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「脳膿瘍」という脳に膿がたまる病気の症状や原因について解説!医師が監修!

 公開日:2023/08/17
「脳膿瘍」という脳に膿がたまる病気の症状や原因について解説!医師が監修!

脳に関連する病気は、頭痛や発熱といった何らかの症状がでて初めて気づくことが多いこともあり、常に不安を感じている人も少なくありません。

脳膿瘍は、脳の病気の中では比較的珍しい病気ですが、特定のリスク要因を持っている人に対しては発生リスクが高まることもあります。

脳膿瘍とはどのような病気なのでしょうか。ここでは、脳膿瘍の症状・原因・治療・かかりやすい人の特徴などについて説明します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

脳膿瘍(のうのうよう)の原因や症状

頭痛い

脳膿瘍とはどのような病気ですか?

脳膿瘍は、脳の中に膿がたまった症状です。多くの場合は細菌が原因といわれています。脳以外の頭部もしくは血流に生じた感染または傷を介して、細菌が脳に侵入することで膿がたまっていきます。
症状としては,発熱・頭痛・精神状態変容などです。ごくまれにですが、痙攣発作・局所神経脱落症状もみられることがわかっています。

原因を教えてください。

脳膿瘍は、細菌などが原因で起きる感染症により脳に膿がたまり、膿の周囲の脳にダメージを与えるのが特徴です。その原因としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 脳以外の歯・鼻・耳など頭部で起こった感染が脳に広がる
  • 頭部以外の場所で起こった感染が血流によって脳に及ぶ
  • 脳まで達する頭部外傷後に細菌が入り込む

また、手術などによって感染が起きる場合もあります。さらに手術だけではなく外傷によって感染する可能性もあります。その他感染しやすい例としては下記のとおりです。

  • 心臓の感染症がある
  • 水頭症などで頭の外に脳脊髄液をドレナージするチューブに感染がある
  • 細菌性髄膜炎がある
  • 中耳炎や副鼻腔炎がこじれる
  • 虫歯からの感染がこじれる

しかし、実際の原因がわからないケースも10%から15%くらいあります。

どのような症状が出るのですか?

脳膿瘍が原因で起きる症状は、頭痛・吐き気・嘔吐・異常な眠気などです。これらから症状が進むと、その後昏睡に陥ることがあります。これは、脳内の圧力が上昇し続ける場合に多く起こる症状です。
また、けいれん発作・体の片側の筋力低下・思考力の障害が生じることもあります。これらの症状は、数日から数週間かけて現れることが多いですが、人によっては、症状が軽度だったり、まったくなにも症状がなかったりする場合もあります。こういった違いは、膿瘍の発生部位・大きさ・膿瘍周囲の炎症と腫れの程度による違いです。

かかりやすいのはどのような人ですか?

脳膿瘍は、免疫機能が低下している人はリスクが高いといえます。これは、免疫機能が弱まることで感染症にかかりやすくなるためです。また、頭部に外傷がある場合、外傷性脳損傷や髄膜炎のリスクが増加し、それに伴って脳膿瘍の発生リスクも高まります。
さらに、耳からの細菌によるリスクとして考えられるのが、慢性中耳炎です。慢性中耳炎は、耳の中に継続的な感染がある状態ですので、中耳炎が進行すると、感染が内耳や髄膜に広がり、脳膿瘍を引き起こすことがあります。他にも鼻腔や副鼻腔の感染症によって、感染が髄膜や脳に広がり、脳膿瘍のリスクが高まります。

脳膿瘍(のうのうよう)の検査や治療

機械>

脳膿瘍で病院を受診する目安を教えてください。

脳膿瘍の症状は、早期の診断と治療が重要です。そのため、次のような症状が現れている場合はすぐに病院を受診することが重要です。

  • 高熱が続く
  • 激しい頭痛が緩和しない
  • 意識混濁や意識障害
  • 繰り返される嘔吐
  • 感覚異常やけいれん
  • 言語障害

また、頭部外傷後に発熱・頭痛・膿といった感染症状が現れた場合にも受診することをおすすめします。これらの症状が現れた場合は、迅速にかかりつけ医や専門医に相談しましょう。

どのような検査が行われるのでしょうか?

まずは問診・身体検査・血液検査などで、症状や経過についての詳細な状況を判断します。その上で、脳画像検査を行います。一般的には、頭部CTや脳MRIです。
頭部CTは、 X線を使用して頭部の断層像を作成し、脳内の異常を検出する方法です。これにより、脳にできた膿の塊や脳の腫脹などを見つけることができます。脳MRIは、磁気と無線周波を使用して脳の断層像を作成する方法です。CTに比べ高解像度なので、脳膿瘍の詳細な情報を知れます。これらの検査結果を総合的に評価し、脳膿瘍の診断・原因特定・治療計画を立てることになります。

脳膿瘍の治療方法を教えてください。

脳膿瘍の治療方法は、原因・進行の度合い・患者の状態によって判断します。一般的な治療としては、抗生物質療法です。 脳膿瘍が細菌感染によるものであると判断できる場合、適切な抗生物質を投与します。選択する抗生物質は感染の原因菌などで総合的に判断し、点滴によって静脈内に投与されます。
抗生物質単独では効果が限定的な場合などには、外科的処置を選択することも考えられるでしょう。脳膿瘍内の膿を排出するために、手術的にドレナージを設置します。また、脳腔内洗浄も考えられます。これは、膿瘍を洗浄するために手術で脳腔内に洗浄液を注入し膿を取り除く方法です。脳膿瘍の治療は病状や要因に基づいて個別に判断されます。

手術が行われることもあるのですか?

抗生物質による治療だけでは効果が限定的な場合には、手術が行われることがあります。もっとも一般的なのはドレナージです。
脳膿瘍のドレナージは、 外科的に到達可能な孤立性膿瘍に対して行います。特に直径が2cmを超えるものに有効です。脳膿瘍内の膿を排出するために、手術的にドレナージを設置します。

脳膿瘍(のうのうよう)の予後と注意点

注射

脳膿瘍は治りますか?

脳膿瘍は、早期の診断と適切な治療が行われれば治癒する可能性があります。しかし、脳膿瘍の治療は状況や原因によっても異なりますし、一部後遺症が残ることもあります。早期の診断と治療が行われることによって、感染の制御や合併症の予防が可能です。
脳膿瘍の原因菌に対して適切な抗菌薬が選択され早期に治療が行われることが重要です。脳膿瘍に関連した死亡率は 5%から10%といわれています。脳膿瘍の後遺症としては、体が動かしにくくなる麻痺・痙攣・行動や学習上の問題などがあります。重要なのは、早期に専門医の指示に従い、適切な治療を受けることです。

生活するうえで注意することはありますか?

インフルエンザや肺炎球菌など、予防接種が推奨される場合は、適切に受けるようにすることが重要です。また、鼻や耳の感染症へは常日頃から注意しておきましょう。中耳炎や副鼻腔炎などの鼻や耳の感染症は脳膿瘍の原因になることがあるためです。鼻水・鼻づまり・副鼻腔の炎症などが続く場合は、早めに医師の診察を受けて適切な治療を行いましょう。虫歯も予防や治療をすると良いですね。
さらに、直接的な原因となる可能性がある頭部外傷の予防も重要です。頭部外傷は脳膿瘍のリスクを高めることがありますので、スポーツなどを行う時や自転車に乗る時のヘルメット着用など普段から頭部を守る意識を持つようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

脳膿瘍は、頻繁に起きる症状ではありませんが、治療はとても繊細なものです。日々の生活の中で、上記に示した予防策を取ることで、リスクは大きく減らせます。しかし、完全な予防を保証するものではありません。
もし脳膿瘍の症状や合併症が疑われる場合は、早めにかかりつけ医や専門医の診断と治療を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

相談
脳膿瘍は病名自体を聞くことは少ないと感じている人は多いのではないでしょうか。

脳膿瘍は、かなりまれな病気の1つです。症状としては、脳の中に膿が溜まった状態になります。

脳膿瘍の治療は、抗菌薬療法や外科的処置、対症療法などの組み合わせで行われます。

治療の期間は個人によって異なりますが、通常は数週間から数か月にわたることがあるようです。

重要なのは、早期に医療専門家の指示に従い、適切な治療を受けることです。

遅れた治療や未治療で重篤な結果を引き起こす前に、少しでも心配があればかかりつけ医に相談しましょう。

この記事の監修医師