「骨肉腫が肺転移」した場合の症状はご存知ですか?生存率も解説!【医師監修】
ドラマで取り上げられたり、スポーツ選手や有名人が骨肉腫を発症していたりするため、骨肉腫という病気の聞き覚えがある方もいるのではないでしょうか。
がんは一般的に、男女ともに50歳頃から発症リスクが高まり、高齢になるほどそのリスクが上がるとされています。厚生労働省が推進するがん検診は、子宮頸がん検診を除いてほとんどが40歳以上です。
しかし、骨肉腫は若い方にも少なくない発症例が見られます。本記事では、骨肉腫のメカニズムや生存率、転移した場合の治療法について解説します。
骨肉腫について詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてください。
監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
骨肉腫とは
骨のがんは、2種類あります。1つは、胃がんやすい臓がんなど、ほかの臓器のがんが骨に転移する転移性骨腫瘍です。もう1つは、骨自体に発生するがんである原発性骨悪性腫瘍です。
この原発性骨悪性腫瘍は、体中どこにでも発生するがんの一種で、肉腫と呼ばれています。骨の肉腫には、主に骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨巨細胞腫などがあります。
2020年の厚生労働省の調査によると、がん罹患者数が多いのは大腸がんで147,725人ですが、骨の肉腫は年間500人〜800人ほどしかいません。骨の肉腫のなかでは、骨肉腫が多く、発症人数は年間200〜300人で、全体の罹患率の33%を占めています。
骨肉腫は稀少がんであるため、治療方法の研究が30年間で十分に進んでおらず、原因ははっきりとわかっていません。
若年層に多くみられる悪性腫瘍
骨肉腫は、中学生や高校生の成長期に発症しやすい悪性腫瘍です。
約3割は40歳以上で発症するため、若い方だけが発症するわけではありませんが、10代〜20代の患者さんが全体の約6割を占めています。
そのため、骨の成長の速さと骨肉腫の関連性が研究されています。
初期症状と好発部位
骨肉腫の好発部位は、約7割が膝関節周辺とされています。次いで大腿骨遠位端、脛骨近位骨幹端、上腕骨近位骨幹端の順に罹患率が高くなっています。
初期症状は、痛みと患部の腫脹です。痛みは夜間や安静時に増すことがあり、しかし、スポーツによる影響や成長痛と考えられることも多いため、初期症状に気付かないことが少なくありません。
骨肉腫は骨に悪影響を及ぼすため、転倒や打撲の心当たりがなくても、日常生活のなかで骨折することがあります。
また、関節近くに腫瘍がある場合は、関節を動かしにくくなったり、疲労感を感じることもあります。
進行した骨肉腫が肺転移するメカニズムと生存率
がんの転移と聞くと、末期がんをイメージされる方が少なくありません。しかし、がんは進行すると、一部のがん細胞がリンパ液や血液などを介してほかの臓器に転移する病気です。
がんは転移した部位で増殖し、正常な細胞の働きを阻害します。さらに、大きくなったがん細胞が神経に触れることで、疼痛を引き起こすことがあります。この過程を繰り返しながら、がんは進行していくのです。
血液の流れに乗って肺に転移
骨肉腫は、がん細胞が血液によって運ばれ、肺に転移する可能性が高いです。実際、転移および再発が起こる臓器の90%が肺です。
肺転移する確率
骨肉腫と診断された時点で、すでに肺に転移している症例が10〜20%報告されています。さらに、患者さんの70〜80%は、治療を始めてから2年以内に肺転移を起こします。
1970年代以前は、骨肉腫の治療として早期の四肢切除術が効果的と考えられていました。しかし、1977年に放射線治療や化学療法が導入されたことで現在ではできる限り患肢を温存する術式が採用されています。
ただ、放射線治療や化学療法の導入により、徐々に肺転移率は低下しているものの、依然として高い確率で転移が起こると考えられています。
肺転移した場合の生存率
進行度やステージ、治療の状況によって異なりますが、早期発見および早期治療が行われた場合、治癒の可能性が高まります。転移のない骨肉腫の5年生存率は60〜80%とされています。
しかし、骨肉腫は稀少ながんであり、臨床例が少ないため、初診時に遠隔転移がある場合や治療後の再発および転移がある場合については、いまだにはっきりしたことがわかっていません。
肺転移がある場合の5年生存率は、20〜30%と考えられています。
骨肉腫が肺転移した場合にみられる症状
骨肉腫の肺転移は、初期症状がわかりにくい病気です。
頭痛・ふらつき・肩の痛み・背中の痛み・声のかすれ・お顔のむくみ・四肢のしびれなど、一見肺がんとは関係がないように思われる症状でも、肺転移による影響で引き起こされる可能性があります。
ここでは、肺転移によって引き起こされる主な症状について解説します。
転移巣が少なく小さい段階ではほぼ無症状
骨肉腫は肺の 末梢領域に転移し、病変が小さいため、特徴的な自覚症状が見られないことが少なくありません。
血液検査においてALP値の上昇が認められることがよくあり、これが転移の指標とされています。
ただし、成長期にはもともとALP値が高いため、診断には注意が必要です。
咳・血痰
骨肉腫の肺転移では、風邪や肺炎、気管支炎などと似た咳や血痰、発熱などの呼吸器症状が現れることがあります。
しかし、これらの症状は風邪や肺炎、気管支炎などの病気と大変似ているため、見分けることが難しいとされています。
日頃から体調管理に気をつけ、風邪を引かないようにすることが大切です。
もし、1週間以上症状が改善しない場合は、風邪ではなく肺転移の可能性があるため、医療機関を受診することをおすすめします。
呼吸不全
転移したがん細胞が増加しない限り、症状が現れにくいとされています。呼吸不全の症状としては、動いたときに息苦しさを感じたり、動悸が生じたりすることがあります。呼吸不全の原因は以下のとおりです。
- 肺に転移したがん細胞が大きくなった
- 器官の分泌物が増えて空気が通りにくくなった
- 空気が通りにくくなった
- 胸水が溜まったため、肺が小さくなった
肺転移している骨肉腫に対する治療法
骨肉腫が肺に転移した場合、早期発見と早期治療が大変重要です。患者さんの現在の症状や体力、がんの状況によって、選択できる治療方法が異なります。
薬物療法
薬物療法は、体中のがん細胞を消滅させるために抗がん薬を用いる方法です。
がんの成長を抑制したり、症状を軽減したりする効果が期待されます。
この治療方法は、体力のない患者さんや手術が困難な場合、あるいは手術ですべてのがん細胞を切除できない場合に選択されるものです。
抗がん薬は静脈注射やカテーテルを通じて直接体内に投与されます。
手術療法
転移性肺がんの部位や大きさなどに応じて、手術方法が変わります。
手術方法には、肺の部分切除術・葉切除術・片肺全摘術などがあり、病変の状況により胸腔鏡手術、胸腔鏡補助手術、開胸手術のアプローチが選択されます。手術療法が適用されるのは、以下の場合です。
- 患者さんの体力がある
- 骨肉腫のがんの再発がない
- 転移性肺がんが切除可能
骨肉腫の肺転移についてよくある質問
ここまで骨肉腫の肺転移や症状について紹介しました。ここでは、「骨肉腫の肺転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺転移が進行するとどうなりますか?
松繁 治(医師)
骨肉腫が肺に転移し進行すると、主に呼吸障害が発生し、最終的には呼吸不全により死に至ることが少なくありません。
手術ができないケースがありますか?
松繁 治(医師)
手術できないケースはあります。がんが肺以外にも転移している場合や、周囲の臓器に広がっている場合、すべてのがん細胞を切除できないため、手術が適用されないことがあります。
編集部まとめ
骨肉腫は、希少ながんであるため、まだはっきりとしたことがわかっていません。肺転移の初期症状はほとんどが無症状で、風邪や肺炎などの病気と見分けがつかないことも少なくありません。
治療法は、患者さんの体力や症状に応じて、手術療法か薬物療法を選択します。
気になることがある場合は、医療機関を受診し、検査を受けるようにしましょう。早期発見と早期治療が重要です。
骨肉腫と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は8個あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
骨肉腫は、ほかの病気と見分けがつきにくい疾患です。少しでも気になることがあれば、早めに受診することをおすすめします。
骨肉腫と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 主に四肢の痛みや腫れ
- 咳
- 血痰
- 呼吸困難
- 麻痺
- 動悸
骨肉腫は肺に転移することが多く、進行すると上記のような症状を自覚することがあります。できる限り早期に発見し、早期に治療を開始することが重要です。気になる症状がある場合は、早めに受診することをおすすめします。