「肺がんステージ4の生存率」はご存知ですか?ステージ4の治療法も解説!
肺がんは、近年、患者さんの数が増加しているがんです。
早期では症状が見られないこともあり、進行して初めて症状が出ることも少なくありません。
このため、受診したとき、すでにステージ4の肺がんであると診断されることもあります。
本記事では、肺がんステージ4の生存率、原因や治療の選択肢を解説します。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
肺がんとは
肺がんは、空気の通り道である気管支やガス交換の場である肺胞の細胞ががん化したものです。進行すると、がん細胞は周りの組織を壊しながら増殖し、血液やリンパ液の中に入り込み全身にまわります。
全身にまわり移動した場所でがん細胞が増殖することを、がんの転移といいます。転移しやすい場所はリンパ節・肺の中のほかの部位・胸膜・骨・脳・肝臓・副腎です。肺がんは、大きく2つのタイプに分類されます。分類により治療法が異なります。
- 非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなど)
- 小細胞肺がん
肺がんステージ4の場合、非小細胞肺がん・小細胞肺がんともに、標準治療は薬物療法と緩和ケアです。
肺がんステージ4の生存率
肺がんの予後は、5年生存率で表されます。5年生存率は、診断から5年後に生存している患者さんの割合を示したものです。
非小細胞肺がんの場合
非小細胞肺がんステージ4の5年生存率(2014-2015年)は、8.4%です。全ステージの5年生存率は43.2%であり、早期の治療が重要であることがわかります。
小細胞肺がんの場合
小細胞肺がんステージ4の5年生存率(2014-2015年)は、2.0%です。全ステージの5年生存率は10.6%です。進行が速く転移しやすいがんであり、外科的治療が可能な時期に発見されることが少ないため、非小細胞肺がんと比べ低い数値になります。
肺がんの原因
肺がんの原因はさまざまですが、喫煙との関連が大きいことはよく知られています。
たばこ以外の要因は、職業や環境による要因(アスベスト・ラドン・ヒ素・クロム・PM2.5など)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)・間質性肺炎・肺がんの家族歴や既往歴などです。
喫煙
たばこを吸う人は、たばこを吸わない人に比べて肺がんにかかるリスクが男性は約4.8倍、女性は約3.9倍と高くなります。喫煙年数や喫煙本数が多い程リスクが高くなります。
禁煙をするとリスクは徐々に低下するため、たばこを吸っている人は禁煙しましょう。また、受動喫煙での肺がんのリスクも約1.3倍と高いです。非喫煙者でも肺がんになる可能性はあるため、検診を受けることも考慮しましょう。
大気汚染
大気汚染は環境健康問題のひとつで、肺がんのリスクとなることが知られています。大気汚染には、ガス(一酸化炭素・二酸化硫黄・窒素酸化物・オゾンなど)や微小粒子状物質(PM)があります。
PM2.5とは、直径2.5 μm未満の微小粒子状物質のことです。都市圏と西日本では、ほかの地域よりPM2.5濃度が高く、がん罹患の割合も高い傾向にあることがわかっています。
アスベスト
アスベストは鉱物の一種で、熱に強い性質のため、以前は建築や製造業界で幅広く使われていました。
アスベストの繊維を吸い込み肺に残ると、時間と共に肺が炎症を起こし、肺がんのリスクが上がります。アスベストを吸い込んでから肺がん発症までの期間は約30〜40年です。アスベストを吸い込んだ量が多い程肺がんになる危険が高くなります。
遺伝
肺がんの家族歴がある人は、肺がんになりやすい傾向であることがわかっています。男性よりも女性でやや高く、男性で1.7倍、女性で2.7倍です。
女性ホルモンの影響
女性ホルモン(エストロゲン)の影響と肺がんの発生率の関係が疑われていますが、まだ明確な証拠はありません。
肺がんステージ4の治療の選択肢
肺がんの治療は、手術(外科治療)・放射線治療・薬物療法・緩和ケアです。治療は、がんの進行度やがんの性質(組織型・遺伝子)などに応じた標準治療を基本として行います。
本人の希望や生活環境・年齢・体の状態などを総合的に検討し、担当医と相談して決めていきます。肺がんステージ4の場合、標準治療は薬物療法と緩和ケアです。
放射線療法
放射線治療は、がんの部分に放射線をあて、放射線のもつエネルギーによりがん細胞を攻撃する治療法です。がんを完治させる目的で行う場合とがんの症状をやわらげる目的で行う場合があります。
治療後のQOLの高さを希望する患者さんが増えており、この希望を満たすために放射線治療が選ばれることもあります。放射線治療は局所療法なので、全身的な影響が少なく高齢の患者さんも治療を受けることができる治療方法です。がんに侵された臓器の機能と形態の温存が可能であることが特徴のひとつです。
化学療法
抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)・分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬に分けられます。抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)は、従来から用いられている治療薬であり、がん細胞を直接攻撃する薬剤です。分子標的治療薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質や栄養を運ぶ血管、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬です。
がん細胞にはリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みがあります。免疫チェックポイント阻害薬はその仕組みを解除する治療薬です。化学療法は、がんそのものを小さくする以外に遠隔転移の予防、症状をやわらげることを目的に行われます。
光免疫療法
光免疫療法は、特定の波長の光を用いて薬剤を活性化させ、がん細胞を破壊する治療方法です。この方法は、副作用が少なく体への負担が少ないとされています。肺がんステージ4に対しても光免疫療法の治療応用の研究が進んでいます。
肺がんステージ4の生存率についてよくある質問
ここまで肺がんステージ4の生存率、原因や治療などを紹介しました。ここでは「肺がんステージ4の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんを予防するために気を付けることは何でしょうか?
武井 智昭 医師
肺がんを予防するために必要なことは、たばこを吸っている人は禁煙することです。たばこを吸わない人も、たばこの煙を避けることを心がけましょう。がんを早期発見し適切な治療を行うためには、がん検診が有効です。40歳以上の人は1年に1回、肺がん検診を受けましょう。
ステージ4の肺がんが完治する可能性はどのくらいですか?
武井 智昭 医師
ステージ4の肺がんは、がんの転移がみられる状態です。約4割の患者さんが、病院をはじめて受診する段階で、ステージ4の肺がんと診断されています。ステージ4における非小細胞肺がんの5年生存率は8%、小細胞肺がんの場合は2%程度です。肺がんでステージ4と診断されても治療し、完治といってよい状態になる方もいます。治療方法も日々進化しているので、諦めず医師とよく相談して治療を受けましょう。
編集部まとめ
肺がん(全体)ステージ4の5年生存率は、7.4%です。
進行したステージ4では、主な治療法は薬物療法ですが、体の状態を考慮しほかの治療法を行うこともあります。
現在の5年生存率は高くありませんが、光免疫療法など新しい治療法も研究されているため、担当医師と治療法をよく相談することが大切です。
肺がんが喫煙との関係が高いことは、よく知られています。肺がんになるリスクを減らすためにも、禁煙はとても重要です。
肺がんと関連する病気
肺がんと関連する病気は、2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 間質性肺炎
慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併肺がんや、間質性肺炎合併肺がんなど、ほかの病気を併発している重症度の高い肺がんもあり、注意が必要です。
肺がんと関連する症状
肺がんと関連する症状は、9個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
初期の段階では、症状が見られないこともあります。進行して初めて症状が出ることもあるため、気になる症状がある場合は、早めに受診しましょう。
参考文献