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「乳がんのステージ別の生存率」はご存知ですか?ステージ別の特徴や治療法も解説!

 公開日:2025/01/19
「乳がんのステージ別の生存率」はご存知ですか?ステージ別の特徴や治療法も解説!

乳がんは早期発見と治療が進んでいる病気ですが、診断時のステージによって生存率や治療方法が大きく異なります。

この記事では、各ステージの生存率や治療方法、早期発見につながる具体的な方法についてわかりやすく解説します。

山本 康博

監修医師
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医

乳がんとは?

乳房は、授乳期に母乳を作る乳腺組織とその周囲の脂肪組織で成り立っています。乳がんはそのうち乳腺組織にできるがんです。乳腺組織は実際に母乳を作る小葉と母乳を乳頭まで運ぶための通り道である乳管の2つに分けられます。
乳がんは95%が乳管から発生し、残りの5%が小葉から発生します。乳がんは乳房のどの部位にも発生しますが、好発部位は外側上部です。

乳がんのステージ別の5年・10年生存率

生存率は、がんの治療成績を示す重要な指標のひとつです。多くのがんは5年以内に再発し、それ以降再発することはほとんどないといわれているため、がんの診断から5年後の数値である5年生存率がよく使われます。
しかし乳がんの進行はゆっくりであるため、診断から10年経過して再発することもあります。そのため10年生存率もがんの治療成績を示す重要な指標です。
ここでは乳がんのステージ1〜4の5年・10年生存率について解説します。

ステージ1

ステージ1の5年生存率は99.8%、10年生存率は94.1%です。この段階は5年生存率はほぼ100%、10年生存率も99%あり、治療によって生存できる確率がかなり高いでしょう。

ステージ2

ステージ2の5年生存率は95.5%、10年生存率は90.7%です。この段階では10年生存率は90%をわずかに上回る程度ですが、5年生存率は約95%であり、治療により生存できる確率は高いといえます。

ステージ3

ステージ3の5年生存率は80.7%、10年生存率は68.6%です。大規模なリンパ節転移が見られるため、ステージ2よりも生存率は低下します。

ステージ4

ステージ4の5年生存率は38.7%、10年生存率は19.4%です。ステージ4の乳がんは遠隔転移が認められる段階で、5年・10年生存率ともにステージ3から大きく下回ります。

乳がんの各ステージの特徴・治療方法

がんは進行度によってステージ分けされており、乳がんもステージ0〜4に分かれています。乳がんの治療には手術や放射線療法、化学療法などの薬物療法を組み合わせて行われることが一般的です。
ステージ0はまだがんが乳管内にとどまっている非浸潤がんです。シコリとして触れることは少なく、マンモグラフィで微細石灰化として発見されたり、超音波検査でごく小さな腫瘤として発見され、生検でがんと診断されたものが中心です。
ここでは乳がんのステージ1~4の特徴や治療方法を解説します。

ステージ1

乳がんのステージ1は初期の段階であり、治療によって良好な予後が期待できます。ステージ1の特徴は以下のとおりです。

  • 腫瘍の大きさは2cm以下
  • 腋窩リンパ節に転移がない、もしくは微小な転移がみられる

治療は乳房温存手術と術後放射線療法が行われ、必要に応じて術後薬物療法も行います。しかし、ステージ1でも検査によって広範囲に石灰化やがんが認められた場合は乳房全切除術が行われます。

ステージ2

乳がんのステージ2は初期段階を少し超えた段階です。ステージ2は2aと2bに細かく分類され、次のような特徴があります。

  • 腫瘍の大きさは2〜5cmであり、腋窩リンパ節には転移がない(2a)
  • 腫瘍の大きさは2cm以下で、腋窩リンパ節に転移している(2a)
  • 腫瘍の大きさは2〜5cmであり、腋窩リンパ節に転移している(2b)
  • 腫瘍の大きさは5cm以上で、腋窩リンパ節には転移がない(2b)

治療は基本的にステージ1と同様ですが、手術方法が乳房全切除術になるケースが多くなります。ただし腫瘍が大きく、乳房温存手術が難しい場合でも、薬物療法により腫瘍が小さくなれば乳房温存手術を行えることもあります。

ステージ3

乳がんのステージ3は、がんがかなり進行している段階です。ステージ3は3a・3b・3cの3つに細かく分類され、次のような特徴があります。

  • 腫瘍の大きさが5cm以上で、腋窩リンパ節に転移している(3a)
  • 腫瘍の大きさは関係なく、腋窩リンパ節もしくは胸骨傍リンパ節に転移している(3a)
  • 腫瘍の大きさは関係なく、皮膚または胸壁への浸潤がみられる(3b)
  • 炎症性乳がん(3b)
  • 腫瘍の大きさや皮膚への浸潤は関係なく、鎖骨下リンパ節あるいは胸骨傍リンパ節+腋窩リンパ節あるいは鎖骨上リンパ節に転移している(3c)

治療は3aまでは手術可能ですが、3b以降は主に薬物療法となります。薬物療法により乳房のしこりやリンパ節の腫れが縮小した場合は、手術や放射線療法などの局所治療を追加する場合もあります。

ステージ4

乳がんのステージ4は、がんがさらに進行した段階で、遠隔転移が認められる状態です。乳がんの主な転移場所は骨・肺・肝臓・脳などです。この段階では、全身に広がったがん細胞を根絶することは難しいため、症状の緩和や生存期間の延長を目的とした薬物療法を中心とした治療が行われます。

乳がんを早期発見する方法

乳がんは予後が良好ながんといわれていますが、発見をより早めることで、生存率は大きく向上します。乳がんを早期発見するための方法をみていきましょう。

こまめにセルフチェックを行う

乳がんは体表に近い部分にできるため、自分で見つけやすいがんです。セルフチェックは月に一度、乳房のハリが落ち着く月経終了後や閉経後の方は月初めなど決まった周期で行うことで乳房の変化を感じやすくなります。セルフチェックの手順は次のとおりです。

  • 鏡の前で視覚的に確認する(乳房の左右差・赤みやただれ・皮膚のくぼみやしわなど)
  • 腕をあげて確認する(乳房や皮膚の異常な変化の有無)
  • 手で触れてしこりの有無を確認する(指の腹を使い、円を描くよう乳房全体を確認)
  • 乳首の確認(乳首からの分泌物の有無)

乳房に異常を感じた場合やしこりを発見した場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

生活習慣に気をつける

乳がんを早期発見するために厚生労働省や自治体が呼びかけている生活習慣ブレスト・アウェアネスはご存じですか?ブレスト・アウェアネスとは日頃から乳房の状態を意識する生活習慣のことを指し、4つのポイントがあります。

  • 乳房のセルフチェック
  • 日頃から乳房の変化に気を付ける
  • 変化に気付いたらすぐに医師へ相談する
  • 自覚症状がなくても、40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける

日頃から乳房の変化に気を付けることで小さな変化にも対応できます。気を付けるべき乳房の変化は次のとおりです。

  • 分泌物……乳頭から何か出てくる、下着が汚れている
  • 皮膚の変化……皮膚に凹みやえくぼ様のくぼみ、形に左右差がみられる
  • 痛み……特に外側上部や脇の下の痛みが続く
  • 腫瘤……しこりが触れる
  • びらん……乳房やその周囲に赤みやただれ、出血がみられる

これらの乳房変化にいち早く気付くことが乳がんの早期発見につながります。

定期的に検診を受ける

乳がんは30代後半から増加し始め、40歳以上の女性では罹患する方が多いため、日本では40歳から2年に1回乳がん検診を受けることを推奨しています。検診項目は問診とマンモグラフィです。マンモグラフィは初期の乳がんにみられる石灰化を見つけるのが得意な画像検査です。
マンモグラフィは乳房をプラスチック板で挟むため痛みを伴う場合もありますが、石灰化はもちろん小さな腫瘍も見つけられ、早期発見には欠かせない検査といえます。

乳がんについてよくある質問

ここまで乳がんの生存率・各ステージの特徴と治療方法・早期発見などを紹介しました。ここでは「乳がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんが治りやすいのはどのステージまでですか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

乳がんは再発が多く、10年を過ぎてからの再発も少なくありません。そのため、10年生存率も80%を超えているステージ2までが治りやすいと考えられます。ただし生存率は診断から一定期間経過した時点で生存している方の割合を表しており、その割合のなかには完治した方だけでなく、がんが再発している方も含まれています。生存率=完治率ではないので注意しましょう。

乳がんリスクが高いのはどのような人ですか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

乳がんのリスク因子として次のものがあげられます。

  • 初経年齢が早い(12歳未満)
  • 閉経年齢が遅い(55歳以降)
  • 出産歴がない
  • 初産年齢が遅い(30歳以降)
  • 授乳歴がない
  • 閉経後の肥満
  • 飲酒習慣
  • 一親等の乳がんの家族歴
  • 良性乳腺疾患の既往歴

乳がんの発生・増殖には女性ホルモンであるエストロゲンが関係しており、上記のリスク因子は体内のエストロゲンに影響を与えるものがほとんどです。

編集部まとめ

乳がんはほかのがんと比べて予後がよく、生存率からわかるように発見が早い程、根治が期待できる病気です。

こまめなセルフチェックや生活習慣の見直し、定期的な検診の受診が早期発見につながります。

乳がんの早期発見を心がけ、将来の健康を守りましょう。

乳がんと関連する病気

「乳がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

乳腺症や線維腺腫は良性疾患で、経過観察になることがほとんどですが、葉状腫瘍は悪性の可能性もあるため注意が必要です。

乳がんと関連する症状

「乳がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房のしこり
  • 乳頭からの分泌物
  • 皮膚のくぼみ
  • 乳房の変形・左右差
  • 乳頭のただれ・びらん

これらの症状は良性疾患にもみられます。特に乳房のしこりは80〜90%が良性腫瘍にみられるといわれており、しこり=乳がんではありません。ただし、自己判断は難しいので、これらの症状がみられたらすぐに医療機関を受診しましょう。

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