「乳がんの告知から手術までの期間」はどれくらい?入院前にやるべきことも解説!
乳がんは日本人女性において発症率第1位のがんであり、私たちにとって身近ながんです。
乳がんと診断された場合、その後の準備はどのようにすればいいのでしょうか。
ほかにも告知があってから手術までの期間は短い方がいいのか、乳がんの治療方法や入院までにやるべきことは何なのかを、詳しくまとめました。
乳がんと診断されて不安を抱えている人は、ぜひご覧になってみてください。
監修医師:
上 昌広(医師)
目次 -INDEX-
乳がんとは
乳がんとは、乳房にある乳腺に発生する悪性の腫瘍のことです。乳腺は乳管と小葉で構成されており、乳がんの約90%は乳管から発生しています。残りの約5〜10%は小葉から発生しており、このほか症例は少ないですが粘液がんや管状がん・腺様嚢胞がんという特殊ながんも見られます。
乳がんの発生部位のうち約半数は、乳房上部の脇周辺であり、腋の下から発生することもあるようです。そして乳がんには、非浸潤がんと浸潤がんがあります。
- 非浸潤がん
- 浸潤がん
非浸潤がんはがん細胞が乳がんや小葉のなかに留まっている状態であり、早期のがんがこれにあたります。この状況でがんが見つかればほとんどの場合は治すことが可能といわれています。
ですが、非浸潤がんの状態は自覚症状に乏しく、自分から気付いて見つけることは難しいとされているようです。浸潤がんはがん細胞が増殖し、乳管や小葉の外にある血管やリンパ管などに広がった状況を指します。この状況になれば、乳房のしこりなど自覚症状が感じられることが少なくありません。
日本人女性の乳がんを発症する確率は、1994年には乳がんが胃がんを抜いて1位となり、日本人女性の16人に1人が生涯のうちに乳がんに罹患する程身近な病気になりつつあります。主に40歳以上の女性がかかりやすいとされており、厚生労働省は2年に1回のマンモグラフィ検診を受診するよう求めています。
乳がんはほかのがんと比べても進行が遅く、約1cmの大きさになるのに10年程度かかるとされているようです。この段階で治療を受ければ約9割は治るとされており、早期発見・早期治療が求められています。
乳がんの告知から手術までの期間を決定する要素
乳がんと診断された場合、早く治療を開始したいと考える方は少なくありません。乳がん罹患者数は年々増加傾向にあり、早めに治したいのは誰もが思うところでしょう。
ただし、診断されてから手術を開始するまでの時間は、乳がんの進行度合いなどによって変わることがあるようです。詳しく見ていきましょう。
乳がんの進行度と性質
乳がんのしこりのサイズやリンパ節への転移状況・ほかの臓器への転移の有無によって手術開始までの期間が変わることがあります。病巣の数や位置によっても変わってくるため、慎重にこれらを確認していきます。
治療方針
治療方針により手術までの期間が異なることがあります。乳がんの進行度合いによって、薬物療法を優先させる場合もあります。
検査期間
針生検査や病理・CT・MRIなどの検査で2週間程度かかり、その後に手術日が決まることもあります。また、抗がん剤治療を先に行う場合もあるため、その際は手術はさらに伸びることとなります。
手術の待ち期間
手術の待ち時間は、医療機関によって異なります。予約が集中している医療機関程、待ち時間が長くなる傾向にあります。
乳がんの治療法
乳がんの治療法として代表的なものは、次に挙げる4つとなります。がんの進行度や性質・患者さん側の希望によってどの治療法を取り入れるかを決定します。手術のための入院期間は6〜10日前後とされているようです。
手術
乳がんの治療では、遠隔転移していることが明らかな場合を除き、手術によってがん組織を切除します。以下の2種類の手術があります。
- 乳房部分切除術(乳房温存手術)
- 乳房全切除術
乳房部分切除術は、乳房の一部分のみを切除する手術法であり、がん組織を含めた1〜2cm程度を切除します。がん組織が広範囲に広がっておらず、また乳房内の離れた場所への転移も見られない場合に適応される術式であり、がん組織をしっかり切除することと乳房を可能な限り温存することを目的としているようです。
切除後、切り口のがん細胞の有無を確認し、しっかりがんが切除できたことを確認したうえでがんの再発を防ぐ放射線治療に切り替えます。これに対して乳房全切除術は、がん組織が広範囲に広がっていたり、乳房内の離れた場所への転移が見られる場合に行われる手術です。
文字どおり、乳房そのものを切除するため、その後に乳房再建手術が行われることもあります。背中などの自家組織やシリコンなどの人工物を使用して再建することが多いようです。
放射線療法
放射線療法は、がん組織に高エネルギーのX線を照射し、がん細胞を死滅または小さくさせる治療方法です。乳房部分切除術後、がん組織の切除後にがんの再発を防ぐために行われます。
ほかにも、乳房全切除術後にリンパ節への転移が見られる際、胸全体などに対して照射されることもあります。照射の頻度は1日1回、週5回で4〜6週間かけて照射するようです。放射線療法では、照射後に照射部位がひりひりしたりかゆくなることがあります。ですが、治療後2週間程度経過すれば、自然に回復していくようです。
また、放射線治療後の乳房には乳腺が失われることがあり、母乳を作る機能がなくなるとされています。ただし、放射線を照射していない乳房の乳腺は失われていないため、母乳による育児も可能なようです。
ホルモン療法
乳がんのなかには、ホルモン感受性陽性乳がんがあります。この乳がんの増殖には女性ホルモンが関わっていることが知られており、再発の予防や病気の進行を抑えるために女性ホルモンを抑える治療法がとられることがあるようです。これがホルモン療法と呼ばれています。
化学療法
がん組織の再発の防止や病気の進行を抑えるために行われます。最近では手術の前に化学療法を行うことも増えてきています。腫瘍がすでに大きい場合や、明らかなリンパ節への転移が見られる場合は先に化学療法を行うことが多いようです。
乳がん手術の入院前にやるべきこと
先述したとおり、乳がんはゆっくり進行していきます。とはいえ、進行性のがんであることに変わりはないため、早めに治療していくことが大切です。手術までの間に何をすべきなのか、まとめました。
家族と情報共有する
まずは家族との情報共有を行いましょう。手術のスケジュールや術後の過ごし方など、あらかじめ家族でしっかり話し合ったうえで、治療に臨むようにします。がんの治療には家族の支えも大切になります。
仕事の調整
乳がん治療の手術の入院期間は、6〜10日程度です。この間は一切仕事ができないため、あらかじめ業務を他人に引き継ぐなどの調整が必要でしょう。ただし、乳がんの治療では手術結果が判明してから治療スケジュールが確定することも珍しくなく、術後に再手術が必要になるケースもあります。
切除した組織の病理結果が判明するまで10〜14日程度かかるとされており、入院の開始から病理結果の判明までの1ヵ月程度は休む可能性も考慮すべきかもしれません。また、退院後も放射線治療や抗がん剤の投与のために通院するケースもあります。
個人差があるものの人によってはこれらが精神的肉体的疲労となる可能性もあるため、職場の上司に伝えておくべきでしょう。
助成制度の確認
民間保険にはがん保険を含めた多種多様な保険商品があります。また、治療費が高額である場合に申請できる高額療養費制度や、会社員である場合に申請できる傷病手当金などもあるため、忘れずに申請しておくようにしましょう。
- 高額療養費制度
- 医療費控除
- 傷病手当金
高額療養費制度は、病院などの窓口で1ヵ月に支払った保険適用医療費の合計が一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた部分の支払いが払い戻される制度です。自己負担限度額は人によって異なりますが、一般的に70,000円から90,000円程度であることが多く、これ以上の医療費は支払わなくて済むものとなります。
高額療養費制度の対象者は公的医療保険に加入している人すべてです。公的医療保険には、専業主婦や学生であれば国民健康保険(こくほ)・会社員であれば会社を通じて加入する健康保険組合・公務員などが加入する共済組合・高齢者が加入する後期高齢者医療制度などが含まれています。
国民皆保険制度をとっている日本では、国民の誰もが何かしらの保険に加入しています。制度の詳細は厚生労働省のホームページをご参照ください。医療費控除は、本人または家族が前年(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が100,000円(所得金額が2,000,000円未満の場合は、所得額の5%)を超えた場合に、確定申告によって所得税の一部が戻ってくる制度です。
会社員であっても、医療費控除は年末調整ができないため、ご自身で確定申告をする必要があります。忘れずに申請するようにしましょう。傷病手当金は病気や怪我のために会社を休み、その間に事業主から十分な報酬を得られない場合などに受けられる制度です。
主に会社の健康保険組合(大手の会社が該当)や協会けんぽ(中小企業が対象)・共済組合(公務員が対象)加入者が受けられる制度であり、扶養家族は支給の対象とはなりません。支給の対象となるには、4日以上休むことやその間の給与支給がないことなど条件があるため、詳細は所属先の会社などでご確認ください。
乳がんの告知から手術までの期間についてよくある質問
ここまで乳がんの告知から手術までの期間・治療法・入院前にやるべきことなどを紹介しました。ここでは「乳がんの告知から手術までの期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
手術までの期間が長いと生存率に影響はありますか?
上 昌広(医師)
乳がんは進行性のがんであり、手術までの期間が長いと生存率に影響が出ることに否定はできません。早期治療が必要ですが、人によっては手術までの間にほかの治療を行う必要があるケースもあります。がん以外の持病を抱えている人は、その持病を治してからでないと手術を受けられない場合もあるかもしれません。気になる方は主治医に相談のうえ、手術スケジュールを決めることをおすすめします。
乳がん手術の入院期間はどのくらいですか?
上 昌広(医師)
一般的には6〜10日程度とされています。ですが、手術後に治療スケジュールが確定することもあり、その結果再手術が必要となるケースもあります。その場合は入院期間が長くなることもあるでしょう。
編集部まとめ
乳がんは進行性のがんであり、告知から手術までの期間はなるべく早い方がいいでしょう。
その一方で、持病を抱えているかたは持病の治療が必要だったり、手術に先立って家族や職場への報告なども必要となり、ある程度の準備期間が必要であることもわかりました。
乳がんと診断されてからは、一刻も早く手術したいと思う方も少なくないですが、余計な焦りは禁物かもしれません。
しっかりと準備を整えたうえで、手術に臨むようにしましょう。
乳がんと関連する病気
乳がんと関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳がんと関連する症状
「乳がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 乳房のハリ・しこり
- 良性の腫瘍の発生
- 乳房の強い痛みや腫れ・発熱
- 脇下のリンパ節の腫れ・乳腺近くの皮膚からの膿の発生
乳腺症は、乳がん以外の乳房に生じる病気です。加齢によって乳腺組織が異常に増生・変化している状態ですが、授乳期を終えたときに発生しやすいものでもあるため、取り急ぎ治療する必要はないものとされています。線維腺腫はがん化することがほとんどないといわれている良性の腫瘍とされており、しこりが見られることから乳がんとの見分けがつきにくいものでもあります。こちらも早期に取り除かなければならないものではありませんが、大きくなった場合などは手術によって除去することもあります。乳腺炎は乳腺が炎症を起こしており、授乳期に起こることが多い病気です。母乳を乳頭に運ぶ際、乳管内に分泌物が溜まって炎症を起こします。抗菌剤で治療しますが、重度の場合は強い痛みや発熱を伴うため、膿を摘出する必要性が出てきます。