直すことから始めてみましょう。
「大腸がん」と関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
大腸がんの症状として血便が挙げられますが、血便に関連する病気として、さまざまな消化器系の病気が考えられます。症状のみから大腸がんを診断することはできません。気になる症状があれば、早めに消化器内科を受診しましょう。
「大腸がん」と関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大腸がんの症状は初期では分かりづらいです。また、上に挙げた症状も大腸がん以外の病気でも起こる可能性があり、区別はつきにくいです。気になる症状がある場合には、早めに消化器内科で相談しましょう。