「胃ポリープ切除後」に”アイスやサウナ”はNG?避けるべき食事や行動を医師が解説!

健康診断で胃ポリープといわれると驚く方も少なくないのではないでしょうか。胃ポリープは胃の粘膜がおできのように隆起したもので、腫瘍ではない良性のものが多いといわれています。
ポリープが小さいうちは経過観察することも多いのですが、大きくなったりがん化したりした場合は内視鏡を使って切除することもあります。
胃ポリープを切除となると、食事や日常生活に影響が出るのではないかと不安になるのではないでしょうか。
この記事では胃ポリープ切除の前後で注意すること、食事制限などについて解説します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
胃ポリープとは
胃ポリープは胃粘膜の表面に発生する良性の隆起性病変を指します。ほとんどの場合、無症状です。
しかし、胃もたれ・食欲不振・不快感の症状が現れることもあり、また巨大化すると出血して鉄欠乏性貧血を起こすこともあります。健康診断の際に造影剤を使った胃のレントゲンで発見されることが多く、内視鏡検査での精密な検査が必要です。
5mm以下の小さなポリープでも表面を観察し、悪性が疑われる場合は内視鏡を使って切除します。
胃ポリープの種類
胃ポリープは3種類あります。多くは胃底腺ポリープと過形成性ポリープに大別され、少数の特殊型(炎症型・症候性・家族性)が存在します。内視鏡検査での見た目や周りの粘膜の特徴から診断が可能です。
胃底腺ポリープは周囲の粘膜と同じような色調で、ピロリ菌感染などによる炎症の影響がない胃粘膜に発生します。まれにがんの発生を疑うケースもありますが、基本的には経過観察で問題ありません。
一方の胃過形成性ポリープは、主にピロリ菌感染が原因で炎症を起こし、赤みの強いポリープです。ピロリ菌を除去することで約80%の患者さんのポリープが小さくなることがわかってきました。ピロリ菌を除去してもポリープが小さくならなかったり、がんの発生が疑われたり出血が続き貧血の原因になる場合は、内視鏡治療でポリープの切除が検討されます。
また胃ポリープに似た症状で胃腺腫もあります。胃腺腫は白色調の平坦な隆起で高齢者に多くみられる症状です。がん化のリスクはゼロではなく、20mm以上の大きさや窪みを伴う場合には内視鏡治療が行われます。
胃ポリープの切除方法
胃ポリープ切除には内視鏡を使った治療が行われます。お口から挿入した内視鏡によってポリープを切除する方法を内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)といいます。内視鏡の先端からスネアとよばれる輪状のワイヤーを出し、病変を締め付けて高周波電流で焼き切る方法です。
またポリペクトミーでは切除できない場合は、生理食塩水などを注入して病変を浮き上がらせて切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や、病変の周りを高周波ナイフではぎ取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)も検討されます。ESDはポリペクトミーやEMRに比べて時間がかかる反面、深いところまで及んだポリープや大きめのポリープの切除が可能です。
いずれの治療法にも500人に1人程度の割合で出血や消化管に穴が開くリスクはあります。
胃ポリープ切除後の食事
胃ポリープ切除の手術は、ほかの部位の手術に比べて身体への負担が少ないのが特徴です。しかし痛みや出血が起こる場合もあるので、暴飲暴食はもちろんのこと、刺激物やアルコールは控えましょう。
症状や療養の状況によって個人差があるので、担当医師と相談して無理のない範囲で過ごすことが大切です。
基本的には1時間後から飲食できる
飲食を再開するタイミングは担当医師の指示を守ってください。のどの麻酔や鎮静剤がきれるまでの時間を考慮して、30分〜1時間は何も飲食しないことが重要です。手術後1時間から飲食は可能となりますが、検査前に絶食していたことも踏まえて、固形物ではなく水分から摂取しましょう。
ただしコーヒーや炭酸など刺激物は控えてください。固形物を食べるときは消化のよいものを心がけゆっくり食べましょう。痛みや不快感がないか確認しながら徐々に日常生活に戻していくことが大切です。
飲酒や脂っこい食事は避ける
胃ポリープ切除は負担が少ないとはいえ、回復までには時間がかかります。アルコールや脂っこい食事は胃への負担が大きくなるので控えましょう。ほかにも香辛料や濃すぎる味付け(酸味・甘味・塩味)も摂り過ぎないよう注意が必要です。冷たすぎる・熱すぎる食事も胃への刺激が増すので温度調整します。喫煙もできるだけ避けてください。
個人差はあるので担当医師と相談して、1週間程度は刺激物は控えましょう。
よく噛んでゆっくり食べる
よく噛むことによって、食べものが細かく砕かれるのと同時に、消化液がよく絡むので消化しやすくなります。ゆっくり食べることで、胃腸への食べものの急降下や、食べすぎを防ぐことができます。また食後30分は横にならず、ゆったり過ごすことも大切です。
胃ポリープ切除後におすすめの食事メニュー
消化のよい食べものを心がけましょう。食材の一例は以下のとおりです。
- 主食:お粥・白飯・うどん・パン・麩
- 主菜:脂肪の少ない肉(鶏、豚、牛)・脂肪の少ない魚類(鱈、鮃)・卵・豆腐
- 副菜:キャベツ・ほうれん草・白菜・里芋・長芋
- 果物:りんご・バナナ・桃
消化のよい食材でも調理方法によっては負担がかかる場合もあるので注意が必要です。フライや天ぷらは胃に負担がかかります。ミキサーを使って食材を細かくするなどの工夫も有効です。
やわらかくて消化のよい食事であれば制限はないので、お好みで召し上がってください。たまごがゆ・煮込みうどん・豆腐サラダ・野菜スープなどはいかがでしょうか。
胃ポリープ切除前の食事制限
検査やポリープ切除で内視鏡を用いる際には、胃のなかに食べものが残っていない状態にしなくてはなりません。そのため前日から食事制限の準備が必要です。
一部午後から手術を行う病院もありますが、その場合も少なくとも6時間の絶食が求められます。詳しくは担当医師や看護師に確認してください。
切除前日の食事は21時までに済ませる
21時までに食事を済ませる必要があります。21時以降の食事は間食も含め控えましょう。前日の飲酒や当日の朝食も控えてください。空腹になるかもしれませんが、脂っこいものは避け、消化のよいものを心がけてください。水やお茶は飲んでも構いません。
切除当日は水かお茶のみ摂取する
切除当日は朝食を食べてはいけません。検査の1時間前までは水やお茶を自由に飲んで構いませんが、牛乳やジュースは避けてください。糖尿病や抗血栓など、常用している薬があれば事前に担当医師に確認してください。
胃ポリープ切除後に避けるべき行動
胃ポリープ切除後は、確率は低いものの出血や穿孔(穴が空くこと)を起こす可能性もあります。また麻酔や鎮静剤が身体に合わない人もいます。出血が多いと再度内視鏡的治療や数日の入院が必要となる場合もあるので、できるだけリスクを減らすように留意してください。
食事に関しては前述したとおりですが、日常生活でもお腹に負担をかけないよう注意が必要です。ご自身の身体の様子を確認しながら、徐々に慣らしていくようにしましょう。
サウナや長風呂
2〜3日はできるだけシャワーで済ませてください。長風呂やサウナでは出血のリスクが高まります。
スポーツや腹圧のかかる行動
1週間程度は激しい運動は控えてください。階段の上り下りや重たい荷物を持つなども腹圧がかかるので注意が必要です。翌日から仕事に復帰しても構いませんが、集中力が散漫になるかもしれません。また、旅行や遠出も控えましょう。
胃ポリープ切除後の食事についてよくある質問
ここまで胃ポリープ切除前後の食事や注意点などを紹介しました。ここでは「胃ポリープ切除後の食事」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
食事制限はどのくらいの期間必要ですか?
切除したポリープの数や症状によって個人差はあるので、担当医師の指示を守ってください。当日から食事をしても構いませんが胃に負担をかけない食材を選びましょう。1週間程度はアルコールや脂っこい食べものを避けてください。2週間程度は腹痛や血便など不快な症状がないか、ご自身の体調を確認しながら徐々に日常生活に戻していくとよいでしょう。
胃ポリープ切除後の食事の量は決められていますか?
食事の量は少なめから再開してください。ご自身の体調をチェックしながら少しずつ増やしていくとよいでしょう。無理をせずご自身のペースで進めてください。栄養価が足りないと感じたら、間食や栄養補助食品で補っても構いません。
編集部まとめ
胃ポリープ切除後の食事制限や前後の注意事項を解説しました。
胃ポリープ切除の場合、胃の摘出(全摘出または一部摘出)やほかの外科手術と比べると、食事や行動の制限が少ない特徴があります。
しかし、食事や行動の制限が少ないとはいえ、身体には負担がかかります。無理をして出血や穿孔が起こり、再手術や再入院は避けたいところです。
胃ポリープだからと軽く考えず、適切な行動を心がけましょう。
胃ポリープと関連する病気
「胃ポリープ」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
胃ポリープは放置して巨大化するとがん化する可能性もあります。胃過形成性ポリープはピロリ菌と関連して胃炎を起こしやすくなります。胃ポリープは自覚症状があまりないので、健康診断や人間ドックで発見されたら適切な対処をしましょう。
胃ポリープと関連する症状
「胃ポリープ」と関連する症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胃の不快感
- 食欲不振
- 吐血
- 下血
- 便の変色
- 貧血
胃ポリープは出血を伴うことがあります。便が黒色の場合、肛門から遠い消化管での出血が考えられます。出血が多いと貧血の症状も現れます。

