「多発性骨髄腫」の「治療費の相場」は?利用できる補助制度についても医師が解説

多発性骨髄腫の治療費は、患者さんやご家族にとって大きな負担となります。ですが、補助金や支援制度の活用で、経済的負担を軽減できるかもしれません。
本記事では、多発性骨髄腫の治療費について以下の点を中心にご紹介します。
- ・多発性骨髄腫の症状
- ・多発性骨髄腫の検査・診断
- ・多発性骨髄腫の治療費と、利用できる補助金や制度
多発性骨髄腫の治療費について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
多発性骨髄腫とは
多発性骨髄腫とは、骨髄内で異常な形質細胞が増殖する血液のがんの一種です。
形質細胞は、免疫を担う抗体を作る役割を持っていますが、多発性骨髄腫では異常な形質細胞が増えることで、正常な血液細胞の生成が妨げられます。その結果、貧血や感染症への抵抗力低下、骨の痛みや骨折、腎機能障害などの症状が現れます。
また、骨髄腫細胞が産生する異常なタンパク質(Mタンパク)が血液や尿中に検出されることが特徴です。
多発性骨髄腫は進行性の病気ですが、近年の治療法の進歩により、治療効果や生存率が向上しています。
治療法には、抗がん剤や放射線治療、骨髄移植があり、患者さんの状態や病気の進行度に応じて選択されます。
多発性骨髄腫の症状
多発性骨髄腫の主な症状には、骨の痛みや骨折、貧血、腎機能障害、感染症にかかりやすくなることなどがあります。
初期症状のなかでも骨の痛みがあるといわれており、背骨や肋骨、腰などに痛みが現れます。
骨髄腫細胞が骨を侵食することで骨折しやすくなることも特徴です。
また、骨髄腫細胞の増殖により正常な赤血球の生成が阻害されるため、貧血が起こり、疲労感や息切れが生じます。さらに、腎臓への負担が増すことで腎機能障害が発生し、高カルシウム血症や免疫力の低下も見られます。
多発性骨髄腫の原因
多発性骨髄腫の原因は明確には解明されていませんが、いくつかの要因が関連していると考えられています。なかでも、年齢が50歳以上の高齢者の発症が多い傾向があるとされていることから、加齢がリスク要因とされています。
また、遺伝的要因や免疫系の異常も関与している可能性があります。さらに、ベンゼンなどの化学物質や放射線への長期間の曝露もリスクを高めるとされていますが、これらはあくまで可能性の一つであり、すべての患者さんに共通するわけではありません。
多発性骨髄腫の検査・診断
多発性骨髄腫の検査・診断はどのように行われるのでしょうか。以下に解説します。
血液検査
多発性骨髄腫の血液検査は、診断や治療効果の確認において重要な役割を果たします。
血液検査では、異常な免疫グロブリン(Mタンパク)の量や種類を測定し、病気の進行度を評価します。また、血液中のカルシウムやクレアチニンの値、赤血球、白血球、血小板の数値も確認され、骨髄機能や腎機能の状態を把握します。
さらに、β2-ミクログロブリンというタンパク質の測定も行われ、これは病状の進行度を判断する指標となります。これらの検査結果を総合的に判断し、治療方針が決定されます。
骨髄検査
多発性骨髄腫の骨髄検査は、診断や治療方針を決定する上で欠かせない検査です。
骨髄検査では、骨盤や胸骨から骨髄液を採取し、骨髄中に存在する異常な形質細胞(多発性骨髄腫細胞)の割合や増殖の程度を確認します。この検査により、形質細胞の異常な増殖が確認され、多発性骨髄腫の診断が確定されます。
また、染色体異常や遺伝子変異の有無を調べることで、病状の進行度や予後を予測することも可能とされています。
骨髄検査は治療効果の評価にも利用され、病気の進行や再発の有無を確認するためにも行われます。
尿検査
多発性骨髄腫の尿検査は、ベンス・ジョーンズ蛋白という異常な蛋白質の存在を確認するために行われます。この蛋白質は血液中の免疫グロブリンと関連しており、多発性骨髄腫の特徴的な症状の一つです。24時間尿を収集して検査を行い、尿中の蛋白質濃度や種類を分析します。加えて、尿中のカルシウムやクレアチニンの値も確認され、腎機能の状態や病気の進行度を評価します。
尿検査は、病状の把握や治療効果の評価に欠かせない重要な検査です。
X線検査
多発性骨髄腫のX線検査は、骨の状態を詳細に確認するために行われます。この検査では、骨の破壊や溶解像の有無を調べ、多発性骨髄腫に伴う骨病変を評価します。なかでも、頭蓋骨、背骨、肋骨、骨盤などの部位が詳しく撮影され、骨折のリスクや病状の進行度を把握するための重要な情報を得られます。
X線検査は、骨の変化を可視化するため、骨病変の診断や治療効果の確認に欠かせない検査方法です。
多発性骨髄腫の治療
多発性骨髄腫の治療には、薬物療法、造血幹細胞移植、放射線療法が用いられます。
薬物療法では、免疫調整薬やプロテアソーム阻害薬、抗がん剤を組み合わせて行います。造血幹細胞移植は主に若年の患者さんに適用され、自家移植が用いられることが多いようです。
また、骨病変に対しては放射線療法が行われ、痛みの緩和や骨折予防に効果があるとされています。
治療の方法は患者さんの状態に応じて選択され、生活の質の維持も重要です。
多発性骨髄腫の治療費相場
多発性骨髄腫の治療費は、患者さんの状態や選択される治療法、治療期間、使用する薬剤によって大きく異なります。
まず、薬物療法の場合、抗がん剤や免疫調整薬、プロテアソーム阻害薬などの新しい治療薬を使用するケースが多く、1ヶ月あたりの費用は数十万円以上に達することがあります。これらの治療は長期間にわたるため、治療全体の費用が数百万円程度になることも少なくありません。
また、患者さんの状態によっては造血幹細胞移植が選択されることもあり、自己移植の場合でも数百万円程度、同種移植の場合はさらに高額で数百万円~数千万円程度に及ぶこともあります。
多発性骨髄腫の治療費についてよくある質問
ここまで多発性骨髄腫の治療費を紹介しました。ここでは多発性骨髄腫についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
多発性骨髄腫の治療に利用できる補助金などはありますか?
山本 佳奈(医師)
多発性骨髄腫の治療にかかる高額な費用を軽減するため、さまざまな補助金や公的支援制度が利用できます。
高額療養費制度は、1ヶ月間にかかった医療費が自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。この制度を利用することで、治療費の負担を軽減することが可能とされています。
また、特定疾病療養受療証を取得することで、1ヶ月あたりの自己負担額が1万円程度に抑えられる場合もあります。
さらに、自治体によっては、がんの患者さんに対する医療費助成制度が設けられていることもあるため、お住まいの地域の制度を確認することが重要です。
これらの補助金や支援制度を活用することで、多発性骨髄腫の治療にかかる経済的負担を軽減することが期待できます。
多発性骨髄腫の予後について教えてください
山本 佳奈(医師)
多発性骨髄腫の予後は、患者さんの年齢や健康状態、病状の進行度、治療への反応などによって大きく異なりますが、近年の治療法の進歩により、以前に比べて予後は改善傾向にあります。近年の免疫調整薬やプロテアソーム阻害薬などの新しい治療薬の開発により、生存期間の延長ができるようになりました。
また、多発性骨髄腫は再発しやすい病気であり、長期的な治療や経過観察が必要です。さらに、骨病変や腎機能障害などの合併症がある場合、予後に影響を及ぼすことがあります。
治療法の選択や早期発見が予後を左右する重要な要素となるため、医師と相談しながら適切な治療計画を立てることが大切です。
まとめ
ここまで多発性骨髄腫の治療費についてお伝えしてきました。多発性骨髄腫の治療費についての要点をまとめると以下のとおりです。
- ・多発性骨髄腫の症状は、骨痛や貧血、腎機能障害、高カルシウム血症などがあり、進行すると骨折や免疫力低下による感染症も起こりやすくなる
- ・多発性骨髄腫の検査・診断には、血液検査、骨髄検査、尿検査、X線検査が用いられる
- ・多発性骨髄腫の治療費は高額になるが、高額療養費制度や医療費控除、患者さんの負担軽減制度などの補助金や支援制度を利用することで、治療費の負担を軽減できる
多発性骨髄腫と関連する病気
多発性骨髄腫と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
関多発性骨髄腫と関連する症状
関多発性骨髄腫と関連している、似ている症状は18個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。




