「スキルス胃がんになる確率が高い人」はご存知ですか?症状についても解説!
胃がんのなかでも進行速度も速いとされるスキルス胃がんは、発見されたときにはかなり進行しているということが少なくありません。
また、転移があるような進行した胃がんの治療は難渋することもあります。
そのため、胃がん自体の発生リスクを抑え、スキルス胃がんにならないように普段から食生活に気を配っておく必要があるでしょう。
今回は、そのようなスキルス胃がんや、症状や早期発見のポイントについて解説していきます。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
スキルス胃がんとは
スキルス胃がんとは、胃がんのなかでも隆起や陥凹がなく、胃の壁を硬く厚くさせながら大きくなっていくタイプの胃がんのことをいいます。そのようなスキルス胃がんの特徴は以下の二点です。
- 早期の段階では内視鏡でも発見されにくい
- 進行スピードが速い
通常の胃がんでは内視鏡検査で胃の内部を観察したとき、胃壁の粘膜の表面がイボのように盛り上がり、潰瘍を形成するので肉眼で視認できます。
そのため、転移する前に発見することができるでしょう。
しかしスキルス胃がんの場合、胃壁の内部でがん細胞が広がるため、通常の胃がんでみられる粘膜表面の所見が乏しいです。このような所見があるため、発見が遅れてしまい気付いたときにはすでに転移している可能性もあるでしょう。また、スキルス胃がんは発見しにくいだけではありません。
スキルス胃がんは、胃がんの種類のなかでも未分化がんという種類の胃がんで、進行速度が速い部類のがん種です。早期発見が難しいうえに、進行速度も速いので治療が難渋するということもあるでしょう。
スキルス胃がんになる確率が高い人は?
スキルス胃がんの発生リスク因子となるものについてはあまりわかっていません。胃がんの発生リスク自体を抑えることで、スキルス胃がんのリスクを下げることはできるでしょう。胃がんになる確率が高い人は以下の項目にあてはまる方です。
- ピロリ菌に感染している
- 食生活が乱れている
- 喫煙・飲酒している
生活背景にある食事・喫煙・飲酒については個人の努力で見直すこともできるでしょう。
発見しづらく進行が速いスキルス胃がんに対して、発生要因となるものを取り除くことも予防手段の一つです。リスク要因について理解し、発生リスクを下げましょう。
ピロリ菌に感染している
ピロリ菌が感染して慢性胃炎となり、胃酸分泌が減ります。慢性胃炎が起こることで、胃の細胞が胃酸によって傷つけられがん化してしまうリスクが高いです。
ある研究ではピロリを原因とする慢性胃炎になっている方は、ピロリ菌をもっていない方に比べて胃がんのリスクが10倍も高いという報告があります。そのため、ピロリ菌の感染が判明したときはただちに除菌療法を行い、治療することがおすすめです。
食生活が乱れている
食生活のなかで特に胃がんの発生に関わっているのは以下です。
- 塩分摂取過多
- 野菜の摂取不足
動物実験などから胃のなかで食塩の濃度が高まると、胃の粘膜にダメージを与えることが報告されています。これにより、胃炎が発生し胃がんが発生しやすくなるでしょう。
そのため、塩分含有量が多いとされる加工食品を食べる頻度が増えると、胃炎の頻度も増えて胃がんのリスクも高くなります。緑黄色野菜の摂取不足によって胃がんの発生リスクが高くなることがわかっています。これらの報告から、塩分摂取を抑えながら野菜の摂取を増やし、胃がん自体の発生リスクを抑えましょう。
喫煙・飲酒している
喫煙している方は喫煙していない方に比べて、2倍胃がんになりやすいです。
しかし、未分化型のスキルス胃がんの発生に関しては、喫煙と無関係であることが報告されています。次に飲酒ですが、飲酒は2倍から3倍噴門部の胃がんの発生リスクが増えるといわれています。
遺伝的リスクがある
スキルス胃がんの発生には、がん抑制遺伝子であるSTK11/LKB1の変異が関わっていることが報告されています。
そのため、家族内にスキルス胃がんの既往歴がある場合は、STK11/LKB1の変異が家族内で遺伝している可能性があります。家族にスキルス胃がんの既往歴がある方は注意が必要です。
スキルス胃がんの症状
スキルス胃がんの症状についてですが、通常の胃がんとあまり変わりません。スキルス胃がん・胃がんどちらにしても、初期段階では症状に乏しいとされます。症状が出現したとしても胃の不快感や胸やけなどですが、日常でも起こりうる症状なので受診せずに経過をみる場合もあるでしょう。
しかし、なかには明らかに異常な所見もあります。今回は、そのようなスキルス胃がんの軽い症状から重い症状まで解説します。
食欲低下
食欲低下は通常の胃がんでも起こる症状です。症状が継続するようなら受診してみましょう。
胃の痛み・不快感
胃の痛みや不快感は、胃がんだけでなく胃潰瘍などでも起こります。痛みを伴うようであれば、どちらにしろ早めに受診し医師に診てもらった方がよいでしょう。
胸やけ
胸やけは前日に飲酒をした日ではよく起こるのではないでしょうか。しかし、飲酒のような背景がないにも関わらず、継続的に胸やけがするというのであれば要注意です。早急に受診し医師に相談しましょう。
吐き気・嘔吐
吐き気や嘔吐もスキルス胃がんに関わらず、胃がん全般的に起こります。胃潰瘍や胃炎でも起こるので、何回も嘔吐してしまうなどあれば早急に受診しましょう。
体重減少
胃がんになると食欲不振の症状を伴い、これにより食事摂取ができない場合は体重も減少してくるでしょう。食欲不振が何日も続いた場合には要注意です。
下痢・タール便(黒い便)
下痢やタール便は胃がんの種類問わず起こります。下痢が出現した程度では受診しないでしょうが、タール便が出現した場合は早急に受診しましょう。
タール便は胃がんの発生部位から出血している可能性があるので、便が黒いと感じた場合は早急に受診しましょう。
腹水
胃がんが腹膜転移したときに腹水が溜まるようになります。スキルス胃がんの方は胃がんのなかでも進行速度が速いので、通常の胃がんよりも早めに腹水の症状が出現する可能性があります。
がんが腹膜に転移しているということは、病状がかなり進行しているので早急に受診しましょう。
スキルス胃がんの早期発見のポイント
症状が乏しいとされるスキルス胃がんの場合、症状が出現してから受診していては手遅れです。
そのため、人間ドッグなどで定期的に診てもらうことが必要ですが、その際は内視鏡だけでなく胃透視で観察してもらうことが有用でしょう。
スキルス胃がんになる確率についてよくある質問
ここまでスキルス胃がんの症状や治療方法などを紹介しました。ここでは、スキルス胃がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
スキルス胃がんの治療法について教えてください。
中路 幸之助(医師)
スキルス胃がんに対する治療法は確定しておらず、ほかの胃がんの治療と同じように行われるでしょう。そして、胃がんの治療では腹膜播種があるかどうかで治療方法が変わります。腹膜播種がある場合は化学療法の選択肢のみですが、腹膜播種がなかった場合は手術など化学療法以外の選択肢も検討されるでしょう。
スキルス胃がんが完治する確率はどのくらいですか?
中路 幸之助(医師)
スキルス胃がんが完治する確率はよくわかっていません。しかし腹膜転移がなく、手術を行うことができたスキルス胃がん患者さんでさえ、5年生存率(5年経過後に生存している患者さんの比率)は10%程度です。このデータから、スキルス胃がんが完治する確率は低いといえるでしょう。
編集部まとめ
今回は、スキルス胃がんのリスク因子・症状などについて解説しました。
スキルス胃がんは胃がんと症状が似ていますが、進行速度は胃がんに比べて速く、内視鏡検査でも発見しづらいという特徴をもっています。
がんの治療において早期発見・早期治療が理想ですが、スキルス胃がんの特徴上この理想を達成するのは難しいといえるでしょう。
スキルス胃がんの発生を抑える目的で、まずは胃がんの発生リスクとなっているものを遠ざけることから始めてみましょう。
スキルス胃がんと関連する病気
「スキルス胃がん」に関連する病気は2つ程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- ピロリ菌感染
- 胃潰瘍
ピロリ菌感染は胃酸の分泌を促進し、慢性胃炎の環境をつくってしまいます。食欲不振や胸やけなどスキルス胃がんと症状が似ています。ピロリ菌感染は胃がん自体のリスク因子なので、慢性的な胃炎がある場合は早急に受診しましょう。
次に胃潰瘍ですが、胃潰瘍ではタール便や胃痛などの症状が出現し、胃がんと症状が似ています。タール便が出現したときは、明らかに異常なので早急に受診しましょう。
スキルス胃がんと関連する症状
「スキルス胃がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 食欲低下
- 胃痛
- 胸やけ
- 吐き気・嘔吐
- 体重減少
- タール便
- 腹水
- 腹部のしこり
このようにスキルス胃がんの症状は多くありますが、日常的に起こるものもあり判別が難しいです。特徴的な症状として腹水がありますが、この症状が出る頃にはがんは腹膜に転移し腹膜播種を起こしているということです。そうなる前に、胸やけなど軽い症状のうちから受診し医師に相談してみましょう。