「放射線治療の種類」はどれくらいあるの?放射線治療の副作用も解説!
放射線治療は、外部照射と内部照射の二種類の治療法があります。
本記事では放射線治療の種類について以下の点を中心にご紹介します。
- ・がんの3大治療法の1つ”放射線治療”
- ・放射線の種類
- ・放射線治療の副作用
放射線治療の種類について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
がんの3大治療法の1つ”放射線治療”
放射線治療は、がん治療の3大方法の一つで、根治的治療を目指す場合と、痛みの症状の緩和を目的とした姑息的治療があります。放射線治療は、手術と同じく局所治療でありながら、患者さんの臓器を温存でき、手術が困難な場合や、さらなるがん治療の補助として用いられています。
放射線の種類
放射線治療は、外部照射と内部照射の二種類あります。
外部照射は、機器を使用して体外から放射線を照射する方法であり、腫瘍の位置に応じて複数の角度から照射します。一方、内部照射は放射性物質をがんの近くに配置し、直接放射線を放出させる方法です。
どちらの方法も、患者さんの状態やがんの種類に応じて選択され、ときには両方を組み併せて用いられることもあります。
放射線で用いられる単位
放射線治療で用いられる単位には、ベクレル(Bq)、グレイ(Gy)、シーベルト(Sv)があります。
・ベクレル(Bq): 放射能の単位で、1秒間に1回の放射線放出があることを示し、物質が放射線をどれだけ放出しているかを量るのに使用されます。
・グレイ(Gy): グレイは放射線が物質に吸収されるエネルギー量を表す単位で、1グレイは1kgの物質に1ジュールのエネルギーが吸収された状態を指します。放射線治療では、この単位を用いて患者さんが受ける放射線量を計測します。
・シーベルト(Sv): 放射線が生物に与える影響を考慮した単位で、放射線が健康に及ぼす実際の影響の度合いを表します。放射線の種類やエネルギーによって異なる影響を考慮に入れ、身体への影響を評価します。
放射線治療の種類:外部照射
ここでは、放射線治療の種類の一つである外部照射について解説します。
高エネルギー放射線治療
高エネルギー放射線治療は、直線加速器(リニアック)を用いて行われます。この装置は、100万電子ボルト以上のX線や電子線を発生させ、がん細胞をターゲットに多方向から精密に照射できます。高エネルギー放射線治療は、治療計画に基づき、週5日〜数週間にわたって実施されます。
三次元原体照射(3D-CRT)
三次元原体照射(3D-CRT)は、CT、MRI、PETなどの詳細な画像診断をもとに、がんの形状や位置を立体的に把握し、専用のソフトウェアを用いて治療計画を立てます。周囲の健康な組織への被曝を減少させるため、現在さまざまな病院で採用されている方法です。
強度変調放射線治療(IMRT)・強度変調回転照射(VMAT)
強度変調放射線治療(IMRT)は、がん組織に高い放射線量を集中させ、隣接する正常組織への被曝を抑える治療技術です。マルチリーフコリメーターを用いて、がんの形状に合わせた放射線照射を行います。同様の技術である強度変調回転照射(VMAT)は、IMRTを一層進化させた方法で、治療時間の短縮と精度の向上が期待されています。
定位放射線治療(SRT)・定位手術的照射(SRS)
定位放射線治療(SRT)は、数日に分けて数ミリから3cm程度の小さな病巣に放射線を多方向から集中させるため、周囲の正常組織への影響を抑えられます。同様の技術である定位手術的照射(SRS)は小さな脳腫瘍に有効で、体幹部がんへの応用も進んでいます。
粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)
粒子線治療は、がん組織に放射線を集中させる方法です。陽子線と重粒子線(炭素イオン線)が使用され、体内で効果が期待できるエネルギーを放出するブラッグ・ピークを利用します。正常組織への影響を抑えられますが、治療には精密な設備が必要とされるため、日本国内での実施施設は限られています。
画像誘導放射線治療(IGRT)
画像誘導放射線治療(IGRT)は、放射線治療の精度を高めるための技術で、内臓の動きや日々の体位の変化に対応し、放射線の照射位置をリアルタイムで調整します。画像誘導放射線治療(IGRT)は、がん病巣に放射線を照射し、周囲の正常組織への影響を抑えられます。
放射線治療の種類:内部照射
次に、放射線治療の種類の一つである内部照射について解説します。
密封小線源治療(組織内照射、腔内照射)
密封小線源治療は、放射性物質を直接がん組織に近づける方法で、組織内照射と腔内照射の二種類があります。組織内照射では、小さな放射線源をがん組織内に挿入し、周囲の正常組織への影響を抑えながら高い線量を局所に集中させます。腔内照射では、子宮や前立腺などの体腔内に放射線源を配置し、近接治療を行います。
核医学治療
核医学治療は、放射性同位元素を体内に取り込み、臓器や病巣に直接放射線を当てる方法です。なかでも、ヨウ素131を用いた甲状腺がんや甲状腺機能亢進症の治療では、甲状腺細胞が放射性ヨウ素を取り込む性質を利用し、局所的に高い線量を照射します。また、イットリウム90標識抗体を用いる放射免疫療法は、限定的な放射線で標的細胞を破壊します。
放射線治療の副作用
放射線治療には急性期副作用と晩期副作用があります。
治療中または治療終了直後に発生する急性期副作用として、疲労感、皮膚の発赤や炎症、口内炎、飲み込みにくさ、そして頻尿や灼熱感などが挙げられます。
急性期副作用は、放射線が正常組織にも影響を及ぼすもので、細胞分裂が活発な皮膚や粘膜が副作用の影響を受けやすいとされています。
一方の晩期副作用は、治療終了から数年後に現れることがあり、新たながんの発生や、放射線照射部位の慢性的な機能障害が発生することがあります。
医師はこれらの副作用を抑えるため、照射計画を慎重に立て、定期的なモニタリングと適切な支援を提供します。
放射線治療についてよくある質問
ここまで放射線治療の種類や副作用などを紹介しました。ここでは放射線治療についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
放射線治療の流れを教えてください。
木村 香菜(医師)
放射線治療は、以下の流れで行われます。
・放射線腫瘍医による診察と説明: 主治医が放射線治療の可能性を説明した後、専門の放射線腫瘍医が診察を行います。ここで、がんの種類、進行度、位置、健康状態に基づき、治療の可否や方法が検討されます。
・シミュレーション: 実際の治療前にシミュレーションが行われます。CTやMRIを用いて照射範囲や角度を決定するため、患者さんの体位を安定させるための固定具が製作されることもあります。
・治療計画の作成: 放射線腫瘍医と物理士が協力して、コンピュータを使用して具体的な治療計画を立てます。
・放射線の照射: 実際の治療が始まり、リニアックなどの機器を用いて定められたスケジュールに従って放射線が照射されます。
・治療期間中のフォローアップ: 治療期間中、定期的に医師の診察が行われ、必要に応じて副作用の管理や治療計画の調整がされます。
このように、患者さんと医療チームが密接に協力しながら進められます。
放射線治療中の注意点を教えてください。
木村 香菜(医師)
放射線治療中の注意点は、以下のとおりです。
食事:口腔、喉、消化器系の治療を受ける場合は、辛いものや硬い食べ物を避け、消化によい食事にすることが推奨されています。また、水分補給を行ってください。
入浴:温泉やサウナ、岩盤浴は治療中や直後は避けてください。もし、照射部位にかかる場合は、強くこすることは避けてください。
仕事と家事:身体的、精神的に負担がない範囲であれば、活動が可能とされていますが、無理は禁物です。
運動:体力に応じて適度な運動は推奨されますが、無理のない範囲で活動することが大切です。
薬の使用:新しい薬を始める場合は、放射線腫瘍医と相談することが重要です。
予防接種:予防接種は問題ありませんが、実施前には医師と相談し、体調を確認してください。
禁煙と飲酒:禁煙が推奨され、飲酒する際は適量を守ることが求められます。
美容:放射線治療の範囲内の毛の処理は避け、照射部位の皮膚を刺激しないように注意が必要です。また、化粧品や外用薬についても医師に相談してください。
以上の点を注意し、日々の生活を送ることが大切です。
まとめ
ここまで放射線治療の種類についてお伝えしてきました。放射線治療の種類についての要点をまとめると以下のとおりです。
- ・がんの3大治療法の一つである放射線治療は、手術が困難な場合や、さらなるがん治療の補助として用いられている
- ・放射線の種類は、患者さんの状態やがんの種類に応じて選択される
- ・放射線治療では、急性期副作用と晩期副作用が生じる可能性がある
放射線治療と関連する病気
放射線治療と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
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