「腎臓がんは尿検査」で発見できる?症状や原因も解説!【医師監修】
腎臓がんは尿検査で発見できるのか気になる方がいらっしゃるのではないでしょうか?
腎臓がんは、尿検査で発見するのは難しいとされていますが、診断の手がかりになることがあります。
本記事では腎臓がんは尿検査で発見できる?について以下の点を中心にご紹介します。
- ・腎臓がんは尿検査で発見できる?
- ・腎臓がんを発見するための検査方法
- ・腎臓がんの治療方法
腎臓がんは尿検査で発見できる?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
腎臓がんとは
腎臓がんは、男性に多く見られる腎臓の細胞が悪性化する病気です。腎臓がんは、初期段階では症状が現れないため、ほかの病気の検査中に偶然発見されることが多いとされています。肺への転移が見られやすく、骨や肝臓、脳などへ転移する恐れもあります。腎臓がんの予防には明確な方法がないため、早期発見と定期的な健康診断が重要です。
腎臓がんの原因
腎臓がんの主な原因は、以下のとおりです。
・喫煙: タバコに含まれる有害物質が腎臓にダメージを与え、がんのリスクを高めます。
・肥満: 高い体重指数(BMI)はホルモンバランスの変化や炎症の増加を引き起こし、腎臓がんのリスクを増加させます。
・高血圧: 長期間にわたる高血圧は腎臓に負担をかけ、がんのリスクを高めます。
・遺伝的要因: von Hippel-Lindau病などの遺伝性疾患は腎臓がんと強く関連しており、特に明細胞がんの発症に影響を与えます。
・長期透析: 腎不全患者さんが長期間透析を受けることで腎臓がんのリスクが増加します。
これらの要因に加え、不健康な生活習慣も腎臓がんのリスクを高めるため、管理が重要です。
腎臓がんの症状
腎臓がんの症状は、進行度によって異なりますが、初期段階では自覚症状がほとんどないとされているため、健康診断やほかの病気のための検査中に偶然発見されることが多いとされています。しかし、進行するとさまざまな症状が現れます。
進行した腎臓がんでは、血尿が出たり、腹部にしこりが感じられたり、腰や背中に痛みが生じることもあります。さらに、足のむくみや食欲不振、吐き気や体重減少などの全身的な症状が伴うことがあります。
がんがほかの臓器に転移した場合、転移部位に応じた症状が現れます。例えば、肺への転移では胸痛や咳、血痰が見られ、骨への転移では骨痛や骨折が起こります。脳への転移がある場合には、頭痛や運動障害が発生することもあります。
これらの症状が現れた場合、腎臓がんの可能性を疑い、医療機関で適切な診断と治療を受けることが重要です。
腎臓がんは尿検査で発見できる?
腎臓がんの発見に尿検査が役立つことがありますが、尿検査だけで腎臓がんの診断は難しいとされています。尿検査では、赤血球や白血球が多く見られる場合、腎臓に何らかの異常がある可能性が示唆されます。しかし、腫瘍マーカーが存在しないため、腎臓がんを示すものではありません。そのため、腎臓がんを発見するには、ほかの検査が必要です。
腎臓がんを発見するための検査方法
腎臓がんを発見するためには、どのような検査が必要なのでしょうか?以下では、詳しく解説します。
超音波検査
超音波検査は最初に行われる検査で、超音波を用いて腎臓の画像をとらえます。腎臓内の腫瘍や異常な構造が見えるため、腎臓がんの初期発見に役立ちます。ただし、腫瘍が良性か悪性かの詳細な判定には限界があるため、疑わしい場合はさらに精密な画像診断が推奨されます。
CT検査
CT検査は、X線を使用して身体の詳細な断層画像を取得し、腎臓内の腫瘍の大きさ、形状、および周囲の組織への広がりを詳細に調べられます。造影剤を使用することで、腫瘍の血流の状態や、静脈内への腫瘍塞栓の有無、さらにはほかの臓器への転移の有無を検出できます。
MRI検査
腎臓がんを診断するために、MRI検査はCT検査と並んで重要な役割を担います。MRI検査は強力な磁場と電磁波を使用して身体の詳細な断層画像を作成し、腫瘍の性状や静脈内への腫瘍塞栓の進展を詳しく調べます。MRIは、CT検査で十分な情報が得られない場合や、脳などほかの部位への転移を疑う際に推奨されます。
血管造影
血管造影では、足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、腎臓の血管に直接造影剤を注入します。以前は腎臓の血流を詳しく調べるために使用されていましたが、現在ではCTやMRIの技術が進歩したため、使用頻度は減少しています。
経皮的針生検
経皮的針生検は、画像検査だけでは腫瘍の性質が明確でない場合に行われます。CTや超音波ガイド下で正確な位置を特定し、針を用いて腎臓の病変部から微小な組織サンプルを採取します。過去には出血リスクが指摘されていましたが、現代の技術進歩により、リスクは低減されています。
骨シンチグラフィ
骨シンチグラフィは、腎臓がんが骨に転移しているかどうかを調べるために使用されます。検査中には、骨の代謝活動に集積する特性を持つ放射性同位元素が含まれた薬剤を静脈内に注射します。これにより、特殊なカメラを使用して骨の異常な活動を画像化し、骨転移の有無を確認できます。
腎臓がんの治療方法
ここでは、腎臓がんの治療方法について詳しく解説します。
監視療法
監視療法は、手術が困難な高齢者やほかの重篤な健康問題を抱える患者さんに推奨されます。この治療法では、がんが小さく腎臓内に限定されている場合、積極的な治療を行わずに定期的な画像検査を通じてがんの進行状況を観察します。治療介入の必要性が高まった場合にのみ、さらに具体的な治療措置を検討します。
手術(外科治療)
手術は、腎臓がんが限定された範囲内にある場合に腎部分切除術、がんが広範囲に及ぶ場合に根治的腎摘除術が行われます。腎部分切除術は、正常な腎臓組織を保持しようとする方法で、腎機能の温存が目指されます。一方、根治的腎摘除術は、がんを除去するために腎臓をすべて取り除くことが必要です。どちらの手術も、腎臓がんの進行度や患者さんの健康状態に基づいて選択されます。
局所療法
腎臓がんの局所療法として、経皮的凍結療法(クライオアブレーション)があります。この方法は、特殊な針を使用して直接がん細胞にアルゴンガスを送り込み、組織を凍結させることでがん細胞を破壊します。主に小さな腫瘍や、手術が困難な高齢者、手術リスクが高い患者さんに適用されます。
放射線治療
放射線治療は主に手術や局所療法が困難な場合に選択されます。この治療法は、X線を腫瘍に照射してがん細胞を小さくするものです。腎がん自体にはあまり効果が期待できませんが、骨に転移したがんによる痛みの緩和や、脳に転移したがんの制御を目的として行われます。
薬物療法
腎臓がんの進行がんやほかの臓器への転移がある場合、手術が難しい場合には薬物療法が用いられます。薬物療法には、分子標的治療薬や免疫療法があります。分子標的治療薬は、がん細胞の分子を標的として攻撃する薬で、がんの成長や血管形成を抑制します。免疫療法は、患者さん自身の免疫システムを強化してがん細胞を攻撃するもので、免疫チェックポイント阻害薬が使用されます。
凍結療法
凍結療法は、がんが小さい場合に適用されます。この治療法では、身体の外から特殊な針を腫瘍に直接刺し、アルゴンガスを用いてがん細胞を凍結させて死滅させます。手術が難しい高齢者や、重篤な合併症を持つ患者さん、手術を希望しない患者さんに選ばれます。
腎臓がんについてよくある質問
ここまで腎臓がんの尿検査を紹介しました。ここでは腎臓がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんを尿検査のみで診断できますか?
中路 幸之助(医師)
腎臓がんは尿検査のみで診断できません。尿検査では赤血球や白血球の異常が見つかることがありますが、腎臓のほかの病気でも見られるため、腎臓がんの診断にはCT検査やMRI検査などの画像診断が必要です。
腎臓を手術で取っても大丈夫ですか?
中路 幸之助(医師)
腎臓は2つあるため、手術で片方の腎臓を取っても残った腎臓が正常に機能していれば、日常生活に大きな支障はありません。腎機能を維持するため、可能であれば腎部分切除術が推奨されます。ただし、高血圧や糖尿病などの持病がある場合、腎機能が低下するリスクがあるため、手術後も健康管理が重要です。
まとめ
ここまで腎臓がんと尿検査についてお伝えしてきました。腎臓がんは尿検査で発見できるかの要点をまとめると以下のとおりです。
- ・腎臓がんの発見に尿検査は役に立つが、尿検査だけで腎臓がんを診断することは難しい
- ・腎臓がんの発見には、超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影、経皮的針生検、骨シンチグラフィなどが利用されている
- ・腎臓がんの治療方法には、監視療法、手術、局所療法、放射線治療、薬物療法、凍結療法がある
腎臓がんと関連する病気
腎臓がんと関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
泌尿器科の病気
- 腎嚢胞
- 腎血管筋脂肪腫
- 腎盂尿管がん
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
腎臓がんと関連する症状
腎臓がんと関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。