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「胃がん・ステージ4の生存率」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/10/10
「胃がん・ステージ4の生存率」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

胃がんの治療では、進行度に応じて適切な方法が選択されます。病巣が胃粘膜上にあるステージ1から他臓器に転移したステージ4まで、さまざまな治療法が使われます。

ステージ4では治療法から根治手術が外れて、薬物治療が主体です。そして、症状はより強く現れてきて、緩和療法や対症療法も使われる厳しい段階です。

この記事ではステージ4に至る胃がんの状況・生存率・適用される治療方法を詳しく解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃がんとは?

胃がんは、胃の粘膜の細胞に何らかの原因で変化がおこり、がん細胞に変わった状態から始まります。
胃は袋状の臓器で、内面から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の5層構造です。
内面の粘膜に発生したがんは細胞分裂で増殖を始め、粘膜から粘膜下層へと外側へ浸み込むように広がり(浸潤=しんじゅん)ます。
外面の漿膜に達した胃がんは、さらに大腸・肝臓など隣接臓器に浸潤していきます。
一方で漿膜からこぼれ出たがん細胞が腹膜上に散らばることがあり、これが腹膜播種(はしゅ)とよばれる転移です。
また、周辺のリンパや血液に運ばれ、肺・骨盤・脳などに遠隔転移をおこします。

胃がんのステージ

胃がんは進行の度合いによって病期(ステージ)があり、それによって治療法が決められます。
ステージを決める要素は病巣の深さ・リンパ節の転移数・転移巣の有無の3点です。これらの組み合わせでステージが決まります。胃がんのステージは1~4までで、数字が大きい程進行を示します。

ステージ1

ステージ1はがんが固有筋層まで入って、転移リンパ節が2個までの状態です。
早期胃がんに分類される病期で、多くの場合自覚できる症状はありません。治療の方法は主に内視鏡か手術による切除が選択されます。
内視鏡では病巣にリング状のワイヤをかけ、高周波電流で焼き切る方法と、高周波ナイフで病巣を剥がしとる方法があります。

ステージ2

ステージ2では、がんが外面の漿膜を破って外に出て、転移したリンパ節が3~15個までの状態です。
ステージ2からは進行がんの段階に入り、食欲不振・体重減少・胃部の不快感や痛みなどの症状が出ることがあります。
治療は手術で、胃の切除とリンパ節をすべて切除するリンパ郭清を伴います。

ステージ3

ステージ3では、がんが近隣する肝臓や膵臓に浸潤した状態です。
症状が強くなり、強い腹痛・膨満感や食事が摂れないための体重減少が見られます。吐血・黒色便など緊急処置が必要な症状もこの時期に特徴的です。
治療は手術で、胃・リンパ節のすべてを取るほか、肝臓や膵臓の浸潤部分も取る合併切除になる場合もあります。

ステージ4

ステージ4では、肺や骨など遠隔臓器への転移が見られます。がん病巣の深さやリンパ節転移は考慮せず、遠隔臓器への転移があるだけで診断はステージ4です。
症状はステージ3同様の食欲不振・腹痛・吐血・貧血のほか、転移先の臓器の症状(肝臓なら黄疸など)が加わります。
治療は手術が除外され、薬物療法・緩和療法・対症療法での対応です。

胃がんステージ4の生存率

生存率は、がんの治療成績を評価する手段として使われるもので、5年生存率がよく使われます。
国立がんセンターが出した資料では、ステージ4の胃がんの5年生存率は6.3%でした。ステージごとの生存率を以下に示します。

  • ステージ1:92.8%
  • ステージ2:67.2%
  • ステージ3:41.3%
  • ステージ4:6.3%

ステージ間の格差は、3と4の間で35ポイントもの差がありました。ほかのステージ間の25ポイント前後と比べると大きな差があります。
また、ステージ4の1年生存率は40%で、60%の方が1年以内に亡くなります。ステージ4には遠隔転移があることで、治療が大変難しいことが示された数値です。

胃がんの治療法

転移が進んだステージ4の胃がんは腹腔鏡や開腹手術では対応が難しいため、その他の治療法で対処します。
さまざまな治療法があるので、順に解説していきましょう。

薬物療法

ステージ4の胃がんで行う薬物療法では、がん細胞の増殖を抑える細胞障害性抗がん薬・分子標的薬や、免疫細胞を利用する免疫チェックポイント阻害薬が使われます。
治療法は患者さんに合う薬を単独・または組み合わせて何とおりも用意しておき、薬を変えながら波状攻撃を続ける方法です。
薬物だけで完治は難しくても、進行を抑え症状の緩和が期待できます。

放射線療法

胃がんは放射線の影響を受けにくく、大腸や小腸への悪影響を避けるためもあって通常では放射線療法は行われません
しかし、限局性の再発がんや骨・脳の転移巣に対しては、放射線治療が限定的に行われることがあります。
また、ステージ4の進行胃がんでも、出血や痛みを止める緩和目的で照射する場合があります。

対症療法

ステージ4の胃がんでは、病巣の強い痛み・吐き気・出血などに加え、摂食障害・腹水・排尿障害などが現れます。こうした症状を個別に取り除く治療が対症療法です。
食物の通路を確保するステント設置や腹水を抜く治療で苦痛が軽減できれば、患者さんの生活の質(QOL)は大きく改善します。
根治はできなくても、穏やかな気持ちで生活するための治療です。

緩和手術

ステージ4の胃がんのような、根治手術ができない症例で行う手術で、病巣を取らず症状の緩和のみを求める手術です。
がんの出血や狭窄がある場合、がんの一部だけを切除したり、別に通路を設けたりするバイパス手術が行われます。
がんの治療ではなく症状を緩和するために行われ、別名姑息(こそく)手術ともよばれる手術です。前述の対症療法の一種でもあります。

術前補助化学療法

この治療は本来ステージ2や3の進行がんの手術前に行うもので、抗がん剤と手術の効果を相乗的に高める治療法です。
ところが手術不能なステージ4の患者さんでも、抗がん剤治療の効果でステージ3になる(ダウンステージ)場合があります。
切除手術ができれば根治が可能なので、症状によってはステージ4でも積極的に術前化学療法を行います。

胃切除

肝臓や腹膜に転移巣があるステージ4の胃がんで、疼痛・出血・狭窄などの症状が出ていない場合に限って胃の切除手術が検討されます。
減量手術ともよばれ、腫瘍の全体量を減らすことで症状の出現や死亡するまでの期間を長くする目的の手術です。この手術の妥当性に関しては、まだ結論は出ていません。

胃がんステージ4の生存率についてよくある質問

ここまで胃がんのステージ・治療法などを紹介しました。ここでは「胃がんステージ4の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんのステージ4は完治しますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

ステージ4の胃がんでも、化学療法でステージ3にダウンステージする場合があります。そうなれば根治手術ができるので、完治する可能性があります。医療現場でもダウンステージから手術に至るケースが増えているといわれるため、完治は十分期待できるでしょう。

胃がんのステージ4の治療後から仕事復帰までの期間はどのくらいですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

胃がんの手術で完治した場合、退院の目安は術後1ヵ月程度です。退院後1ヵ月程度で外来で診察があるので、それまでは自宅療養になります。その後は体調を見ながら職場と連絡を取って復帰の準備を進めてください。復帰後2~4週間は短時間の軽作業で、4週~3ヵ月程度で平常業務に戻るのが目安です。

編集部まとめ

胃がんのステージ4は遠隔臓器に転移がある状態です。病巣は胃の周辺臓器にも広がります。治療方法は薬物(化学療法)が主体で、緩和療法や対症療法などと限定的です。

症状は胃がんの症状が強くなるうえ、転移先の症状も加わります。苦しい状況ながら、5年生存率は約6%でゼロではありません。

そして、抗がん剤治療でステージが3になり、根治手術が可能になる事例が増えています。胃がんのステージ4は絶望的ではなく、職場復帰の可能性も残された状態です。

胃がんと関連する病気

「胃がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

ピロリ菌感染症は胃炎・胃潰瘍の原因になり、さらには胃がんの発症リスクを高めることが確認されています。また、胃潰瘍・慢性胃炎では胃痛・胸やけ・不快感・出血による黒色便など、胃がんに似た症状がおこります。

胃がんと関連する症状

「胃がん」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃の痛み
  • 胃の不快感
  • 違和感
  • 胸やけ
  • 食欲不振
  • 貧血
  • 黒色便

このような症状は、胃炎・胃潰瘍・ピロリ菌感染症でもおこるものです。胃炎・胃潰瘍がピロリ菌によるものであれば、胃がんのリスクも考えられます。何回も繰り返すようであれば、早めに受診・検査をおすすめします。

この記事の監修医師