「咽頭がんにかかりやすい年齢」はご存知ですか?症状についても解説!【医師監修】
咽頭がんは、咽頭(のど)に発生する悪性の腫瘍です。その発生部位により、上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに分類されています。咽頭がんはどの年齢で発症しやすく、また、男性と女性のどちらがなりやすいのでしょうか。
本記事では、咽頭がんにかかりやすい年齢とは?について以下の点を中心にご紹介します。
- ・咽頭がんについて
- ・咽頭がんにかかりやすい年齢と男女比とは
- ・咽頭がんの治療法とは
咽頭がんにかかりやすい年齢とは?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
目次 -INDEX-
咽頭がんとは?
咽頭がんは、鼻の奥から食道へとつながる咽頭部に発生するがんを指します。発生する位置によって、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんの三つに分類され、各タイプによって症状や治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
上咽頭がんは鼻の奥に生じ、中咽頭がんは口腔の奥部に、下咽頭がんは食道の入口近くに位置します。病理組織学的にみると、扁平上皮がんという種類のがんである傾向にあります。
咽頭がんにかかりやすい年齢と男女比
咽頭がんは、どの年齢で発症しやすいのでしょうか。男女比も併せて、以下に分類別に解説します。
上咽頭がん
上咽頭がんは、日本では年間約800人が診断されている稀ながんで、好発年齢は、60代です。しかし、若年層で発症する場合もありますので、年齢に関わらず注意が必要です。男女比に関しては、女性よりも男性がかかりやすい傾向にあります。
中咽頭がん
中咽頭がんは年間約2,300人に診断されるがんで、特に男性に多く見られます。主な発症年齢層は50代から60代で、男女比は、男性が女性の約4.4倍にも上ります。
下咽頭がん
下咽頭がんは年間約2,000人が新たに診断され、主に60歳から80歳に見られるがんです。男性は女性より約7.8倍もの高い発症率を示しています。
下咽頭がんの早期発見は難しく、診断するときには進行している場合があるため、5年生存率は30%〜40%程度です。60歳以降の男性で喫煙や飲酒の習慣がある人は、注意が必要です。
咽頭がんの症状
咽頭がんは、初期のうちは自覚症状が現れにくい特徴を持ちます。また、初期症状の鼻づまりやのどの違和感、声がかすれるといった症状が現れた場合にも、風邪と間違って放置してしまうケースがあります。
症状が進行してくると、発生部位によって異なった症状を呈することがありますので、以下に分類別に咽頭がんの症状を解説します。
上咽頭がん
上咽頭がんの症状が進行すると、首のリンパ節にがんが転移することで頸部の腫れが見られるようになります。
また、鼻に関連した症状としては、鼻づまり、鼻血、または鼻水に血が混じることがあります。耳にも影響を及ぼすことがあり、耳がつまった感じや耳鳴り、聴力の低下が起こることがあります。
さらに、がんが進行すると、視覚障害や複視(物が二重に見える)、顔面の感覚に異常を感じるなど、より重大な症状が現れることもあります。これらの症状が現れた場合は、早期に医師の診断を受けることが重要です。
中咽頭がん
中咽頭がんが進行すると、飲み込む際の違和感やのどの痛みが現れます。これらの症状は、食事や会話の際に顕著になります。また、首のリンパ節にしこりができたり、扁桃腺の片側の腫れや血痰が出たりすることもあります。
症状が悪化すると、声のかすれ、喋りにくさ、出血、さらには呼吸困難を引き起こすこともあります。中咽頭がんは進行が早いため、早期発見が治療成功の鍵となります。
下咽頭がん
下咽頭がんが進行すると、飲み込む際の異物感やのどのしみる感じ、そして安静にしているときでも感じるのどの痛みなどの症状が出現します。また、首のリンパ節の腫れやしこり、食事中の痛み、血が混じった痰が出るといった症状を伴うことも少なくありません。
声のかすれも下咽頭がんの症状であり、がんが声帯や喉頭に影響を与え、反回神経が障害を受けるために起こります。さらに、下咽頭の神経が耳の神経と繋がっているため、耳の周りに痛みを感じることもあります。
これらの症状が現れた場合、がんは既に進行している可能性が高いため、迅速な医療の介入が求められます。
咽頭がんの検査方法
咽頭がんの検査手順について説明します。
まず、医師が患者さんの首周りを触ることでリンパ節の異常を確認する触診が行われます。次に、口や鼻から特殊なカメラを備えた内視鏡を挿入し、咽頭内部の様子を詳しく観察します。異常が見つかった場合、その部位から細胞を採取して顕微鏡で調べる生検を実施し、正確な診断を目指します。
また、中咽頭がんの疑いがある場合には、採取した細胞からHPV感染の有無も調べることがあります。さらに、がんの進行具合やリンパ節への転移、ほかの臓器への影響を確認するため、超音波検査、CT、MRI、PET-CTなどの画像検査を行うこともあります。
これらの結果を基にして、がんのステージを定め、治療方針を決定します。ステージはⅠからⅣまであり、数が大きくなるほど進行がんとされます。初期のステージでは治療の成功率が高くなるため、早期発見が重要です。
咽頭がんの治療法
咽頭がんの治療は、身体の状態や年齢、生活環境、治療への希望を考慮し、部位や進行状況によって患者さんに適した治療法が選択されます。
また、がん治療の際は、発声や嚥下機能を維持するためのバランスが重要だといいます。以下に詳しく解説します。
上咽頭がん
上咽頭がんは、手術が難しく、治療の主軸は放射線治療になります。
がんの進行具合に応じて、ステージⅡ以降では放射線と抗がん剤を組み合わせた化学放射線療法が選ばれる傾向にあります。
放射線治療は、上咽頭がん特有の未分化細胞に対して高い効果が期待されており、初期段階から進行段階のがんに対しても広く用いられます。放射線治療は薬物療法と併用することで、治療効果が向上するとされています。
中咽頭がん
早期の中咽頭がんでは、放射線治療や手術により、根治を目指します。一方、進行がんに対しては化学放射線療法が主に推奨されます。この治療法は、放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせることで、がん細胞を破壊します。
また、治療法は腫瘍の位置や大きさ、リンパ節への転移の有無によっても異なり、それぞれの状況に適した方法が検討されます。
下咽頭がん
初期の段階では、放射線治療だけで十分な効果が期待できる場合がありますが、がんが広範囲に及んでいる場合には、より積極的な治療法が必要となります。
進行がんでは、下咽頭だけでなく喉頭にもがんが広がっていることが少なくないため、喉頭を含む広範囲な切除が必要になることがあります。このような大規模な手術は、声の機能に影響を与えるケースが多く、患者さんの生活の質を考慮し、可能な限り喉頭を保存する化学放射線療法が選ばれることもあります。
咽頭がんについてよくある質問
ここまで咽頭がんにかかりやすい年齢などを紹介しました。ここでは「咽頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
咽頭がんの原因を教えてください
渡邊 雄介(医師)
咽頭がんの主な原因には、タバコ、アルコール、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)があります。
特に、上咽頭がんはEBVの感染と関連があり、中咽頭がんは喫煙や飲酒、HPV(性行為による感染)がリスク要因となっています。下咽頭がんも喫煙と飲酒が主な原因であり、飲酒後に顔が赤くなる体質の人は高いリスクを持つとされています。
咽頭がんを予防する方法はありますか?
渡邊 雄介(医師)
咽頭がんの予防には、喫煙を避け、アルコールの摂取を控えめにしましょう。また、バランスの取れた食事と定期的な身体活動が推奨されます。上咽頭がんについては、HPVワクチンの接種が予防策として考えられています。
まとめ
ここまで、咽頭がんにかかりやすい年齢についてお伝えしてきました。咽頭がんにかかりやすい年齢についての要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- ・咽頭がんとは、鼻の奥から食道へとつながる咽頭部に発生するがんを指し、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんの三つに分類される
- ・咽頭がんは60代以降の男性がかかりやすい疾患であるが、若年層で発症することもある
- ・咽頭がんの治療法は、外科手術・放射線・化学療法などがあり、患者さんの状態に併せて選択される
咽頭がんと関連する病気
咽頭がんと関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
咽頭がんと関連する症状
咽頭がんと関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 咽頭部痛
- 頸部リンパ節腫脹
- 嚥下障害
- 構音障害
- 出血
- 聴力障害
- 複視
- 呼吸困難
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。
参考文献