「胃がんステージ3の余命」はご存知ですか?ステージ分類や治療法も解説!
胃は食べ物を消化して腸へと送り出す働きがあり、人間の生命活動に欠かせない器官です。この胃にできるがんの胃がんは、進行度によってステージⅠ〜ステージⅣに分類されます。
早期に発見できた場合は胃を摘出せずに治療できるケースがあるため、気になる症状がある場合には早めの検査と治療が大切です。
進行したがんの場合、外科手術だけで取り切ることが難しくなるケースも少なくないため注意しましょう。
この記事では、胃がんのステージⅢの余命や生存率、ステージの分類や治療法を解説します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
胃がんとは?
胃がんとは、胃の壁の内側にある粘膜の細胞ががん細胞となり増えることで発生する病気です。胃がんは初期段階での自覚症状がほとんどなく、進行しても症状が出ないケースが少なくありません。
代表的な症状には、次のものが挙げられます。
- 胃の痛みや不快感
- 吐き気
- 胸焼け
- 食欲不振
- 貧血
- 血便
- 食事がつかえる
- 体重減少
上記のような症状がある場合は、早めに内科や消化器内科で検査を受けるようにしましょう。
胃がんの進行は内側から外側に向かって滲み出るように広がっていく様子から、浸潤といわれています。しかしがん細胞はリンパ液や血液に乗って移動し、胃から離れた場所で転移するケースもあるため注意が必要です。
胃がんのステージⅢの余命・生存率は?
胃がんのステージⅢになったとき、残された時間や生存率が気になる方は少なくないことでしょう。この項目では、胃がんステージⅢの実測生存率やネット・サバイバルをご紹介します。
ステージⅢの実測生存率
2014〜2015年の5年生存率からわかる胃がんステージⅢの実測生存率は37.4%です。実測生存率とは死因には関係なく、すべての死因の死亡を計算に含めた生存率です。
今回の数値は胃がんのステージⅢの実測生存率ですが、胃がん以外の死因による死亡も含まれています。
ステージⅢのネット・サバイバル
ネット・サバイバルはがんのみが死因となる状況を仮定して、5年間の生存率を計算する方法です。世界でも広く採用されています。
胃がんのネット・サバイバルは、以下のようになっています。
- ステージⅠ:92.8%
- ステージⅡ:67.2%
- ステージⅢ:41.3%
- ステージⅣ:6.3%
死因ががんのみである状況を仮定した胃がんステージⅢの5年生存率は50%以下です。
ネット・サバイバルより幅をとった95%信頼区間という数値もあり、胃がんステージⅢの5年生存率は次のようになります。
- 1年:80.0%〜81.4%
- 2年:61.9%〜63.7%
- 3年:50.8%〜52.6%
- 4年:44.3%〜46.2%
- 5年:40.3%〜42.2%
95%信頼区間は端的に表すと、同じ試験を繰り返したときに結果の範囲の95%が収まる範囲のことを指します。頻度や割合を示すことの多い数値です。
胃がんのステージ分類
がんの深さが粘膜や粘膜下層に留まっているものを早期胃がん、粘膜下層を超えて広がっているものを進行胃がんといいます。
胃がんのステージ分類は、TNM分類の組み合わせで進行度によって4分類されます。
TNM分類とは、Tのガンの深さ・Nの胃の近くにあるリンパ節への転移の有無・Mの遠隔転移の有無です。一般的にはローマ数字を使用します。
1期
ステージはがんの深さが増したり、リンパ節転移が広がったりすると進んでいきます。
ステージⅠの胃がんは筋層に留まっており、リンパ節の転移がありません。周囲の組織やリンパ節への広がりが少ない状態のため、一般的に内視鏡を用いてがんを胃壁から剥がす内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を実施できます。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)では、胃を温存して治療できるのがメリットです。
また状態によってはステージⅠでも胃切除が選択される場合があります。
2期
2期は1期よりさらに進行した胃がんで、胃の不快感や食欲不振、痛みなどの症状が現れることがあります。
ステージⅡの胃がんは、筋層内にがんが留まっているもののリンパ節転移がある状態や、リンパ節転移がないものの漿膜下層までがんが進んでいる状態です。
初期段階の症状は軽度で、進行していくと強く現れるようになります。吐き気や胃液の逆流、嘔吐などの消化器系の症状も胃がんの症状のうちの1つです。
一般的にステージⅡの治療法は手術になることが少なくありません。胃の全摘手術や幽門側胃切除(出口側の2/3を切除する手術)が標準手術として行われ、周囲のリンパ節も切除します。
早期がんの場合は、入口側の切除を行う手術である噴門側胃切除や、中間部を一部切り取る幽門温存胃切除が選択されることもあります。
3期
胃がんの3期はがんが漿膜下層か胃の表面に出て、リンパ節転移がある状態です。遠隔転移はなく局所的な進行がんで、これ以上進むと手術ができない状態になることも少なくありません。
ステージⅢの治療では、胃とリンパ節の切除術が行われることが一般的です。
しかし一部の3期の胃がんでは、取りきれるかわからない場合があります。取りきれない可能性がある場合、手術前に抗がん剤治療を行って腫瘍を小さくさせてから手術する、術前化学療法が行われることがあります。
4期
胃がんの4期はがんがリンパ節から遠隔転移していたり、肝臓や肺、腹膜などに転移しているケースを指します。
4期のがんでは外科手術による完治が難しく、全身化学療法や放射線治療、緩和療法などが選択されます。
胃がんのステージⅢの治療法
胃がんの治療で用いられる治療法のなかには、術前化学療法や術後補助化学療法などがあります。
どのような手段でがんの除去やケアを行うのかを把握するため、胃がんのステージⅢと診断されたときに選択される治療法を解説します。
外科手術
外科手術は胃がんの標準的な治療法です。
胃がんの外科手術では、転移の可能性があるリンパ節も同時に切除します。胃の全体や一部を切除し、周囲のリンパ節も切除する方法を全胃切除といいます。
周囲のリンパ節を摘出するリンパ節郭清は、がんがリンパ節に広がっているときに選択される手術法です。がんの拡大の抑制や再発リスクの減少が期待できます。
術前化学療法
術前化学療法では、抗がん剤などの化学薬剤を用いた治療を手術前に行います。手術前にがんを縮小させて胃を温存できるようにしたり、切除できない程進行したがんを手術できるようにしたりすることが可能です。
術前化学療法は、ステージⅢの胃がんなどで外科手術でがんを取りきれない可能性がある場合などに行われます。
術後補助化学療法
術後補助化学療法は、手術後のがんの再発を予防するために実施します。
手術でがんを完全に切除した後でも、目に見えない小さながん細胞が残っていて再発する可能性があります。術後補助化学療法は、再発の可能性が高いステージⅢの患者さんに推奨されることが一般的です。
術後補助化学療法でS-1という経口抗がん剤を1年間服用すると、生存率が10%程度向上するといわれています。
緩和ケア・支持療法
末期がんや再発がんの場合、痛みや副作用を緩和するケアや支持療法が実施されます。
緩和ケアを実施するとストレス軽減につながり、食欲や免疫力の向上が期待できます。化学療法や放射線治療と併用するケースも少なくありません。
支持療法は、がんに伴う症状や治療の副作用を予防するための対策・症状を軽減するための治療です。抗がん剤の副作用に対しても、投薬で症状の改善が期待できます。
胃がんステージⅢの余命についてよくある質問
ここまで胃がんのステージⅢの余命や治療法などを紹介しました。ここでは「胃がんのステージⅢの余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がんの罹患数はほかのがんと比べて多いですか?
中路 幸之助(医師)
胃がんの罹患数は、ほかのがんと比べて多い方だといえるでしょう。日本人の中高年者は特にピロリ菌の感染率が高く、胃がんの頻度が高い傾向があります。2019年のがん罹患数では、胃がんは男性だと3位、女性だと4位と上位に入っています。気になる症状などがある場合は、早めに検査を受けるようにしましょう。早期発見と治療が大切です。
胃がんの死亡数が多い年齢層を教えてください。
中路 幸之助(医師)
胃がんの死亡数が多い年齢層は、70代以上です。胃がんはそもそも40代を超えた頃から多くなるがんで、若い人の罹患率は低い傾向があります。60代頃から死亡率が上がりはじめ、70代、80代と上になる程高くなります。
編集部まとめ
この記事では、胃がんのステージⅢの治療法やステージ、よくある質問などを解説しました。胃がんは40代以上の罹患率が高く、がんの死亡数でも上位に入る病気です。
ステージⅣまで進むと外科手術での治療が難しくなるため、早期発見と治療が重要です。ステージⅠの段階では、内視鏡を使用して胃を摘出することなく治療できるケースもあります。
気になる症状などがある場合は、早めに内科や消化器内科のある医療機関を受診するようにしましょう。
胃がんと関連する病気
「胃がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の病気は胃の痛みや不快感、吐き気など胃がんの症状に似た症状が現れます。いずれも直鉄的に命に関わる病気ではありません。胃ポリープががん化するのでは?と疑問に思う方もいるかもしれませんが、確率は1〜2%程度といわれています。
胃がんと関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃がんになると、胃のあたりに不快感や痛みが出るような症状が出ます。初期段階で自覚症状が出ることはほとんどないといわれているため、上記のような症状が現れた際は早めに医療機関を受診しましょう。