「子宮頸がんステージ4の余命」はご存知ですか?末期症状も解説!【医師監修】

子宮頸がんは、腟の奥にある子宮の入口(子宮頸部)に生じる悪性腫瘍です。
2020年時点では全世界で60万人以上が罹患したといわれ、女性が罹るがんとしては、乳がん・大腸がん・肺がんに続いて第4位と発表されています。
しかし初期の段階では何も症状がなく、気付いたときには進行していることも多いのです。
最も進行した状態のステージ4になると、余命はどのくらいなのでしょうか。この記事では、子宮頸がんステージ4の末期症状や治療方法とあわせて解説していきます。

監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは
子宮は大きく分けると、上部の袋状の体部と入口部分の頸部に分けられます。子宮の頸部とは、体部と腟の間に位置するものです。
子宮頸がんは多くの場合、頸部の扁平円柱上皮境界という部位の細胞にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染することで細胞異常が発生し、数年から数十年の後に発症するといわれています。HPV感染の主な原因は性交です。したがって性交経験がある女性の約8割はHPVに感染するといわれていますが、感染しても免疫機能でウイルスは排除されるので、約9割の方は子宮頸がんを発症しません。
しかし免疫力の低下が原因で感染が長期化してしまうと、細胞異常を生じ数年を経て、約1割の方にはがんが発症します。
子宮頸がんステージ4の余命
子宮頸がんのステージ4は2段階に分類されます。子宮に隣接している膀胱や直腸の粘膜に浸潤している状態のA期と、がんが骨盤をこえて遠隔の臓器やリンパ節に転移している状態のB期です。
いずれの場合もステージ4はがんが最も進行した状態のため、治療法にも限界があり、5年生存率は25%といわれています。
子宮頸がんステージ4の末期症状
子宮頸がんのステージ4では、どのような身体の変化が現れるのでしょうか。ここでは具体的な症状を解説していきます。
不正出血
子宮頸がんが進行すると、月経中ではないときや性交時の不正出血が起きます。また臭いを伴う、濃い茶色や膿のようなおりものが出る場合・水っぽいおりものや粘液の量が増えている場合も注意が必要です。
下腹部の痛み
がんが子宮の外に広がると、下腹部に痛みが現れることがあります。特に性交時の痛みは子宮頸がんの可能性が高いので、性交痛が続く場合は医療機関で受診しましょう。
下肢のむくみ
子宮頸がんのステージ4では、転移したリンパ節に対して放射線治療を行いますが、副作用として下肢のむくみが起きることがあります。放射線治療を行った後は浮腫を予防するために、マッサージや弾性ストッキングなどを用いた圧迫によって、ケアしておくとよいでしょう。
血便・血尿
がんが進行すると直腸・膀胱への浸潤によって、血便・血尿がみられることがあります。便に血が混じる場合や、頻尿・排尿時に痛みを感じる・尿が出にくい・尿に血が混じるなどの症状がみられたときは、ただちに医療機関で受診しましょう。
体重の減少
ステージ4になると精神的に不安を感じることも少なくなく、食欲が低下して体重の減少がみられます。また、化学療法の副作用によって味覚異常や嗅覚異常・吐き気・食欲低下・口内炎といった症状が現れて食べられなくなるケースもあるでしょう。
そのようなときは味付けの変更・食べやすいゼリーや麺類などに調整する・高栄養の飲料を付加するなどの工夫することが大切です。
疲労感
がんが身体のエネルギーを消耗することやがん治療の副作用によって、疲労感が現れます。だるさの原因となる症状は、痛み・貧血・不安・不眠のほかに以下のようなものです。
- 気分の落ち込み
- 栄養状態の変化
- 筋力の低下
- 感染症
- 脱水症状
- 電解質異常(ナトリウム・カルシウムなどの電解質が体内でバランスを崩すこと)
疲労感の原因となっている上記の症状に対して、投薬や運動療法を行うことで、疲労感が軽くなる場合もあります。しかし病状によっては改善されないこともあるため、できるだけ休息を取りながら無理のないペースで生活をするようにしましょう。
子宮頸がんステージ4の治療法
子宮頸がんのステージ4では、どのような治療方法があるのでしょうか。がんが膀胱や直腸に浸潤している場合や、肺や肝臓などの臓器に遠隔転移している場合には基本的に手術は選択されません。広範囲に広がってしまったがん細胞を完全に除去することは難しいからです。
そのため一般的な治療方法として、放射線療法や化学療法が、患者さんの年齢・体力・全身状態などに合わせて行われます。
化学療法
化学療法とは、がん細胞の成長を抑えたり死滅させたりするための薬剤(抗がん剤)を用いる治療法です。子宮頸がんのステージ4では、手術をすることが難しいため、放射線療法と併用(または単独)で行われることが少なくないです。
効果の期待できる治療法ですが、抗がん剤は正常な細胞にも影響を及ぼしてしまうため、副作用の管理とサポートが必要となります。
放射線療法
放射線をがんに照射して治療する方法です。子宮頸がんの場合、病期に関わらず、次の3つの方法で治療できます。
- 骨盤の外から照射する外照射
- 子宮頸部のがんに直接照射する腔内(くうない)照射
- 放射線を出す物質を、がん組織や周辺の組織内に直接挿入して行う組織内照射
化学療法と同様に効果が期待できるものですが、副作用があるためサポートが必要になるでしょう。
対症療法
子宮頸がんによる痛みや、治療による副作用がもたらす不快な症状を緩和させる治療です。がんの根治に働きかけるものではなく、不調な状態を取り除き、患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を保つことを目的としています。
緩和治療
子宮頸がんにかぎらず、がんに罹患したら身体と同様に心にもダメージを受けてしまいます。緩和治療とは、がんに伴う心と身体の辛さを和らげることで、患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するものです。
緩和ケアは、全国のがん診療連携拠点病院であればどこでも受けることができます。がんと診断されたときから担当の医師や看護師、または緩和ケアチームが、患者さんとその家族の不安に寄り添ってくれるでしょう。緩和ケアは、入院でも在宅でも受けることができます。
子宮頸がんステージ 4の余命についてよくある質問
ここまで、子宮頸がんのステージ4の余命・末期症状や治療法などを紹介しました。ここでは「子宮頸がんステージ 4の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がんが発覚するきっかけについて教えてください。
馬場 敦志医師
初期段階では何も症状がなく、子宮がん検診でしか発見することができない子宮頸がんですが、進行すると不正出血の症状が現れます。月経以外の出血に加え、接触出血と呼ばれる性交後の出血も要注意です。下腹部に痛みが起こる場合もあるでしょう。さらに進行すると、悪臭のある、血液が混じった膿のようなおりものが出ることもあります。また、がんが骨に転移すると腰痛・下肢痛・背部痛などが現れます。これらの異常に気付いて検査を行った結果、病気が発覚することもあるのです。
ステージ4の子宮頸がんは完治が可能でしょうか?
馬場 敦志医師
子宮頸がんのステージ4は、遠隔の臓器やリンパ節への転移も見られることが多い深刻な状態のため、治療は困難とされています。したがって完治させるのは難しいでしょう。
編集部まとめ
子宮頸がんのステージ4では、すでに周辺の臓器や遠隔に転移をしているため、手術をすることが難しい段階です。
治療法として化学療法や放射線治療が取られますが、効果が期待できる反面、副作用が起きてしまいます。
がんに向き合うことは、身体だけでなく心まで疲れてしまうことも多いでしょう。
しかし、がんの治療に伴って、副作用に対する対症療法や心のケアをしてくれる緩和治療があるのです。
少しでも不安を感じたときは担当医師に相談して、よりよい治療方法を探してください。
子宮頸がんと関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の疾患は、子宮頸がんと同じような症状をみせることがあります。少しでも体調に異変を感じたら医療機関で検査しましょう。
子宮頸がんと関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 不正出血
- 悪臭を伴う
- 骨盤・下腹部・腰の痛み
- 下肢のむくみ
- 血便・血尿
子宮頸がんは初期症状が出ないため、定期的な検査が必要です。しかし、以上のような症状がみられたときには検査を待たず、すぐに受診しましょう。