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「口腔がんのリハビリ」はどんなことをするの?手術後に生じやすい障害・問題も解説!

 公開日:2024/12/29
「口腔がんのリハビリ」はどんなことをするの?手術後に生じやすい障害・問題も解説!

口腔がんでは、手術後にリハビリを行うことが少なくありません。手術が広範囲に及ぶと重症度も高くなる傾向にあります。

そのため、手術で切除した口腔器官の機能を補うためにもリハビリは重要です。以下で、口腔がんのリハビリ内容や術後に生じやすい障害、治療方法などを紹介します。

山下 正勝

監修医師
山下 正勝(医師)

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国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

保有免許・資格
歯科医師
日本外科学会 外科専門医
緩和ケア研修修了
JATEC(外傷初期診療ガイドライン)コース修了
NST医師・歯科医師教育セミナー修了
嚥下機能評価研修修了

口腔がんとは

口腔にできるがんの総称で、できる箇所によって舌がん・口腔底がん・頬粘膜がん・歯肉がん・硬口蓋がんなどに分けられます。
日本人では舌がんが多く、口腔がん全体の55%程を占めます。男性の方が女性の2倍程高く罹患しやすく、60〜70歳代に多いのが特徴です。
口腔がん自体はがん全体の1%程と多くはないですが、罹患率が年々、増えています。発見時から頸部のリンパ節に転移しているケースもあるため注意が必要です。

口腔がんのリハビリの種類

口腔がんでは手術で口腔器官を切除するため、口腔器官を使う食事や発音などで手術前のように行えないことがでてくるでしょう。
手術後は日常生活に支障が出ないように、嚥下や構音などのリハビリが行われます。

嚥下のリハビリ

食べ物を噛んで、飲み込むためのリハビリです。嚥下のリハビリでは、手術後に残っている口腔器官の状態に合わせたリハビリが行われます。
例えば、舌がんでは舌切除後に残っている舌の可動域や筋力を向上させる訓練をしたり、舌を使わないで飲み込む訓練をしたりします。
舌が動かせない方では、飲食物をすする訓練や喉まで食べ物を運ぶ訓練などが一般的です。

構音のリハビリ

話しやすさや聞き取りやすさを向上させるためのリハビリです。
手術前と同じ舌の動かし方では発音が難しい音もあるため、残っている口腔器官を使って発音できる動かし方を訓練します。
訓練では、鏡を見ながらの口腔器官の運動や話す速度の調整、口腔器官を大きく動かす発声や発音などが行われます。

装置を使ったリハビリ

手術後の口腔内の状態によっては、舌接触補助床(PAP)や軟口蓋挙上装置(PLP)と呼ばれる装置をつけてリハビリを行います。PAPは、口腔内の天井の口蓋につける入れ歯のような装置で、舌で口蓋に触ることができない方につけます。
口蓋と舌の距離が近づくため、カ行やタ行などが発音しやすくなるでしょう。PLPは、軟口蓋の動きが悪く、息が鼻から漏れて言葉が聞き取りにくい方につけます。軟口蓋は、口蓋の喉側にあるやわらかい部分です。PLPを上顎につけて軟口蓋の動きが改善されることで、聞き取りにくさの改善が期待できるでしょう。

頸部郭清術後のリハビリ

頸部郭清術は、頸部リンパ節に存在するがん細胞の根治・転移防止のために、リンパ節や脂肪組織などを広範囲に摘出する手術です。手術後には、お顔のむくみ・頸部の変形・肩があがりにくくなるなどの症状がでることがあります。
そのため、腕をあげたり肩・首を動かしたりするリハビリを行います。肩や首への負担に気をつけながら日常生活でもリハビリを続けることで、負担は軽減されるでしょう。

口腔がんの手術後に生じやすい障害・問題

手術後に生じやすい障害・問題は、摂食嚥下障害・構音障害・審美面や精神面の問題です。手術の範囲によって障害の程度は異なります。

摂食・嚥下障害

手術により口腔器官の一部や多くが失われるため、食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下します。
そのため、手術後は誤嚥と呼ばれる飲み込みのミスが増え、肺に飲食物が入り誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
こういった感染症へのリスクを下げるためにもリハビリや食事の形態の調整が重要です。

発音・構音障害

切除部位や範囲により手術後の重症度は異なりますが、口腔内の組織の欠損による形態の変化・舌の巧緻性や可動域の制限・運動速度の低下などが起こりやすくなります。
その結果、発音の仕方や構音様式の変化・発話速度の低下などが生じます。切除範囲が広い場合、再建手術が行われても日常のコミュニケーションに何かしらの制限がでやすいでしょう。

審美面の問題

お顔が左右非対称になったりお口が閉じられなかったりと、容貌や印象に与える影響がでやすいでしょう。見た目が変化したことで、周囲の目が気になったり外出を避けるようになったりする方も少なくありません。
顔貌の変化は切除範囲の広さによる影響が大きいため、口腔内の異変に気付いたら早期に医療機関へ受診しましょう。

精神的な問題

手術後が終わっても、再発・転移・生活・仕事などへの不安や食事・顔貌の変化などのつらさが精神的に蓄積していきやすいです。常に再発や転移の不安に苛まれ、がんに対して怒りの感情を持つこともあります。
手術を行わなければお顔や口腔機能は失わずに済みますが、がんが進行してしまう可能性が高いでしょう。手術前に手術後の変化をできるだけ具体的にイメージでき、手術前後でのギャップが少ないと、精神面に及ぼす影響も軽減できるでしょう。

口腔がんの治療法

ほとんどの口腔がんでは手術でがんの除去が行われます。しかし、進行度・できた場所・がんの種類によっては、放射線治療や化学療法を併用する場合もあります。

手術

口腔がんはほかのがんと比べて抗がん剤が効きにくいため、治療の中心は手術になります。がんが小さい場合は部分切除で済みますが、大きくなると切除範囲も広くなります。また、手術では再発しないように病変部より大きめに切除するため、切除範囲が広くなりがちです。
リンパ節まで転移している場合、リンパ節を周囲の組織ごと除去します。リンパ節へ転移していなくても、転移の可能性が高い場合にも予防的に郭清が行われるでしょう。
加えて、手術で欠損した箇所の再建手術も行われ、患者さんの太ももやおなかなどから採取した皮膚や筋肉などを移植します。そして、再建後の機能回復のためにリハビリが行われる流れです。

放射線療法

がんが小さいときに行う場合と手術後に補助治療として行う場合があります。がんが小さいときに放射線治療を行うことで口腔器官が温存されるため、治療後の機能障害が少なく済むでしょう。がんを手術で除去しきれなかったり頸部リンパ節への転移がみられたりした場合は手術後に、放射線療法を行います。
このとき、再発予防を目的に抗がん剤を使った化学療法も合わせて行われます。なお、放射線での治療中や治療後には副作用が現れやすいため、気になる症状がある際は医師に相談しましょう。

化学療法

抗がん剤を使った治療法です。手術後の再発低減が目的で、放射線療法と併用する場合や手術困難と判断した場合に化学療法が行われます。抗がん剤にはシスプラチンが使われるでしょう。また、がんの再発や転移などで根治が難しい場合にも、がんの進行を遅らせるために化学療法が行われます。
この場合には、免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬などが使われます。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぎ、免疫の力を保つ薬です。分子標的薬は、がんの増殖に関係する分子に標的を絞って攻撃する薬です。

口腔がんのリハビリについてよくある質問

ここまで口腔がんのリハビリでわかること・障害・治療法などを紹介しました。ここでは、「口腔がんのリハビリ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

リハビリを始めるタイミングはいつがよいでしょうか?

山下 正勝山下 正勝 医師

なるべく早期から始める方がよいでしょう。創部の状態にもよりますが、術後7〜10日で食べ物を使わない訓練が開始されます。それまでに感染症に罹患する場合もあるため、早期から口腔ケアなどで介入するのが望ましいです。口腔ケアのほかに口腔器官の可動域・筋力を向上する運動などが行われるでしょう。

口腔がんのリハビリを受けるには何科に行けばよいでしょうか?

山下 正勝山下 正勝 医師

リハビリテーション科です。耳鼻咽喉科医のもとリハビリテーション医・看護師・リハビリスタッフなどが連携して、患者さんに関わっていきます。

編集部まとめ

口腔がんでは、手術後に摂食嚥下障害・構音障害などが生じるケースが少なくありません。

がんを手術で切除すると、今まで不自由なく行えていた食事や発声・発話が思うようにできなくなります。そのため、残った口腔器官を使ったリハビリが重要になります。

リハビリが思うようにいかずに焦ったり、顔貌の変化につらくなったりする場合もあるでしょう。

リハビリは短期間ですぐに効果がでるものばかりではありません。長期的に考えて行いましょう。

口腔がんと関連する病気

「口腔がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

両方とも舌や歯茎などにみられる疾患で、がん化しやすいのが特徴です。白板症の3~14%程でがん化しやすく、紅板症自体は白板症に比べて発生頻度は低いですが、50%程がん化するとされています。

口腔がんと関連する症状

「口腔がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 開口しにくい
  • 飲み込みにくい
  • 話しにくい

上記であげた症状は進行すると現れやすいです。初期には、痛みや出血などはほとんどありません。また、病変部の粘膜の変色・変形・しこり・痛みなどの症状がでる場合もあります。そのため普段から鏡などで口腔内を確認し、異変があれば早期に医療機関へ受診しましょう。

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