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「小児の急性リンパ性白血病の再発率」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/12/31
「小児の急性リンパ性白血病の再発率」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

小児急性リンパ性白血病(ALL)は、小児がんのなかでは発生率が高い病気で、日本では1年間に数百人の小児が発症する血液のがんです。

小児ALLの約20%が再発するといわれていますが、再発の予後因子は発症した年齢・免疫反応・寛解導入法の反応などで変わります。

予後因子に合わせた治療法も世界各国で開発されているので、本記事ではさまざまな治療法の紹介や再発の定義などを詳しく解説します。

小児急性リンパ性白血病のことをもっと知りたい方はぜひ参考にしてください。

山本 佳奈

監修医師
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

小児急性リンパ性白血病とは

小児急性リンパ性白血病とは、小児がんのなかでも発生率の高い白血病です。リンパ球になる造血幹細胞に遺伝子異常が起こると、細胞が成長しなくなります。
リンパ系幹細胞が成長しないまま骨髄のなかで増殖すると、正常な血液細胞が作れなくなります。そのため、治療を怠ると生命の危機に陥ることもあるでしょう。がん化した細胞を白血病細胞といい、急性リンパ性白血病(ALL)は、B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)とT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)に分類されます。
また、B-ALLは治療方法が異なるため、フィラデルフィア染色体陽性ALLや乳児ALL(1歳未満)に分けられることもあります。

小児急性リンパ性白血病の再発率と生存率

白血病は、病型を細かく分類してそれぞれの性質や特徴にあった治療薬を組み合わせて治療を行うことで、生存率が大幅に向上するようになりました。

再発率

小児急性リンパ性白血病は、治療薬の開発により再発率が下がったとはいえ、約20%が再発するといわれています。小児がんのなかでも小児急性リンパ性白血病の再発は6~7%を占めており、治療終了後2年以内に確認されることも少なくありません。
白血病細胞が残存していて増殖し、症状がでたり検査で判明したりするケースがみられます。一方、治療終了後2年以上が経過しても症状や検査の結果に異常がない場合は、治っている可能性が高いと考えられるでしょう。治療終了後4年以上経過してからの再発率は1%以下です。

生存率

小児急性リンパ性白血病は、過去には治らない病気といわれた時代もありましたが、治療方法や支持療法の進歩で長期生存率は大幅に向上しています。
無イベント生存率(がんが再発しないで生存している割合)が70~85%、全生存率では80~90%になります。

再発小児急性リンパ性白血病の診断と定義

小児急性リンパ性白血病の初期治療で、完全寛解と診断された小児が骨髄再発・髄外再発・骨髄髄外複合再発の症状が認められると再発と判断されます。
なお、完全寛解は検査でがんがみとめられない状態のことであり、白血球細胞が残存している可能性はあるため、完治とは意味が異なります。

骨髄再発

骨髄再発の定義は以下になります。

  • 1回の骨髄塗抹標本による細胞検査でリンパ芽球が50%以上
  • 1回の骨髄塗抹標本でリンパ芽球が5~50%未満の場合:2回目以降の骨髄塗抹標本でリンパ芽球の最高値が25%以上(1週間以上空けて複数回骨髄穿刺を実施)
  • 骨髄中のリンパ芽球が25%以上で末梢血中のリンパ芽球も25%以上
  • 骨髄中にリンパ芽球が25%以上存在しほかの検査方法を用いて白血病細胞を確認できた場合

上記のいずれかが確認できた場合に骨髄再発と診断されます。

髄外再発

髄外再発とは、骨髄のほかの臓器にリンパ芽球が浸潤して再発したことをいいます。

  • 中枢神経再発:リンパ芽球の浸潤により顔面神経麻痺・視床下部症状・頭蓋内占拠性病変などがある場合
  • 精巣再発:リンパ芽球が精巣に浸潤して再発した場合
  • その他:リンパ芽球が皮膚・腎臓・肝臓などに浸潤して再発して場合

骨髄以外の臓器でリンパ芽球の浸潤がみとめられ、再発したことが明確であれば、組織生検が省略されることがあります。

骨髄髄外複合再発

骨髄塗抹標本でリンパ芽球が5%以上確認できて、同時に髄外再発が認められた場合は骨髄髄外複合再発になります。

小児急性リンパ性白血病の再発時の治療法

小児急性リンパ性白血病の再発時の治療方法は、基本的には初回時と同じ方法です。再発の原因は、前回の治療で白血病細胞が残存していたことが考えられます。
白血病が再発した場合は、新薬の導入も視野に入れた治療を行い、高い寛解率を目指すことになります。なお、急性リンパ性白血病の治療では、臨床試験で新しい医薬品や治療法を取り入れることも可能です。
ただし、臨床試験には参加基準があります。また、臨床試験は治療途中でやめることは可能ですが、途中からの参加はできません。

寛解導入療法

寛解導入療法の目的は、骨髄内の白血病細胞を5%以下まで減らすことが目標です。多剤併用療法や脳脊髄液注射などを組み合わせた化学療法が一般的です。
再発の場合は、初回で使用した抗がん剤が効かない場合があるため、前回とは異なる抗がん剤を組み合わせた治療を行います。寛解に到達するまで寛解導入療法は継続して行われ、到達した場合は寛解後療法に進みます。

強化療法

強化療法は、寛解導入療法が終了した直後から開始される治療法で、残っている白血病細胞をさらに減少させるのが目的です。
早期強化療法では、寛解導入療法で使用されなかった薬剤が投与されます。寛解導入療法と早期強化療法は繰り返し行われます。

維持療法

白血病細胞の根絶と再発の予防を目的としたのが維持療法です。メルカプトプリンとメトトレキサートの内服が一般的です。
初回同様、寛解導入療法や強化療法の期間は入院が必要ですが、維持療法は内服治療のため入院の必要がなく、定期的な通院治療になります。そのため、通常の学校生活などを送りながらの治療が可能です。

同種造血幹細胞移植

同種造血幹細胞移植は、ドナーから提供を受けた造血幹細胞を移植します。以下の場合に同種造血幹細胞移植が検討されます。

  • 初診時の染色体の検査で予後が悪いと想定される染色体や遺伝子の異常があった場合
  • 初期治療の反応が悪い場合
  • 再再発のリスクが高い場合
  • 救援化学療法で寛解に至らない場合

造血幹細胞移植は重い合併症が起こることがあるため、移植の判断は慎重に行う必要があります。また、造血幹細胞移植を行うと数ヵ月間の入院が必要になることも考慮しましょう。

キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法(CAR-T)

患者さんから採取した末梢血単核球(末梢血液の中の成熟した白血球)を培養して、人工的な遺伝子操作を加えたT細胞(リンパ球の一種)を導入します。
2~3週間程培養し、いったん凍結したのち再び患者さんに点滴で戻される治療法です。末梢血単核球の採取から1~2ヵ月間程培養にかかるため、培養期間は化学療法やブリッジング治療(病状を安定させておく治療)などを行います。
ブリッジング治療で腫瘍量を減らすことができていれば、CAR-Tの効果を高めるとともに副作用のリスクの軽減が期待できるでしょう。

小児急性リンパ性白血病の再発率についてよくある質問

ここまで小児急性リンパ性白血病の再発率と生存率・診断と定義・再発時の治療法などを紹介しました。ここでは「小児急性リンパ性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

予後因子を教えてください。

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

小児急性リンパ性白血病は、年齢・白血球数・免疫や染色体の型・寛解導入法への反応などが予後因子に影響します。以下が予後が良好と考えられる因子です。

  • 年齢:1~10歳未満
  • 診断時の白血球:50,000/μl未満
  • 中枢神経への浸潤がない
  • 免疫学的性質:T細胞型よりB細胞型が良好
  • 染色体・遺伝子異常:高2倍体およびETV6-AML1は良好
  • 治療の反応性:プレドニン単独治療終了時の末梢血芽球数が1,000/μl未満・治療開始3ヵ月後の微小残存病変が少ない

予後因子により3段階のリスク分類(低リスク・中リスク・高リスク)を行い、治療計画を決定します。

再発は何年後に起こりますか?

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

白血病は、稀に白血病細胞が活性化して再発することがあります。また、治療終了時点で白血病細胞が残存していて症状や検査にでた場合も再発になります。ただし、ほとんどの再発は治療が終了してから2年以内に確認されるため、2年以上経っても症状や検査に異常がでなければ治った可能性は高いでしょう。

編集部まとめ

小児急性リンパ性白血病は、再発する可能性が少なくない血液のがんですが、新薬や治療法の開発で全生存率は80~90%に達しています。

再発は必ず起こるものではありませんが、白血病に似た症状が起こった場合に、不安になって「急いで受診しなくては」と思われることもあるでしょう。

しかし、白血病の診断の遅速は治る確率にはほとんど影響しません。

また、症状がでても白血病以外の病気の可能性があるので、緊急で受診する必要はないとされています。様子をみて症状が治まれば再発の可能性は薄いでしょう。

小児急性リンパ性白血病と関連する病気

「小児急性リンパ性白血病」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

リンパ芽球性リンパ腫もリンパ球ががん化したもので急性リンパ性白血病と同じ種類のがんです。2つを合わせたものを急性リンパ芽球白血病/リンパ芽球性リンパ腫といいます。

白血細胞の増殖する部位で分類され、主に骨髄で増殖するものを急性リンパ芽球性白血病、主にリンパ節に増殖するものがリンパ芽球性リンパ腫です。

小児急性リンパ性白血病と関連する症状

「小児急性リンパ性白血病」に関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 疲労
  • 血が止まりにくい
  • 感染症にかかりやすい
  • 頭痛

男児の場合は睾丸が腫れることもあります。

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