「肺がんが転移した後の余命」はどれくらい?転移しやすい部位も解説!【医師監修】
肺がんは初期段階では症状が乏しく、自覚症状が出現する頃にはかなり進行していることも珍しくありません。
肺で全身の血液のガス交換を行った後、ガス交換を行った血液は全身を巡ります。
そのため、ガス交換を行った血液には肺のがん細胞が混じっている可能性があり、全身に転移を起こすことが考えられるでしょう。
今回は、そのような肺がんの転移しやすい部位や余命について解説します。
監修医師:
山下 正勝(医師)
保有免許・資格
歯科医師
日本外科学会 外科専門医
緩和ケア研修修了
JATEC(外傷初期診療ガイドライン)コース修了
NST医師・歯科医師教育セミナー修了
嚥下機能評価研修修了
目次 -INDEX-
肺がんとは
肺がんは組織によって分類することができ、分類は以下の4つです。
- 小細胞肺がん
- 扁平上皮がん
- 肺腺がん
- 大細胞肺がん
組織型によって、それぞれ治療法が異なります。これは小細胞肺がんの場合、抗がん剤や放射線療法が奏功するなど組織型によって、奏功する治療法があるからです。
また、肺がんに限ったことではありませんが、がんの進行具合に応じてステージが設定されています。それが以下の4つです。
- ステージ1
- ステージ2
- ステージ3
- ステージ4
ステージ1・ステージ2は肺のなかにがんが止まっていますが、ステージ3・ステージ4は肺以外のリンパ節やほかの臓器にまで転移している状態のことを指します。ステージ1・ステージ2では、自覚症状に乏しいですが、ステージ3・ステージ4になってくると血痰や咳嗽など自覚症状が出現するようになるでしょう。
そのため、ステージ1・ステージ2の早期の状態で発見することが難しく、症状が出現して受診する頃にはかなり進行していたということもめずらしくありません。
肺がんの手術をした患者さんで5年生存率をみたとき、ステージ1では74.8%~91.6%と高いですが、ステージ4では36.0%程度になります。そのため、肺がんの治療では早期発見・早期治療が重要であり、症状を自覚した場合は早めに受診する必要があるでしょう。
肺がんの転移後の余命は?
医師から告げられる余命とは、その患者さんと同じようながん種・ステージの方が診断されてから死亡するまでの生存期間のデータをもとに告げられています。
データのなかで余命の指標の一つにしているのが、生存率です。ここでは、ステージ3・ステージ4の生存率について紹介します。
ステージ3の生存率
ステージ3の1年生存率は69.3%となっており、一つ手前のステージであるステージ2の1年生存率と比べると15%程度低いです。がんの治療において、5年間再発がなければ治癒したと考えられており、5年生存率が高い程生命を救える可能性が高いです。
そのなかで、ステージ3の肺癌の場合は25.3%となっており、4人に1人は肺癌と診断されてから5年を迎えることなく亡くなってしまいます。
ステージ4の生存率
ステージ4の5年生存率は6.4%とかなり低いです。1年生率でも39.1%とステージ3の1年生存率と比べても半分程度まで落ち込んでいます。
この結果からみても、がんの治療においていかに早期発見・早期治療が重要かわかると思います。
肺がんが転移しやすい部位
がんは発生した部位で増殖していき、徐々に周囲の組織まで浸潤していくことで、病状が進行していきます。また、がん細胞はほかの臓器に転移していきますが、転移の方法は以下の2つです。
- 血行性転移
- リンパ性転移
血液やリンパの流れに沿って転移していくので、原発巣がどこの臓器かによって、転移しやすい部位が異なります。ここでは、肺がんの転移しやすい部位について解説します。
リンパ節
肺は全身から集まった血液のガス交換を行う場です。ガス交換が行われた血液は全身に回るので、がん細胞も一緒に全身を巡るためあらゆる臓器に転移する可能性があるでしょう。
また、肺は血行性に転移するだけではなく、リンパ系のネットワークも肺に張り巡らされているため、リンパ系を介して転移する可能性もあります。そのため、肺がんはリンパ節に転移しやすいがん種といえるでしょう。
骨
がんが骨に転移すると、転移した箇所に痛みが発生します。背骨に転移した場合は、脊髄を圧迫する可能性があり、そうなると手足に麻痺が発生してしまうでしょう。
脳
肺がんはさまざまながん種のなかでも、脳に転移しやすいがん種です。脳に転移すると、頭痛・吐き気・けいれん発作などが起こります。
脳に転移したときの症状はこれだけではありません。脳を包む膜に転移した場合は、意識状態が悪くなり日常生活を満足に営めなくなる可能性があります。
肝臓・副腎
肝臓に転移した場合は、がんが胆汁の通り道である胆管を圧迫することで、体中が黄色くなる黄疸という症状を呈します。副腎は循環動態を司るホルモンを出す臓器で、この副腎にがんが転移してしまうとホルモンの制御ができなくなってしまうでしょう。
循環は生命を維持するためには必須であり、副腎のホルモンを制御できなくなるということは、生命も危ぶまれます。
肺がんが転移している場合の治療法
肺がんはほかの臓器に転移している場合でも、ステージによっては手術が行われることもあります。
しかし、病状的に厳しい場合は手術ではなく化学療法や放射線療法などの選択肢がとられるでしょう。ここでは、転移がある肺がんに対してどのような治療法がとられるのかについて紹介します。
手術
転移している場合でもステージ3で止まっていれば、手術が行われるケースがあります。しかし、この場合の手術は根治治療ではなく、あくまで症状の進行を遅らせる目的です。
化学療法
化学療法は抗がん剤を使用した治療法で、抗がん剤を使ってがん細胞を死滅させる治療法です。使用できる抗がん剤の種類は、がん種・がんの進行具合・患者さんの健康状態によって異なります。
放射線療法
放射線療法の目的は、肺がんによる症状の抑制や疼痛の緩和です。化学療法と併用することで、よりよい治療効果を得られることもあります。
免疫療法
免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬を使用した治療法です。免疫チェックポイント阻害剤によって、身体の免疫による攻撃の対象をがん細胞に向けさせ、がん細胞の増殖を抑制します。化学療法と併用することで治療成績が向上する場合もあります。
分子標的療法
分子標的療法はがん細胞の遺伝子やタンパク質を標的とする治療法です。
肺がんの種類や遺伝子によって、分子標的薬を使い分けます。単独で治療される場合もありますが、化学療法と併用することも珍しくありません。
肺がんが転移した場合の余命についてよくある質問
ここまで肺がんの転移したときの余命や治療方法について紹介しました。ここでは「肺がんが転移した場合の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんが転移した場合完治しますか?
山下 正勝 医師
ステージ3であれば、がんを完治できる可能性があり、おおよそ20~40%の患者さんで完治するといわれています。しかし、ステージ4の場合は化学療法などを行ったとしても、病気の制御が難しいとされ完治することは難しいでしょう。
肺がんの末期症状にはどのようなものがありますか?
山下 正勝 医師
- 体重低下
- 倦怠感
- 耐え難い痛み
- 呼吸機能の低下
呼吸機能を障害されることで、突然の呼吸不全に陥ってしまい生命に関わることもあるでしょう。激しい痛みに対しては麻薬などを使用し痛みを軽減する緩和治療が行われ、苦痛を感じないようにします。
編集部まとめ
肺がんが転移したときの治療方法や余命について解説しました。
ステージ3の段階であれば、完治する可能性がありますが、ステージ4になってくると完治することは難しいとされます。
がんが浸潤・転移を起こすと激しい痛みなど、苦痛を伴うさまざまな症状が出現し、生活に差し支えることもあるでしょう。
がん治療において早期発見・早期治療は今後の予後にも関わってくるので、血痰が出るなどの症状がある場合は早めに受診するようにしましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOC解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 肺気腫
- 慢性気管支炎
これらの病気の症状は肺がんで出現する症状と似ており、呼吸機能も低下しやすい疾患です。症状だけでは判断がしにくいので、CTなど精密な検査を受け肺がんかどうか診断してもらいましょう。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについて詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 咳
- 痰
- 倦怠感
- 体重減少
- 胸痛
これらの症状はほかの呼吸器疾患でも認められます。しかし、血痰を伴う場合は肺がんの可能性が高いです。血痰が出現した場合は早期に受診しましょう。