「肺がんの進行速度」はどれくらい?症状や治療法も解説!【医師監修】
肺がんは日本人のがんによる死亡原因の上位に位置する病気です。そんな肺がんの受診のタイミングは、自覚症状を感じる前の発見が理想的であるといわれています。
では肺がんはどれくらいの速さで進行する病気なのでしょうか。また早期に発見するためには、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。
この記事では肺がんの進行速度について、症状・治療法を併せて解説します。早期発見のポイントもご紹介しているので参考にしてみてください。
監修医師:
佐藤 典宏(医師)
医学博士、日本外科学会指導医・専門医、がん治療認定医
消化器がんに対する外科治療のかたわら、膵臓がんの基礎研究にも従事。がん患者さんに役に立つ情報を提供すべくブログを開設「あきらめない!がんが自然に治る生き方」。著書に『ガンとわかったら読む本』(マキノ出版)。
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺は、呼吸によって吸い込んだ酸素を体内に取り入れて、二酸化炭素を体外へ排出するための臓器です。この働きをガス交換といいます。
このガス交換を担う肺の細胞ががん化した状態が肺がんです。肺がんが進行すると、がん細胞の増殖に伴って周囲組織が破壊されます。
肺はガス交換のために、全身の血液が集まる臓器です。また、血液だけでなく免疫機能を担うリンパの流れも張り巡らされています。そのため肺がんのがん細胞は、これらのルートからほかの臓器へと移動し、がんの転移を起こすことも少なくありません。。
肺がんの進行速度はどのくらい?
肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分けられます。これらの進行速度はそれぞれ異なることがわかっています。
肺がんの80〜85%は非小細胞がんです。非小細胞がんには腺がんや扁平上皮がんなどが含まれ、その進行速度はさまざまといわれています。
もう一方の小細胞がんは、進行が早く転移もしやすいがんです。
肺がんの症状
ここからは肺がんでみられる6つの症状をご紹介します。
肺がんは初期に症状が現れにくい病気です。その他の呼吸器疾患と識別しにくい症状が少なくないため、受診の目安についても解説します。
初期はあまり症状が出ない
肺がんの初期は、何も症状がみられないことも少なくありません。
無症状のまま進行することが少なくないため、症状が現れたときにはすでにがんが進行してしまっていることもあります。
咳
咳は肺がんになると起こりやすい症状の1つです。
肺がんの場合、長期間にわたって咳の症状が長引くこともあります。原因不明の咳が2週間以上続く場合は、身近な医療機関への相談がおすすめです。
痰・血痰
咳とともに肺がんで起こりやすい症状に痰があります。また、血が混ざった痰が排出されることもあります。
血痰が出ている場合は、医療機関への受診を検討しましょう。
胸の痛み
胸に水が溜まった状態(胸水)になると、胸の痛みが出ることがあります。また胸痛は、がんが肋骨や神経へと浸潤した場合にもみられる症状です。
動悸・息苦しさ
肺がんの症状として、動いたときに動機や息苦しさを感じることがあります。これはがんが大きくなり、肺の機能が影響を受けてしまっている状態です。
その結果、胸水が溜まり肺が圧迫されている可能性があります。
発熱
肺がんが気管支にできてしまうと、気管支が閉塞して閉塞性肺炎の状態になることがあります。
このような場合、発熱が起こります。発熱が5日以上続く場合は、医療機関へ受診しましょう。
肺がんの治療法
肺がんは進行に伴い、治療法が変わる病気です。ここでは肺がんの5つの治療法を解説します。
肺がんは医師とともにさまざまな治療方法から患者さんに合った方法の選択が必要となるため、ぜひ参考にしてください。
手術療法
手術療法は、がんやがんの発生している臓器を切除します。この治療法は、手術によって発生しているがんをすべて取り切ることができる場合にのみ選択される治療法です。
手術は切除する範囲に合わせて、胸部を大きく切開して行う開胸手術と胸腔鏡手術があります。胸腔鏡手術では、小さな切開創からカメラを胸腔内に挿入して、モニターを見ながらがんの切除を行います。
放射線療法
放射線療法は、がんが大きく成長し周囲の組織へ浸潤していたり、リンパ節への転移があるなどの状態のステージIIIのがんが対象です。
この治療は手術で切除できないがんが対象になるため、治療目的にはがんの治癒だけでなく進行抑制・がんの症状の緩和・延命なども含まれます。
薬物療法
薬物療法は、薬の力でがんの治癒・進行抑制・症状の緩和を目的として行われる治療法です。
この治療法は、がんが進行していて手術で切除できない場合や手術後の再発・転移予防として選択される治療の1つです。非小細胞肺がんの薬物療法では以下の3種類の薬を使用します。
- 細胞障害性抗がん薬
- <分子標的治療薬/li>
- 免疫チェックポイント阻害薬
これらの薬の中から患者さんの状態に合わせて選択し、必要時は複数の薬を組み合わせて使用します。
分子標的治療
がん細胞は遺伝子やタンパク質の異常があったり、量が増加していたりという特徴を持っています。この遺伝子はがん遺伝子と呼ばれます。
またがん細胞には特有の増殖しやすい環境が必要です。
がんの発生・進行に関わる遺伝子は、ドライバー遺伝子と呼ばれます。分子標的治療の目的は、タンパク質などの働きを抑えることやがん細胞が増殖しにくい環境を整えることです。
そのためにがん遺伝子が産生するタンパク質・がん周囲の環境を整える因子・ドライバー遺伝子などを標的として治療を行います。
CAR-T細胞療法
キメラ抗原受容体T細胞療法をCAR-T療法といいます。
これは患者さん自身の免疫細胞の1つであるT細胞に遺伝子改変を行い、その攻撃力を高める治療法です。CAR-T療法では、まず患者さんの血液からT細胞を取り出して、CARというタンパク質を発現することのできるCAR-T細胞を作り出します。
CAR-T細胞は、腫瘍細胞の表面に発現する抗原を認識して活性化・増殖する特徴を持つ細胞です。活性化したCAR-T細胞は、腫瘍細胞に強力な攻撃を行います。
肺がんの進行速度についてよくある質問
ここまで肺がんの進行速度・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「肺がんの進行速度」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんの早期発見のポイントを教えてください。
佐藤 典宏 医師
すべてのがんのなかで、肺がんは死亡原因の上位に位置する病気です。肺がんになる人の年齢は、40歳代から増加します。そのため40歳からは、がんの早期発見のために毎年肺がん検診を受けることが勧められています。検診を受けるにあたってのポイントは、対象年齢(40歳以上)と受診間隔を守ることです。検診でがんの疑いがなければ、次回は1年後を目安に検診を受けるのが理想的な間隔です。がんの疑いがある場合には、精密検査が行われます。ほとんどの場合、肺がんの初期は症状がありません。そのため、検診は自覚症状がなくても受けることが大切です。検診で早期にがんが発見されて治療を開始できれば、肺がんでの死亡リスクを下げることができます。しかし血痰や長引く咳、胸痛などすでに気になる症状がある場合は、できるだけ早く医療機関へ受診する必要があります。
肺がんの検査にはどのようなものがありますか?
佐藤 典宏 医師
- 異常陰影の有無
- リンパ節の腫脹の有無
- 胸水の有無
この結果、肺がんの疑いがあると診断された場合は、さらに以下の検査が行われます。
- 気管支鏡検査
- CTガイド下生検
- 胸腔鏡検査
- 手術による外科的生検
このほかにも胸腔内に胸水が溜まっているときには、採取して検査が行われます。
編集部まとめ
今回は肺がんの進行速度について解説しました。肺がんは種類によって進行速度が異なるため、早期発見の心がけが大切です。
そして肺がんの早期発見のためのポイントは、40歳を過ぎたら適切なタイミングで検診を受けることです。
ご自身やご家族の症状が進行してしまう前に肺がんの治療を開始できるよう、定期的な検診を心がけましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
もともと間質性肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)になっている方は、肺がんが発症しやすいことがわかっています。また肺結核になることも肺がんになるリスクを上げる一因とされています。
肺結核は、結核菌が炎症を起こし、肺の組織を傷つける病気です。そして肺がんは結核によって傷ついた部分にできる傾向があります。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連する症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんの症状は、初期に現れないことがほとんどです。そして肺がんでみられるこれらの症状は、その他の呼吸器疾患になったときに現れることがあります。
そのため気になる症状が見られた場合には自己判断せず、速やかに医療機関で受診してください。