目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「スキルス胃がん・ステージ4」の余命はご存知ですか?症状についても解説!

「スキルス胃がん・ステージ4」の余命はご存知ですか?症状についても解説!

 公開日:2024/10/02
「スキルス胃がん・ステージ4」の余命はご存知ですか?症状についても解説!

スキルス胃がんは早期発見が難しいうえ、進行の早いがんです。ステージ4まで進行すると、完治が難しいとされています。ステージ4と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
また、スキルス胃がんと胃がんの違いは何なのでしょうか?
本記事ではスキルス胃がんがステージ4まで進行した場合について、以下の点を中心にご紹介します。

  • ・スキルス胃がんと胃がんの違い
  • ・スキルス胃がんがステージ4と診断されたとき
  • ・スキルス胃がんの治療方法

スキルス胃がんがステージ4まで進行した場合について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃がんとスキルス胃がんの違い

スキルス胃がんは、ギリシャ語のskirrhos(硬い腫瘍)という言葉に由来します。胃の壁が硬く、厚くなるタイプのがんです。
スキルス胃がんは胃がんの約10%を占めます。胃壁の内部に沿って広がるため、早期発見が困難といわれています。内視鏡検査でも見つけにくく、発見時に既に進行しているケースが多いようです。
一方、胃がんは胃の粘膜表面に発生し、内視鏡検査で早期に発見しやすいとされています。

また、スキルス胃がんは進行が速く、腹膜やリンパ節への転移が頻繁に見られるため、治癒切除が困難なケースが多いことも特徴です。

ステージ4(末期)のスキルス胃がんは完治が難しい理由

スキルス胃がんがステージ4(末期)まで進行している場合、完治は難しいとされています。その理由を以下で解説します。

腹膜播種(ふくまくはしゅ)という特徴

腹膜播種とは、細胞が腹腔内にばら撒かれるように広がる状態を指します。スキルス胃がんは腹膜播種が起こりやすく、胃の粘膜には腫瘍が広がらない一方で胃壁の外側に進行します。

腹膜播種が生じたスキルス胃がんは、手術での除去が難しいとされています。腫瘍が胃壁から露出し、腹腔内にがん細胞が飛び火してしまうためです。
病状の進行を抑えるためにさまざまな治療法が駆使されていますが、確実な治療法はまだ確立されていません。

リンパ節転移個数が多い

スキルス胃がんは腹膜播種が起こるだけでなく、リンパ節に転移する傾向にあります。
リンパ節転移個数が多い場合、手術後の再発率が高くなるとされています。そのため、術後の病理検査でリンパ節転移個数が多いと判明した場合、再発予防のために抗がん剤投与が行われます。これを術後補助化学療法といいます。

しかし、手術前の抗がん剤治療は効果が限定的であり、治療成績の改善は困難とされています。

スキルス胃がんの症状

発見しにくく、完治の可能性が低いスキルス胃がんですが、自覚できる症状はあるのでしょうか?以下で解説します。

初期症状〜前兆はない〜

スキルス胃がんの初期症状は乏しく、気付きにくいのが特徴です。症状が出ても、食欲低下、胃のムカつき、下痢、体重減少などで、日常の体調不良や胃炎との区別が難しいです。
そのため、初期段階では胃がんであることに気付けない傾向にあります。
少し調子が悪いと感じる程度の症状は、見過ごされがちです。
体調に異変を感じた場合は早期に医療機関を受診し、適切な診断と対応を受けることが重要です。

進行したら

スキルス胃がんの病状が進行すると、以下のような症状が現れます。

・吐き気
・嘔吐
・吐血
・下血
・黒色の便
・タール便
・腹水

これらの症状が見られたら、すでに腹膜播種や多臓器に転移している可能性があり、根治的治療が難しくなります。早急に医療機関を受診し、治療を開始することが重要です。
スキルス胃がんを早期に発見するためにも、症状がなくても定期的な検診を受けましょう。
 

スキルス胃がんステージ4の余命

スキルス胃がんのステージ4では、5年生存率は約10%未満とされています。スキルス胃がんは進行が速く、診断時には腹膜播種や他の臓器への転移が見られ、治療が難しい状態です。

ステージ4のスキルス胃がんの患者さんの余命は、数ヵ月〜1年程度とされています。根治的治療が困難なため、主に抗がん剤治療や緩和ケアが中心となります。

スキルス胃がんの治療方法

ここまでスキルス胃がんの特徴などを解説しました。
以下ではスキルス胃がんの主な治療方法を紹介します。

手術療法

スキルス胃がんの手術療法は、がんが胃に留まっている場合に適用されます。方法には腹腔鏡手術、開腹手術、ロボット支援下腹腔鏡手術などがあります。

  • ・腹腔鏡手術:腹部に小さな穴を開けて内視鏡を挿入し、腔内をモニターに映し出しながら手術を行います。切除した臓器は穴から摘出します。身体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)の手術のため、回復が早いのが特徴です。
  • ・開腹手術:腹壁を切開して行う手術です。直接患部を見れるため、精度が高いとされています。しかし、傷口が大きくなりやすく、回復に時間がかかります。
  • ・ロボット支援下腹腔鏡下手術:内視鏡手術に分類される低侵襲手術です。ロボットによる繊細な手術が期待できるメリットがあり、患者さんの負担が少ないとされています。

化学療法

スキルス胃がんの治療には、点滴や飲み薬で抗がん剤を投与し、がん細胞をなるべく縮小させる方法があります。
抗がん剤の副作用として、アレルギー反応や吐き気、手足のしびれ、口内炎、肝機能障害や腎障害、心機能障害などが起こる可能性があります。

スキルス胃がんを検査する際、お腹の中を生理食塩水で洗い、回収した液を顕微鏡で調べる腹腔洗浄細胞診が行われます。
腹膜播種がなく、腹腔洗浄細胞診陰性の場合は、まず胃を切除し、術後に化学療法が行われます。陽性の場合は、胃を切除して術後に化学療法を行う方法、初めに化学療法を行い、その後に胃を切除する方法、化学療法のみを行うという3つの方法があります
既に腹膜播種がある場合は、胃を切除せずに、化学療法が行われます。

放射線療法

スキルス胃がんの治療には放射線療法が補助的に用いられます。
放射線療法は、術前や術後に放射線を照射し、切除率を上げたり残存病変を縮小させたりする目的で行われます。
また、進行・再発した場合に、がんの増大による食事困難などの症状を緩和するためにも使用されます。
胃がんでは放射線療法の効果は限定的であり、胃周囲の臓器が放射線に弱いため、主に補助治療として用いられます。

スキルス胃がんをステージ4まで放置しないために

スキルス胃がんは初期症状が乏しく進行が速いため、早期発見が難しいとされるがんです。そのため、胃内視鏡検査や腹部CT検査など、複数の検査を組み合わせることが重要です。

胃内視鏡検査では胃壁の硬化や粘膜のひだの肥厚、膨らみの悪さなどを確認できる場合があります。
ほかにも、ピロリ菌の除菌や定期的な検査が予防につながります。

胃がんは50歳以降に罹患しやすいとされていますが、なかでもスキルス胃がんは20~40代位の若い世代でも罹りやすいとされるため、注意が必要です。

スキルス胃がんについてよくある質問

ここまで、スキルス胃がんのステージ4にまつわる情報について解説してきました。
以下ではスキルス胃がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

スキルス胃がんの好発年齢を教えてください

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

胃がんが50代頃から増加の傾向にあり、男性や高齢者が発症しやすい一方、スキルス胃がんは20代などの若年層でも発症する傾向があります。なかでも女性のスキルス胃がんの罹患率は、胃がん全体の約60~70%を占めます。
遺伝子変異が関連している可能性はありますが、原因は不明です。

いずれにせよスキルス胃がんの早期発見と治療が重要であり、若年層も含めて定期的な胃内視鏡検査が推奨されます。

スキルス胃がんは胃がんの中でもどれくらいの確率で発生しますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

国立がん研究センターなどによると、スキルス胃がんでは胃がん全体の約5〜10%を占めます。進行胃がん全体の中での割合は約15%にも上ります。
手術が可能な状態で発見された場合でも、5年生存率は約10〜20%と低く、胃がん全体の平均生存率を下回ります。
スキルス胃がんは治療法の確立されておらず、がん研究の重要課題とされています。
これらの事実から、スキルス胃がんは特に注意が必要な「難治がん」とされ、より効果的な治療方法の開発が急がれています。

まとめ

ここまで、スキルス胃がんがステージ4まで進行した場合についてお伝えしてきました。
スキルス胃がんがステージ4まで進行した場合の要点をまとめると以下のとおりです。

⚫︎まとめ

  • ・胃がんは胃の粘膜表面にがん細胞が発生するが、スキルス胃がんは胃の粘膜下にがん細胞が広がるため、発見しにくい。進行が早い特徴もある
  • ・スキルス胃がんでは、腹膜播種だけでなくリンパ節に転移している傾向があるため、完治しにくいとされている。スキルス胃がんステージ4の5年生存率は約10%未満とされている
  • ・スキルス胃がんの治療方法には、手術療法、放射線療法、化学療法などがある

スキルス胃がんと関連する病気

スキルス胃がんと関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気


具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

スキルス胃がんと関連する症状

スキルス胃がんと関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃痛
  • 腹部の不快感
  • 食欲不振
  • 体重の減少
  • 黒色の便・タール便
  • 下血による貧血

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師