「膵臓がんの再発率」はどれくらい?再発した場合の余命も医師が解説!

Medical DOC監修医が膵臓がんの再発率や余命・生存率・再発した場合の治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
目次 -INDEX-
「膵臓がん」とは?
膵臓がんは、膵臓に発生する悪性腫瘍の総称ですが、そのほとんどが膵管の上皮細胞から発生する「膵管がん」です。一般的に「膵臓がん」という場合、この膵管がんを指すことが多いです。膵臓がんは、初期には自覚症状がほとんど現れないため、早期発見が非常に難しいがんの一つとされています。進行すると、腹痛、背中の痛み、黄疸、体重減少、食欲不振、糖尿病の急な発症や悪化などの症状が現れることがあります。これらの症状は他の病気でも見られるため、膵臓がんに特有のものではなく、発見が遅れることも少なくありません。その発見の難しさと進行の速さから、膵臓がんは「難治性がん」の代表格とされ、がんの中でも治療成績が厳しいがんの一つです。しかし、診断技術や治療法は日々進歩しており、集学的治療(手術、放射線治療、化学療法などを組み合わせる治療)によって、少しずつ治療成績の向上が期待されています。
膵臓がんのステージ別の再発率
国内での論文では膵臓癌手術後の再発率は69.2%であったという報告があります。海外の報告でも66〜80%程度と高い再発率であり、再発率の高さが予後不良の原因の一つでもあります。ステージ別の再発率は報告例がありませんが、一般的にはステージが上がるほど、再発率は高くなります。
膵臓がん・ステージ0の再発率
がん細胞が膵管の粘膜内にとどまったごく初期の状態です。ステージ0の膵臓がんは完治(治癒)が期待できる段階ですが、現実には見つかることが稀です。再発率も非常に低いと言えます。
膵臓がん・ステージ1の再発率
腫瘍が膵臓内に限局し、他臓器やリンパ節への転移がない段階です。比較的早期の段階ですが、膵臓がんではこのステージで発見される例は少数です。手術前後での抗がん剤治療に加え、手術で完全切除できた場合でも術後5年実測生存率は52%と報告されており、半数前後の患者は残念ながら再発などにより5年以内に亡くなっています。完治の可能性はありますが、決して高くはありません。それでもこのステージで発見できれば治癒も期待できる段階であり、早期発見・早期治療が鍵となります。再発率も比較的低いと言えます。
膵臓がん・ステージ2の再発率
膵臓の外にがんが進展した段階で、リンパ節転移を有するものを含み、主要血管浸潤や遠隔転移はなく、手術で切除可能な場合が多い病期です。通常、手術前後に抗がん剤治療を併用します。手術で切除可能とはいえ、術後5年生存率は約20%程度と低い状況です。ステージIと比べて完治できる割合は下がりますが、それでも手術で根治を目指せる病期であり、可能な限り包括的治療で再発予防を図ります。
膵臓がん・ステージ3の再発率
腫瘍が膵臓周囲の主要な血管に浸潤しているものを指します。腫瘍が血管に半周以上接していて手術ができない場合を「切除不能」、半周未満のものや血管を手術で再建できる場合を「切除可能境界」といいます。「切除不能」膵臓がんは化学療法または化学放射線療法を行います。「切除可能境界」の膵臓がんは化学放射線療法後に再評価し、手術ができるかどうか判定をします。5年生存率は6.1%と極めて低く、長期生存できる患者さんはごくわずかです。それでも近年は化学療法の進歩で生存期間を延ばす報告が増えています。
膵臓がん・ステージ4の再発率
すでに肝臓や肺など他の臓器への遠隔転移が確認される最も進行した段階です。残念ながら根治手術の適応はなく、全身状態が許す範囲で抗がん剤治療や緩和ケアなどが行われます、延命とつらい症状を和らげることが治療の目的です。5年生存率はわずか1.6%と特に低い結果です。それでも近年、ごく一部の患者さんで新しい分子標的薬などが奏効し長期生存が得られる例も報告されています。ステージIVでは患者さんごとに治療目標を設定し、生活の質を重視したケアも並行して行われます。
膵臓がんが再発した場合の余命・生存率
膵臓がんの再発した場合の余命・生存率を想定することは個人差が大きく、全身状態や遺伝子変異の有無などの要素の影響が大きいため、一概に断言することは困難です。参考として、海外では膵臓がん再発後の生存期間中央値は局所再発では9.36カ月、遠隔再発では8.94カ月であったと報告しています。また本邦の報告では、膵臓がんのうち遠隔転移を有するステージⅣの5年ネットサバイバルは1年で24.2%、2年で7.5%、3年で3.6%、4年で2.2%、5年で1.6%と他のがんと比較しても予後が悪い結果です。早期発見が難しいことや高い再発率が影響しています。
膵臓がんが再発した場合の治療法
手術
再発後に手術が検討されるのは、手術後に残った膵臓(残膵)に再発を起こした場合や、再発が少数の転移に限られる例など非常に限られた場合です。そして、患者さんの体力が十分あれば外科的切除を再度行う選択肢があります。しかし再手術は患者さんの体への負担が大きく、また前回の手術による癒着など技術的困難も伴います。そのため実施できる施設・症例は限られ、一般的には再発時の治療は手術以外(薬物療法が主体)となるのが通常です
化学療法
膵臓がんの再発時の主役となる治療です。抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑え、延命と症状緩和を図ります。標準治療として優先順位が決まっており、一次治療、二次治療、三次治療と選択肢が分かれます。一次治療が様々な理由でできなくなった場合は、二次治療、三次治療に進みます。これらの治療によって生存期間の延長が証明されています。化学療法は日本でも再発膵臓がんの中心です。抗がん剤治療は基本的に消化器外科や腫瘍内科医の担当領域であり、入院または外来通院で計画的に行われます。
免疫療法
がん遺伝子検査の結果によって、免疫療法を行う場合もあります。MSI検査で高度陽性(MSI-High:遺伝子に生じた傷を修復する機能が低下している状態)、または腫瘍遺伝子変異量が高スコア(TMB-High:がん細胞の遺伝子変異が多い状態)である場合、免疫チェックポイント阻害薬を用いることがあります。免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2023年3月現在、膵臓がんの治療に効果があると科学的に証明されている方法は、MSI-Highの場合と、TMB-Highの場合に免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。その他の免疫療法で、膵臓がんに対して効果が証明されたものは残念ながらありません。
放射線療法
再発したがんが局所にとどまっている場合や、骨転移による疼痛、脳転移による症状などがある場合には、放射線照射も効果的です。膵臓がんの場合、化学療法と併用した化学放射線療法が行われることもあります。例えば局所再発で切除不能な病変に対し放射線を照射することで腫瘍の進行を抑え、痛みを和らげることが期待できます。また骨への転移があって痛みが強い場合、骨転移部へのピンポイント照射によって痛み止めの効果が高められることがあります。放射線治療の副作用としては、照射部位の皮膚炎や消化管粘膜の炎症(胃腸症状)、全身のだるさ(倦怠感)などがありますが、医師が照射範囲・線量を工夫することで副作用を最小限に抑えるよう配慮します。
緩和医療
膵臓がん再発後は標準治療に加え、患者さんの苦痛を和らげQOLを維持する緩和ケアがとても重要です。緩和ケアは決して最終段階のケアという位置づけではなく、再発が分かった時点から積極的に取り入れるべき医療です。具体的には、痛みがあればモルヒネ等の強力な鎮痛薬や神経ブロックでしっかりコントロールし、黄疸が出れば胆管にステントを入れて胆汁の流れを確保する(減黄処置)、腸閉塞があればバイパス手術、消化不良や食欲不振があれば点滴などの処方を行う、といった対症療法を適宜行います
膵臓がんが再発し転移もある場合の治療法
膵臓がんが再発し、かつ遠隔転移も認める状態はいわゆる進行再発膵がん(ステージIV相当)であり、治療目標は延命と症状緩和になります。この段階では前述のように外科手術で根治は困難な事が多いため、全身化学療法(抗がん剤治療)が標準治療です。どの治療を選択するかは患者さんの体力や既往治療によって選択されます。
化学療法
前述の通り、再発と転移がある場合の中心的な治療となるのが、化学療法です。標準治療として抗がん剤治療以外のものは、がん遺伝子検査によっては分子標的薬や臨床試験(治験)に参加することも選択肢です。主治医の先生と治療方針や副作用などについて十分に相談しましょう。
免疫療法
前述の通り、がん遺伝子検査の結果次第では免疫チェックポイント阻害薬も治療の選択肢になります。消化器外科や腫瘍内科で免疫療法が行えるかどうか、相談しましょう。
放射線療法
前述の通り、再発・転移病変に対し、放射線療法を行うことで病変の縮小や症状の緩和が期待できます。放射線科外来で治療を行います。
緩和医療
前述の通り、再発だけでなく、転移がある場合は緩和医療の役割はより大きくなります。緩和医療では身体症状だけでなく、不安や落ち込みなど心理的ケアも含めてサポートすることが大事です。主治医や看護師だけでなく、必要に応じて緩和ケアチームや心療内科、ソーシャルワーカーとも連携し、「痛みや不安は我慢せずに伝える」よう患者さん・ご家族に呼びかけています。さらに、自宅で療養したいという希望があれば在宅医療の調整も行います。
「膵臓がんの再発率」についてよくある質問
ここまで膵臓がんの再発率などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの再発率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膵臓がんの再発は、初めて発症してから何年後に発症しますか?
齋藤 雄佑 医師
膵臓がんの再発は、多くの場合手術後2年以内に起こりやすいとされています。海外の報告では局所再発の中央値は11.63カ月であり、遠隔再発の中央値は9.49カ月とされており、1年前後での再発が多いことが示唆されます。
まとめ 膵臓がんの治療は周囲のサポートも大切
膵臓がんの再発率や治療法について詳しく解説してきました。膵臓がんは早期発見が極めて難しく、手術で切除できても約6-8割が再発してしまう非常に厳しいがんです。仮に膵臓がんが再発してしまった場合でも、標準治療によって延命効果があったり、症状を和らげることが期待できます。
膵臓がんは患者さん・ご家族にとって大変つらい病気ですが、医療は日進月歩で進歩しており、新しい治療法や治療成績の向上した臨床試験も報告され始めています。膵臓がんの5年生存率も最新データでは少しずつ改善してきています。わずかな変化に見えるかもしれませんが、確実に前進しています。
読者への注意喚起として、まず膵臓がんは誰にでも起こり得る病気であり、特に糖尿病の新規発症や原因不明の慢性腰痛など気になる症状がある場合は検査を検討してください。また、膵臓がんと診断された方は信頼できる情報源に基づいて病気を理解し、納得した上で治療に臨むことが大切です。インターネット上には不確かな民間療法やデマ情報も散見されますが、安易に飛びつかず主治医と相談して早期に標準治療を受けることが重要です。
治療中は副作用や経済面など様々な困難があると思いますが、遠慮なく主治医や看護師、ソーシャルワーカーに相談し、行政の支援制度も活用しましょう。実際の診療では患者さんそれぞれで状況が異なります。治療法の選択やケアの方針については必ず担当医と十分に話し合って決めてください。
「膵臓がんの再発率」と関連する病気
「膵臓がんの再発率」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内分泌系
膵臓や胆管の病気だけでなく、急激に悪化する糖尿病でも膵臓がんの可能性がありますので、気になることがあれば、医療機関を受診してください。
「膵臓がんの再発率」と関連する症状
「膵臓がんの再発率」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 心窩部痛
- 背部痛
- 黄疸
- 食欲不振
- 体重減少
- 貧血
膵臓がんに特徴的な症状は他の疾患でも出現する症状です。健診での異常や症状について放置せずに、一度医療機関で精査を受けてみてはいかがでしょうか。
参考文献




